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シナリオ詳細

<瘴気世界>常闇の復活のために

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ――ボクの名前はミズハ?
 ――そうだ、ミズハだ! ……いや違う、大嘘だ、他の人からもう聞いただろ。
 ――……オプスキュティオ?

 かつて世界の均衡を守っていた六属性の妖精たちはあまりの退屈さに人類を生み出し、それを繁栄させた。しかし、人類を生み出す過程の中で邪悪な力をもつ魔獣も生まれてしまい、やがて人類と魔獣による大戦争が起きてしまう。
 戦争は知識をもった人類の勝利に終わったが、その代償は大きかった。
 大地は荒廃し、毒素をもった瘴気で世界は覆いつくされ、人々はその住処を捨てることを余儀なくされる。
 それから人類は生活圏を地底へと移動した。そう願い、導いてくれた精霊から偉人が受け取ったとされる、高純度の精霊石を用いた五つの疑似太陽により、まるで地上に居るような生活を手に入れたのだ。
 のちに疑似太陽に惹かれるように人々は巨大なコロニーを築き、五つの国が出来上がった。

 ――いやだ、イグニス。キミが消えたらボクは、ボクは!

 精霊たちは人々が国を築いたことを見届けると、その後の繁栄は彼らに任せて見守ろうと決め、天界へと帰還した。
 これで全て、全てが丸く納まって、ハッピーエンドになるはずだった。

●生き残った精霊
「まさか、逃げ延びていたとはな。探すのにかなり苦労したぞ」
「精霊に対して無礼よね。まあいいわ、貴方がここに来た理由は分かってる」
 境界案内人であり、元原住民のラナードは『水の精霊』アイルベーンへ面会していた。
 自分を崇める人々と魔獣を利用し、他の精霊の力を我が物にしようとした『光の精霊』リュミエールに吸収されたと思われていたアイルベーンは、その不審な行動を一早く察知し、身代わりを置いて海の底にある海底神殿へと避難していたのだ。
「まさかあのリュミちゃんがあんな恐ろしいことを計画してたなんて、私たちと楽しく話してたリュミちゃんは演技してたのかしら。そう考えるとちょっと傷つくわね」
「年寄りの昔話を聞きに来たんじゃねえんだよ」
 ラナードの悪態にアイルベーンは少しムッとした表情をするが、話を続けた。
「ティオの記憶のことね。別に戻せないことはないし、方法を教えてあげてもいいけど」
「んだよ、もったいぶらずに言えよ」
 アイルベーンは、方法があることを聞いて身を乗り出したラナードを制し、一呼吸置いて真っ直ぐと彼の瞳を見ると、ひときわ真面目な表情を向ける。
「一つ、貴方はこの情報にどれだけの対価を支払える?
 二つ、対価を支払って情報を得たとして、きっと貴方にティオの記憶を戻すことは無理よ」

 ――もう、一人ぼっちは嫌なんだ。

●その方法
「…………」
「それで、ソイツらを殺せば依頼は達成か?」
 回言 世界(p3p007315)がその話を聞いたところで、彼は顔色一つ変えなかった。
 きっと顔面蒼白というのは、目の前で依頼の概要を話すラナードの顔色のことを言うのだろうなと、そんな思考が巡るくらいに余裕はある。
「そうだ――若ければ若いほどいい。そういう意味で、子供の方が都合がいい」
 結論から、オプスキュティオの記憶を戻すには莫大な量の、それも若い核が必要だった。
 灰から生成される瘴気世界特有の人類は、それぞれ胸部に核と呼ばれる心臓の意思を有しており、それは生まれてから成長する過程の中で微量なエネルギーを放出し続け、老いて寿命を迎えると共にエネルギーが底を尽き、粉々に砕け散るという。
「なるほどな。保持する総エネルギーの量が多ければ多いほど良い、と」
「……お前、何も気にならないのか?」
 苦しい説明を受けても顔色一つ変えない世界に、ラナードはつい聞いてしまった。
 何も言うまい。もし彼が断わったとしても、素直に引き下がるつもりでいたのに。
「気にならないって云えば、そりゃ嘘になるだろうな」
「じゃあ、なんで何も言わねぇんだよ」

 その後、数度のやり取りを終えた世界(who)は、何度も見たその世界(world)へと踏み入れる。
 ――全く、本当にろくでもない依頼だ。

NMコメント

 約一年ぶりですかね?
 ともあれリクエストありがとうございます。
 ちょっとした過去の続編ですが、初めての方でもお気軽に!

●目的
 孤児院の子供を皆殺しにし、核を残らず回収する。

●状況
 境界案内人からの依頼で大きな孤児院に襲撃をかけることとなりました。
 この世界を生きる人々は死ぬと灰になり、核と呼ばれる石を落とします。
 今回はその石を沢山集め、記憶を失った『闇の精霊(世界を作った偉くて強い精霊)』を復活させようといった趣旨の依頼になります。

●ロケーション
 大きな国の端っこに立っている大きな孤児院です。
 四階建てで、各階で満遍なく子供たちが平和に暮らしています。
 リプレイは孤児院に侵入するところから始まります。

●敵の情報

・アイルベーン王国所属冒険者 ×6
 この世界では強い部類です。騒ぎを聞きつけて参戦してきます。
 剣と弓、魔法が2人ずついますが、イレギュラーズには及ばない強さです。
 彼らは4ターン毎に仲間を呼び、その時生存している人数の二倍まで増えます。

・子供 ×50
 泣きながら逃げるしかない、力を持たない子供です。
 低威力の攻撃でも死んでしまうほど脆弱で、死ぬと灰になります。

●関連シナリオ
 当シナリオは下記のシナリオと関連しています。
 よろしければ参考にしていただければと思います。

・<瘴気世界>常闇の喪失
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5418

●アドリブについて
 当シナリオではアドリブが多めに含まれることがあります。
 ちょっとNGだよって場合、通信欄かプレイングに一言ご記載ください。

  • <瘴気世界>常闇の復活のために完了
  • NM名牡丹雪
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年03月08日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
※参加確定済み※
水無比 然音(p3p010637)
旧世代型暗殺者

リプレイ

 ――ど■■て、こ■■、ボ■はこ■■■と……望■■■い。
 ――ど■■て■■だ■……アイ■■ーン、■■■■■■……。

 何故殺すのかと聞かれれば、それは必要な犠牲だったと応えるしかない。
 その方法を吹き込んだ精霊もまた。本当は依頼を断って欲しかったことを知っていた自らもまた。全くもって理不尽で皮肉なものだと『陰性』回言 世界(p3p007315)は思う。
「あー、これは酷い。ダメダメ駄目ですよ、罪のない未来溢れる子供たちを殺めようなんて」
 間もなく作戦開始の時間だ。
 アイルベーンの端に位置する、今はまだ平和で、優しさと慈愛に満ちた孤児院前。
「今からでも考え直しませんか? きっと誰も殺さずにオプスキュティオの記憶を戻す方法があるはずです……――なんて、馬鹿な演技はよした方がいいか?」
 わざとらしく喋る世界の問いかけに、オプスキュティオの惨状を知る『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は嗜めるなんてことはしなかった。
「それが必要であれば”そう”するまで、人でなしに今更何を聞くんだい?」
 魔術師である彼女は、何か大きなことを成すために必要な犠牲を知っていた。
 例えるのなら、世界の理を捻じ曲げるためにパンドラという命を燃やす行為も似たようなものだろうとすら。今回違うのはその材料だけなのだから。
「そりゃ、そうだな」

 心に引っかかる何かを押さえつけるように、世界は自分へ言い聞かせた。
 ろくでもない依頼でも、それを受けるのは今に始まったことじゃない。
 ――そう、本当に”今更”なのだ。



 サファイアのような疑似満月の淡い光に照らされた、美しくも静かな夜だった。
 よいこは寝ないとオバケに連れ去られてしまうなんて子供騙しの嘘があるが、殺人鬼に狙われたらまず生き残ることができないと『旧世代型暗殺者』水無比 然音(p3p010637)は思う。
「一部屋五人、全部で十部屋、そのうち窓があるのは三部屋のみ……」
 石の床にブーツの底を打ち付けながら歩く彼は、既に孤児院の中。
 冒険者が存在するくらいなのだから、侵入や襲撃はもう少し困難だろうと考えていたが……成程、この世界やこの国、或いはこの孤児院は呆れるほど平和らしい。
「あぇ、おにいさん、だれ?」
 ふらりと寝ぼけた様子で部屋から出てきた子供へ向ける視線は酷く冷徹なものだ。

 ――ごとり。

 傍からみれば不審者であることに間違いないのに、人類の脅威が魔獣だけだと信じて止まない子供は佇む然音へ無防備に近付いて――そんな首を刈り取ることなど、赤子の手を捻るも同然だった。

 我々は必要悪である。
 百年先の未来へと世界を繋ぐ為に いずれ来る破滅を超える為に
 心優しき英雄に刃を向ける外道である。
 人々の繁栄の為に 世界の存続の為に
 我々は大悪を成す者である。

「……さて、さっさと終わらせましょうか」
 そこに残ったのは、何かが燃えた跡のような灰と大粒のサファイアだけ。
 殺した子供の死体なんて残らない、なんてやりやすい仕事なのだろう。
 今しがた死んだ子供が開いたままの扉へ放たれた悪意の霧は、たちまち部屋へと充満し、その姿を確実に灰と宝石へ回帰させるのだ。


 阿鼻叫喚とはまさにこういうことをいうのだろう。
 何かが爆ぜる爆裂音、悲鳴や泣き声、そして死んでしまったトモダチ。
「ぁ、あ……いや、こないで、ねえ、どうして、冒険者さ」
 また目の前で誰かが死に、死が恐怖を生み、恐怖は誰かに伝染する。
 可愛い顔をくしゃくしゃに歪めた小娘だった。きっと恐怖に精神を保つことができず、足が竦んで逃げることすらできなかったのだろう。
「必要な犠牲ってヤツさ、苦しませる気はないよ」
 ルーキスのその声は既に届いていなかっただろう。
 オーバーキルといっても過言じゃない。放たれた強力無比な一閃は、無力な子供一人の上半身を跡形もなく吹き飛ばし、綺麗な宝石だけを露出させる。
「おい」
「何かな?」
「まだ沢山いる。あんまり飛ばし過ぎると――」
「ああ、わかっているよ。でも安心するといい、私は底無しなんだ」
 やるなら一撃で、苦しませず。その思いは誰しも変わらない。
 必要な犠牲であることと、無実な人間が死ぬことは決してイコールで繋がらないのだ。
「おねがいします。妹だけは、妹だけは助けて」
「いいよ。約束してあげる」
 自分の命と引き換えに妹の命を助けようとした子供は、次の瞬間灰になった。
 その直後、妹と思われる子供も同じように灰へ変わった。
「悪魔だって思うかい?」
「……いや、俺も多分同じことをした」
 ルーキスなりの”優しい”嘘。
 どうせ何を言われても、何を言っても殺さねばならないのだ。嘘だとしても思い残すことなく安らかに死ねるなら、そちらの方が子供も幸せだろう。
「さて――」
「?」
「これだけ騒ぎになれば当然っちゃ当然だが、冒険者のお出ましらしい」
 A級……いや、S級も混ざっているか。多くの冒険者が雪崩れ込んでくると、幾人もの子供を殺した二人を取り囲み、下衆を見るような視線を向けてくる。
「貴様ら。何故こんな、惨い真似を……!」
 嗚呼、雉も鳴かずば撃たれまいのに。
「冒険者? うーん、ま……大人でも多少エネルギーにはなるか」
「エネルギー……? 何訳の分からないことを言って――」
 そんな手練れが目の前で、それも一撃で首を落とされたのだ。
 冒険者たちは一瞬、何が起きたのか理解ができなかった。
 きっとこの世界では手練れの部類なのだと、幾度とこの世界へ来訪していたルーキスも世界も知っていたが、同時に自分たちよりずっと力で劣る存在であることも知っていた。
「な…… 嘘、だろ……?」
「護ろうとするのは自由だけど、なら最初から本気で来た方がいいと思うよ」
 そして、この程度の脅しで武器を納めるような連中でないことも。
「いい度胸だ、じゃあ最大火力で潰すとしましょう」
「舐めやがって、畜生!」
 ”この場は一人で十分だ”。そんな雰囲気を感じ取った世界は、後のことをルーキスへ任せ残った子供たちの殲滅へと向かう。
「足かな、それとも腕? 一つぐらい落としたら大人しくなるか。覚悟するといい」


「ろくでもない依頼だって? 別に、大歓迎だよ」
 『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)は、冒険者の背中を眺めながら小さな声で呟いた。
「ん? 今何か言ったのか?」
「何も」
 食い扶持を稼ぐためなら手段は厭わない、だって生きるためなのだから。
 ろくでもない依頼だとか、”思う所”だとか、そういうものはどこかの誰かさんにおまかせするとして、依頼なのだから、こなして当然だと 史之は思う。
「どうやら襲撃者は相当な手練れらしい。既にもう、沢山の犠牲者が出ている」
「ふぅん、大変だね」
 ちょろいものだ。冒険者ギルドとよばれる施設に、応援に馳せ参じた冒険者だと告げればすんなり討伐部隊に潜入できてしまったのだから、この世界の人間は疑うことを知らない。
「秋宮・史之、だったか? 助かるよ、今冒険者は人手不足だからな」
「…………っと、ああ、気にしないでくれ」
 孤児院の前まで着いた史之は、ワンテンポ遅れて冒険者へ返事する。
 中から子供の悲鳴や誰かが暴れる振動が伝わってくる辺り、先に入った三人は派手に暴れているのがよく分かる。
 この冒険者たちも、接敵した時点で恐らく瞬殺されてしまうだろう。
「子供たちの避難は任せてくれ。一人でも多く救ってみせるさ」
「ああ、頼んだ。尊い命を救ってやってくれ」
 よく知らない人間のことを信頼しちゃって、馬鹿な奴らだよね、アハハ。
 どうせ皆死んじゃうんだから、嘘も本当も最後まで分からないまま死ぬんだろうけど。

「おいでおいで、ここは危険だ。屋上へ逃げるんだ。いま、強い冒険者が悪いやつらを退治してくれている」
 孤児院三階。イレギュラーズの襲撃に下から逃げてきた子供たちと、それを先導する孤児院の大人がまだ沢山残っていた。
 恐怖、焦り、緊張。或いは同じようなナニカに囚われてしまった人間は、自分に取っての光を目の当たりにしたとき、それを間違いだと疑うことができない。
「死にたくない」
「助けて、お願い」
 沢山の子供達は疎か、大人ですらこの場で頼れるのは史之しかいない。
 一度見えてしまった希望に、絶望という可能性が入り込む隙間なんてない。

「ダメだよお、知らない人をすぐに信用しちゃ」


●エピローグ
「終わりましたか」
 孤児院はもう、物音一つ聞こえない。
 子供も冒険者も皆、只の灰と宝石に姿を変えてしまった。
「それで、この核で『闇の精霊』を復活させるのでしたか?」
 人の形をしていたそれは、然音一人で持ち切ることができず、彼が立つ目の前の床へ積まれていた。
「そうだ、核だけ回収してオサラバだ」
 然音へぶっきらぼうに応えた世界は、着ていた白衣に核と灰を集め始める。
「必要なのは核だけなんだろ?」
「まあな」
「灰まで集めて何になる?」
「……」
 史之の問いかけには沈黙を貫いた。
 あんなことをした後で、元は人の形をしていたモノをここに放置することができないなど、仮に口が裂けても言うことはできなかっただろう。
「その闇の精霊という方が、この五十人余りの生け贄に見合う勝ちがあればいいのですがね」
「私らは信じるしかないさ。今までもそうしてきたし、これからもそうするだけだよ」
 核と灰を集める世界の隣へ立ち、同じく人だったモノを集めながらルーキスは言う。

 もし今回の事を”彼女”が知ったらどう思うだろうか。
 強がりと天然の内に秘めた繊細な心は、きっと私らの事を嫌うだろう。
 それでもいい。
 自分たちは前に、未来に進むことしかできないのだから。

成否

成功

状態異常

なし

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