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シナリオ詳細

<Stahl Gebrull>退避せねば、次はない。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「おい! 援軍はまだか!?」
 特務派軍人だったエメリヒは、同僚に向けて叫ぶ。しかし、その男も「まだだ!」と返す。その返事にエメリヒは舌打ちをした。
 敬愛する『特務大佐』パトリック・アネルが、魔種となったという。確かに、それを知らされる少し前から、おかしな命令ばかり下っていた。命令に対し疑問を抱いたが、それでもその任務を遂行しなくてはならないと考えたのは、エメリヒたちが軍人だったからである。勿論その異常な命令は撤回され、今では対立していた軍務派の者たちと行動していたのだが……
「こっちだ!」
「いや、そっちにはさっきの奴が……」
「だが、このままここにいても死ぬだけだ!」
 同じ基礎軍事訓練を行っていたとしても、本来は別の部隊であった者たちだ。急に同じ部隊に編制され、訓練も無しに実地投入されても、以前のようには動けない。とはいえ、そんなことも言ってられないことは分かっている。一人のミスで大勢が死ぬ。それが軍人の常である。
 そんなエメリヒたちの目の前に、斧を持ったセレストアームズが急降下し、地上へと降り立つ。セレストアームズは無慈悲に斧を振り上げた。
「退避ー!!」
 誰かがそう叫んだ。瞬間、斧はそう叫んだ男に振り下ろされる。鮮血。それは初めて見た物ではない。それでも、見慣れない。
「おい! 退避だ!!」
「あ、ああ……」
 エメリヒは力の入らない足を無理矢理動かして、ただただ逃げる。上空には他にもセレストアームズたちがいる。逃げ切れないと分かっていても、今、彼らには逃げるという選択肢しか残されていないのだ。


「HQ! HQ! 第十八部隊が救援を要請しています!」
「今、救援に行ける部隊はない! ローレットに回せ!」
 魔王城『エピトゥシ城』。ここは唯一アーカーシュの権限を、パトリックのコントロール下にない場所だ。故に、鉄帝国はこの場所をローレットに与えたのだ。
 そんなエピトゥシ城で、いつでも出撃できるように待機していたイレギュラーズたちの前に鉄帝国の軍人が現れた。
「そちらの方。ええ、貴方です。救援をお願いします」
 そう言う彼は冷静を装っているが、その表情からは焦りの色も見える。その場にいたイレギュラーズたちは彼の言葉に頷くと、彼は淡々と状況を説明しはじめた。
「鉄帝国の第十八部隊が、複数のセレストアームズと接触しました。数は今の所、十体程確認されています。対して、第十八部隊の数は十――急拵えの軍務派特務派混合部隊です。
 皆さんには、彼らの救援に向かって頂きたい」
 それはつまり、彼らを逃がしてやれば良いと言うことだろうか。イレギュラーズたちは、そう彼に尋ねた。
「そうですね。五割残っていれば、こちらで再編します。そして、可能な限りセレストアームズの数を減らしてきてください」
 彼は「詳細はこちらです」とイレギュラーズに紙切れを渡した。そこには、第十八部隊がどこにいるのか、そして、現時点で判明しているセレストアームズの武器種内訳が書かれている。
「それでは、宜しくお願いします。ご武運を」
 彼はイレギュラーズたちに向けて敬礼する。イレギュラーズたちは彼に見送られながら、各々武器を手に取り現場へと向かった。

GMコメント

 初めまして、こんにちは、こんばんは。萩野千鳥です。
 早速ですが簡単に説明致します。

●目的
 第十八部隊を逃がしてください。最低でも五人がエピトゥシ城に帰投できれば問題ありません。
 また、全滅とは言わずともセレストアームズをある程度撃破して数を減らしてください。

●地形
 エピトゥシ城付近の戦場です。
 黒曜石のような不思議な素材で出来たとげとげした岩が沢山ありますが、空中からは丸見えです。

●敵
『セレストアームズ(斧)』×5
 斧を持ったセレストアームズです。空中で索敵を行い、攻撃時に急降下して地上へ降り立ち、至近距離からの斧を使った単純な攻撃を行います。
『セレストアームズ(槍)』×3
 槍を持ったセレストアームズです。常に空中から一定の距離を保ちつつ、近接距離からの槍を使った単純な攻撃を行います。
『セレストアームズ(ビーム)』×2
 ビームを放つセレストアームズです。常に空中におり、遠距離からのビーム攻撃を放ちます。ビームにはいくつか種類があるようです。

●救援対象
『第十八部隊』
 特務派軍人エメリヒを含めた合計十名の軍務派・特務派の混合部隊です。既に一名死亡しています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 以上です。どうぞ宜しくお願いします!

  • <Stahl Gebrull>退避せねば、次はない。完了
  • GM名萩野千鳥
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月31日 21時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
結月 沙耶(p3p009126)
少女融解
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ

リプレイ


「五割だなんて、鉄帝の軍人さんたちは随分慎ましいのね。ボクは控えめな性格してないから、欲張っていくわよ」
「ええ。一人でも……いいえ、残った全員助けてみせるわ。神がそれを望まれる」
 鉄帝の軍人から聞いた第十八部隊がいるであろう位置情報を元に、『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)と『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は、同じく先行する『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)と共に現場へと急行した。珠緒の召喚したスターバードが周囲を索敵しつつ最短ルートを導いてくれたお蔭で、まず先に蛍とその後ろを駆けるイーリンが第十八部隊の姿を捉える。すると、イーリンは大きく息を吸って、彼らに向けて声を張り上げた。
「第十八部隊の皆! 私たちは貴方たちの救援にきたわ! 走れる者はそのまま、負傷者はチャリオットを使って! 敵は私たちが引き受ける!」
「救援!? 本当か? 所属は……」
「ギルド・ローレットのイレギュラーズと言ったら、分かりますか? 司令部からの依頼で珠緒たちは参りました」
 二人に追いついた珠緒が、彼らの質問に答える。だが、これ以上丁寧に答えている暇はない。上空でセレストアームズたちが、こちらの様子を伺っている。それに気づいた軍人の一人が叫ぶ。
「エメリヒ! そっちの足を怪我している奴を乗せろ!」
「ああ!」
 エメリヒは急いで足を怪我した軍人をイーリンのチャリオットに乗せる。その間に珠緒は、その場に居る軍人の数を数える。一人足りない。
「あの、第十八部隊は十人所属していると聞きましたが……」
「――一人、死んだ。あの斧野郎にやられてな」
 そう言って、上空を見上げる。斧を持ったセレストアームズが五体、上空を飛んでいる。その話を聞いた蛍は「くっ……!」と、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「その死を無駄にしないためにも、必ず生きて帰りましょう!」
「はい!」
 残された彼らの声を聞くと、これ以上被害を出さないためにも蛍は積極的に前に出た。セレストアームズは未だに第十八部隊に狙いを定めているように見えた。とにかく、退避する彼らから目を反らして貰わないと困る。蛍は自身の周りに桜吹雪を舞わせて、近くにいるセレストアームズの視線を自身に向けるよう引き付ける。
「ほら、君たちの相手はボクたちイレギュラーズ、だよ?」
 蛍が引き付けている隙に珠緒は他に怪我をしている者がいないか確認すると、チャリオットに乗っている軍人の怪我を簡単に処置を済ませる。
「細やかな処置は期待しないでください。死なせない事が最優先ですので!
 ――ニルさん、聞こえますか? 今から第十八部隊の皆さんが城に向かいます。チャリオットに一人、簡単な処置をしただけの負傷兵がいます」
『了解、なのです。ニルからもそちらの様子は確認できていますから、後は任せてください』
 珠緒が召喚したもう一体のスターバードを使って、『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)とテレパスで会話をする。ニルも同じようにスターバードを召喚しているので、こちらの様子や退避経路については問題ないだろう。
 珠緒たちがそうしている内に、遠くでこちらの様子を伺っているセレストアームズが動き出した。イーリンはそれに気づくと、すぐにチャリオットを城へと向かわせた。
「さぁ、貴方も退避を」
「……っ、戦場でこんなことを頼むのは正気じゃないと思うだろうが、一つ頼まれてくれないか」
 軍人の一人、エメリヒがテキパキと指示を出すイーリンに声をかけた。その表情は、どこか思いつめたようにも見える。
「何?」
「死んだ仲間を連れて帰りたい」
「……そう。死んだ人の位置、分かる?」
「この先に開けた場所がある。俺たちが主戦場として使っていた場所だから、すぐに分かると思う」
「分かったわ。一段落したら探しに行くから……貴方は先に戻っていて」
「恩に着る」
 エメリヒは敬礼をすると他の仲間たちの後を追い、城へ向かって退避し始めた。


 斧や槍を持ったセレストアームズは退避する第十八部隊に目もくれず、蛍に向けて各々武器を振り上げる。蛍は自身が傷つこうが気にも留めずに、次は遠くにいるビーム兵器を持ったセレストアームズを引き付けようとしたが間に合わなかった。
「――っ!!」
 遅れて退避したエメリヒの足を撃ちぬいたのだ。幸い、生きてはいる。だが、このままでは逃げ切れない。死を覚悟した、その時だった。エメリヒの進行方向側から、ワイバーンの群れがやって来る。中には、低空ながらも生身で飛んでいる者もいた。
「もう、誰一人だって、死なせない……!!」
 『とべないうさぎ』ネーヴェ(p3p007199)は、自身が乗っていたワイバーン・ソレイユから降りると、負傷したエメリヒをソレイユに乗せた。
「っ、すま、ない……」
「大丈夫です。目指すべきは、最善の状態。……もしも、仲間が亡くなったのなら……あなた方は、その方の分まで、生きてください! その方が、自分が死んだからと言って……仲間の死を願うとは、思えません」
「……本当に、すまない」
「謝ることは無い。よく耐えてくれた。そんな貴殿に一つ予告状だ。貴殿らの生命を、ゴーレムどもから盗ませてもらう! 私たちが来たからには安心するがいい!」
 ソレイユに乗せられたエメリヒに向けて、『表裏一体、怪盗/報道部』結月 沙耶(p3p009126)が自信満々にそう語った。その言葉に、少し安心したのかエメリヒは目を閉じる。そんな彼を、ニルは暖かな風と柔らかな光で包み込む。これで、足の怪我は随分マシになったはずだ。
「それにしても、」と一緒に行動していた陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が続ける。
「まだ、全てのセレストアームズを引き付けられていないみたいだな」
「そうみたいだな。それにしても、あれがセレストの名を冠するなど虫唾が走る……自分の台本に泥を塗られた気分だよ」
「そういえば、あの蔦の名前を付けたのは虚様でしたね――っと、雑談している暇はなさそうです」
 既に撤退準備を済ませたイーリンと珠緒が蛍と共にいるとはいえ、彼女たちが全て引き付けられるわけではない。 ネーヴェはソレイユに彼を連れて城へ向かうよう言うと、ソレイユはエメリヒを心配そうに見守りながら『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)とニルが召喚したもう一羽のスターバードと共に、少し先にいる第十八部隊の面々の元へ向かった。それを確認すると、残った面々は先に赴いた三人の元へと急ぎ、戦線に加わる。
「お待たせ! まだ彼らは射程圏内だろうが……私たちも引き付け役を任されよう」
「藤野様一人だけにはさせません。わたくしも協力致します」
「それじゃあ、手前のをよろしく! 奥にいるあのビーム持ってるやつはボクに任せて」
 蛍がそう言うと、桜がビーム兵器持ちのセレストアームズの周りに吹雪く。その後に続くように、ネーヴェは自分自身の魅力を最大限に引き立てセレストアームズを魅せる。
「あなたが、狙うべきは。このか弱い兎、です!」
 ネーヴェの誘うような言葉にも反応しなかったセレストアームズたちに対しては、沙耶が挑発的な名乗り口上を上げ注意を逸らす。これで、その場にいるセレストアームズたちの意識が、第十八部隊からイレギュラーズたちに移った。ビーム兵器持ちのセレストアームズたちが蛍に向かってくる。――想定通りだ。
「まとめて食らいなさい!」
 珠緒がその背に光の翼を現すと、その翼を羽ばたかせてできた光の刃でビーム兵器持ちのセレストアームズ二体を斬りつける。その光の刃に紛れ、イーリスが急所を狙う。
「絶対に逃さない……!」
 たった一突きで、頭、喉、鳩尾の三点を的確に抜く。すると、そのビーム兵器持ちセレストアームズから何とも言えないくぐもった声が響く。まるで、悲鳴のようだった。そんなセレストアームズに対して、ニルは後方から高位術式を展開すると、様々な力が具現化し纏わりつくように追撃する。業火に包まれながら、高度を落としていくセレストアームズ。それをチャンスと見た珠緒が一太刀で決める。その一閃は、セレストアームズが持っていたビーム兵器ごと真っ二つに斬る。再び蛍が桜吹雪でセレストアームズの視線を自身に向けさせる。敵わない、そう感じたのだろうか。もう一体のビーム兵器を持つセレストアームズは、一瞬たじろぐも蛍に向かっていった。
「っ!」
 ビームを使った攻撃ではないにしろ、一撃は重い。だが、すぐにその傷は癒えた。
「回復は任せてください」
 先程攻撃に回っていたニルだが、仲間が負った傷をまとめて傷を癒す。これでまだ戦える。
「無事にお城へ戻れるまで、ニルたちは倒れるわけにはいきませんから」
 ニルはきりっとした表情で、睨みつけながら残る一体と対峙した。
 ビーム兵器持ちのセレストアームズたちと戦っている最中、錬はネーヴェと沙耶を狙いに来た斧や槍を持ったセレストアームズたちの前に立つ。
「これ以上行かせるものかよ、イレギュラーズの意地ってやつだ!」
 錬は五行結界符を展開し、陰陽術でセレストアームズを拘束する。初めは抵抗していたセレストアームズも、段々と勢いを失くしていく。これで、少なくとも近距離型である斧や槍を持ったセレストアームズたちは、退避している最中の第十八部隊の元へ簡単に行けなくなった。
「稔!」
「今の内にチャリオットに乗り込め!」
 第十八部隊と合流したソレイユと共に行動していた稔は、遠くから聞こえる錬の声に応えるように、すぐに第十八部隊に指示を飛ばす。人の足で逃げるよりもチャリオットの方が速い。そう判断した結果だ。重度の怪我人はもう既にチャリオットやソレイユの背に乗っている。念のためセレストアームズの行動に注意しながら、時折手を貸しながらエメリヒ以外全員をチャリオットに乗せると、ニルのスターバードと共に第十八部隊は退避した。
 稔は既に城へと向かったチャリオットとソレイユをちらりと横目で見る。このままならば、問題なく安全圏へと辿り着けるだろう。一番の脅威であるビーム兵器を持ったセレストアームズも、こちらの様子は気にも留めていないようだ。
「これで、全力で向かえば安全圏に辿り着くまではそう時間もかからない」
『よーっし! これであの野郎を遠慮なくボコせるな!!』
「そうだな。全力で暴れようか」
 稔は三人の元へと向かう。稔が向かっている間、ネーヴェは魔法がかけられた付け爪であるミス・フォーチュンで、引き付けていた斧を持つセレストアームズを斬り裂く。とはいえ、頑丈なセレストアームズには傷がつく程度である。
「できるだけ同じ敵を狙いましょう!」
「了解だ!」
 沙耶がネーヴェに続く形で、目にも留まらぬ速さで斧を持った一体のセレストアームズに一撃を与える。しかし、ただ相手もただやられているわけではない。攻撃を受けていないセレストアームズが急降下したと思うと、沙耶に襲いかかる。
「くっ!」
 重い一撃をどうにか防ぐが、耐え切れない。槍を持つセレストアームズも追撃しようと、武器を構えた。
「させるかよ」
 錬は魔境を作り出すと、近くにいたセレストアームズを覆うように暗黒の雫が注がれる。その雫のせいか槍の軌道は沙耶から外れる。それから畳みかけるように、三人の元へと到着した稔は終焉を思わせる紫の帳を下ろす。それらは、この世の物とは思えない、不気味な、重々しい空間を作り出す。
「はぁ――!」
 再びネーヴェが斬り裂く。それは見事命中し、斧持ちのセレストアームズは落ちる。この調子で壊していこうとしたその時、ネーヴェが遠くからこちらに向かってくる異音に気づく。
「――何か来ます!」
 何が来るのか、一度手を止め確認する。それは、一体のセレストアームズ、のような何か――アルトラアームズだ。部隊長のような物だろうか。イレギュラーズたちは一度集合すると、その様子を見る。アルトラアームズはその場にいたセレストアームズに何らかの合図を送ると、彼らはは一斉に退散していく。そして、やって来たアルトラアームズはこちらを一瞥すると、殿を務めるかのように引き返していった。
「これは……向こうも撤退するつもりなのでしょうか」
「そうだね。どうする? 可能な限り倒してほしい、って言ってたけど」
「向こうが撤退するなら、これ以上は深追いしたくはないのだけれど……」
 珠緒と蛍の言葉にイーリンは答える。だが、彼らが引き返した先には第十八部隊が主戦場としていた場所がある。エメリヒの話によると、そこに遺体があるという。
「『連れて帰ってきてほしい』と、頼まれたの。私も、できれば亡くなった方を連れて帰りたい」
「本当にただの撤退なのか、確認ついでに良いんじゃないか?」
「正直、俺たちはアレを全部壊したいが……流石にそれは無理だろう。一度情報を司令部に持って帰るのも悪くない」
「そうと決まれば、早く連れて帰りましょう」
 皆の合意の上、アルトラアームズたちの様子を見ながら先へと進んだ。
 気配をできるだけ殺しながら彼らの後をつけたが、彼らはこちらを警戒はするも特に攻撃することもなかった。どうやら、本当に撤退するつもりだったらしい。第十八部隊が主戦場としていた場所で後を追うのを止めると、彼らは急いでどこかへ戻って行くようだった。魔種と化したパトリック大佐の元へ戻ったのだろうか。それは、分からない。
 それらを見送ると、全員で亡くなった軍人を探す。とはいえ、少し開けた場所だったからか、すぐに彼は見つかった。
「これは……酷いな」
 彼を真っ先に見つけた錬は、ついそんなことを溢してしまう。彼には傷が一つしかなかった。一撃で倒されたのだろう。周りに飛び散っていた血痕からも、その悲惨さが分かる。「こっちだ!」と錬は皆を呼び寄せると、稔は彼の前で膝をつき「よく戦った」と短く敬意を込めて告げる。皆もそんな彼に続くように各々祈りを捧げた。
「それで、どうやって連れて帰ろうかしらね……」
「私の陸鮫がいる。この子に乗せて帰ろう」
 沙耶の提案に皆同意すると、遺体を丁寧に彼女が連れていた陸鮫に乗せて城へと帰投した。


「お疲れ様でした。まさか、九人も無事生き残るとは……」
「ローレットに、そして怪盗リン――んん、この結月沙耶にかかればなんてことはない。それが役目だからな」
「流石ですね。一人亡くなったのは残念ですが……それは仕方がありません。ここは、戦場ですから」
 エピトゥシ城へと戻ったイレギュラーズたちは司令部に報告し、連れて帰った遺体を引き渡すと、そこにいた彼は少し驚いた表情を浮かべてそう話した。そんな中、ネーヴェがきょろきょろと辺りを見回す。
「そういえば、ソレイユに乗せた軍人さんはどうなりましたか?」
「エメリヒ上等兵のことですか? 彼ならもう意識を取り戻しています。が、足を負傷していますので、作戦からは外されることになっています」
「そっか……生きているんですね。良かったです」
 ネーヴェが胸を撫で下ろす。どうやら、他の負傷兵に関してもある程度まで回復を待ってから、別の部隊に再編されるらしい。
「あの、再編されたら、もう一度戦線に出る、のですよね」
「ええ。我々鉄帝が、皆さんが、あの魔種を討ち取るまで……特務大佐の弔いを、復讐を、止めるつもりはありません」
「そう、ですよね……ニルは皆様に、それまで少しでも休んで、おいしいものを食べてほしいです。次も、ちゃんと帰ってきてほしいから」
「……伝えておきましょう」
 そう言うと、彼はイレギュラーズたちに敬礼をして去って行った。鉄帝の司令部は相変わらず忙しそうだ。この戦いもまだ続く。そんな彼らの為に祈る。例えどんな状況でも、生きなければ次はない。だから、この戦場に立つ者たちが皆、生きて帰ってほしい、と。

成否

成功

MVP

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女

状態異常

藤野 蛍(p3p003861)[重傷]
比翼連理・護
結月 沙耶(p3p009126)[重傷]
少女融解

あとがき

お疲れ様でした。
無事、九割救助を達成しました。
ご参加頂き、ありがとうございました!

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