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シナリオ詳細

<大乱のヴィルベルヴィント>空駆ける武装要塞

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●列車砲確保を阻止すべく
 部屋の中央にある机の上に、鉄帝の地図が広げられている。その地図を眺めるエカチェリーナ・ミシェーリは普段にも増して冷たく、厳しい表情をしていた。配下の将校は、萎縮しつつただエカチェリーナの言葉を待つばかりである。
「――ついに、南部戦線の者共が列車砲を手に入れようとしている。由々しきことだ」
 静かに、冷たく、エカチェリーナが告げた。
 バーデンドルフ・ラインを拠点とする南部戦線ことザーバ派は、今やゲヴィド・ウェスタンの攻略に至らんとしていた。その最大の目的は、ゲヴィド・ウェスタン駅にある列車砲である。当然、新皇帝バルナバスに与するエカチェリーナら新皇帝派としては、ザーバ派による列車砲の確保は阻止したいところだ。
「南部戦線の者共に列車砲を確保されるぐらいならば、破壊する。そのために、私が出るのはもちろんとして――」
 エカチェリーナは、目の前の将校達をぐるりと見回す。そして、問うた。
「別働隊として、『コランバイン・ウェポンコンテナ』を迂回させ派遣する……我こそは、と言う者はいないか?」
 『コランバイン・ウェポンコンテナ』の単語に、将校達はざわめいた。コランバインとは、エカチェリーナらが開発中の試作型パワードスーツだ。そのコランバインと武器庫としてのコンテナを一体化して運用しようというのが、『コランバイン・ウェポンコンテナ』である。
 コランバイン自体が希少であり、ウェポンコンテナに至っては輪をかけて希少だ。当然、コランバイン・ウェポンコンテナを運用して別働隊となる者の責任は重大であるが、一方で、この任を成し遂げればその武功は大きなものとなる。
「その任、ぜひ私に!」
「いえ、私めに!」
 次々と将校達が名乗りを上げる中、エカチェリーナは一人の青年将校、ウラジミール・ウラノフを選んだ。
「ウラノフ大尉。この任、貴様に任せよう」
「ははっ、ありがたき幸せ!」
「我々は北より、ゲヴィド・ウェスタンに迫る。だが、我々は南部戦線の者共によって止められよう。
 貴様は西へと大きく迂回し、南部戦線の者共の目がこちらに向いているうちに、ゲヴィド・ウェスタンを急襲せよ」
「ははっ!」
 ウラジミールは恭しく頭を下げ、重大な任務を受けた栄光を噛みしめた。

●発見された編隊
 だが、西からゲヴィド・ウェスタンに迫らんとするウラジミールと天衝種の編隊は、銀の森のローレット支部付近を飛行している際に、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)やその場に居合わせているイレギュラーズ達に発見されていた。
 エカチェリーナはアーカーシュの所在を認識している一方で、銀の森のローレット支部の所在は認識していない。そのため、西からの方がウラジミールらの編隊が発見される可能性が低いと判断し、ウラジミールに西からの迂回を指示した。だが、その判断が災いしてしまったのである。
「ゲヴィド・ウェスタンの北方から新皇帝派の軍が迫っているのは聞いていましたが……もしや!」
 先のシレンツィオを巡る戦いで陽動策を用いたばかりだったこともあり、勘蔵はエカチェリーナの目論見を察した。北からの軍はザーバ派の注意を引き付ける陽動であり、その隙にゲヴィド・ウェスタンへと東進するこの編隊こそが本命だと。
「ええい、面倒を増やしてくれますね……!」
 北からの軍勢を迎え撃つ依頼に参加してくれるイレギュラーズを募りに支部に来たところで、よもや本命たる編隊を発見することになろうとは。だが、そうも言っていられない。列車砲を手中にするための、ゲヴィド・ウェスタン攻略作戦はもうすぐ始まるのだ。
 ましてや、コランバイン・ウェポンコンテナは地上から見ても武装要塞としての性質を感じさせる。もしこんなものがゲヴィド・ウェスタンに至ってしまえば、ゲヴィド・ウェスタン攻略作戦は滅茶苦茶にされ、列車砲も破壊されてしまうだろう。
 勘蔵は急ぎ、この編隊を迎撃するザーバ派からの依頼を取り付けて、その依頼に参加するイレギュラーズ達を募った。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は全体シナリオ<大乱のヴィルベルヴィント>のシナリオをお送りします。
 ゲヴィド・ウェスタンの列車砲をザーバ派に確保されるわけにはいかないと、エカチェリーナが動き出しました。このシナリオでは、そのうち本命として動いているウラジミールらとの戦闘を扱います。
 列車砲を守るため、ゲヴィド・ウェスタンに迫るウラジミールを撃破して下さいますようお願いします。

●成功条件
 ウラジミールの撃破

●失敗条件
 ウラジミールの、ゲヴィド・ウェスタンへの突破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ゲヴィド・ウェスタン西方の平原。天候は晴天。時間は昼間。

 ウラジミールが駆るコランバイン・ウェポンコンテナも、取り巻きの天衝種も飛行するため、飛行スキルか長射程の遠距離攻撃手段の用意を強く推奨します。

●ウラジミール・ウラノフ&PSPJ02WC『コランバイン・ウェポンコンテナ』 ✕1
 ウラジミールはエカチェリーナ麾下の新皇帝派鉄帝軍大尉にして、憤怒の魔種です。今回、エカチェリーナが北からザーバ派の注意を引き付けている間に、西から大きく迂回してゲヴィド・ウェスタンを急襲し列車砲を破壊すると言う任務を帯びています。
 コランバインはエカチェリーナが開発している、全高四メートルほどのロボのようにも見える試作型パワードスーツです。これに、様々な外部武装を武器庫ごと一体化させ、一種の機動武装要塞として運用しているのが『コランバイン・ウェポンコンテナ』です。
 ウェポンコンテナとそれに付随する各武装のうち、外部に露出しているものはそれぞれ耐久力を表わすHP(以下、外部HP)を有しており、武装の外部HPが0になったらその武装は使用不可となります。
 また、このコランバインは、ウェポンコンテナ装備時とウェポンコンテナのパージ時によって能力が変わります。基本的には、ウェポンコンテナ装備時の方が使用武装や特殊能力の面で有利になるため、敢えてウェポンコンテナをパージして運用することはありません。ウェポンコンテナをパージした場合、ウェポンコンテナ装備時よりも回避とEXAが大きく上昇します。
 なお、外部HPを有する装備はそれなりに大きいため、装備狙いによる命中へのマイナス補正は入りません。ただし、ウェポンコンテナ装備時にはコランバイン本体は頭部と肩部・腕部以外はウェポンコンテナの中にずっぽりと納まってしまうため、ウェポンコンテナ装備時のコランバイン本体への攻撃には命中にマイナス補正が入ります。

・攻撃能力など(ウェポンコンテナ装備時)
 大型メガビーム砲 神超貫 【万能】【防無】
  機体右側に、槍のように長い砲身の大型ビーム砲が据え付けられています。外部HPを有します。
 零距離メガビーム砲 物&神超単 【移】【防無】
  敵に突撃して、メガビーム砲の砲身を叩き付けるように押しつけてから、ビーム砲で攻撃します。
  砲身による物理ダメージとビームによる神秘ダメージが入るため、物理無効もしくは神秘無効の結界を展開していても、無効化していない方の属性のダメージが本来の半分だけ入ります。
  大型メガビーム砲が破壊された場合、この攻撃は行うことが出来なくなります。
 メガビームサーベル(✕2) 神近単 【弱点】【邪道】
  ウェポンコンテナの大きさに応じた巨大なビームサーベルです。展開用のマニュピレータ(左右1基ずつ)を攻撃することで外部HPを減らすことが出来ます。
 バズーカ(✕2) 物遠単 【追撃】【邪道】
  基本的にウェポンコンテナ内に収容されているため、ウェポンコンテナ自体を破壊しない限り使用不能とはなりません。
 マイクロミサイルポッド 物特特 【識別】【多重影】【変幻】【弱点】【鬼道】【火炎】【業炎】【炎獄】【紅焔】
  ウェポンコンテナから多数のミサイルが据え付けられている大型ミサイルポッドを放出し、そこから戦場全域を覆い尽くすように敵に向けて無数のミサイルを豪雨の如く放ちます。
  威力、範囲共に絶大ですが、ミサイルポッド自体が大きくウェポンコンテナ内のスペースを食っており、4回までしか使用できません。
  基本的にウェポンコンテナ内に収容されているため、ウェポンコンテナ自体を破壊しない限り使用不能とはなりません。  
 マインワイヤー 物遠単 【変幻】【弱点】【火炎】【業炎】
  爆薬を仕込んだワイヤーを放って敵を絡め取り、ワイヤーに仕込んだ爆薬を爆発させてダメージを与えます。
  基本的にウェポンコンテナ内に収容されているため、ウェポンコンテナ自体を破壊しない限り使用不能とはなりません。 
 対神秘攻撃フィールドジェネレーター
  機体左側に据え付けられている、近距離以遠からの神秘攻撃を無効化する力場を展開するジェネレーターです。外部HPを有します。
 メガブースター
  コランバイン・ウェポンコンテナの回避と機動力にプラスの補正を加えています。外部HPを有します。
 EXA判定自動失敗
  ウェポンコンテナの火器管制がピーキーすぎるため、ウェポンコンテナ装備時のウラジミールのEXA判定は自動失敗します。故に、ウェポンコンテナ装備時のウラジミールは1ターンに1回しか行動できません。
 BS無効(【怒り】を除く)
 【封殺】無効
 飛行

・攻撃能力など(ウェポンコンテナパージ時)
 ビームサーベル 神至単 【弱点】
 薙ぎ払い 神至範 【邪道】
 ビームライフル 神遠単 【邪道】
 シールド
 自爆装置

・【怒り】を受けた場合
 ウラジミールが【怒り】を受けた場合、【怒り】を与えたキャラクターに接近するとは限りません。距離を問わず【怒り】を与えたキャラクターを対象としつつ、それ以外の敵を出来るだけ多く巻き込めるように動きます。
 なお、何らかの理由でそれが不可能である場合、上述の行動が可能になるような最適の行動を取ります。

●ヘァズ・フィラン ✕10
 バルナバスに従うカラスのような天衝種で、このシナリオではウラジミールによって統率されています。
 弱者と判断した者を集団で嬲る習性を持ちます。反応、機動力、EXAに優れています。

・攻撃能力など
 牙 物超単 【移】【毒】【猛毒】
 体当たり 【移】【弱点】
 飛行

●サポート参加について
 今回、サポート参加を可としています。
 シナリオ趣旨・公序良俗等に合致するサポート参加者のみが描写対象となります。
 極力の描写を努めますが、条件を満たしている場合でも、サポート参加者が非常に多人数になった場合、描写対象から除外される場合があります。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●エカチェリーナ関連シナリオ(経緯を詳しく知りたい方向けです。基本的に読む必要はありません)
 『 <総軍鏖殺>雪の街に立つ、無数の柱』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8438
 『<総軍鏖殺>マキーホ平原会戦<トリグラフ作戦>』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8563

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <大乱のヴィルベルヴィント>空駆ける武装要塞Lv:40以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年12月08日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC2人)参加者一覧(10人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
セララ(p3p000273)
魔法騎士
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女

リプレイ

●迫り来る本命
「なんてものを出して来るのかしら。ロボットアニメじゃないんだから……!」
 ゲヴィド・ウェスタンの西から飛来する『コランバイン・ウェポンコンテナ』を遠目に目の当たりにした、『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)がそう口に出すのも、無理からぬ事であった。
「大型のパワードスーツに武器庫を丸々積み込んだ武装……まるで爆撃機か空中戦艦でありますね……」
 パワードスーツ『コランバイン』が武器庫である『ウェポンコンテナ』とドッキングしたその姿には、『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)が言うような趣があったからだ。
「魔種ってパワードスーツ使うのね……ますます厄介な」
「だが、能力上昇が顕著な魔種で兵器をメインに運用するのは珍しい気がするな」
 『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)の独語に、『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が思案顔となった。確かに、錬の言うとおり魔種の能力を以てすれば、兵器を使わずとも無双の活躍が出来るはずだ――特異運命座標が相手でない限りは。
「パージした後のウェポンコンテナはアーカーシュに持ち帰ってリバースエンジニアリング……ごほん、なんでもない。
 ともあれ、列車砲を破壊される訳にはいかない。兵装を十全に発揮出来ずに墜ちて頂こう!」
「そうね、こんなのを通す訳にはいかないものね。絶対、ここで墜とすわよ!」
「ええ。折角の得てくれた情報、無駄にしないようにここで食い止めましょう」
「同感であります! 必ず、ここで仕留めなければ……!」
 鍛冶師としての本音を半ば漏らした錬が、それを誤魔化すかのようにコランバイン・ウェポンコンテナの撃破を口にして意気込むと、セレナ、アンナ、ムサシも続いて意気込みを示した。

「――如何にか、間に合いましたね」
 まだ遠くを飛行するコランバイン・ウェポンコンテナの姿に、肩で呼吸をしながら安堵の声を出したのは、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)だ。
 オリーブと『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)、『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)の四人は、これに先立ってゲヴィド・ウェスタンの北方で、コランバイン・ウェポンコンテナを駆る魔種ウラジミール・ウラノフの上司であるエカチェリーナ・ミチェーリ大佐の軍と一戦を交えている。
 強行軍かつ連戦とはなっているが、疲れなど感じている場合ではなかった。
「随分ゴテゴテした武装だな。浪漫としては素晴らしいが、俺はもっとスマートな方が好みだ。
 ――まぁいい、敵ならば全て破壊して止めるだけだ。こちらが本命ならば尚更、通す訳にはいかない!」
 イズマが口にしたとおり、エカチェリーナの立案したゲヴィド・ウェスタンの列車砲破壊作戦において、ウラジミールが駆るコランバイン・ウェポンコンテナによる強襲こそが本命であった。いくらエカチェリーナを退けたと言えど、ここで敗れれば、それは無駄に終わってしまう。
「あのパワードスーツも、新皇帝派で新たに開発された兵器なのか?」
 半ば呆れ顔で、アルヴァがつぶやく。よもや、パワードスーツを用いてくるだけでなく武器庫のようなコンテナをくっつけて空を飛ぼうとは。
「どんな技術力か知らねぇが、あんな兵器に負けたら航空猟兵の名が泣く。
 さっさと墜として、俺の経験の糧にしてくれる!」
 「航空猟兵」の名に賭けて、負けるわけには行かない。その意志を瞳に宿し、アルヴァはコランバイン・ウェポンコンテナをきっと睨み付けた。

「移動要塞というか、ワンマンアーミーというか……敵でさえなければ、ロマンを感じるのですけれど。
 相手にするのは、かなり大変そうですね……」
「ああ。漫然と攻撃していては、止められないだろうな。どの武装から潰していくか、しっかり考えなければなるまい」
 涼花と『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は、コランバイン・ウェポンコンテナを見据えながらそんな会話を交わした。
 もっとも、レイヴンはともかく、支援に特化した涼花は武装を潰す直接的な手段を持ち合わせてはいない。と言うことは、涼花のやるべきこと、出来ることはある意味いつもどおりと言えた。
(ここにいる仲間たちは、みんなが最高の英雄です。今のわたしにできる最善の支援を、精一杯の歌を、英雄たちへ届けましょう!)
 そうすれば、きっと英雄達はコランバイン・ウェポンコンテナをここで止めてくれる。その信頼が、涼花にはあった。

●巨大ブースター、破壊
「そんなデカブツ身に付けて何処へ行く。ここは通行止めだぜ?」
 急上昇してコランバイン・ウェポンコンテナの上を取ったアルヴァが、対人狙撃銃『HOUND&CHIMERA Model 7360』の銃口を下に向けて撃った。だが、パァン! と言う景気のいい発射音は響いたものの、弾丸は射出されていない。つまりは、空砲である。
「――何のつもりだ? まぁ、いい。これで、まとめて仕留めてやる!」
 ウラジミールはその意図を訝しみつつも、苛立ちのままに敵意をアルヴァに向けた。空砲による挑発が、成功したのだ。
 アルヴァの方へと旋回するコランバイン・ウェポンコンテナのウェポンコンテナ部分から、大型のミサイルポッドが射出される。そこにセットされている無数のミサイルが、戦場全域を覆い尽くすようにイレギュラーズ達へと放たれる。
 アルヴァ、『魔法騎士』セララ(p3p000273)、アンナは次々と追尾してくるミサイルを回避出来たものの、それ以外のイレギュラーズ達は多かれ少なかれミサイルを被弾してしまう。爆炎が、被弾したイレギュラーズ達の身体を包んだ。
「馬鹿な! このミサイルの雨を回避するだと!?」
 だが、三人も――それも、本命であるアルヴァも含めて――ミサイルを回避した者がいると言う事実が、ウラジミールにとっては衝撃だった。
「魔法騎士セララ参上! 鉄帝を守るため、キミを倒すよ!」
「うむ、セララよ。お主は妾を振るい、悪を討つのじゃ!」
 イズマから借り受けたワイバーン「リオン」を駆り、ポン・デ・リングを口にくわえたセララが、コランバイン・ウェポンコンテナに迫る。
(ここを突破されたら、新皇帝派が有利になっちゃう。鉄帝の皆の笑顔のため、絶対にウラジミールを阻止してみせるよ!)
 決意と共に、セララは「セラフィム」のカードを用いて白い衣装を纏い、周囲に燐光を漂わせる。そして愛剣である『剣の精霊』ラグナロク(p3p010841)の剣先を、天へと向けた。それに応えるように天からは稲妻が落ち、ラグナロクは雷撃を刀身に宿す。
「往け、セララ!」
「ギガセララ――ブレイクッ!」
 雷光を宿した聖剣が、コランバイン・ウェポンコンテナ後部の巨大なブースターを斬り、大きな傷をブースターに刻む。その斬撃は一度ならず、四度繰り返されてブースターに強かなダメージを与えた。
「さぁ、皆。慌てることなく、その炎を鎮めるのじゃ」
 同時に、ミサイルの爆炎に包まれたイレギュラーズ達に向けて、ラグナロクから号令が飛ぶ。その号令を受けて、イレギュラーズ達は身体を包む爆炎を的確に鎮火させていった。
「俺も、続こう!」
 リトルワイバーンを駆る錬が、五行相克の循環を象った斧を手に、ブースターへと迫る。コランバイン・ウェポンコンテナの周囲には遠距離からの神秘攻撃を無効化する力場が展開されているが、至近距離まで接近してしまえばその影響は無い。
 セララが刻んだ傷に重ねるように、斧の刃がブースターを斬り裂いていく。度重なる斬撃によって形状が歪になったブースターは推力を完全には伝えきれなくなり、コランバイン・ウェポンコンテナの速度はやや減少した。
「ミサイルポッドの射出には間に合いませんでしたが――」
 オリーブは、ミサイルポッドの射出に合わせて鉛を奏でる楽団を召喚し、その弾幕によってコランバイン・ウェポンコンテナのすぐ側でミサイルを誘爆させるつもりでいた。だが、ミサイルポッドの射出の方が速く、その目論見は成らなかった。
 それは口惜しく感じつつも、コランバイン・ウェポンコンテナにダメージを与えるべく、オリーブは鉛を奏でる楽団を召喚する。
「そんな豪華装備、貴方の陣営でも貴重なものなんでしょう? 一枚ずつ剥がされる前に泣いて逃げればどうかしら」
「戯れ言を!」
 ウラジミールを挑発するように語りかけながら、アンナもまたオリーブに合わせて鉛を奏でる楽団を召喚する。アンナの言は、ウラジミールにとっては論外であった。「豪華装備」を、そして作戦の本命を任されたからこそ、撤退などあり得ない。
 ともあれ、二つの楽団による弾幕の協奏が、コランバイン・ウェポンコンテナを襲った。被弾した機体の各所は無数の弾丸の跡によって、深く抉れ、凹んでいる。
「――一気に、叩き壊す!」
 イズマはコランバイン・ウェポンコンテナの機体に取り付くと、振り落とされないよう鉤爪つきのロープを機体に巻き付かせる。そして機体に居座ることに成功したイズマは、細剣メロディア・コンダクターをブースター目掛けて縦横無尽に振るう。対物破壊に特化した斬撃は、細剣の刀身からは想像も付かないような威力となって、既にダメージを受けているブースターをさらに破壊していく。
 ブースターが破壊されていく度に、推力の伝達効率は落ち、それに伴いコランバイン・ウェポンコンテナの速度も落ちていく。やがてブースターが完全に破壊されると、コランバイン・ウェポンコンテナの速度は鈍重としか言えないものに成り果てた。
「おのれぇ! よくも!」
 ブースターを潰されたウラジミールはギリッ、と歯噛みをしたが、如何することも出来ず、以後は機動力を殺された状態での戦闘を強いられることになった。
「……一撃で持っていく必要がある。が、一撃では難しいか」
 それを地上から見ていたレイヴンは、機体の各武装の耐久性をそう判断した。最も優先して破壊したい巨大ブースターは早々に破壊されたが、これは対物破壊に特化した攻撃を含む攻撃が幾重にも集中した結果だ。
 ともあれ、今はまだ自身が飛べないものとウラジミールに認識させておく必要がある。そのために、黒翼の天使の姿を取りながら、翼をフードで覆い隠しているのだ。
 今はまだ、ウラジミールに手を出しタイミングではない。そう判断したレイヴンは、コランバイン・ウェポンコンテナの周囲にいるヘァズ・フィランらのうちの一体に向けて、魔力の砲弾を撃った。その砲撃は見事に命中し、ヘァズ・フィランに強かに傷を負わせた。
「――素直な心、反省の心、謙虚な心、奉仕の心、感謝の心!」
 鉄帝の人間として助力せんとこの戦闘に身を投じた『秩序の警守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)は、刑務所の五訓を唱えた。これにより、セチアは自身が看守であることを再認識し、瞬時ではあるが他人を護る力を得るのである。
「かかってきなさい! 私、セチア・リリー・スノードロップが、相手してあげるわ!」
 そしてセチアは、きっとした視線でヘァズ・フィランを睨み付けると、高らかに叫んだ。セチアにとって集団で弱者を狙うヘァズ・フィランの性質は非常に気に入らないものであり、ヘァズ・フィランらが弱者を狙うと言うのならセチアはその盾となって狙われた者を護るのだ。その意を察したヘァズ・フィランらの目は、一斉にセチアの方を向いた。
「援護するわ。あなたを落とされるわけにはいかないもの」
 セレナは、ミサイルによって最も深く傷を負った涼花の側に寄ると、涼花への攻撃を盾となって受け止める体勢を整えた。先程放たれたミサイルポッドの大きさから察するに、コランバイン・ウェポンコンテナはあと三度は同様の攻撃が出来ると見るべきであるが、涼花がそれに耐えられるとはセレナには思えなかった。
 だが、涼花の支援無くしては魔種と、それも、あんな武装を纏った相手と戦うことは難しい。ならば、涼花は自身を盾にしてでも護らねばならない。
「ありがとうございます。セレナさん」
 セレナの判断を察した涼花は、感謝を込めてセレナに礼を述べた。そして、セレナの行動に応えるべく、調和の力を癒やしの力に換えて、全力を尽くして歌う。涼花に次いでダメージの大きいオリーブに向けられたその歌声は、オリーブの傷を幾分か癒やしていった。
 傷が軽くなったオリーブは、苦痛が和らいだのを実感すると、ふぅ、と息を吐いて呼吸を整えてから、涼花に軽く頭を下げて感謝を示した。
(ミサイルを止められなかったのは、残念でありますが……)
 ムサシは、コランバイン・ウェポンコンテナからミサイルポッドが放たれたら、ミサイルポッドに吶喊してミサイルの射出前に火炎術式を叩き込んで誘爆させる心積もりでいた。だが、ムサシが動くよりも先に、ミサイルは射出されてしまった。その事は残念であるが、戦闘は続いている以上は切り替えていかねばならない。
「灰に――なるであります!」
 レイヴンが魔力の砲弾によって傷を負わせたヘァズ・フィランを狙い、ムサシは敵を灰と化す殲滅魔術を放った。ムサシの術を受けたヘァズ・フィランは、既に傷を負っていたこともあり力尽きて、その死骸は灰となって空にかき消えた。

●潰されたカメラアイ
 巨大ブースターを喪ったとは言え、コランバイン・ウェポンコンテナの火力は未だ健在であり、まだまだ戦える――ウラジミールはそう考えていたが、現実は無情であった。戦闘の趨勢は、この後すぐにイレギュラーズ達の方に傾くことになった。

「エカチェリーナさんは惨敗し、白い乗機は木っ端微塵、本人は這う這うの体で逃げ出しましたよ」
 オリーブはコランバイン・ウェポンコンテナの前に出ると、白い装甲の破片を手にウラジミールに告げた。その破片は、先にオリーブが戦ったエカチェリーナのパワードスーツ、フレイア試作型のものだ。
「馬鹿な! ミチェーリ大佐が!?」
 ウラジミールは、軍人であるとは言えまだ若い。また、同じ憤怒の魔種であるとは言え上官であるエカチェリーナほどにその気質を抑制する術を持ち合わせていない。故に、エカチェリーナの部下への統率力がかえって災いした。
 驚愕と動揺がウラジミールを襲い、それはイレギュラーズ達が付け入る隙となる。
「その隙、逃さん……!」
 レイヴンは急上昇しながら、渾身の魔力を振り絞ってその手に神滅の魔剣を想像する。狙いは、神秘攻撃を無効化する力場を展開するジェネレーターだ。
「沈めぇ!!」
 コランバイン・ウェポンコンテナとすれ違い様に、レイヴンは魔剣でジェネレーターに斬りつけた。ジェネレーターには長く深い傷が刻まれるが、力場は消失しない。
「くっ、浅いか!?」
「大丈夫だ、後は任せろ!」
「続くでありますよ!」
 ジェネレーターを完全に破壊し損ねた口惜しさに顔を歪ませるレイヴンだったが、それも一瞬のことだった。レイヴンの意図を察した錬とムサシが、続いてジェネレーターに接近して攻撃を仕掛けたからだ。
 五行相克を象る斧が、ジェネレーターをさらに深く斬り裂いていく。敵を灰と化す殲滅魔術が、その傷の周囲を灰へと変えていき、損傷をさらに拡大させていく。そのダメージの大きさに、ジェネレーターは機能を停止し、機体を包む力場は消失した。
 これで、レイヴンが喚ぶ鋼の星も、通じるようになった。
「さぁ、見えない中でどう戦う?」
「――卑怯なッ!!」
 続いて、イズマがコランバイン本体頭部の目を象った部分に、スプラッシュボールを投げつける。スプラッシュボールは破裂し、コランバインの頭部前面を蛍光ブルーの塗料で覆った。イズマが予想したとおり、目を象った部分には内部から外を見るためのカメラがあり、内部でウラジミールが見ているモニターは蛍光ブルー一色に染まった。
 他にもセンサー類が搭載されているとは言え、視覚を封じられた影響は大きい。そもそもピーキーな武装の制御への対処に精一杯、かつ、カメラアイの使用に慣れきっていたこともあり、ウラジミールはセンサー類の情報だけでこれまでと同様には戦えなかった。

●ウラジミール、斃る
 ウラジミールは苦し紛れにミサイルポッドを放ち続け、オリーブとムサシに深手を負わせたが、それが限界であった。機動力を殺され、センサー類でしか外部を把握できないコランバイン・ウェポンコンテナは、最早ただの的でしかなかった。
 ヘァズ・フィランらが一掃され、ウェポンコンテナ自体も壊滅的な被害を受けたところで、ウラジミールはコランバインからウェポンコンテナをパージする。
「こんなものに頼ってる時点で三流なんだよ。墜ちろ」
「そうね。このまま墜ちてもらった方が安全ね」
 パージのタイミングを狙って、アルヴァはH&C M7360を連射し、弾幕を張った。アンナもその意図を察し、鉛を奏でる楽団を召喚して弾幕を張る。上方からの弾幕は、雨の如く降り注ぎ、コランバインを地上へと押し流した。

 コランバインが地上に墜ちると、視覚が封じられているも同然と言うこともあり、ウラジミールはコランバインから出て生身で戦闘を挑んだ。だが、結果として、イレギュラーズ達を相手に勝利を得ることは出来なかった。
「これで、止めだよ! ギガセララブレイク!」
 最後は、雷霆を宿したセララの聖剣ラグナロクに袈裟懸けに断ち切られて、ウラジミールは死んだ。
「……ふぅ、勝ててよかったわね」
「ありがとうございます。おかげで、助かりました」
「助かったのは、わたし達の方よ」
 決着を確認して脱力したセレナに、涼花が頭を下げて感謝を述べる。セレナは、ずっと涼花の盾となって代わりにダメージを負い続けていたのだ。だが、セレナからすれば涼花の支援に助けられたと言う実感が大きい。涼花の癒やしがなければ、少なくともオリーブは戦闘不能に陥っていただろうと思われた。もしかしたら、他に倒れたものも出ていたかも知れない。
 セレナの言葉を内心嬉しく思いつつ、涼花はセレナの傷を癒やすべく歌い始めた。その音色は、戦闘の労を労い、勝利を祝福するかのように、周囲に響き渡るのだった。

成否

成功

MVP

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

状態異常

オリーブ・ローレル(p3p004352)[重傷]
鋼鉄の冒険者
イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色
ムサシ・セルブライト(p3p010126)[重傷]
宇宙の保安官

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。エカチェリーナによる列車砲破壊作戦の本命であるコランバイン・ウェポンコンテナは、皆さんの活躍によって撃破されました。
 MVPは、コランバインのカメラアイを潰し、ウラジミールの戦闘力を大幅にダウンさせたイズマさんにお贈りします。カメラアイ潰しは、その……とても、つらいorz

 それでは、お疲れ様でした!

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