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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>時計の針は進む

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「助けてくれ!」
 救いを求める弱者は、殺される。

「おかあさあぁぁん」
 泣いて母を探すがんぜない子供も、殺される。

「嫌なら近づくで止めてみせろよ!」
「兄貴ィ、こんな奴らが俺たちに勝てるわけないっス」
「それもそうか! ギャハハハハ!!」
 スラムに火をつけた荒くれ者たちは、勝ち誇った顔で燃える人々を楽しんだ。


 鉄帝の皇帝の代替わりは、現皇帝と挑戦者が戦い、勝った者が新皇帝となる。シンプルかつ実に『鉄帝らしい』と言うべきだろう。
 しかし皇帝の座はヴァルスという強者の君臨により、長いこと空くことはなかった。つい最近――イレギュラーズがアーカーシュでの戦いを終える、くらいまでは。

 ――新皇帝のバルナバス・スティージレッドだ。

 新皇帝を名乗った男――空の玉座に座った『煉獄編第三冠"憤怒"』バルナバス・スティージレッドは鉄帝を真実"弱肉強食"の国へ変えた。全ての警察機構が解体され、国全てが無法地帯と化した鉄帝。それを許容する者、しない者。しない者の中でも誰の元に集うか、瞬く間に派閥が生まれる。
 加えて、この混乱を好機と見た鉄帝北方、ノーザンキングスも勢力拡大のため動き出した。

 強きが正義ならば、弱きは悪。新皇帝が発布したのはそういう勅令である。



(よかった、この街は被害を受けていなさそうだ)
 シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は訪れた街の様子にほっと息をつく。多少物々しい空気は漂っているものの、これといった被害も見受けられず、またどこかで悲鳴が上がっているということもなさそうだ。
 宿や市場で話を聞くと、南部戦線からそう遠くないこの街にはザーバ派の兵士たちが駐留しているのだという。ザーバ派の拠点は南部戦線防波堤の城塞『バーデンドルフ・ライン』だが、この街に幾らかの兵士を駐留させ、街内外の暴漢へ牽制する役割を担わせているそうだ。
「もちろん、少しずつ勢力を広げているようだけれどね」
 八百屋の店主はそう呟いて、そうだとシキを見た。
「ここはひとつ、頼まれてくれないかね。街までの道中に魔物が出るんだ」
「魔物? 誰か襲われたのかい!?」
 シキが店主に詰め寄る。曰く、卸しの業者が馬車を襲われ、他の業者も怯えて食材が届きにくい状況なのだと。まだ護衛を伴って食材を運ぶ業者もいるが、いつ来なくなってもおかしくない。
(この街には兵士がいるから、戦いを直接挑んでこないのか……?)
 住民が物資の少なさに街を出たところを狙っているのか、或いは衰弱したところへ襲いにくるのか。ともあれ、ことは一刻を争うだろう。
 物資が届かなくても、食材がなくなっても、時計の針は進むから。時間は巡っていくものだから。朝が来て、夜が来て、また朝が来て――今はまだ良くても、あとどれだけ保つだろう?
「仲間を呼んでくるよ。急いで魔物をなんとかしないとね」
「そいつは助かるよ! 観光してもらいたいところなんだけれど、すまないね」
 この状況では楽しむものも楽しめない。シキは気にしないでと首を振った。


「……というわけで、ツァンラートの近くで魔物が出るらしいんだ」
 シキはローレットへ戻り、仲間たちにことの次第を告げる。
 ツァンラートは非常に技術力の高い時計技師がいる街だ。大きな時計台が特徴で、技師への予約は数年分入っていると言われるほど。しかし技術に力を注いだ分、自警団や駐留兵士もいるとは言え、戦力に欠けるのは致し方がないとも言える。
 あまりにも街が手薄となれば、魔物や潜んでいる無頼漢たちは嬉々として攻めてくるだろう。そこでイレギュラーズの出番なのだ。
 ツァンラート付近に出没する魔物は新皇帝、いや冠位魔種に従う天衝種(アンチ・ヘイヴン)という種だ。『憤怒』の感情を宿しており、特にイレギュラーズに対しての敵意が強いという。万が一行商人などが通りかかったとしても、攻撃の矛先が移ることはそうないだろう。
 転じれば――こちらが撤退しようとしても、彼らは執拗に追ってくるはずだ。しっかりと準備を整え、向かわなければならない。

GMコメント

●成功条件
 エネミーの撃破、或いは撤退

●情報制度
 このシナリオの情報制度はBです。不明点もあります。

●フィールド
 鉄帝南部、ツァンラートという街に程近い街道です。
 見晴らしは良いですが、敵はやや離れた森に潜伏しており、襲撃対象を見つけると彼方からかなりの勢いで向かってくるようです。
 森に入る場合は非常に見晴らしが悪く、足元にも注意が必要となるでしょう。

●エネミー
・グルゥイグダロス×1
 巨大な狼のような姿の怪物です。双頭ですが、お互いに考えがぶつかることはないようです。イレギュラーズを見れば敵意と憤怒を剥き出しにしてきます。
 戦い方は俊敏にして獰猛。その爪や牙をマトモに受ければ『出血』は免れないでしょう。
 イレギュラーズの撤退については執拗に追撃してきますが、自身の逃げ足も早いです。撤退を決めればあっという間にいなくなるでしょう。

・ストリガー×10
 生前に激しい怒りを抱いていたアンデッドモンスターです。老若男女は様々です。人型をしていますが、意思疎通はあまり期待できないかもしれません。
 生前の怒りは今もなお燃え盛っており、1体倒されることに生き残っているストリガーの怒りが強まります。この怒りは強さによって、後述するフューリアスの能力が全体的に強化されます。
 燃えさかる爪を振るって攻撃します。至~近距離の単体や列への攻撃を行い、『火炎』系のBSを伴います。
 突出した強さはありませんが、纏めて襲いかかってくると厄介です。

・フューリアス×7
 周囲に満ちる激しい怒りが、人魂のような形となった怪物です。怪物として形が成ったのちも、ストリガー及びグルゥイグダロスの発する怒りを吸収し、強化されます。
 怒り任せの衝撃波のような中~超距離の神秘攻撃をしてきます。単体と範囲があり【乱れ系統】【痺れ系統】のBSを伴います。


●ご挨拶
 愁と申します。ザーバ派のシナリオとなります。だいぶ間があいてしまいましたが、ツァンラートの様子を見に行くAAを起用させていただきました。
 ツァンラートのためにも、付近に潜伏する魔物を撃破ないしは撃退しましょう!
 それではどうぞ、よろしくお願いいたします。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <総軍鏖殺>時計の針は進む完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
私のイノリ
レッド(p3p000395)
赤々靴
武器商人(p3p001107)
闇之雲
シラス(p3p004421)
超える者
ガヴィ コレット(p3p006928)
旋律が覚えてる
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)
微笑みに悪を忍ばせ
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
彼方への祈り

リプレイ


 高く、高く、聳え立っている時計塔。今こそ正しく時を刻む、ツァンラートの技術の結晶だ。
「懐かしいものですね」
「ああ。無事な街を見るとホッとするぜ」
 この街を初めて訪れたのはいつだったかと目を細める『想光を紡ぐ』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)の言葉に『竜剣』シラス(p3p004421)が頷く。巻き戻りの街と呼ばれていた日はもう遠い。
(時が進み続けるならば、その先にはより良き未来を創りたいものですね)
 物資さえ届いたなら、南部戦線に程近いこともあるしツァンラートは首都ほど新皇帝の影響を受けないだろう。暫くは踏みとどまれるはずだ。
「張り切って魔物退治といこうか」
「頑張るっす! 魔物を倒さなければいずれ食糧難、その先には争いが待ってるっすから」
 『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)はシラスの言葉に力強く首肯した。幸い、まだ目立った争いはないという。ことが起きる前に火種を消さなければ。
「こんな大きな道の、それも森から離れた場所で魔物が出没するのですもの。警察機構が解体されたとなれば、他にも影響は出ていそうですね」
 ドレイク――レッドの連れてきた四足獣型の亜竜を物珍しそうに見ていた『旋律が覚えてる』ガヴィ コレット(p3p006928)は、周囲の様子をきょろりと伺う。一見平穏そうに見えるが、本当の平穏は警察機構が守っていたのだと、鉄帝の混乱状況を聞けばすぐわかる。
「時に、この馬車に乗っているのは?」
「ツァンラートへのお届け物っす!」
 出発前にツァンラートへ出入りしていたという業者へ接触したレッドは、食糧や物資を買い受けたのだ。業者としてもこのままでは商品をダメにしてしまうし、ツァンラートで同じ額の取引をすればレッドに損はない。そしてツァンラートの人々は物資が届くことで貧困を免れる。
 なるほど、と理解の色を見せたガヴィは視線を遠くに見えた森へ向けた。あそこに魔物が潜んでいるというが、対照を見つけたなら真っ直ぐ襲い掛かってくるらしい。ならばあえてこちらから接敵する必要はないだろう。留まることで準備できることもあるのだから。
「コア ピカピカ。気付カレヤスイヨウ 目立ツ」
 自身のコアを光らせる『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)はシラスたちと共に森へ徐々に近づいていく。どの程度近づけば気づくかわからないが、いざとなったら森の入り口と言わず、森の中まで入る覚悟である。
「ツァンラートの人たちが明日のことを憂えずとも済むようにしないとねぇ」
「ヒヒ、卸しの業者が通れないだなんて、商人ギルド・サヨナキドリの立場としても看過できない問題さ。早々に駆除させてもらおうじゃないか」
 簡易な罠を周囲に張っていく『闇之雲』武器商人(p3p001107)の邪魔をしないよう気をつけながら、『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は周囲に一般人がいないか見回る。魔物はイレギュラーズへ特に反応するというが、巻き込まれないとは限らない。それに武器商人が仕掛けた罠を踏んでしまったら大変だ。
「敵意 感ジル?」
「いや……だが、油断はしないでくれよ」
「フリック 大丈夫。目立ツ分 的サレルカモ 覚悟済」
 フリークライの言葉へ呼応するようにコアが発行する。それは夜に飛ぶ蛍のようにも、誘蛾灯のようにだって感じられるものだ。
(とにかくまずは、こちらを見付けてもらわないと……)
 時間に決まりはないが、ぐずぐずと待っていては日が陰って視界が悪くなるだろう。そんな時間まで待ってはいられないと、シキはガンブレードを天へ向ける。
 空砲が1発。2発。……森の奥で、何かが動いた。
「――来るぞ!」
 シラスとフリークライが弾かれたように走り出す。イレギュラーズたちがいる場所へ合流すべく駆ければ、それにつられた魔物たちが森から躍り出た。その先頭を行くのは巨大な狼だ。
「凄い勢いで向かってきてるっす!」
 レッドが慌てて積み荷から離れ、臨戦態勢を取る。手薄になったそちらへ行く様子は――ない。あくまで標的はイレギュラーズたちか。
「あれが冠位魔種に従う魔物どもですか……」
 『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)は真っすぐこちらへ向かってくる魔物たちを一瞥する。補給線を意図して断っているのであれば、憤怒の手下にしては戦略的で侮れないモノたちだ――と思っていたのだが。これはたまたまそのような形になっただけなのかもしれないと、見向きもされないレッドの積み荷を見ながら思う。
(ま、今は大人しく仕事をこなしましょうか)
 あちらは新皇帝となった冠位魔種の命で動いているのだろうが、こちらもまた仕事である。手を抜くことなどできないさ。
「さあ、私が相手になりましょう」
 ウィルドへと怒りの矛先が向いていく。シラスは汚れた泥をその足元へと展開させた。足元をとられながらも、魔物たちは怒りのままにその手をウィルドへ伸ばす。頑強な体をもってしても無傷とはいかないほどの重圧(感情)に、しかしすかさずガヴィが回復を施した。
「まだ来ます、気をつけてください!」
 ガヴィの言う通り、森からはまだ魔物が群れを成してこちらへ向かって来ている。すかさず武器商人がウィルドの前へと躍り出た。
「ヒヒ、我(アタシ)たちも人気者だね」
 怒りの圧が、うねるように武器商人へ叩きつけられるけれど。彼は――あるいは、彼女か――そう簡単に倒れる程ヤワではなく。傷ついたとてただ傷つくばかりではない。
「巻き込まれないようにお気を付けを」
 マグタレーナの目の前で、大きな力がより収束して寄り集まる。それの解放された先には塵ばかり。次、とマグタレーナはすかさず次発を沢山の敵がいる方向へ叩き込んだ。
 彼女が容赦なく放っていくそれらに魔物が散る。抉れる。――怨嗟が、怒りが膨らんでいく。
「何をそんなに怒っているんだい? あ、私たちが仲間を倒してしまったのは申し訳ないけれど、そもそも何かに怒っていただろう?」
 シキは手を止めないながらも、何か得られるのではないかと語りかける。フリークライのクェーサーアナライズを受けながらも辛抱強く聞いてみるが、彼らは言葉にならない何かを訴えるように、攻撃と、それから叫びを叩きつけるばかりだ。
(やっぱり意思疎通は難しいのかな……)
 きっとそれぞれが、誰かや何かに対してままならないことがあったはずなのだ。ストリガーというアンデッドたちは"そういう者"たちだったのだと聞く。最も、あの双頭の狼については元から冠位魔種の配下に思えるが――。
「なんにしたって魔種の仲間であれば遠慮する必要なし! 手早く一気に片をつけるっす!!」
 その片方に頭へ向けて、レッドが生成した精神力の弾丸が突き刺さる。キャン、と甲高い声が上がって、それから低く唸りを上げた。
 嗚呼けれど、敵はそればかりではない。ウィルドは後続でやってきた敵にも自身へと引き付けにかかる。ガヴィは敵視の分散したフューリアスからの攻撃を素早く躱し、回復すべき仲間がいないか素早く視線を巡らせた。
「そのまま泥に沈んでもらうぜ!」
 シラスのケイオスタイドが、ウィルドの引き付けた敵を次々と飲み込んでいく。泥の中から張って出ようとするアンデッドたちにレッドはうわあ、と顔を引きつらせた。
「この絵面はインパクトがあるっす……でも、だからと言ってボクも手は抜けないっすよ!」
 泥が積み重なって、奔流のように敵の群れへ押し寄せる。そこへ降り注ぐは万物を砕く鉄の星――マグタレーナの起こした流星が敵を貫いていく。
(奪おうとするならば奪われることもある――怒りの合間に思い至ることは、難しいでしょうか)
 人魂のようなそれが中心を貫かれて地面へ落ち、アンデッドたちは四肢を撃ち抜かれ最後に胴体へ風穴を開けられる。鉄の流星が振ったあとは、ただただ命の残骸が残るばかりだ。
「我 墓守。死シテ尚 怒ル者達ヨ」
 フリークライは来い、とアンデッドたちへ告げる。きちんと送り出すためにも、燃え盛る怒りは全てここで受け止めよう。
「変わるよ! 多少であれば耐えられるさ」
 シキが膝をついたウィルドの前へすかさず滑り込み、名乗り口上で残存の敵を引き付ける。けれど当初よりよっぽど数を減らし、あとは何体かのアンデッドや人魂と、双頭の巨狼ばかり。巨狼も4つのまなこのうち1つを潰されている。
 ケイオスタイドの効力はまだあると、シラスは残る敵達を亡霊の慟哭で潰しにかかる。苛まれるからだを真っ二つにするのは武器商人の魔剣だ。
「この武器【コ】、良い切れ味なんだ。魔力を随分持っていかれるけれどね」
 けれど畳みかけるならば今、ここで出し惜しみしている場合ではないと武器商人は魔力を練り上げる。あともう少し。
「今を生きようとする人達と、仲間が一番大事っす――だから、倒れて貰うっすよ!」
 レッドの攻撃がフューリアスの中心を貫く。怒りがより集まっていた魔物は、それを空気中へと溶かしていった。

 ――この場から追い払ってしまえば、依頼は成功だ。それは誰もが理解をしているけれど。

「逃がしませんよ」
 泥に初動を遅らされたグルゥイグダロスは、振り向いた先にいたガヴィによって進路を阻害される。唸り声を上げたそれは目の前の障害へ向かって鋭い牙を剥いた。
(フューリアス イナイ。デモ ストリガー 残ッテル)
 シキもそちらにかかりきりで、此方まではすぐに来られないか。戦況的には追い払う方がより現実的だろう。
「幼子が泣くような未来は、あってはならないでしょう」
 マグタレーナの呪鎖が縦横無尽に飛び、グルゥイグダロスへと襲い掛かる。傷ついた魔物は狂ったように暴れ出す。
(政治の事はわかりません。けれど、非情や無法を働く者にこそ、怒りは向けられるべきです)
 シラスの極撃が巨狼へ叩きつけられた。確かな手ごたえを手に感じて――しかし、抑えのなくなったそれは、風のように走り出す。
「ちっ」
 舌打ちするも、その姿は遥か彼方。シラスは残ったアンデッドを倒すべく踵を返した。
「……君たちは逃がせない。ごめんね」
 攻撃を受けながら、シキはガンブレードを力強く振り下ろす。伸びあがった黒の影は彼らの先頭を走っていた狼より早く、狼よりも獰猛に。
(誰にも、あの狼にだって恨みはないけれど。あの街を、針を進め始めた街の人を襲わせるわけにはいかないんだ)
 老若男女、貴賤さえも関係なく、明日を夢見る人たちへ憂いのない日々を届ける為に。

 ――だから、おやすみなさい。



「……残っていた魔物は、もういなさそうでしょうか」
 マグタレーナは小さく息をついて周囲を見回した。
 森の中を見回り、残る魔物がいないか確認したイレギュラーズたち。魔物は全て仕留めたか追い払ったし、魔物の気配に小動物たちは逃げ出してしまったのか酷く静かだ。
「そのうち動物たちも戻ってくるかな」
「多分な。魔物がまた湧くようじゃ、逃げるかもしれねえが」
 そう、根本的な解決は必要となるだろう。そうだね、とシキはシラスへ首肯する。
 ガヴィは情報屋から聞いていた魔物の数とこの依頼で倒した数、その総数を比較する。……が、結果としては実際に倒した数の方が多い。これ如何に。
「ヒヒ、情報屋も万能じゃないってことさ。だからより新しい情報には価値がつくし、あれらは足が早い」
 首を傾げていたガヴィの横へ音もなく立つ武器商人。謎は解けたかい? というように傾いだ武器商人の髪がサラリと零れた。
「武器商人、手伝ってくれ」
「はいよ、竜剣の旦那。我(アタシ)は何をすればいいんだい?」
 もう問題ないだろうと森を出て行った先には、先程倒した魔物の遺骸が転がっている。穴を掘ってそれらを放り込み、焼いてしまいたいのだとしらすは言った。
「道端に積んでおいても見た目が嫌すぎるし、万が一復活されてみろ」
「またツァンラートの人たちが困るっす」
 こくこくと頷くレッド。そういうことで、街道から外れた場所での穴掘りだ。
(天衝種たちはどこから現れたのでしょう)
 最近になって耳にするようになった魔物だ、とガヴィは手伝いながら思う。ざらりと口溶けの悪い砂糖のように、胸の内に引っかかって――嫌な感じ。
 燃えた遺骸はフリークライが弔い、それを見届けた一同はツァンラートへ向かう。オーダークリアではあるが直接報告に行けば商人たちの動き出しも早くなるし、こちらにも『荷物』があるのだ。
「お待たせしたっす!」
 レッドの馬車に積まれた物資らは早々にその量を減らしていく。シラスは街に滞在し、出難くなっていた商人たちに魔物がいなくなったことを告げると、他の街にいる仲間たちへもこれを伝えるよう告げた。
「しばらくは問題ないはずだ。もしまた問題が起きたらローレットへ知らせてくれ」
 商人たちの往来を増やしたならば、物資だけでなく情報もまた動いていく。混乱の只中にある鉄帝において、それらは何かを決断するときの貴重な判断材料となるだろう。

成否

成功

MVP

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
私のイノリ

状態異常

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)[重傷]
私のイノリ
ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)[重傷]
微笑みに悪を忍ばせ

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 これでツァンラートにも物資が届くようになるでしょう。今後ザーバ派が拡がっていくための足掛かりとして拠点扱いされるはずです。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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