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シナリオ詳細

再現性東京202X:PO『B』配信~廃墟脱出大作戦~

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●「ホネホネボーン」の挑戦
 配信者「ホネホネボーン」ことヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)は配信者である。
 普段はクラフト系ゲームやホラー系を主にしているが、一向にお金を投げられない系P-Tuberとして名を馳せている。収益化ラインが本人の知識は高すぎるハードルなのよ。
「……というわけで今晩はこれまでですぞ! スケさんにつきあってくれてありがとうですぞ~~!」
 配信終了のための挨拶を済ませた画面上には「金を払わせろ」「身内フラまだ?」などと穏当ではないが温かみのある(個人の感想です)コメントが流れていく。そして、そんな中でぽつりとヴェルミリオが拾い上げたコメントへの反応が、この日の配信一番の盛り上がりとなる。
「肝試し……ですぞ?」
 顔を隠してはいるが『マスクですぞ』で通しているヴェルミリオ。おどろおどろしい外見といえる当人がホラーをやるのも撮れ高があるが、それ以上に、ホラー色の強い姿で心霊現象を探しに行くリアル配信……となれば、人々の期待も理解できよう。
「ここまで反響があるとやらざるを得ないですぞ……?」
 その発言が切り取られ拡散されるなど、想像もしていないヴェルミリオなのであった。

●「それを俺様に言う? 聞く?」(byクウハ)
「クウハ君が幽霊を探しに行くの? おもしろそーっ!」
「俺様じゃねえよ! オマエが行くんだろヴェルミリオ!?」
 自称・幽霊であるところのクウハ (p3p010695)が肝試しに参加する。その話を聞いたえくれあ (p3p009062)は楽しそうに居並ぶ仲間達を囃し立てた。何故かメイン扱いになるクウハはげんなりした顔で彼女を見た。そしてヴェルミリオを見た。
「ヴェルミリオちゃん、体のラインとか隠すために何か小物とか要る? ファニー作っちゃう☆」
「10人の大所帯なら服装もどこかでお揃いにしたほうがいいよ! 私、作れるよ!」
「怖さを紛らわせるためにBGMとかいれる? 演奏とか要る?」
 話が形になってくると、ディテールに拘りたくなるのが人の性である。物創りに特化したファニアス (p3p009405)、服飾系に強い雑賀 千代 (p3p010694)、そして音楽に一家言ある柊木 涼花 (p3p010038)の3人は、盛り上がりがこの時点でピークに達している。
 女3人よればというが(ファニアスは秘宝種ながら)、この3名は割と目的意識があるがゆえのノリなのかもしれない。
「しかし、そうなると私達はどうなるのでしょうか……イケメン担当……?」
「じゃあボクはかっこいい女性担当だね! 気合入っちゃうなあ!」
「えっ?」
「えっ」
 普段の振る舞いで特筆すべきものがない(天気予報とかそんなもんだろうか)が顔のいい金枝 繁茂 (p3p008917)の言葉にリコリス・ウォルハント・ローア (p3p009236)が同意しつつ自己主張を加えると、繁茂は思わず聞き返してしまった。潜入前から既に2頭身の( 'ᾥ' )が肝試しってだけで多分撮れ高上がるのよ。心霊動画として。
「ルシアは賑やかしとして精一杯がんばりますの!」
「肝試し先が無事なら問題ないかと」
 ルシア・アイリス・アップルトン (p3p009869)は一同にお茶を振る舞いながら楽しげに話すが、セス・サーム (p3p010326)の意図しない一言に思わず動きが固まった。彼女には『前科』があるが、セスはそんなこと知らないので。
「皆さんがいれば千人力ですぞ! さあ、いざ肝試しへ! ……準備してから!」
 ヴェルミリオの合図に、一同は拳を突き上げた。

●……のですが。
 というわけで数日後、10名揃って希望ヶ浜の廃ビルへと向かうことになったのだ。
 だが、彼等は自分の存在感というやつを理解していなかった。
 そして、希望ヶ浜は今もって『ジャバーウォック』の脅威去りし傷痕が夜妖や怪異と言う形で残っているということを。
 斯くして彼等が向かった先――『希望ヶ浜の人食いビル』に期せずして巻起こった混乱は、解消せぬままでは脱出できないという最悪のアレを抱えていた。
 どうするイレギュラーズ!

GMコメント

 リクエストありがとうございます。
 色々考えたけどお化け屋敷で脱出でって出す側も相談する側も超絶ハイカロリーなのでちょっとそこはいい感じにアレしてます。

●成功条件
 動画撮影の成功と廃ビルからの脱出
 └各々の個性を発揮して撮れ高を上げる

●希望ヶ浜の人食いビル
 四階建ての比較的小ぶりの雑居ビル。だが内部は空間が歪んでいるのか、結構広い。
 あちこちに夜妖が潜んでおり、屋上の祠を修繕しないと脱出できないようになってしまっている。
 恐らく迷い込んだ一般人はいないが、その成れの果てはいるかもしれない。
 各階である程度の掃討や剥がれかけた御札の貼り直しなどが必要になってくる。

●人食いビルの夜妖(種別複数、数さまざま)
 比較的強い……とかそういう尺度ではなく何かと『面倒くさい』連中。恐らく希望ヶ浜で囁かれる噂や、特待生(イレギュラーズ)達の個性に応じて成長したものと思われる。
 例)揃いの服を着ている四人が揃うと何故か消える凄く強い夜妖、二頭身のやつばっか狙う夜妖、幽霊型なので幽霊とか骨に親近感湧く夜妖、数は多いけど音楽の傾向で強くなったり弱くなったり……な夜妖など
 当たり前のように「こんなやつおるやろな」って言うとおる。ある程度全員の行動精度が平均して高くないと難易度が上がっていく。

●祠の夜妖
 ボスキャラ的なやつ。祠を修繕しようとすると現れ、下階に現れた夜妖を配下として呼び出してくる。
 倒すと修繕可能となる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 再現性東京202X:PO『B』配信~廃墟脱出大作戦~完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年08月30日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談8日
  • 参加費200RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
※参加確定済み※
えくれあ(p3p009062)
ふわふわ
※参加確定済み※
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
※参加確定済み※
ファニアス(p3p009405)
ハピネスデザイナー
※参加確定済み※
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星
※参加確定済み※
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
※参加確定済み※
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵
※参加確定済み※
セス・サーム(p3p010326)
星読み
※参加確定済み※
雑賀 千代(p3p010694)
立派な姫騎士
※参加確定済み※
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい
※参加確定済み※

リプレイ


「サヨナキ~チャンネル~! こんばんはっ、ぼくです! サヨナキドリ練達店のえくれあ支店長だよー!」
「皆さま! この度はホネホネボーンの企画動画にご参加いただき、誠にありがとうございます! 肝試しに楽しんでという言葉もおかしいですが、皆さまにとって良い時間になれば嬉しいのですぞ!」
 『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)の、外見通りの柔らかい調子での挨拶に合わせ、『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)が明るく挨拶を入れる。見れば、二人の後ろにはそこそこ多くのメンバーが並んでいることが、視聴者目線からもわかるだろう。えくれあ含め、(希望ヶ浜向けの)身分を隠していない者もいれば、顔や服装を普段と変えている者もいる。
「それからねぇ、『Olina』のファニーちゃんも来てくれてるんだ。とっても心強い! このシフォンリボンね、ファニーちゃんが作ってくれたんだよー!」
「みんなオソロのヘアアクセなんだよ~~、見て見て☆★」
 えくれあの紹介に合わせて『洋服屋』ファニアス(p3p009405)が画面に顔をひょっこりと出してアピールする。よくよく見れば、女子はシフォンリボン、男子はラバーバンドを揃いでつけ、それぞれにあわせた色合いとなっていることがわかるだろう。小物の準備は完璧というわけだ。
「皆さんの衣装も作らせていただきまして最高にハイって奴です! 特にこちらの衣装は自信作ですよ!」
「面をつけての御挨拶、御容赦ください。家人に内緒で遊びに来ましたの。気軽にせっちゃんとお呼びください」
「セッちゃん背が高いから胸元から膝上がタイトに締まってるのが似合うよね△」
 『立派な姫騎士』雑賀 千代(p3p010694)が会心の出来と語るだけのことはあり、『星読み』セス・サーム(p3p010326)の姿は正しく深窓の令嬢然としたものであった。ワイシャツとジャンパースカートのコントラストは、日差しの強い夏にこそよく映える。千代の苦労が偲ばれる。
(本来ならばあんまり危ない所に行かない方がいいのですが……そういう趣旨ですし、そういう内容が受けるという事でしょうね)
 『夜妖<ヨル>を狩る者』金枝 繁茂(p3p008917)はカメラマンとして映像には映っていないが、いつでも画面内に入れるように黒のラバーバンドを着け、服装もシックなもの(千代制作)でまとめている。霊魂に対し一定の敬意を払う彼だが、このビルに関しては何というか、夜妖の巣窟なので別にそこまで意識しなくてもいいかな……ぐらいの気分になっていた。
「……肝心の肝試しも……が、頑張ります……よ?」
「こ、怖くなんてありませんよ……? 怖くないったらないんです!」
 『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)は千代のびくびくした声に重ねるように握り拳を震わせながら宣言する。たぶんこの辺りで「かわいい」弾幕が飛び交っていると思われるがP-Tubeなので弾幕っつーより滝である。怯えている少女達の肝試しはかわいい。再現性東京では古文書にそう書かれている。
「悪霊が肝試しってのも妙な話だよな……ああ、俺を奇術師かなんかと思いたきゃそう思っときな。オマエらの中じゃそれが「真実」サ」
「そう! クウハ殿は『悪霊』の演技が得意な奇術師! 奇術師なんですぞ! だからこれも手品!」
 『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)は不敵な笑みを見せ、画面の向こうに向かって語り掛ける。その口調や態度からは嘘を言っているようにはとても見えず、自信すらも感じさせた。だからその発言に戸惑いのコメントがちらほら流れていく。「編集でなんとかしますゾ」みたいなことを考えていたヴェルミリオはここで慌てて割って入る。己の上あごのあたりに触れてカパカパさせることで仮面アピールをし、「なんだ仮面か」の定番コメントで埋めていくまでが定型。
「わーっ……! 撮影するのに丁度よさそうないい雰囲気でしてー! いかにも肝試し向けのお化け屋敷ですの! 本物の廃ビルですけど!」
 『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)はカメラ目線の仲間たちをよそに、背後のビルに視線を向けた。繁茂はそれに合わせカメラを動かし、おどろおどろしい廃ビルを移す。なお、この廃ビルは本物なので何かのきっかけでヒルになったりはしない。したらしたでルシアが吹き飛ばしてしまいかねないが。
「スケさん達と肝試し!? 肝ってことは……レバー! 肝臓だよねっ! ボク骨もレバーもだーいすき!! わ~い! やったぁ~!」
 『う わ で た』『(( ‘ᾥ’ )』などのコメントが乱舞する原因となった『お師匠が良い』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)の姿は見事に二頭身のぽてっとした体格で、顔立ちが( ‘?’ )だった。不機嫌そうなのに明るい声なので視聴者兄貴達の脳が見事におバグり散らかしている。少し繁茂がカメラをパンした間に再度映ったらなんかすごい美女がそこにいるし。落差のあまりサウナばりのととのいをおぼえてしまいそうだ。
「リコリス殿、肝試しというのは……(ごにょごにょ」
「え? 怖い? きいてないよ~! ( ‘ᾥ’ )」
 ヴェルミリオから真実を伝えられたリコリスの顔のくしゃくしゃ具合といったらない。視聴者達からすればこの状況、果たしてどうなってしまうのかと心配しきりであった。
 なお、ろくなことにならん模様。


「もちろん怖いのですよ? 怖いのですけども~? こういう場所では、『怖い』という気持ちも楽しむことが大事でして! ……ところで千代さんまぶしいのですよ!」
「だって廃墟の暗闇って怖いじゃないですか!」
 ルシアはコメントに流れた『怖い?』という質問に考えながら応じる。彼女は日々の心の動きに対し、楽しむ気持ちがあるようだ。千代はといえば、ライトでも背負ってるのかという勢いで輝いているのでその怖さも半減である。BGMのように流れる涼花の演奏がおどろおどろしさを含んでいるので、プラマイでやや怖くないという感じ。
「リコリスちゃんかわいいねぇ! あとぼくとこえ似てるね。えへへ」
「本当だ~~~~!! えくれあさんとボクって似てる~~!」
 えくれあは姿を希望ヶ浜ナイズしているからともかく、リコリスも八頭身美少女の姿でキャッキャウフフしながらなので視聴者にとっては眼福だ。なんか視界の隅で砂が崩れるような音が聞こえたが気のせいだ(イレギュラーズはちゃんと夜妖の消滅を視認しているが繁茂が音声編集で切った)。
「へへっ、ここをこうすりゃ……ホラ、抜けた。こっちに『いかにも』な部屋があるな、行こうぜ」
 クウハは生放送にもかかわらず堂々と空中浮遊、そして壁抜け(物理)を披露してみせる。あまりにも自然に行うものだからコメント欄は戸惑いと『すごい編集ですね』『ARかな?』などの意見で埋まっている。これが希望ヶ浜メインの配信だったからセーフというか、多分『再現性東京でさえなければ』普通に受け入れられていたはずだ。それをCGとかARとして自分をごまかす視聴者も視聴者なんだが。
「なるほど。やはりあなた達も困っているのですね……きちんと祓ってあげなくてはいけませんね」
 ヴェルミリオがカメラを預かる格好で、繁茂がフレームイン。中空に向かって何事か納得するかのように頷きつつ、あっちとこっちと、とあらぬ方向を指差す姿は視聴者にも、そして周囲の女性陣にとっても驚くべき光景だった。多分、一番ビビり散らしているのはこのタイミングで激しくギターを鳴らし始めた涼花なんだと思う。
「紙を補強するのも必要だよね……ちょっと慎重に行こうか…………」
「このあたりにも夜……じゃなかった亡霊が! 魔h、不思議な力があれば解決できるのでしてー!」
 ルシアは言葉を慎重に言い換えながら、しかし魔砲を使うことには一切の躊躇がなかった。破壊音と強烈な光が乱舞するのを背景に、ファニアスが慎重にボロボロの御札を貼り直し修繕する様子がある意味滑稽だ。滑稽だ、っていうか一部の札は巻き込まれて消滅してしまっている。
 背後のスペクタクル(CGだとヴェルミリオがしつこくアピっている)はともかく、消えた御札を見る視聴者達は悲鳴じみたものを書き込んでいく。
「こちらには小さな神棚もありますね。実技の一貫として修理いたしましょうか。……そうそう、わたくしが読んだ怪談ですと、鮮血を求める血染めドレスの女性を、通りすがりの御方が『破っ!』と祓ったそうです」
「悪霊対悪霊たあ面白えなァ、ここはひとつ……破っ!」
 半ばとれかかった神棚を素早くキャッチしたセスはそのまま修繕に入りつつ、噂話レベルだけれど、と話を振る。このビルでは夜妖が半ば不定形な形で揺蕩っており、こうある、と定義するとそのように現れる……結果として先程のエクレアと八頭身リコリスとの絡みで消失しているわけだが、またぞろ変な属性が付与されたらしい。
 突如として姿を顕しためちゃくちゃリアルな造形の悪霊は、一同を敵と見定めると容赦なく襲いかかるが、クウハの適応力のがなお早い。破っされたら消滅する運命にあった悪霊(夜妖)は、派手な光を背景に砂のように消えていった。ヴェルミリオはその辺のやり取りについてはもう半ば諦めている。幽霊がガチで出現するのも、イレギュラーズがよくわかんない方法で倒すのもセーフ。ただ、『イレギュラーズとしての技能で倒す』のは、再現性東京202Xとなった希望ヶ浜の者達には刺激が強すぎるのだ。だから適当にしておけ、ルシア。
 かと思えば、ヴェルミリオはつかつかとカメラ(を構える繁茂)の側へと近づいていくと、おもむろに彼の顎を持ち上げてみせる。性別不明白骨と黒肌(コス扱い)男性の顔が近い!
「繁茂殿、そろそろその美形をこちらに向けてもよいのでは?」
『ヴォォォォォオエエェェェェ……』
「……な、なるほど除霊の一貫ですか」
 ヴェルミリオのイケメン(性別不明)ムーブに焦った繁茂の近くで、イケメンムーブに弱い夜妖が音を立てて消滅する。かと思えば、その二人のやり取りに刺激を受けたものもいた。リコリスだ。
「えくれあさんあれーッ! 撮ってー!! ( ‘ᾥ’ )
「任せて! ちゃんとカメラに収め、おっ、とっと……?」
「あああああっ!?」
 リコリスは素早くえくれあに指示しつつ繁茂からカメラを奪ってトスするが、えくれあが構える前に映像を見ようと回り込んだため、足をもつれさせた彼女と一緒に床に倒れ込む。カメラはえくれあの腕の中で反転し、彼女らふたりを映し出した。また消滅音が響いた。さては尊い百合に弱い夜妖だなオメー。
 なお、この間ファニアスとえくれあは腕組んでいたのでその拍子になんやかんやあってあれやこれやだ。
「流れてる曲で強さが変わる幽霊が暴れているという噂も聞きました」
 そんなやつまで居るの?! と思ったけど涼花が居るんだからそんな奴がいても全く違和感がないのだ。やったね。
 不気味なBGMを流していたらなんかルシアが押され気味だったので、彼女はスライドホイッスルに楽器を持ち替えた。いやずいぶんと奇矯な楽器持ち出したね君。
 案の定というか、かなりおかしなノリで音楽バトルじみた雰囲気になっているが効果はあるらしい。
「わーっ! なんでボクばっかりねらっ ( ‘ᾥ’ ) ……ってくるのー! ( ‘ᾥ’ )」
 リコリスはといえば、尊い百合から逃れたあとはなぜか二頭身になって夜妖から逃げ回っていた。と思ったら反撃してぶっちめていく。この子強いのか弱いのか微塵も理解できねえのよ!
 あとちまちま顔芸挟むせいでコメント欄が大いに荒れる。荒れまくる。
「なァ、ホネホネボーン。その仮面の下どうなってんだ? いいじゃねェか。出し惜しみすんなよ。俺とオマエの仲だろう?」
「あまり、意地悪しないでくだされ。貴方の紅玉を独り占めしたくなってしまいます」
 クウハはフリーになったヴェルミリオの間合いに踏み込むと壁ドンで顔を近づける。ヴェルミリオは、逆にクウハの顎をクイっとする。息のかかる距離の二人にまた夜妖が消えた。
「千代殿、皆さまを連れて先へ! ここはスケさんにおまかせを。このカメラをお預けいたします。必ず引き取りに参りますゆえ!」
「ぴぇ!? 私!? ……うう! スケさんから任されたのなら……やるしかない! 女は度胸! 『烏天狗』の千代にまかせてください! 御武運を!」
 ヴェルミリオはひとしきりクウハと顔が近いことをしたら素早く千代に声をかけ、ハンディカムをトスして屋上への階段を指差す。
 千代はその流れに素早く適応すると、ハンディカムをしっかりと掴んで高らかに応じる。息の合った反応、その熱量に周囲の夜妖が何割か爆発四散して消えていった。
 ……さあこの勢いで最上階だ! 果たしてホネホネボーンは、えくれあは、他の『配信者』達は無事なのか……!!


「ハデハデなバトルはまっかせたよん¶」
「ここまでヤバげな状況だなんて聞いてないですのーー!?」
「そりゃあそうだろ。下で散々やらかしたもんなァ?」
 ファニアスが後方に下がって治癒に回ろうとするのを後目に、ルシアは眼前の状況に思わず悲鳴を上げた。クウハはなんとなく察していたのか、祠の周りを暴れまわる夜妖の軍勢に呆れ気味の視線を向ける。いろんな形を指定したイレギュラーズにより、夜妖はそれぞれの形質を得た。沢山の種類の、たくさんの夜妖。面倒なことこの上ない……が、攻略法がわかっている以上はそこまで強敵というわけでもないか。
「ヘッ、ここから戻ったら全員で記念パーティーだ、勝っていい飯食おうぜ! 撮れ高も絶好調だ!」
「皆様と一緒であれば、もう何も怖くはありませんね。全力で片付けましょう」
「みんな~がんばれ~!」
明らかにフラグを建築し始めたクウハとセスの姿はともかく、えくれあはファニアスとともに治療体制を整える。とはいえ、治療自体は映像にそう残らない。今撮られたとしてもさしてリスクはないといえよう。
「祠の周りに本物の幽霊が……この様子だと、成仏できなくて困っているようですね」
「ええっと肝試しって祠をえいやってしないと終わらないんだよね?! そうしないとレバーのフルコースもパアなんでしょ! 困るよ! ( ‘ᾥ’ )」
「もうレバーのことは忘れていいと思……いや! 思いっきり食べよう、レバーを!」
 繁茂の視界には、明らかに成仏しそびれた幽霊達の姿がちらついていた。これではならぬ、と攻撃態勢に入る彼を囃すようにリコリスがまくし立てるが、彼女の言葉はもう彼女以外には額面通りにしか理解されなかったりする。多分決意とかそういうものをマシマシで挑んでるはずなのにこの( ‘ᾥ’ )顔じゃなあー!
「こんな状況で近づかれても倒す方法なんてないですよぉ~~~~!!」
 千代は、数の暴力で近づいてくる個体群に対しおもむろに上半身を振り乱し、胸でもって次々と夜妖をしばき倒していく。どうやらここまで我慢し続けた恐怖へのあれこれがバーストしてしまい、近接戦を強要されたことで意識が暴走しているのだろう。あと、背中から生えてきた触手(ミサキちゃん)が彼女を絡め取るものだから不思議現象はともかく強く出た体のラインで撮れ高爆裂。多分、ヴェルミリオのことは誰も覚えてな……。
「これじゃあもうどうにもならないよ~~! ( ‘ᾥ’ )誰か勝てる人はいないの~~?」
「居るでございますとも、ここに一人!」
 リコリスが二頭身でわざとらくキメ顔をいれつつ逃げ惑っていると、窓越しに放たれた一撃が夜妖を貫く。ドアを前蹴りで蹴り飛ばし、左腕を高々と掲げた姿に「待てよ……あの細くて白いSilhouetteは……?」などと流れるや否やヴェルミリオが目元でピースサインだ!
「待たせましたな!」
『ギャアアアアアアア……』
 熱い展開に思わず夜妖達も一網打尽だ!
「ちょっ……このままじゃルシアの立場がないのでして! 負けないのでして……!」
 ルシアはヴェルミリオの活躍に戸惑いながら、しかし自分もと本気を見せる。この調子なら大丈夫そうだが、と祠のやや上に向けられた手は、まばゆく輝き始め……。


「大成功ですな! これで撮れ高と、スケさんとサヨナキドリのチャンネルの登録者数は……」
 ヴェルミリオは、昨晩の活躍に関する動画がバズっていると信じて疑わなかった。一応祠は無事だしCGってことで許されたし大丈夫なのだろう。
 ……あのあと、祠ごと吹き飛ばしかねない勢いでルシアは魔砲を叩きつけているように見えた。
 何につけても、よく無事だったな……。

成否

成功

MVP

ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵

状態異常

なし

あとがき

 撮れ高のためなら大失敗の可能性にまで飛んでも困るよな、普通!

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