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シナリオ詳細

<昏き紅血晶>原石を収集する商人

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 現在の混沌は些かバランスを欠いている。
 幻想ではアーベントロート家の動乱。フィッツバルディではあの老竜の姿を見かけぬようになったという噂も飛び交う。
 鉄帝は新皇帝となった『冠位憤怒』バルナバス・スティージレッドの統治によって混迷を極めており、天義はアドラステイアの件に引き続いて新たな神託による不可解な事件が確認されていた。
 他の地域には大きな動きこそみられぬが、ひょっとすれば表に出ない何かが暗躍している可能性も……。
 こうした中で出回ることがあるのがいわくつきの商品。
 過去には願いが叶うという色宝や奴隷市に並ぶ幻想種も記憶に新しい。
 今回、ファレン・アル・パレスト(p3n000188)が危機感を抱いていたのは、「紅血晶」と呼ばれる宝石。
 非常に美しく、人気も高いという価値のある代物らしく、商人達は躍起になって取り合っている状況だという。
 それだけなら問題はなかったのだが、紅血晶には不吉な噂もある。
 曰く、宝石の所有者は化け物になり果てる……と。


 傭兵首都ネフェリスト。
 とある酒場へと集まっていたイレギュラーズは、呼び出した『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が醸し出す雰囲気に異様さを感じていて。
「奴隷商人という存在は、どうしてなくならないのでしょうね」
 彼女はギフトのおかげで冷静に語っていたが、その全身から得体の知れない何かを発しているようにもメンバー達は感じていた。
 それというのも、アクアベル自身も情報屋……イレギュラーズとなる直前、海洋の奴隷商人に身売りされそうになった過去があるからだ。
 そんな彼女の依頼は……。
「とある悪徳商人に捕らえられた幻想種の少年少女の解放していただきたいのです」
 ザントマンの一件を思い出すが、あの事件の元凶はすでに倒されている。
 どす黒い欲を秘めた人間によるものであると思われるが……。
 ともあれ、今回、幻想種を捕えているのは、ゲドレという商人であることが分かっている。
 なんでも、その商人は多くの傭兵や盗賊を手下としており、白い粉を使わせて幻想種を昏睡させて誘拐しているのだとか。
 これもザントマン事件を思わせるが、相違点もある。
「今回用いられているのはアンガルカという白い粉で、青い眠りの粉とは違うようです」
 これまで調べた情報についた話すアクアベルは、話を本題である幻想種救出へと移す。
 このネフェルストの外れにある石製の倉庫に、幻想種の少年少女は個別の檻に入れられているという。
「そこは詰所も兼ねているようで、交替でゲドレの手下が番もしています」
 傭兵3人と盗賊3人の計6人。さらに、ゲドレのペットだという巨大なエリマキトカゲを思わせる魔物もいるという。
 とはいえ、これまで数々の難敵を倒してきたイレギュラーズであれば、油断せずに対処すれば問題ない相手のはずだ。
 突入のタイミングは任意で問題ない。今回、問題の商人と直接対することはないが、以後、間違いなく警戒対象となることは留意したい。
「ともあれ、幻想種の人達を自由にしてあげてください」
 その少年少女達をかつての自分と重ねていたアクアベルはそうこの場のイレギュラーズ達へと懇願するのだった。


 下見をするイレギュラーズが訪れた問題の倉庫。
 街の外れではあるが、往来自体はある。夜になっても人が全くいなくなるタイミングは少ない。さすがはネフェルストといったところか。
 倉庫という名目で建てられている場所だが、詰所も兼ねており、いくつかの部屋がある。所有者であるゲドレの手下は大部屋で寝泊まりもしている。
 夜の方が突入は楽と思われるが、昼は手下が出かけることもあるようで、意外に倉庫内が手薄になる可能性もありそうだ。
 うぅ、ううぅぅ……。
 おうち、かえりたい……。
 内部を探れば、そんな幻想種の子供達の声が聞こえてくる。
「うるせぇ、黙ってろ!!」
 だが、その声はゲドレの手下にとっては、煩わしさしか感じさせないらしい。
 その手下は、同じ場所にいた魔物……ラフィザースへと肉の塊を持ってきていた。
 シャアアアア……。
 魔物は嬉しそうに、その肉にかぶりつき始める。
 それを見てお腹を鳴らす子供達には、手下が固いパンをいくつか投げ込む。
 子供達は生き永らえる為とそれを口にするが、魔物とは違い、とても満足するような表情に見えない。あまりにパンが硬く、食べるにも咀嚼するのすら難しいからだろう。
「大人しくしてろ。ったく……」
 その手下はぶつぶつ言いつつ、その場を離れていく。
 もう少し状況を探れば新たな発見もあるかもしれないが、メンバー達は状況を身ながらも、突入のタイミングをはかりつつこの場は一旦引き上げることにしたのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 ラサの市場において流通している怪しげな紅血晶も気になりますが、頻発している幻想種の拉致事件も見過ごせません。
 奴隷商人によって商品にされかけた経験のあるアクアベルの願いを聞き届けてあげてくださいませ。

●目的
 幻想種7名の解放

●概要
 ラサの都、ネフェルストの外れにある石製の倉庫に突入します。
 倉庫内はいくつかの部屋に区分けされ、奥の部屋の檻に一人ずつ幻想種の少女5人と少年2人が囚われています。
 倉庫にはゲドレ一味の傭兵、盗賊も詰めております。ゲドレのペットであるモンスターもおりますので、お気を付けくださいませ。

●敵:悪徳商人ゲドレ一味
 下記は普段倉庫に詰めている人数です。
 突入のタイミングによって、傭兵、盗賊の数は増減します。

○傭兵×3体
 いずれも人間種男性。10代後半~20代くらいと思われます。
 戦場へと向かうこともあるゲドレの手下である男達。
 基本的には長剣、片手斧、メイスを使い、正面から敵をねじ伏せるのを得意としています。

○盗賊×3体
 いずれも人間種男性。傭兵よりは年上、30代くらい。顔や体に傷を負っているのが特徴で、ガラの悪い外見をしています。
 ジャンビーヤ、シャムシール、ククリを両手に持ち、素早さを活かした攻撃を行います。

○ペット:ラフィザース
 全長3m程。エリマキトカゲを思わせる姿をした魔物。
 砂上での運用も適しているらしく、2人程度なら騎乗も可能です。
 単身では、飛びかかり、食らいつき、強烈なキックを繰り出します。

○悪徳商人ゲドレ
 人間種40代男性。愛用する青龍刀で外敵を倒す肉体派である一面もあるとのこと。
 紅血石の流通を積極的に行っており、合わせて奴隷売買も手掛け、金の為なら人命をも軽視する外道です。
 今回、倉庫へと姿を現すことはありませんが、今回の一件が成功すれば、彼がイレギュラーズを警戒するのは間違いないでしょう。

●NPC
○幻想種×7名
 少女5名、少年2名。いずれも市場において需要があると言われる10代の美少女、美少年。
 戦闘能力はありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <昏き紅血晶>原石を収集する商人完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
雨紅(p3p008287)
愛星
マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
涙を知る泥人形
イスナーン(p3p008498)
不可視の
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
イズマ・トーティス(p3p009471)
誠の鋼に至る者

リプレイ


 ラサ首都、ネフェリスト。
 ここで起きている不穏な動きに、イレギュラーズは銘々に顔を顰める。
「この手の悪い人は尽きる事が無いのだわ……」
「こういう輩はどんな時にでも出てくるな」
 『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が表情を陰らせる横で、『泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)が虚空を見上げて。
「奴隷商人か……」
「まだ奴隷を扱う商人がいるなんて……」
 『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)の呟きに、『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が相槌を打つと、史之が続ける。
「美しい幻想種を奴隷に、か」
「見目が良く子供や戦う力の無い相手ならタイミングさえ合えば少ない労力で大金が手に入る素晴らしい商売ですね」
 一度は納得するような素振りを見せた『不可視の』イスナーン(p3p008498)だったが、すぐに頭を振った。
「それが違法であるということを除けば」
「以前も思ったように、彼らはたしかに奴隷としてはうってつけなのかもしれない」
 再び、史之が口を開く。
 幻想種は不老で長寿、見目も麗しいから売却時の値段もそこそこ高くて元が取りやすい。
 きっと、奴らはそこまでわかっていて、幻想種を拉致しているのだろう、と。
「ただでさえ、紅血晶騒動が起きているのに、拉致も頻発?」
 『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)はこれが偶然なら問題が2つあり、繋がりがあるのなら酷く厄介な理由がありそうだと分析する。
「兄弟機はラサにもいるので、彼が巻き込まれないうちに解決したいですね」
 雨紅が言っているのは、面倒な相手がこの事態に興味を持つ前に……ということらしい。
「ったく、人身売買だとか買い手がいるからこの手の輩が湧くのだろうけど、知ったからには見過ごせないね……」
「アクアベルさんにも思うところがあるようだし。俺としても力になってあげたい」
 呆れる『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)に史之がここでも相槌を打つと、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が同意する。
「人間の価値を都合よく利用するくせに、人間を粗末な売り物にする。本人の意志も無視して虐げる……」
 そんなの、許せるはずがないと、彼は力強く拳を握った。
「……助けるよ、必ず」
「非道な行いに手を染めている人達の思い通りにさせる訳にいかないよね。絶対に助けてみせるよ!」
 スティアも続き、語気を強める。
「大丈夫なのだわ……すぐに家族の元に帰れるからね」
 そこで、華蓮が静かに告げると皆、小さく頷く。
「それじゃあ、お仕事としようか」
 街外れにある問題の倉庫へと一行が戻ってきたところで、ラムダが皆へと呼びかけた。
 すでに、皆の準備は万全。
「人の姿をした獣たちには報いを受けてもらうとしよう」
「本人は居ないようですが、安易な金儲けがその身を滅ぼすことを教えて差し上げましょう」
 マッダラー、イスナーンが意気込みを語った後、メンバー達は幻想種救出作戦を決行し始めたのだった。


 問題の悪徳商人ゲドレの所有する倉庫は街外れにあるとはいえ、人目は避けられない。
 その為、イレギュラーズ一行は突入に当たって潜入班と陽動班に分かれることに。
「うちの子をお願いね。話しかけてくれたら伝わるのだわ」
 華蓮が差し出したのはカラスのファミリアー。史之のそれと合わせ、受け取ったのはイズマだ。
 そのイズマは自らのファミリアーを倉庫内へと先行させていた。
「助けを呼ぶ子供達……声が、聴こえる……」
「手下の数は3人。それに……ペットのラフィザースですね」
 人助けセンサーを使い、彼はおおよその位置を感知する。陽動作戦の前の雨紅もエネミーサーチでサポートする。
 なお、雨紅は罠が仕掛けられてないかもチェックするが、確認はできなかった。
 さらに、イズマは超聴力で子供達やゲドレの手下の位置も合わせ、倉庫の構造の把握に努める。
 まだ、内部に手下が残っており、それらが外に出るタイミングをスティアとラムダがじっと待つ。

 他メンバーは陽動班として、表でパフォーマンスを始めて耳目を集めることに。
 潜入班のアシストも行っていた雨紅が表に戻ったところで陽動班も動き始める。
「お急ぎでないのなら、ほんの少し、私の舞台を御覧ください」
 足を止めた観衆へと頭を垂れた雨紅はその場でステップを踏み、軽やかに舞う。
「BGMに泥人形のストリートビートはどうだ」
 その舞に合わせ、マッダラーが協奏馬らと共に熱砂を思わせる情熱的な音色を響かせる。
「素敵……」
「いいぞ!」
 街外れのはずだが、徐々に人が集まり、メンバー達のパフォーマンスに興じる。
 色気に誘われる手合いならと考えるマッダラー。相手は思った以上に単純だったようだ。
 倉庫から1人、また1人と姿を現す男達に聞き耳とエネミーサーチを働かせるマッダラーは、明らかにそれらが自分達を邪見に感じていることを察する。
「品の悪そうな観客がいるな」
 マッダラーの呼びかけに、男どもは舌打ちして武器を抜く。
 捕物劇の意味を把握した観衆達が活気立つ中、雨紅が一礼してその場から退場する。
 代わりに、出てくる他の陽動班メンバー達。
「東西東西、皆様方、これから始まる大捕物劇、どうぞ特等席でご覧になってください。踊り子さんへは、お手を触れないようお願いいたします!」
 高らかに声を上げた史之は、自分達と観客の間に距離を作る。
 まもなく始まる戦いに、イスナーンは身構えて影の如く残像を展開し始めていた。

 一方、潜入班。
 道具袋に用意していたパンが硬くなっていないことを、スティアは確認する。
(少しでも元気になって貰いたいしね)
 内部の様子を探る間、捕まっていた子供達がお腹を空かせていた事を知り、スティアは食べやすいパンを用意していたのだ。
「どうやら、全員外に出たようだな」
「子供達の救出、安全確保をしないとね」
 イズマの呼びかけに頷くラムダが五感を働かせ、手下が出ている隙にと闇の帳で気配を消す。
 そうして、ラムダがイズマと一緒に、物質透過で壁をすり抜ける。
 それと足並みを揃え、気配を遮断したスティアもまた忍び足でこっそり入り口から侵入したのだった。


 倉庫から飛び出してきたのは現状、ゲドレ手下の盗賊3体。中にいたラフィザースは出てきていない。
「散れ散れ、ここは見世物小屋じゃねえぞ!」
 小屋に注目されたくない盗賊らは大きく両手を振って観客を散らそうとするが、盛り上がったこの場の空気はそう簡単には冷めることがない。
「神妙にお縄に付いて、しっかり反省して罪を償うのだわ!! もっと真っ当に生きていきなさい!!」
 真っ先に祝詞を唱えて、稀久理媛神の加護を得た華蓮。
 これで、並大抵の相手からじゃやられないと確信する華蓮は前線に出て盗賊達の目を引く。
「傭兵のイスナーンです。相手になりましょう」
 名乗りを上げたイスナーンは残像を展開して敵を煽る。
 繰り出されてくるジャンビーヤ、シャムシール、ククリといった刃を、彼は素早い身のこなしで避けていく。
 だが、盗賊らも戦い慣れしており、イスナーンに追いついてその体に傷をつける。
 だが、2度目は間に入ったマッダラーによって遮られた。
「ここは派手に行こう」
 潜入組が気づかれぬようにするのが一番とはさすがに言わないが、マッダラーは敢えて目立つように立ち回る。
 続けて、割り込んできたのは雨紅だ。
 仲間に意識が向いていた盗賊へと雨紅は細剣を振るうが、彼女もまたさらりと盗賊の刃を躱す。
「こんな女を傷つけもできなんて、お優しいですね」
「ほらほら、君たち奥の手があるんだろ? いいんだよ、出してくれて。こっちはちゃんとお見通しなんだ」
「チッ、いい気になんじゃねぇぞ!」
 さらに、史之が盗賊らを煽り立てると、盗賊の1人が笛を鳴らす。
 ピイイイイイイイイイィィ!
 すると、倉庫内から足音が聞こえて。
 シャオオオオオオオオオオ!!
 すぐさま巨大エリマキトカゲ……ラフィザースが肉をくわえて姿を現す。
「これで貴様らをのしてやんぜぇ!」
 手下どもはこれで有利になったと気を良くするが、史之はまんまとこちらの策に乗ってくれたと小さく微笑むのだった。

 ラフィザースが外に飛び出したことで、潜入班は敵対勢力がいなくなった倉庫内を大胆に動く。
 なお、肉はイズマが先に入口へと誘導するように並べていたもので、ラフィザースがそれに気をとられている間にスティアが中へと入っていて。
「よく頑張ったね。助けにきたよ」
「…………」
「私も幻想種だから安心して大丈夫!」
 優しく呼びかけたスティアが自身の尖った耳を見せたことで、子供達は安堵し、泣き始める。
「「う、うあああああああん……」」
「助けに来たよ。君達を売り物にはさせない」
 弱った子供達は大声も出せぬようだったが、そんな彼女達へとスティアが医療技術で応急処置をする。
 衰弱は激しいが、今すぐ命に別状はなさそうだ。
 手当の間、ラムダが一口チョコを差し出し、励ましながらも落ち着かせる。
 ラムダは合わせて檻を開錠すると、スティアが子供達の手を引く。
「歩けるなら、先に脱出しよっか?」
 スティアが子供達を連れて外に出ようとしたのを、イズマが制する。
 下手に連れ出せば、人質にされてしまいかねない。
「でも、ここにはまだ敵がいるから……もう少しだけ辛抱してくれるか?」
 揃ってこくりと頷く子供達。
 ファミリアーの情報によれば、外には増援も駆けつけたらしい。
 子供達と接触できたならば、次は障害を排除するまでだ。


 倉庫の外、内部から飛び出したラフィザースと合わせ、この騒ぎに駆け付けた傭兵2人も戦いに加わっていた。
 獲物は片手斧とメイス。正面から飛びかかてくるそれらを、史之が抑え、茨の鎧でしっかりと返す。
 華蓮はそれら含め、神罰の一矢で個別に行動阻害を試みる。
 放つのが一本の矢でも、彼女は手数でカバーして敵を抑えんとする。
 元々、倉庫に詰めていた盗賊らは数名で対処を続けていた。
 抑え役メンバーに向けて素早く切りかかるそれらを、雨紅が翻弄する。
「こんな女を傷つけもできなんて、お優しいですね」
 比較的単純思考の盗賊らだ。怒り狂いながらも、刃を連続して振り回す。
 ラフィザースにはイスナーンやマッダラーが抑えに回る。
 2人は序盤、盗賊をメインに抑えていたが、ラフィザースの出現によってそちらへと回っていたのだ。
「私も一応爬虫類であるカメレオンの獣種なので、貴方の動きは良く分かりますよ」
 戦いの中で最適解を得ながらも、イスナーンは残像を展開して手数で攻め立てる。
 ただ、相手も彼を追い、しつこく食らいつく。
「トカゲの顎は脅威だな」
 マッダラーはラフィザースの侵攻を止めるべく、相手の夢想を現実にまで侵食させる。
 シャアアッ、シャオオオオオオオオ!!??
 徐々に夢想に己を侵されていたラフィザースは恐怖の為か、しばし混乱してしまっていたようだ。
 そこに、内部から出てきた潜入班が加わる。
 すでにファミリアーによって戦況を把握していたイズマ。
 予め自己強化していた彼は召喚したミニペリオンの群れを浴びせ、個別に異空間へと呑み込ませていく。
「「ぐあああああっ!」」
 激しく抵抗するゲドレの手下をスティアが抑えに回り、神の福音を響かせて周囲へと攻撃が向かないようにする。
「咎人に情状酌量の余地は無し……報いを受ける時間だよ?」
 それらへ、ラムダは殲滅の極光を浴びせかけ、追い込む。
 戦い慣れしているとはいえ、ゲドレの手下も相手が悪かったというべきか。
 観客を巻き込まぬよう配慮して立ち回る史之が纏めて乱撃を食らわせれば、盗賊1人が崩れ落ちる。
 立て続けに、雨紅も乱撃を浴びせかけ、また1人を地に伏してしまう。
「後で、聞きたいことがあるんでな?」
 この場では、イズマもまた手心を加えた魔術による一打で意識を奪い去った。

 その後はしばらく、イレギュラーズとゲドレの手下による交戦が続く。
 とはいえ、ゲドレの手下はラフィザースを入れても3体のみ。
 ローレットによる捕り物撃を見守る集客も多い中、劣勢を察した敵はこの場から離れようとするが、マッダラーの協奏馬が退路を断つ。
「ほう、確かに俺の協奏馬たちは商品としての価値があるだろうが、お前さんらにくれてやる道理はない」
 マッダラーは残る傭兵達へ、組技を仕掛けて態勢を崩そうとする。
 花吹雪のような炎を舞わせていたスティアは、ここぞと閃光を走らせて傭兵1体を卒倒させる。
「せめて、あなた達に罪を償う機会が与えられますように……」
 華蓮は赤棘の連弾を飛ばし、無数の棘弾を突き刺さった傭兵1体を倒してしまう。
 シャオオオオオオオオ!!
 折角の食事を邪魔され、苛立つラフィザースは気性荒く暴れ狂う。
「我、無念無想、無我の境地に至れり……」
 見た目以上にタフなこのトカゲへ、ラムダが零距離から魔力斬撃を刻み込み、雨紅が跳躍する敵の動きを読み切ってから確実に告知の一撃を叩き込む。
 シャオオオオオオオオオオオオオオオ!!
 一層暴れる敵へとイスナーンが残像と共に攻め入るが、襟で薙ぎ払うようにして喰らいついてきたラフィザースに彼は食われてしまう。
 僅かにパンドラをも砕かれてしまうが、気を強く持ったイスナーンが態勢を整え直す間に、華蓮が前に出て彼を庇う様に身構えた。
 マッダラーもまた庇う様に前に出て、そのまま攻める。
 相手の顎を脅威と感じていたマッダラー。実際、仲間に被害が出かけていたことからも証明済みだと感じる。
 それでも、マッダラーは敢えて相手の口の中へと腕を突っ込んで。
「悪くない顎の力だが、それがお前にとっての悪夢だ」
 そのまま、真下へと力をくわえたマッダラーはラフィザースの顎を砕いてしまう。
「!?!?!?!?」
 メンバー達の重なる攻撃に加え、その衝撃は非常に強いものであったらしく、ラフィザースは泡を吹いてその巨体を横たえたのだった。


 戦いの後、スティアが傷ついた仲間の手当てをしている間、数人のメンバーがゲドレの手下に尋問を行う。
「さあ、洗いざらい話してもらう」
 マッダラーが大元であるゲドレについて問いただす。
 口をつぐもうとする手下どもだが、マッダラーの問いかけに対してイズマがその思考をくみ取る。
 ゲドレはネフェリストに居を構えているそうだが、商談で国内だけでなく、混沌のあちらこちらを飛び回っているのだとか。
 幅広い商売を手掛けているゲドレだが、やはり表ではなかなか出回らない商材はコスパが良いと考えているのだろう。
 宝石などを多く販売しているそうだが、その流れで紅血晶の入手ルートを得て、小出しに頻繁に販売することで客を呼び寄せているという話だ。
「と、取引相手は知らねえ!」
 取引相手を知れば、横流しする可能性があるとゲドレは踏んだのだろう。
「白い粉の出処は?」
 続けてイズマが問うが、これも手下が知らず、運ばれてきたものを保管しているだけとのこと。
 結局、ゲドレは手下も信用していないということだろう。
「ならば、一層この倉庫に期待はできませんが」
 ゲドレ本人が常在していない倉庫だ。イスナーンはダメ元で捜査を行う。
 確認されたのは、価値が低めの宝石や原石、アクセサリー等の商品。
 それらに埋もれるように置かれていた錠前付きの箱。
 イスナーンはワイズキーでそれを開錠し、箱を開くと。
「……アンガルカ、ですか」
 それは、相手を昏睡させる白い粉。
 利用価値が高い為か、厳重に管理されていたということだろうか。

 また、メンバー達は保護した幻想種のケアも欠かさない。
「よしよし……怪我はないかしら……?」
 すっかり怯えてしまっていた子供達の頭を、華蓮が優しく撫でる。
「頑張っただわね……えらいえらい……良い子良い子……もう大丈夫なのだわよ」
「ふえええ…………」
 母性を感じさせる華蓮に安心した子供の中には泣き出す者もいた。
「よく頑張ったな」
 イズマが温かい食事を差し出す横から、スティアがパンを差し出す。
 子供達はそれらを頬張り、美味しそうに咀嚼する。
 マッダラーはそんな子供達を怖がらせないよう距離をとり、演奏を始めた。
 それは、幻想種達が慣れ親しんだ曲。
 食事中にもかかわらず、子供達は体を揺らして口ずさんでいた。 ゆっくりと子供達が食事をとり終えたところで、メンバー達はゲドレの倉庫から子供達を連れ出す。
「後は親元へと連れて行かないとね」
「迷宮森林まで行けば、森林警備隊がいるだろう」
 ラムダ、イズマは仲間と協力しつつ深緑の入り口付近にまで子供達を連れていき、故郷へと帰ることができる様手配することにしたのだった。

成否

成功

MVP

マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
涙を知る泥人形

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはラフィザースを討伐した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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