PandoraPartyProject

冒険

闘技場設定は『練習場』から!


ぱんどら血風碌

 ゆらゆら、ゆらゆら。
 現世と幽世の『境界』が揺れている。
 ゆらゆら、ゆらゆら。
 それは現(げんじつ)であり、虚像(ゆめ)である。
 有り得ざるものを集め、在ってはいけないものさえ是認する――
 ゆらゆら、ゆらゆら。
 まるで神威神楽の大橋を思わせるようなその場所は橋でありながら何処にも繋がっていない。
 来た道も無く、行く宛ても無い。
 黄泉ヶ辻は唯、逢魔の時としてだけ機能する――
「酔狂よな」
 死出の道を先行く顔をして死牡丹梅泉(p3n000087)はそう嗤った。
 恐らくは『当人』ではないだろう。
 これは確実に夢である。夢でなくてもそれに類する何かである。
 これが現実でない事は確かである。奇妙な浮遊感も高揚感も目覚めれば消えてしまう、幻影だ。
 だが、彼は奇妙なまでのリアリティをもって嗤うのだ。
「――こんな場所に辿り着くとは。これは主の執念か、それとも不出来な偶然か?」
 この場所は何だ、と問えば彼は肩を竦めるばかり。
「知らぬ。知らぬが――分かっている事もある。
 この幽世は何とも妙味よ。死ぬほどに戦ったとて、死にはせぬ。
 四肢を失っても、致命を負っても――朝の主は覚えておるまいなあ。
 何とも素晴らしい話ではないか? 生涯に一度の戦いが、何度も味わえるとするならば。
 己が現在地をその内在に刻む機会があるとするならば」
 意味は知れなかったが、嘘はないように思われた。
 何処に居るかは分からない。先に何が続くかも分からない。
 こういうものを他人は夢と呼ぶのかも知れないが――己が目覚めるまでにはまだ大分時間はありそうだった。
 戦え、戦え。
 刃を振るえ、振るうしかない。
 ここは何処でも無いけれど、ここはそういう場所なのだ。
 戦え、戦え。
 刃を振るえ、振るうしかない。
 幽世を下り、胡蝶を舞え。夢を追い、現を疑うのだ。
 ここは何処でも無いけれど、そういう場所でしかないのだから――


※当冒険クエストは『チャレンジモード』です。
 出現する敵のレベルが一定のまま変化せず、難易度も高い設計になっています。
 現時点でのクリア可能を重視した作りになっておりませんのでご注意下さい!

参加者一覧
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
久留見 みるく(p3p007631)
月輪
パーシャ・トラフキン(p3p006384)
召剣士
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
海軍士官候補生

探索記録

 この場所がどんなものかは分からない。
 夢を見ているのか、それとも何処かへ『飛ばされた』のか。
 しかし、それにも大した意味はない。
 果てれば夢から覚めるのだろう。
 斬ればより胡蝶は嘲り夢はより深く、より昏くなるのだろう。
 為すべきが単純ならば、為さねばならぬは道理である。
 斬人斬魔。逢魔ヶ時に刃は戦慄き。
 現れ出でたるは幽世の者共。得物を握るその手に汗は冷たく滲む――


 これが最後の敵ならば良い。
 夢の終わり、袋小路、逢魔の果てならば良いだろう。
 だが、『違う』。
 そして、『強い』。
 倒すには倒したが、一筋縄で行く相手では無かった。
 これが小手調べというのなら、この先に待つ者は如何程か。
 怖気立つような魔性の中、五里霧中の忌憚を歩み抜くには一体どれ程の力が要るだろうか?
 

「グドルフ・ボイデル 、さん。
 ……随分おかしな所で会いますやないの」
 激戦の後、ふと注がれた視線――気配の主に目をやれば、そこには欄干に背中を預けるようにした紫乃宮たては(p3n000190)が佇んでいた。
「ほんにけったいな場所です。
 でも、人の恋路を邪魔する人は、馬に蹴られてしまえとか思いません?」
 実に剣呑且つ身勝手な言いがかりではあるが、乙女心と秋の空である。移ろい易い季節の天候よりもコロコロと姿を変える彼女の気分は得てして『そんなもの』なのだろう。実際の所、グドルフ・ボイデル がたてはとどんな関係であろうとも、たとえグドルフ・ボイデルのチームの面々が旦那はん――梅泉に興味が無かったとしても、だ。夢で逢えたら素敵な逢瀬にノイズは一切必要ないという事なのだろう。ハッキリキッパリ分かり易い彼女の考えは子供にだってすぐに分かる。
「……しかし、まぁ。酔狂な所。
 うちは嫌いやないけど、後何戦すれば『ここ』は満足するんやろね」
 それでも今日のたてははどちらかと言えば上機嫌に見えた。
「そちらも随分いい戦いだったみたいで。
 まぁ、良いです。その内、旦那はんと二人きりになりますから」
 彼女自身も既に一戦をこなした後なのか、そんな風にも告げてくる。
『この彼女が本当にたてはかどうかはさて置いて』。
 胡蝶の夢は浅き夢見し。
 幽世の底を目指す戦いはまだ終わりを迎える気配は無かった――


 お喋りはその位で十分という事か。
 煙のように現れた面々は、やはり煙のように消えてしまった。
 時間が、或いは空間が捩じれているのかも知れない。
 夢の中で『整合性』を考える事自体が愚かなのかも知れない。
 何れにせよ――この幽世を降るなら、力を示さねばならぬのは必定だ。
 現れ出でたるは前の者とはまるで違う更なる難敵。
 行く末深度は未だ知れず。
 唯、グドルフ・ボイデルのチームは目の前の敵を屠るのみ!


 戦いに次ぐ戦いは奇妙な程の高揚に支配されていた。
 体は不思議と痛まず、泥のように疲れてもおかしくはないのに感覚は更に、更にと研ぎ澄まされていく。それはまるで誰かが言った『永遠の闘争』を認めているようであり、他の誰かが笑った『酔狂』を肯定するかのようであった。
 ……僅か数十メートルばかりの『大橋』が終わりを迎えない。
 闇を掻き分けて先へ進んでも果てがないかのように終わらない。
 彼岸と此岸を繋ぐそれは此の世ならざる者であり、この幽世は不変である。
 ならば、とグドルフ・ボイデルのチーム は考えた。
 この闇を行く道程は何処にあるのかと――


『行く手を見つけた』。
 永遠にループするかのような道程を『破る』。
 そうあれたのは偶然だったかも知れない。
 グドルフ・ボイデルのチーム の――或いはグドルフの在り様、必然だったかも知れない。
 何れにせよ、グドルフ・ボイデルのチーム は幽世をまた一段降った。
 如何なる敵が現れようとも、彼等からすれば『ままある事』でしかない。
 分かっているのだ。戦わぬ道はないと。
 分かっているのだ。この道を行く事に意味はないと。
 それでも――迷い込んだ異界が狂ならば、彼等もまた狂である。
 闇に酔い、血に酔って。何度でも幕は上がるだろう。
 この、短い夢が醒めるまで。


 終わりの時は近い――
 それは確信めいた直感だった。
 深淵の道を辿り、終わらぬ橋を渡る――
 長時間にも、瞬き程の刹那にも感じられる『時間』の果てにグドルフ・ボイデルのチームは初めて橋の『先』を見た。闇色の切れ間は光差す世界に繋がっているかのようだ。
「ああ、あれが――」
『朝』か、と誰かが云った。
 夢と幽世を降り、朝まで辿り着いたのだ。
 浅く深い夢は終焉に近付いている。覚醒の時は間近だろう。
 だが、グドルフ・ボイデルのチームは別の事実も認識していた。

 ――終わりは近い。だが、終わりではない――

 彼等の考えを肯定するかのように、橋の終わりに影があった。
 それは彼等の見知る人物で、この幽世のキャストである。
「やらずには終われないよな」と誰かが苦笑した。
 さもありなん。同じく『終わり』を降ったなら、成し遂げるは片方だけ。


「おー、来た来た。流石だな、イレギュラーズ!
 思ってた通りの連中だぜ」
 むしろ過剰な位の親しみさえ込めた調子で手を振るキール・エイラットは期待してグドルフ・ボイデルのチームを待っていたようだった。
「オマエ達もたっぷり楽しんだだろうが――
 まぁ、そこそこ面白い道程だったからな。
 これでも気を揉むには揉んだんだぜ?
 これでオマエ達が来なかったらどうしようって思って、よ!」
「えらく評価されたもんだ」とやり返したなら彼は「当然!」と笑みを見せた。
 至極上機嫌である。
 自身が見込んだイレギュラーズが幽世を降り切った事に満足している。
 イレギュラーズとキールは関わった回数が多い訳ではない。
 しかし確かな縁があったのは確かだ。
 これまでは常に味方であった――しかし、今日ばかりは。
 この場所のルールを考えれば、待つ結論等一つであった。
「『初めて』だからな」
 歯を剥き出し、獰猛な笑みを見せた金髪の野獣の気配が変わっていた。
 両のサファイアが血のようなルビーに変わっている。
「『愉しませろよ』」
 奇妙なる一夜、酔狂の極み。
 さあ、ぱんどら血風碌を始めよう――!

挑戦結果

 迷ったか、敗れたか。
 幽世の道は閉ざされ、旅路は終わる。
 胡蝶の夢は破れ、朧げな記憶の残滓は吹けば掠れる糸のよう。
 だが、それでも消えないものはある。
 その手に残る感触は、夢幻の戦いの熱は。
『覚えていなくとも忘れない』。
 それは恐らく――今一度誰かがそこへ足を踏み入れた時に、確かな助けになるだろう。

戦績

攻略状況:攻略失敗…(撤退)

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