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シナリオ詳細

<咬首六天>ウンターブリンゲン要地

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●情報と価値
 ウンターブリンゲン要地。元は小さな村に過ぎなかった場所を物資輸送の中継地点として改造した場所である。
「ファミリアーによる航空偵察によれば、周囲を木製の壁柵によって囲まれ三方向に見張り台が作られているらしい。飛行可能な兵もいくらかおり、偵察に出したハトもすぐに見つかり撃墜されてしまった。だがまあ、数秒だけでも偵察兵はキッチリ記憶しているからな、そこから得られる情報は有効活用しようってわけだ」
 ダヴィート・ドラガノフはそこまで語ると、手書きの地図をトンと指で叩いた。
 その隣で腕を組んでいるのは『要塞卿』ディートリヒ・フォン・ツェッペリン。目を瞑っていた彼だが、場に流れた数秒の静寂に気付いて片目を開ける。
 静寂の中で最初に発言したのはグレン・ロジャース(p3p005709)だった。
「つまり、ここを襲撃して物資を強奪しようって作戦なのか?」
「平たく言うとそうなるな」
 ディートリヒのあっさりとした回答に、グレンが『そうかあ』と微妙な反応を見せる。
 それは当然だろう。シラス(p3p004421)たちに協力を求め、その見返りとして自分達からの協力を提示してきたダヴィートたち。大してシラスは革命派に足りていない物資の情報を軍から引き出すよう求めた。
 その結果出てきたのが、このウンターブリンゲン要地の情報なのである。
「わかるぜ。南部軍が自派閥内の物資をこっそり持ち出すなんてことはできないし、仮に秘密の貯蔵庫があったとしてもそれは自派閥のためにつかわないといけない。
 だったら、敵対派閥……それも『共通の敵』から奪う情報を持ちかけるのは妥当だよな」
 グレンの整理した理屈を聞いて、シラスは「まあな」と応えた。
「ダヴィート、最初からこれ狙いだっただろ?」
 続けたシラスの質問に、ダヴィートは肩をすくめるという回答をした。
「言ったろ、協力するって。今回の襲撃には俺たちも加わるつもりだ。俺は勿論、あの『要塞卿』もついてくるんだぜ。破格の援軍だろ?」
 そんなに破格か? という意図の視線をグレンに向けると、グレンが自信をもった目で頷き返す。
「なんせ俺の師匠だ。守りは鉄壁。歩く壁がもう一人味方にいると思っていいぜ。拠点襲撃にはもってこいの人材だろ?」
 確かに、拠点襲撃はどうしても相手のホームで戦うことになる。ファミリアーの偵察すら見つかったくらいなのだから、気配を消して近づこうとしてもバレるだろう。こちらが攻撃可能な状態にはいるまえに集中砲火を受けるなんてことはさけたいし、A級の強さを持つシラスであってもその状態になれば危ない。
「わかった。物資が手に入るなら是非はないな」
 やろうぜ、とシラスたちは早速作戦を立てるのだった。

 ウンターブリンゲン要地は先述したように木の壁で囲われた小さな村だ。
 物資輸送のために門が設けられているが襲撃を察知した彼らが開けるとは思えない。
 更に見張り台が設置され、一羽のハトですら見逃さず撃墜するほどの鋭敏ぶりだ。
 つまりこの要所を落とすには、敵による先制攻撃は避けられず、その上で壁を素早く乗り越えるだけの作戦を立てなければならないことになる。
 例えば以前シラスが行ったような集団への飛行状態付与も有効だし、物質透過や高い跳躍能力を使った突破も有効だろう。普通にハシゴをかけて急いで登るという作戦だって有効である。
 そしてそれらを使うための防御要員がいると尚よく、グレンとディートリヒはそのためにかなり頼れる仲間となるだろう。
「問題は内部へ乗り込んだ後だな。拠点を防衛するために兵だけでなく強力なモンスターも配置しているらしい。偵察兵は一瞬だが『恐竜のようなもの』を見たと言っている。反撃には充分注意してくれ」
 ダヴィートは最後にそうつけくわえた。
 この作戦が成功すればそれなりの物資が手に入るだろう。俄然、やる気が湧くというものだった。

GMコメント

●オーダー:ウンターブリンゲン要地の襲撃と占領
 新皇帝派の物資輸送の中継地点として多少の物資が残されているウンターブリンゲン要地。
 ここを襲撃することで物資を獲得し、かつ新皇帝派にダメージを与えましょう。

●作戦
・前半:拠点への接近
 壁に囲われた拠点へ接近をしかけます。
 敵からの先制攻撃をうけるため、まずは防御を固めるとよいでしょう。
 そして壁を素早く乗り越えるための手段も必要です。

・後半:拠点内での戦闘
 敵兵及びモンスターとの戦闘です。
 強力なモンスターが配置されているらしいので、手痛い反撃をくらわないように注意しましょう。

●味方NPC
 二人の味方がこの作戦に参加します。
 どちらも南部戦線ザーバ派の軍人ですが、取引により今回は革命派の作戦に協力してくれています。

・『要塞卿』ディートリヒ・フォン・ツェッペリン
 防御に関して特に秀でた能力をもつ南部軍の戦士です。
 二つの対象を同時に【かばう】対象に選択する事が出来ます。

・ダヴィート・ドラガノフ
 ベテランの軍人です。戦いに対しては柔軟に対応できるらしく、味方の戦闘スタイルに応じて戦い方を変えるつもりのようです。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <咬首六天>ウンターブリンゲン要地完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年01月25日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
シラス(p3p004421)
超える者
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

リプレイ


「南部戦線を離れてよそへ協力というのも、たまには悪くない。いい気分転換だ」
 よく通る低い声が冷たい大地に響く。
 『要塞卿』ディートリヒ・フォン・ツェッペリンは馬車から降り、首をこきりと左右に傾けるように動かした。
「それがあのグロース師団への嫌がらせとくれば、なおのこといい。準備はいいか、グレン」
「ああ。砲火に晒されながらの強襲、強硬突破は盾役の華ってな」
 『理想の求心者』グレン・ロジャース(p3p005709)はニッと笑ってディートリヒの横に並ぶ。
 こうしてみると師弟の関係がよく分かる。構えが似ているのだ。グレンはディートリヒほどの頑強さはまだないが……。
「敵はこっちの都合を待っちゃくれねぇ。今持て得る限りの全てを尽くす、それこそが負けねぇ戦いってな。
 勝ち取るより守り抜く方が難しい。
 だからこそ、この聖剣と聖盾はある。降りしきる試練を、この身で受けて……跳ね除けてやるぜ」

「揃ったな」
 ダヴィート・ドラガノフに言われ、『竜剣』シラス(p3p004421)は肩をすくめた。
 ローレットのイレギュラーズはランダムマッチアップが基本。隊列を組んだり点呼を取ったりはあまりしない。
「ウンターブリンゲン要地ってのは、あれだな?」
 シラスが指さすと、木の壁がずらりと並ぶ風景が見えた。
 壁はそこそこに高く、よじ登るには苦労しそうだ。
 ダヴィートは頷き、指揮者のように小さく手を翳した。
「この前使った飛行の術式はまだあるか? あれがあればすぐに壁を越えられる」
「『飛魚の陣』な。レンジ2範囲内なら一度に付与できる。と言うか、ダヴィート。このために……」
 続きは言わずもがなである。シラスはまあいいかと仲間達の様子を見る。
 馬車から降りてきたのは同じ革命派に属する『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)である。
「例え敵とはいえ襲撃して物資を奪うってあまり好きではないのだけど、あの腐れ将軍の鼻っ柱を殴りつけられるのならまぁ仕方ないわね。
 それに、他派閥の人と協力し合えるのは良い事だわ」
「兵站攻めの為の拠点攻めじゃーい! 皇帝派が嫌がることを率先してやる秋奈ちゃんなのであった!」
 あとからぴょんと馬車からとびおりる『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。
 しゅっしゅと拳を振る動きは実にノリノリであった。
「あっ、焼き討ちしよ焼き討ち。私火炎瓶投げたい!」
 ヘイパス! と言って振り返り手を翳すと、空っぽの瓶を振る『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)がいた。
「もうありませんわよ」
「途中で飲んじゃったんだ」
「焼き討ちはやめておきましょう」
 拠点を抑えるのだ。燃やしてしまうと今度は維持する力が弱まる。
「しかし……私達が物資を奪うことで飢えてしまう人もいるのでしょうか」
「かも、しれないわね」
 ゼファーはそう同意したものの、頭の片隅では別のことを考えていた。
 新皇帝派が冬に入ってからあちこちで接収という名の略奪をしかけていることは知っていた。この要地におさめられている物資もそうしてうまれたものだとすれば、新皇帝派の脅威から逃げた難民たちの所に巡り廻って帰るだけだとも思えたのである。
 『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)がひいてきた馬車から自分を結んでいた縄をはなし、ぐいっと背伸びをして戦闘態勢をとる。
「物資だけいただいてトンズラすんのかと思えば、拠点まるごと横取りたぁ、欲の深いもんだぁな。つか、この拠点奪って使いモンになるのか?」
「目的は使うことではなく『使わせないこと』と見た」
 雪道のスリップをさけてか、ワイバーンの風花に騎乗していた『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)がゆっくりと降下してくる。
「中間地点を落とすと、その末端まで物資が届かなくなる。別ルートをとるにも苦労するだろう。効率的な打撃だな」
 エーレンが顎を撫で、納得したように頷く。
 それまで祈るような姿勢をとっていたヴァレーリヤが、歩き出す。
「頑張りましょう。私達が守るべき人達のために」
「「ああ」」
 どんな理屈を並べたとて、目的は同じ。
 ウンターブリンゲン要地への襲撃作戦が、開始された。


「敵襲!」
 超人的視力を持つ物見の兵が叫ぶや否や、襲撃を知らせる鐘が打ち鳴らされる。
 簡易飛行装置を装備した鉄騎種の兵たちが高台へと飛び乗り、ボウガンやライフルを構え狙いを付けた。
 彼らにまず見えたのは立派な盾。それも、二つだ。
「いけるかグレン」
「大丈夫だ、『要塞卿』」
「よし、機動力を仲間に合わせろ。俺は四つ。お前は五つだ。先行しろ」
「了解!」
 ディートハルトに言われ、グレンは盾を前面に構えたまま走った。
 彼に狙いをつけ、矢を放つ敵兵。盾を斜めに翳すことで側面に受け流したグレンは、走る速度をゆるめずに叫んだ。
「磨き上げた絶対の防御と、災厄にすら抗う力は、誰より先に、誰より前で!身命を賭して痛みを背負う覚悟……!
 シラス、俺の後ろに入れ! 攻撃と付与を頼む!」
 グレンの後ろにその比較的小柄な身体を隠すと、シラスは『飛魚の陣』を発動。グレンが同時にかばっていたダヴィート共々宙を走るように飛行し始める。
「上手いこと使われた気がしなくもないな!」
 シラスは苦笑すると『エビルストリング』を発動させる。目に見えない糸を放つ遠距離術式だ。まず一人目の首に魔術の糸が絡みついたと思いきや、周囲に蜘蛛の巣の如く拡散する。
 巻き込まれ絡まった兵がもがくその間に、シラスたちはいち早く高台へと飛翔した。
 ダヴィートが円を描くように射撃を放つその隙に、後方からゼファーが勢いよく駆けてくる。
「ドアもありませんし、上から失礼ってことで」
 自身が担ぐ槍とは別に市販品の安い槍を構えると、木製の壁めがけて投擲する。
 古代ローマがそうであったように、木の棒に鉄のナイフをつけただけの槍であっても凄まじい腕力で投げつければ人間を貫通する。木の壁に突き刺さるなど容易であった。
 ゼファーはそんな槍を足場にして更に跳躍すると壁を駆け上がり高台へと到達。
 研ぎ澄まされた陸上選手の如きその動きに兵たちが唖然とする中、ゼファーはやっと背負った槍を手に取った。そして、片眉をあげる。
「ああ、歓迎パーティーは慎ましいもので構わないわ?」

 高台から兵が転げ落ちてくる。ゼファーたちが暴れているのだ。
 壁を用いた防衛戦にとって迎撃の優先順位は最初に壁を上られたもの。次にハシゴをかけようとするもの。最後に遠いものである。
 兵たちが必死に先行したチームを突き落とそうと襲いかかる中で、ヴァレーリヤは木製のハシゴを抱え突っ走った。
「ディートリヒ、梯子を設置する間、守って頂いてもよろしくて?」
「無論!」
 ディートリヒを文字通り盾にすると、ヴァレーリヤは加速。充分に速度が乗ったところでディートリヒの影から飛び出し、地面にハシゴを突き立てるとその勢いのまま駆け上がった。
 壁にかかったハシゴの上を勢いよく駆け上がる。先端にフックのついたはしごはそう簡単に壁から離れず、焦ってそれを壊そうと斧を翳す塀めがけてライフルによる射撃がとんだ。
「うおっ!?」
 兵が振り上げた腕が銃弾によって弾かれ、斧が彼の後方へ飛んでいく。
「悪ぃが邪魔はさせねえよ」
 勇猛な馬のごとく走るルナ。その腕には古いウッドストックライフル。
 頬にストックをつけるようにして構えた彼の射撃は正確に相手の腕を抜いていた。
 それだけではない。前足で強く『空中』を踏むと、そのまま天へと駆け上がっていく。
 その異様はさながらサンタクロースのソリをひくトナカイのようだが、敵兵たちの誰もそんなファンタジックな感想を抱かなかった。なぜなら、飛び上がり射線がとれた途端にルナはライフルに連射の魔法をかけ右から左へ流すように撃ちまくったためだ。
「ファミリアーの鳩なんざといっしょにすんなよ。ガチの飛行種以外にゃ、そうそう負けるつもりはねぇぜ」
「捕まって下さいまし、引き上げますわっ!」
 その隙に高台まで駆け上がったヴァレーリヤは、兵の一人をメイスで殴り落とすと後続のリアへ手を伸ばす。
「あたしは庇ってもらう必要なんてないわよ。こう見えて結構頑丈なので」
 カバーにまわろうとするディートリヒにそう告げると、上から伸ばされたヴァレーリヤの手を掴みつつハシゴを急いでよじ登った。
 シラスによって事前に付与された飛行も充分つかえるが、さすがに垂直な壁を飛び上がっている間を狙われれば防御にも不安が出るものである。できるだけ足場を伝うようにしたまでだ。
 そこまでくると、周囲の兵たちが一斉に襲いかかってきた。
 軍刀を抜いた兵が左右から跳躍し同時に斬りかかってくる。それをヴァレーリヤはメイスで、リアは星鍵でそれぞれ防御した。至近距離から放たれた炎の魔法が直撃するが、リアが空いた手を開いて放った治癒のフィールドがダメージを相殺する。
 リアの高い治癒力を間近で見た敵兵がそのこわもてな顔に緊張をはしらせた。『堅いヒーラー』は厄介な存在だ。単に倒しづらいというだけではなく、指揮官にとって攻撃する優先順位をかなり迷わせる存在になる。そして指揮官が迷う材料が多ければ多いほど、指揮能力に負荷がかかり連携が乱れるのである。
「いいこと考えた!
 剣をぶんぶんしながらいけば、いい感じに行けるのでは?
 剣をクロスさせてイヤーッ! っていけば、いい感じに行けるのでは?」
 秋奈はそんなテキトーなことを叫びながら、あろうことか壁に対して垂直に立っていた。飛行術式が効いているせいなのだが、長い髪が地面に向かって垂れるせいでなんとも奇妙ないでたちだ。
 ぎょっとした顔の敵兵たちがライフルを向けてくるので、ぴょんと横向きに飛んで射撃を回避。
「ぎゃー! 多いー! ぷちょへんざ!」
「余裕そうだな……」
 エーレンは(ぱっとみ遊んでいるように見える)秋奈を一瞥しつつ、塀に向かって思い切りダッシュした。
「ん、なんだあいつ!?」
 猛然と走るエーレン。敵兵がライフルの狙いをつけた時には、彼は壁を垂直に走る形で駆け上がっていた。
 最後に高台の淵にしっかりと手を付けると、素早く高台へと這い上がった。いわゆるフリーランニングの登攀方法なのだが、エーレンがそれらと異なるのは既に片手に剣を抜いていることだ。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ! どうやら俺達のために物資を溜め込んでくれていたようだな、感謝するぞ!」
 銃の射程の内側に入られたと察して敵兵がナイフを抜くよりも早く、エーレンの刀が敵の足を切り取っている。
 かと思えば、いつのまにやら上ってきていた秋奈が兵の胸を剣で突いてトドメをさしていた。
「えーんお姉ちゃーん! まもってー!」
「遊んでないの」
「えー」
 ゼファーに言われ、秋奈が頬を膨らませる。外見的にはゼファーが圧倒的に年上に見えるのだが、秋奈と同じか、あるいは秋奈のほうが年上である。永遠の16歳であると仮定すれば年下になりえるのだが。
 こうして全員が高台へと至り、そのまま壁の上の兵を倒して村の中へと飛び降りる。
 迎え撃つように現れたのは、装甲を纏ったティラノサウルスレックスのような天衝種たち。
「入っちゃったらもう暴れるしかないな! 物資を全部いただいていくぜぇ野郎共ー!」
 秋奈は刀を構え、天衝種へと突進した。


「三枚におろしてやるぜ!」
 秋奈が真っ先に相手にしたのは集まってきた敵兵たちであった。
 魔法がカーブした軌道を描いて飛来する中をまっすぐ突き進む。正面から斬り込んだ鉄鎧の兵と刀をぶつけ合い、秋奈はその勢いのまま相手を突き飛ばした。
「ゼファーパイセンのかっこいいとこが見たいぜ! 私ちゃん? 私ちゃんはかわいくしとく!」
 いつもの軽口だが、要するに敵を引きつけておくので倒すのは任せた、というシグナルである。
 ゼファーははいはいと手を翳すと、周囲を取り囲む兵たちを見回した。
「ローレットのゼファーに、秋奈か……大物だな」
 囲んだ中から一人歩み出たのは短剣を両手に握った小柄な男だった。
 細身でかつ軽装。周囲の鎧を着た軍人たちと比べれば一見弱そうに見えるが、ゼファーたちは油断しなかった。こういう状況でリラックスした姿勢のまま前に出てくる奴に雑魚はいない。
「ちっと遊ばせてもらうか。一騎打ち……とか言うなよ?」
 男は凄まじい速度で走ると、ゼファーと秋奈の頬に一筋の傷をつくってから背後へと通り過ぎる。
 高速移動と斬撃。ゼファーたちでも見えなかった。
 直後に周囲の兵が一斉に射撃を仕掛けてくる。銃弾と魔法による集中砲火に晒され、秋奈は踊るように二本の剣を振り回す。
 そこへ男による再度の高速斬撃が走った――が、今度ダメージを受けたのは男の方だった。
「がっ!?」
 空中で反転し、剣を手放し地面を転がる。
「避けられないし見えないなら――『置いて』おけばいい、ってね」
 ゼファーが後方に伸ばすように突き出した槍の先端に真新しい血が垂れている。

「あたしの技には、防御なんて無意味――!」
 鋭く突き出したリアの星鍵が装甲へとぶつかったその瞬間、キィンという金属音の残響が短い音楽を奏でた。
 それがただの『突き』でないことはその場にいた誰もが知っている。なぜなら、リアの放った細剣から精霊の力が放出され、装甲を無視して相手の身体を貫いていったのだ。
「――!」
 さすがに攻撃がこたえたのか、恐竜型の天衝種が後ずさる。
 が、倒し切れている様子はない。咆哮を上げたあと、喉をカッカッと鳴らした。
「結構タフね」
「この外見、以前戦った『ギガレックス』に似てますわね。確かあれは……」
 ヴァレーリヤは己の記憶をサッと探ってから、何かに気付いたようにすぐそばのディートハルトとグレンに呼びかけた。
「防御を!」
「む!」
「了解!」
 すぐに反応し盾を翳すディートハルトとグレン。
 ほぼ同時にギガレックス亜種から激しい炎が放出された。
 熱と暴風。そして圧力。
 吹き飛ばされそうになりながらも、グレンは地面に剣を突き立て攻撃を受け流す。
 ディートハルトは大したもので、盾を構えたその場からまるで微動だにしなかった。
 その横顔を見て、グレンは力を振り絞った。
(護るのはこの場にいる味方だけじゃねぇ。
 強さの証明ってのは、命のやり取りなんかでするもんじゃねぇ。
 次こそは勝つ!その思いが人をより強くするんだ。
 戦いを娯楽とできる、闘技場と闘士を愛するアーデルハイトの想いを、そしてその下地を作るディートリヒの護る平穏を、更に護る為に。
 ツェッペリン式で鍛えられた防御の技は伊達じゃねぇ。背負った者の重みを力に変えてみせるぜ!。
 クソみてぇな人生を送ってきたんだ……今更似たような誰かを見て、思い出したくもねぇんでなぁ!)
 気合いで攻撃を耐え抜くグレン。
 まさか必殺の炎が防ぎきられると思わなかったのか、ギガレックス亜種はハッと目を見開く。
 ヴァレーリヤはすかさずその影から飛び出すと、炎の壁を通り抜けて急加速をかけた。
 ギガレックス亜種の足元でザッとブレーキ。
 内角内側へのボールを打ち返すバッターの勢いでメイスを低く振り込む。
「どっせえーーい!!!」
 足に直撃したメイスが爆発的な威力を放ち、装甲へと多段ヒットを仕掛ける。堅い装甲が割れ、ギガレックス亜種はその場に派手に転倒した。
 そうなればしめたものである。シラスは自らを魔術によって加速させると、超反応によってギガレックス亜種の周囲を高速でジグザグに往復した。
 青く霞むような魔力の糸が幾重にも重なり、シラスが掲げた拳をぎゅっと握ると同時にそれらが一斉にギガレックス亜種を締め付ける。
 あれほどタフだったギガレックス亜種が血を吹き、そして動かなくなった。
「見事なもんだ。やっぱり、『リヴァイアサン』の頃から腕を上げたな」
 ダヴィートがそんな軽口を叩き、シラスに向き直る。
 そうしている間にも銃で遠くの兵の足を撃ち抜いているのだから抜かりがない。
「強敵はこのくらいか?」
「ルナとエーレンが逃げた敵を追ってる。あっちは……」

 話に出たルナとエーレン。
 彼らは特出した機動力を活かして村の反対側まで走ると、逃走中の敵の追撃を行っていた。
 というのも……。
「相手もバカじゃねぇだろ。要所拠点を敵に奪われるよりはっつーんで自分等で破壊なり火を放つなりする可能性もある」
「それを阻止して損耗を抑える、というわけか。考えたな」
 オイルタンクを蹴倒したいまつを手にした男を見つけると、エーレンが素早く駆け寄りたいまつを蹴りつける。はるか遠くへ飛んでいったたいまつを『あっ』と言いながら振り返る男を更なる動きで斬り付けると、エーレンが高台を指さした。
「火矢だ」
「任せな」
 エーレンが言うとおり火矢を射かけようとした弓兵がいたが、ルナのライフルによって撃ち抜かれ転落していく。
「一丁上がり」
 ルナはライフルを肩に担ぐと、命惜しさに逃げていく兵を見送ったのだった。
「さて、いただいた物資をおがむとしますか……」

成否

成功

MVP

ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す

状態異常

なし

あとがき

 ――要地の攻略に成功しました!
 新皇帝派が周囲から奪った物資が運び込まれていたようです。
 物資は革命派キャンプに持ち帰られ、難民へ配られます。

●運営による追記
 本シナリオの結果により、<六天覇道>革命派の生産力が+30されました!

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