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シナリオ詳細

<孤樹の微睡み>深緑って豚が飛んでるの!?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●初めての外国
 少女は目を大きく見開いて、ぽかんと口を開けた。
 それから胸いっぱいに空気を吸い込んで――
「すっっっっご~~~~~~~~い!」
 大きな声とともに空気を吐き出した。
「わあああ、すごいすごいすごい。緑がいっぱい。すごい!」
 イレギュラーズたちは空中神殿を経由すれば各国のローレット支部へと飛ぶことが出来る。今日は少女――サマーァ・アル・アラク(p3n000320)にとっての初めての外国への『飛翔』だったのだ。
「ねえねえ、ハンナ。あの鳥は何ていう鳥? 極彩色の羽根で鶏冠がある鳥!」
 傍らのハンナ・シャロン(p3p007137)の袖をぐいぐいと引いて問うたかと思えば、
「わわわっ、ウィリアム! あんなところに樹の実があるよ! あれは食べられるの? どうやって取るの? 美味しいの? トゲトゲしてるのは何で?」
 キョロキョロしてはすぐに気になることを見つけてウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)へと尋ねている。
「すごいよ、すごい。砂が見えない。緑ばっか。えー、何で? すごーい!」
「サマーァ様、いきなりそんなにはしゃいでは疲れてしまいますよ」
「ノームの里って結構遠い?」
「ええ、それなりに」
「そっか~」
 じゃあ体力温存。
 なんて視線を正すけれども、また少しするとサマーァは眸を輝かして辺りをキョロキョロとしてしまう。ラクダはいないのかと聞いたり、ヤシの木はないのかと聞いたり、質問も沢山だ。
 本当に疲れてしまいそうだと、ウィリアムが笑った。
「疲れちゃったらハンナ、おぶってくれる?」
「っ! 任せてください!」
 ドンと頼もしく胸を叩いたハンナにサマーァがわーいっと笑い、嗜めるべきなのかとウィリアムは悩んでしまう。
 しかし初めての外国となれば、そのはしゃいでしまう気持ちはウィリアムにだって解る。長く鎖されていた深緑では、サマーァよりも外へ行くという選択が無かったのだ。長い時を生きる幻想種たちはサマーァの歳の何倍もこの木々たちの中で生きてきたのだから。
「ねえ、あれは?」
「どれですか?」
「ほら、空から何かが降ってくるよ」
「あれは――」
 光が降ってくる。天使の梯子と呼ばれる現象にそれは似ていた。
「ハンナ! サマーァを護れ!」
「はい! サマーァ様、少し我慢してくださいね!」
「えっ、えっ」
 ひとり状況を理解していないサマーァはハンナの腕に閉じ込められ――そうして三人は現実の深緑から姿を消したのだった。

●ローレット・ラサ支部
「帳が降りたよ」
 劉・雨泽(p3n000218)の言葉に「今度はどこへ」と言葉が返った。
 天義から始まった帳――異言都市(リンバス・シティ)化。それは各地で観測されるようになった。
「幻想、海洋、練達、豊穣……全国ツアーでもするのか?」
「そんな感じなんだろうね。だって」
 クウハ(p3p010695)の揶揄めいた声に苦笑いを浮かべた雨泽は「深緑、ラサ、鉄帝にも降りたんだ」と続けた。本当に全国ツアーだ。傲慢は――冠位魔種長兄は、随分と手広くやっている。
「……でね。残念なお知らせがもうひとつあって。君たち、サマーァを知っているよね?」
「うん? ちょっと待て。まさか……」
 悪い予感に、新道 風牙(p3p005012)が目を剥いた。
「うん。深緑へ遊びに行ったタイミングで帳が降りたんだ」
 その後、彼女との連絡は取れていない。
「でもハンナとウィリアムも一緒に居たはずだから、その点は少し安心かな」
 勿論その兄妹とも連絡は取れていない。
 今頃神の国で自力で何とかしようとしていることだろう。
「解った。迎えに行ってやるのが先輩の務めだな」
「そういうこと」

GMコメント

 ごきげんよう、壱花です。
 各世界に帳が降りました。当シナリオでは此度は深緑となります。

●目的
 ワールドイーターの討伐
 核の破壊

●シナリオについて
 初めての外国わーーーーーい! とウキウキるんるんサマーァの元に帳が降りました。なんてことだ。しかし、頼りになるハンナさんとウィリアムさんが一緒に居るはずです。(不参加の場合は巻き込まれていません。)
 入ってみるまで神の国は解らないので、通常の深緑を知っている人は驚くかもしません。まずはサマーァたちと合流しましょう!

●フィールド:神の国・深緑
 一見普通の深緑なのですが、色々とあやふやです。
 木と木の間に虹の橋がかかっていたり、羽の生えた豚が飛んでいたり、蛍光色の果物が実っていたりします。どうやらサマーァの深緑イメージの影響を受けているようです。楽しい声で歌う鳥や、ダンスをする猿等も居ます。ファンシーで楽しい森になっています。
 虹の橋は渡れるし、空飛ぶ豚は食べれます。食べなくても暫く置いておけば消えます。
 基本的にはとっても可愛くて明るい雰囲気なのですが、滞在していると妙に力が抜けていきます。正確には空腹感を感じて力が抜けます。食べものを食べる必要がない種族もそうなってしまう特殊フィールドのようです。

●『ワールドイーター』巨大ブタ
 空とぶ豚(中型犬くらいの大きさ)を一定数倒していると、木をなぎ倒して現れます。さほど強くはありませんが、30mと巨体です。
 ワールドイーターなので食べれません。

●核
 ワールドイーターの頭の天辺にお花が咲いています。それが核です。
 どうやらワールドイーターと繋がっているようで、ワールドイーターを倒さないと核は破壊できず、ワールドイーターが討伐されることによって一緒に消滅します。

●ハンナさん&ウィリアムさんへ
 他のイレギュラーズたちが来るよりも半日くらい前に神の国に居ます。
 サマーァがお腹が空いたと言うので空飛ぶ豚をハントしてみたところ、焼いたらとっても美味しかったです。
 周囲をウロウロと調査をしているので、他のイレギュラーズたちが到着したら世界の輪郭がふわんっとなったりして気がつくことでしょう。他の皆さんを探しましょう。
 核を探してはいますが、掴めていません。

●サマーァ
 新米イレギュラーズ。皆さんの後輩。
 戦闘能力はまだまだ伸び盛り。深緑すごーいっと思ってます。
 ハンナさんとウィリアムさんの後をついて回っています。
 頑張るよ、アタシに出来ることなら任せて!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●EXプレイング
 開放してあります。文字数が欲しい時に活用ください。
 関係者は、深緑で活動していて『巻き込まれた』状態であれば可能です。
 ハンナさん兄妹は迎えに来ようとしていたご家族等の呼び出しも可能です。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <孤樹の微睡み>深緑って豚が飛んでるの!?完了
  • と、サマーァが言っていました。
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年07月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)
永遠の少女
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい
メイ・カヴァッツァ(p3p010703)
ひだまりのまもりびと

サポートNPC一覧(1人)

サマーァ・アル・アラク(p3n000320)
くれなゐに恋して

リプレイ


 ピンク色の丸々とした子豚が空を飛んでいる。真っ白なふわふわの羽は天使のようで、絵本の中に出てきそうな愛らしさがあった。
 咄嗟に守ってくれた『風のテルメンディル』ハンナ・シャロン(p3p007137)腕の中からそれを見つけたサマーァ・アル・アラクは嬉々として『奈落の虹』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)とハンナのふたりへ、空とぶ豚を指さしてキラキラの瞳を向けた。
「すごーい、深緑って豚が飛んでるの!? 可愛い~!」
「まあ、豚が空を……渡り豚でしょうか?」
「えっ、渡り鳥みたいに豚も飛んでくるの!? ……あれ食べれるのかなぁ」
「この辺りではあまり見かけないのですが、とっても美味しそうですね!」
 サマーァとハンナは豚を見上げ、楽しげに話している。二人とも無事で何よりだと声を掛けようとしていたウィリアムは「美味しそうだね」とゆるーくサマーァに笑みを向けた。
 危険な物が周囲にないことを確認したハンナが腕を解いてサマーァを開放すると、彼女はよくは解っていないが何か危険があると察したハンナが護ろうとしてくれた事だけを理解して、ありがとうと明るく笑った。
「……ハンナ」
 兄が小声で袖を引く。サマーァと楽しげにしていたが、解っているのか、と。
「分かってますよ。あの時の光のせいですよね。でもサマーァ様が楽しそうなのでこのまま押しきってしまいましょう」
 ふたりの視線の先で、サマーァは早速キョロキョロと辺りを見ている。豚を見つける度に指をさして無邪気に数を数えたり、不思議な果物を物珍しげに見上げたりしていて、実に楽しそうだ。
 サマーァにとっての初めての外国。そこでの初めての冒険を楽しいと思えるものにしたいと願う妹の気持ちを、兄は理解していた。――少女は先日まで泣いてばかりだったから、これからは楽しい思い出をたくさんともに築きたい。もうひとり妹が出来た気持ちで、サマーァの元に駆けていくハンナの背中をウィリアムは優しく見守っていた。

 ――――
 ――

 可愛い子豚が飛んでいる。
 そう、何故だか飛んでいるのだ。
 ふわふわ飛んで、深緑らしい木々――の間に掛かった虹の橋をトコトコ歩いて、カラフルな果物を食べたりしていた。
「あれ? 深緑……? なんだか可愛い……ですね」
「な、なんだかメイが知っている深緑といろいろと違うような気がするです!」
 体を横に振って踊っている猿の姿を目にした『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)は瞳をぱちりと瞬いて、『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)は口をはわわと開いた。深緑って緑豊かなのは現状と変わらないけれど、もっとこう……静かで落ち着いた雰囲気のはずでは?
「随分と面白愉快な森になったなぁ」
 極彩色の鳥が、伸びやかな声で歌っている。囀りや鳴き声ではない。あれは歌だ。ミュージカルのように歌う鳥を見上げた『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は口の端を上げた。
「サマーァの意識が反映されてるんじゃねーか?」
「そういえばサマーァ、絵本が好きらしいぜ」
「迷子の迷子のサマーァちゃん。まだ見ぬ世界に行こうとしたら、不思議の国に迷い込んでしまっただなんて!」
 楽しい景色に、ふふっと楽しそうに『永遠の少女』ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)が咲った。自然と彼女の隣に守るように立っていた『あいいろのおもい』クウハ(p3p010695)が口にし、『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)が頷いた。サマーァは紅血晶の折に『睡恋花』という絵本に出てくる結晶を探していた。姉を亡くし、イレギュラーズとともに敵を取り、そうして流した涙が睡恋花となった経緯まであるのだ。絵本を好きなサマーァの意識が反映されているのなら、この景色にも納得がいく。
「あ、そういう神の国もあるのですね。メイだったらねこさんだらけの深緑とか……」
 みなさんはどんな感じになりますか? メイの言葉で一行は『自分の意識が反映されたら』の深緑を想像しながら、三人を探し歩くのだった。
「……?」
「風牙、どうした?」
「いや、多分気のせいだ」
 クウハにかぶりを振る。急に腹が減った心地がしたような気になったのは、きっと気の所為だろう。まだ来たばかりなのだから。

「なあ、腹が減らないか?」
 三人を探すために動き回れば、気の所為ではないと思える程になってきた。
「私も同じことを思っていたよ。何か狩ろうか?」
 イレギュラーズたちはそれぞれでファミリアーを飛ばして捜索に当たっている。そちらに意識を半分向けながらも、ちょっとした狩りくらいなら出来るだろうとルーキスは辺りを確認した。
「白い紙にピンクの瞳、褐色の肌をした女の子を見なかった?」
 陽気に踊る猿にルミエールが話しかけているのが見えた。だが人間の定義した色が動物である彼等には解らないらしく首を傾げられている。
「えとえと、金髪の幻想種お二人と、褐色の子の組み合わせ、見ませんでしたか?」
 中空に向かって話しかけているメイは、恐らく下級精霊に話しかけているのだろう。だが、上位種でない彼等から疎通で感じられるのは感情のみだ。楽しげな気配のみが届き、メイは諦めて子猫の視界へ意識を集中させたようだ。
「……狩ると警戒されるかな」
 猿や鳥はもっと上手に尋ねれば色々と聞き出せそうだが、仲間が狩られたとあっては聞き出せなくなりそうだ。
「ハンナさんとウィリアムさんの匂いがする……ような気はするのですが、それよりも……」
 人の香りよりも強いもの。美味しそうな香りを拾ったのだろう。ユーフォニーの腹が可愛く鳴き声を上げ、腹を押さえたユーフォニーがはにかんだ。
 上空からでは木々しか見えなかったため、低空を飛ばしたファミリアーの視界から、いくつかの情報が拾えた。料理をしたような跡があったこと。ハンナとウィリアムではないが、彼等によく似た特徴を持つふたりの女性がいたこと。
「……巻き込まれた一般人か?」
 クウハが顎を撫でた。そうならばローレットの方針では保護するのが正解だろう。ハンナとウィリアムが戦えることは皆知っていることだから、ひとまずは一般人らしき女性たちの元へと向かい保護した方が良いだろう。
「合流したら豚でも狩って食べるか」
「そうですね、ごはんタイムですねっ」
「実はメイ、お野菜や調理器具を持ってきたのですよ」
 先に帳に閉じ込められた人たちがお腹を空かせているかもしれないと思って。
 どうやらメイと同じ考えの仲間たちは多かったらしい。
「私も米粉パンを持ってきています。サンドイッチなんてどうでしょう?」
「奇遇ね、私もおやつにケーキを持ってきたのよ」
「私も香辛料を」
 狩れる獲物さえ居れば香辛料があれば美味しく頂けるからねとルーキスが口の端を上げた。
 あれやこれやと食べ物名を上げればまた誰かのお腹がぐうと鳴り、顔を見合わせて笑い合う。これは早く合流してご飯にしなくては!

 この虹の橋を渡った先に人が居る。
 ファミリアーたちからの情報で其れを知り、イレギュラーズたちは消えないよね? と足元を確認してから虹の橋を渡った。
「なんか騒がしくないか?」
「喧嘩をされてませんか?」
「……そうみたいだな」
 クウハが首を傾げると、超聴力で声を拾ったユーフォニーと風牙が顎を引いた。喧嘩? と仲間たちが首を傾げる。ハンナとウィリアムが喧嘩するようには見えないけれど……?
「お祖母様! サマーァ様を離してください!」
「貴方達はいつでも会いに行けるのだから良いじゃありませんか。今日くらいはお祖母ちゃんに譲ってくださいまし」
「そうよ! 母さんはさっきからずっと抱きしめているじゃない。次は私の番でしょ?」
「え、えっと。ええ?」
「ほら、サマーァ様が困ってます! はーなーしーてーくーだーさーいー!」
 女三人寄れば姦しい。金髪に長耳。同じ特徴を持つ良く似た女性三人がひとりの少女を囲んで騒がしくしている。
「ウィリアム~、アタシどうすれば……! 助けてっ」
「サマーァ様! シャファクじゃなくて私に助けを求めてください!」
「ええっ」
「ハンナだって困らせてるじゃない」
「そういうのは家に帰ってからにしてね」
 ここから抜け出せばサマーァはノームの里へ遊びに行くのだ。苦笑して見守っていたウィリアムは救助要請に応え、迎えに来ていた祖母と母を掻き分けた。不満の声は上がるが、『早く家に』という気持ちは共通しているらしい。祖母マハラ・タリアと母マルカ・シャヴィト、ついでにぎゅうぎゅうと抱きしめようとするハンナの腕からサマーァを助け出した。
「大丈夫、サマーァ」
「……すっごいふかふかだった」
 何がとは言わないが、ぎゅうぎゅうだったけどふかふかだった。
「――サマーァ! ハンナさんにウィリアムさんも! 無事か?!」
「アタシお母さんのこと知らないから嬉し――あ、風牙だ!」
 虹の橋を駆けてくるイレギュラーズたちを目にしたサマーァの明るい瞳が見えたのも一瞬。サマーァの言葉でまたマハラとマルカがぎゅうぎゅうし始めた。
「あら、ふふ。随分と楽しそうね」
 ハンナが挨拶もそこそこに母と祖母とまた争い始めたため、ルミエールがクスクスと笑った。
「探しに来てくれたんだね、ありがとう。僕達も合流しようと思っていたのだけれど先に母と祖母と合流したら、ね……」
「ハンナさんウィリアムさんのお家はとても仲良しなんですね」
「まあ、そうだね。……普段はもう少し落ち着きがあるのだけれど」
 なんて話をしていると、ドスドスと何かが近寄ってきた。
 音を捕らえていた風牙とユーフォニーはそちらに意識を向けており、ルーキスとクウハもいつでも相手が出来るようにと身構えた。
「ああ、豚を狩ってきたんだよ。皆、お腹は空いていない?」
 マハラがポコポコと生み出したゴーレムたちが空飛ぶ豚を抱えてそこにいて、結構美味しいんだよとウィリアムが笑った。
「……え?」
 それを食うの? という風牙の視線に、ハンナもウィリアムもサマーァもきょとんとした。
 ああ彼等は既に食べた後なのだと、風牙は察した。

「生きるとは、命を頂くこと。頂くからにはしっかり生きねばなりません」
 ですよね? ねーさま。
 人数が増えたからと追加で狩った豚へ、メイはしっかりと祈りを捧げる。大きな命も小さな命も、命は平等だ。
「サマーァ様はどの部位がお好きですか?」
「お祖母ちゃんが食べさせてあげますね」
「あわわ」
「それにしても美味しいわね、このお肉」
「ふふん、こう見えて飲食店は色々やってきたからね」
「フルーツソースがけもどうだ? 甘いものが食べたければ果物のコンポートも作れる」
「リーちゃんも食べる? サマーァさん、こっちの果物も美味しいですよ」
「どうぞ、ケーキも召し上がって?」
 果物の見た目には少し驚いたが、皮を剥いてみれば瑞々しくて甘かった。近くの猿たちにルミエールは果物を分けてあげれば、お礼に陽気なダンスを踊ってくれた。
 終始クウハは調理しながらも警戒をしていたが、食事中に危険な目に合うこともなく、皆での食事会は楽しく過ぎていった。
「さて」
 腹がくちれば、解決せねばならない問題をどうにかしなくてはならない。
 神の国の消滅。つまるところ触媒を探して破壊する必要がある。
 ――だが。
「妙に腹が減るんだよな」
 食べたばかりなのに、おかしい。探索をしようと少し動くと腹が減る。
 幸い食べ物には困らないから、腹持ちが良さそうな豚を仕留めて食べるのだが――やはり腹が減る。仕留めて仕留めて仕留めて、たくさん狩ったら食べる。……確実に豚の数は減っていると気付いた頃、もしかして遂行者は餓死が狙いなのかという気持ちも浮かんできた。
 その時だった。

 ――ブモォオオオオオォォォォォォオオオ!!

 楽しい夢のような世界は唐突に。
 巨大な豚が現れた途端、イレギュラーズたちは誰もが『アレだ』と察した。
「お、おっきい……」
「わ、大きい豚! あれも食べられるのかな」
 豚を食べ続けているせいか自然と食べられるかどうかの思考になっており、サマーァの言葉にメイも顎を引く。あれは食べでがありそうだ。
 だが、あれはどう見ても。
「ワールドイーターだろうね」
「サマーァ様に美味しい豚を食べさせてあげたかったのですが」
 仕方ありませんねと兄の横に並んだハンナが拳を握りしめる。此処から出たら自宅にやっと招けるのだ。やる気が尽きない。
「随分と面白い森だけど、これが続くと問題になるからねー」
 ルーキスも不敵に笑った。
 豚と皆を交互に見ているサマーぁに「やってみるか、サマーァ」と風牙が声を掛けた。
「……アタシ、皆の足を引っ張らないかな」
「大丈夫、俺がちゃんと護ってやるよ」
 だから存分にいっていいとクウハが言葉を重ねて。
「サマーァさん一緒に頑張りましょう……!」
「うんっ! 先輩たち、今日もかっこいい背中をアタシに見せてね!」
「勿論よ、サマーァちゃん」
 いくらでも魅せてあげるとルミエールが微笑んで、イレギュラーズたちは巨大ブタへと向かっていった。

「消えてしまいました、ね……」
 あのブタさんは何日分のご飯になったでしょう。そう考えれば実に惜しい気もするが、ワールドイーターの討伐は無事に叶った。
「あれ? 何か周りが変じゃない?」
「あのな、サマーァ。夢を壊すようで悪いんだが……」
 説明しようとクウハが口を開き、風牙も真実を教えようとする。
 だが。
「サマーァ様! 渡り豚にはきっとまた会えますよ!」
 ハンナはサマーァにとって楽しい冒険で済ませるつもりなのだ。兄のウィリアムが皆にこっそりと説明し、結局空飛ぶ豚には触れず、『帳というものによって別のレイヤー(神の国)へと召喚された三人を探しに来た』という説明のみがなされた。
 だからサマーァは、
「皆、心配して来てくれてありがとう!」
 と、今日も明るくイレギュラーズたちへと笑いかけたのだった。

成否

成功

MVP

ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル

状態異常

なし

あとがき

ひよっこイレギュラーズなサマーァにとって皆さんは頼りになる先輩です。
楽しくもかっこよく、そして優しい姿を見せてくださってありがとうございます。

お疲れ様でした、イレギュラーズ。

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