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シナリオ詳細

<太陽と月の祝福>照らせ、夜が果てるまで

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●世界が燃え尽きるまで
 刀身にまざまざとついた魔物の爪痕。無骨な柄を握りしめ、ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)はグリーザハートを構えた。まわりを周回するリフレクターオーブに防御を任せ、走る。
「深緑を救うため、これが最後の戦いとなるだろう……!」
 『不完全な夜』に閉ざされた村のあちこちから『闇の手』が伸びるが、ムエンはそれらに怯むことはない。
 刀身の爪が赤く輝き、戦いの中で偶然『飛び火』したフェニックスの炎が刀身を纏うように燃え上がる。
「夜の帳は妖精女王によって払われた。今や夜を恐れることはない! 我等の炎で、この夜を照らすのだ!」
 豪快に放たれた横一文字は『闇の手』たちを見事に切断し、消し去っていく。
 そのまま突き進まんとしたムエンの足は……しかし、ぴたりと止まった。
「……なんだと」
 無表情な顔に怒りと憎しみをたたえ、眼前に現れた『眠りに落ちた人々』をにらみ付ける。
 厳密には、人々を掴んで操る『闇の手』たちをだ。

 深緑、ファルカウ上層。
 カロンの権能によって夢の迷宮と化したこのエリアを突破し、深緑存亡の危機を救うべくイレギュラーズたちは走っている。
 ここはそんな戦場の一画である。
 『夜の王』はその復活時、自らの権能とカロンから与えられた権能を複合させ、己の夜が届く全ての範囲で他者の力を無力化するという卑怯なまでな力を発揮していた。
 それは妖精女王による命がけの魔法で払われたが、夜の王が消えたわけではない。そしてその力の全てもだ。
 このエリアには夜の王が残した力が影響し、村一つ分がすっかり夜の風景へと包まれていた。
 更には全ての住民は呪いによって眠らされ、夜の眷属である『闇の手』たちに取り憑かれその肉体を操られていたのだ。

 剣で武装し斬りかかってくるファルカウの民。
 その動きは眠っているとは思えないほど鋭く、そして機敏だ。
 なぜなら『闇の手』が大量にまとわりつき、その動きを制御しきっているからだろう。
 ムエンは剣で防御しながら飛び退き、そして相手の様子をうかがった。
「闇の手だけを切り払うことは……そう容易くはないな」
 敵の狙いはズバリ、民を人質とすることだろう。
 であれば容易に人質をわたすことはしないし、堂々と盾にしてくるはずだ。
 だが……。
「私はこの剣に大切な人々を守ると誓った。捕らわれた者たちの魂すらも、この夜から覚ましてくれよう!」
 幾度も剣を撃ち合い、そして隙をついた斬撃で相手の胴体へと斬り付ける。
 吹き上がったのは鮮血……いや、『闇の手』に内包されていたエネルギーだ。
 【不殺】能力をもつ『ノーギルティ』の術を使い、見事に闇の手だけを倒したのである。
「何体でもかかってくるがいい。その闇だけを払ってみせる」

GMコメント

●オーダー
 ファルカウ上層部での戦闘。夜のフィールドに包まれた村に、『闇の手』という夜の眷属邪霊たちが集まっています。
 カロンたちを倒すべくここを突破しなければなりませんが、その障害として民を人質として乗っ取った闇の手たちが現れました。

●エネミー
・ハンドトラッカー
 『闇の手』によって操られた人々です。彼らは眠りの呪いに墜ちており、無事なまま倒すには【不殺】攻撃でトドメを刺すのが確実です。
 このへんの村の幻想種(ハーモニア)で構成されており、一般的な剣や弓で武装しています。
 武装によっては追加効果や異常状態がついているものもあります。

・闇の手
 夜の眷属達であり、邪霊の一種です。闇から伸びる長い手のような姿をしています。
 闇から飛び出し斬り付けたり殴りつけたりという攻撃をしてきます。
 【暗闇】や【泥沼】、【不運】などの異常状態を付与してくることがあります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <太陽と月の祝福>照らせ、夜が果てるまで完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年06月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
エリス(p3p007830)
呪い師
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
霞・美透(p3p010360)
霞流陣術士
風花(p3p010364)
双名弓手
ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)
焔王祈

リプレイ


 棒状に畳んだ護戦扇をナイフのように握り、迫るハーモニアを突き飛ばす『無名偲・無意式の生徒』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)。
「操って攻撃を戸惑わせつつ攻めてくる、か。いやはや合理的なことで」
 突き飛ばされたハーモニアはまるで人形のようなぎこちない動きで起き上がると、取り落とした剣を握り込む。彼に戦う意志どころか起き上がる意志すらないのは、まとわりつく『闇の手』たちを見れば明らかだ。
「眠ってる分命乞いしてこないから手を緩める必要もないか。まぁ、間違って殺したらすまんね?」
「今は感情に流されないほうが得策かもしれないね。けど、取りこぼすつもりはないよ。君もだろう?」
 地面を杖で叩き、発生した魔方陣で強く足元を発光させる『霞流陣術士』霞・美透(p3p010360)。
 光にはどうやら攻撃的効果もあるらしく、迫るハーモニアたちが次々に倒れていく。
「人を操り戦わせる……悪趣味な連中だね、全く。
 悪いが、思い通りなどにはさせない。全て倒して全員救う、その為に私達が来たのだから!」
「その通りです。人の命を軽々しく盾代わりにするとはっ!
 この宇宙保安官いるかぎり! 貴様らの野望はここで打ち砕くであります!」
 『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)はビームリボルバーをホルスターから抜くと、牽制のために数発連射してからハーモニアたちへと突っ込んだ。
 ゼータバングルへ変身コードを音声入力。一瞬ムサシの身体が発光したかと思うと、走りながらであるにも関わらずコンバットスーツの着用を終えていた。
「闇の手……闇の王は凄まじい力で相対した人達を眠らせ無力化させたと聞いたでありますが、その残滓だけで『夜』を作り出すとは……。『アレスタシオン』!」
 腰から三段ロッド『Arrestation Attack Arum(アレスタシオン・アタック・アルム)』を抜くと、ジャキンと一瞬で展開。鋼の剣を叩きつけてくるハーモニア女性の攻撃をそれによって受けた。
「眠った人々の体を操る、ですか。邪精霊に誇りはないようですね。
 しかし、人形遊びでは我々を止めることは出来ませんよ」
 『双名弓手』風花(p3p010364)は黒い弓を手に取ると自らの魔力を帯電させた。魔力放射反応が紫色の花の形に浮きあがり、それらは自らの矢や服の内側に仕込んだボディスーツへも渡っていく。
 矢を番え、次々に射る。
 ハーモニアたちに刺さった矢には不殺の魔法が籠もっているようで、倒れるハーモニアたちは眠るように息をしていた。
 それにしてもやりづらい戦場だ。対策できているとはいえ、こうした状況では風花の強みをかなり殺されてしまう。
「酷い臭いがしますね。どす黒く濁った、願いの臭いが」
 だがこういう時こそ仲間同士で力を合わせなければならない。
 『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)はハーモニアたちに微笑んでみせると、手をかざして艶っぽく手招きしてみせる。
 小指から順に波打つように招くそのしぐさに、ハーモニアたちは……というよりそれを操る『闇の手』たちが誘引され群がっていく。
 そこへ、『剣に誓いを』ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)が『グリーザハート』に宿したフェニックスの夢焔を燃え上がらせ、たちまちの内に斬り捨てる。
「夜の王ともあろうものが民草を人質にしないとこちらの足止めも出来んとはな、呆れたものだ。その目に光を浴びせてやりたかったがそんな必要はない、なぜなら夜の王は特異点によって討ち果たされるのだからな!!」
 そんな中で、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)はハーモニアから離れた『闇の手』たちと戦っていた。
(夜の王の眷属! ああ、王には手を焼かされてきた、冬の王(脱け殻)戦では満足に成果をあげられず、結局本体とは戦えず…。夜の王もなすすべなくやられた…次は必ず滅する。
 妖精女王様も!今回ばかりは文句の一つも言いたいよ! 妖精武器として言ったらダメだけどさ!代償がある秘術を使ってさ! 行方不明になってさ! せめて術の詳細が分かれば助ける為の負担も減るのに!
 ブルーベルも結局三回ボコられた復讐も出来る前に他のイレギュラーズが倒しそうだし……。もう暴れてやる!)
 そんなサイズの後ろを守る形で、『王子様におやすみ』エリス(p3p007830)は飛びかかる『闇の手』を『ネージュ・リュヌ・エ・フルール』を奏でた音色によってかき消していた。
「これも夜の王が残した力の影響ですか……ファレノプシス様が弱めたとはいえなんて厄介な力なのでしょう」
 一刻も早く『夜の王』へと挑み、決着を付けたい。もしここで逃がしてしまえば、また力を取り戻し夜の王国を作ってしまいかねない。
 しかしだからといって――。
「この村の住民の皆さんを助けないという選択はありえません。非情な手段で足止めをしているつもりでしょうけれど……」
 エリスは手をかざし、今や自らを包みこんでいた呪いに意識を集中させた。
 キラリと光る『ドリーミングアイズ』。いまは、この指輪に込められた願いがエリスには聞こえていた。
「民を救い、そして夜の王すらも倒して見せます。必ず!」


 村の入り口に集まっていたハーモニアたちは無事に鎮圧することができた。
 が、装備の貧弱さや体つきからして彼らは戦闘能力の著しく低い人々だろう。こちらが村へ入ったことを感知するための見張りであり、内側の戦力を整えるための足止めなのだ。
 すっかりと夜色に覆われた村の中を、美透は発光し浮遊するキューブ型魔方陣と共に進んでいる。
 奇襲対策をしていないといえば嘘になるが、闇に紛れて攻撃できる『闇の手』が、この夜のフィールドのどこから攻撃してくるかわかったものではないのだ。警戒は常にしておくべきだろう。
「光で照らしているとはいっても影はできる。注意はしておくんだよ」
 美透はそう言って、手にしていた杖の先端をゆっくりとねじった。
 まるで調節ダイヤルをねじったかのように、美透を中心として広がる魔方陣の形状が変化。味方を強化する魔方陣が感性する。
「私はハンドトラッカーを優先的に狙う。神気閃光と同じ攻撃範囲のスキルを持っているのは……?」
 見回してみると、仲間達は首を横に振った。大半が近接戦闘用の非殺傷スキルの持ち主だ。あるいは、『幾億の罪とたった一つの罰』を持ち込んだ風花のように攻撃手段を外付けしたケースか。
「わかった。できるだけ私の周りにハンドトラッカーを集めて、『闇の手』によって庇われる個体がいたら高火力のスキルで排除してくれ。誘導は頼めるかい?」
 そういって視線を向けられ、サルヴェナーズは胸に手を当て頷いた。
「お任せを。しかし私には【棘】の力がありますので、どうかお気を付け下さい」
 相当に尖ったビルドスタイルをもつサルヴェナーズ。彼女の弱点があるとすれば【必殺】攻撃と行動阻害系BSくらいだが、美透とサルヴェナーズを囲むように味方を配置すればそのリスクは大きく減るだろう。
「さて……このあたりかな?」
 特に広い、魔法の井戸がおいてある広場で立ち止まる。
 すると、周囲の建物の扉が開き次々に武装したハーモニアたちが出現した。
 魔力の籠もった服や弓、戦い慣れた様子の剣やナイフといったよい装備で固めている。やはりこちらが本命だったか。
 最初から村の中をうろうろさせなかったのは、戦わせるための『人形』が劣化しないように家の中に保管していたからだろう。やり口の汚さの割りに、いやなところで丁寧だ。
「ようやくおでましか」
 マニエラはブーツで地面を踏みしめると、護戦扇『陽玉裏』に魔力を集中させた。
 が、それを遮るように闇のなから姿を見せる『闇の手』たち。わらわらと自らを束ねると遠距離攻撃を阻害するために庇い始めた。
「風花、サイズ」
「本領を発揮できそうでなによりです」
 風花は自らの魔力を増幅。浮き出た紫色の花弁が更に膨らみ、一瞬だけだが弓が満開の桜木がごとく膨らんだところで、矢が放たれた。
 パッと弾けて飛ぶ魔力のしぶきが花吹雪として散り、その中を抜けた紫色の矢が『闇の手』をたったの一発で破壊する。
「――花影狂咲・邪道一矢」
 そこへ更に、アイススフィアで強化したサイズの道具術が飛ぶ。投げた短剣を遠隔操作し、二度にわたって投げつける。
 こうして更にカバーに入ろうとした闇の手を牽制すると、そこへマニエラの魔力弾が思い切り炸裂した。
 弓を構えていたハーモニアに着弾。魔法の籠もった戦闘服を着ているとはいえマニエラたちのような強者の一撃を前にすれば布きれ同然だ。
「まずは盾とされるのを避けたいしね。弓もちのハーモニアを中心に狙っていこうか」
「全身鎧に盾でも持って陣形組んでいたら厄介でしたが、やはり人形遊びの精霊は人形に身を守らせない」
 風花は既に次の矢をつがえ、今度は破壊ではなく非殺傷の魔法を込めて弓持ちのハーモニアたちを撃ち始める。
 同じ弓兵ではあるが、その射撃速度も引く力もそして込められた魔力も凄まじい違いがあった。
 こうして遠距離攻撃役を落としていく一方で、剣やナイフを装備したハーモニアたちが前進してくる。今度は闇の手に守らせない。むしろ闇の手がハーモニアの後ろに回り盾にしている様子だ。
「サルヴェナーズさん、奇襲を避けたいのです。彼らを集めてください」
 ムサシは間違ってハーモニアを撃たないようにビームリボルバーの出力を落とし、オプションのレーザー・ジュッテを展開。グリップではなく銃身部分を握ることで逆手持ちにすると、A・A・Aと二刀流に構えた。ムサシがかつてたんこぶだらけになりながら覚えた防御の型だ。
「闇の王。お前と対峙することはないであります……それでも、それでも……罪のない人の生命を弄ぶお前たちなんかに奪われて……たまるかぁぁぁぁっ!!!」
 叫びをあげ、突進。ハーモニアによる大上段からの攻撃をレーザー・ジュッテで受け流すと、がら空きになった脇腹めがけA・A・Aを叩き込む。レーザーコーティングされたロッドは剣のように輝き、叩きつけた地点を中心に電撃が走る。
「ムエンさん!」
「応」
 勇ましく応えたムエンは夢焔を纏わせたグリーザハートを握り、反対側から迫るナイフもちのハーモニアへと斬りかかる。
 ハーモニアはナイフでそれを受けようと試みるが、凄まじいパワーでもって叩きつけたムエンの斬撃はナイフを押しのけ、反撃にと突き出されたもう一本のナイフはムエンの鎧によって堅く弾かれる。
 強引にズンと押し込むことで相手を焔で包み込むムエン。
 森を焼き尽くしたフェニックスの炎とは異なり、ハーモニアにまとわりつく闇の手だけを焼いて消えていく。
 炎に意志はない。たまたまムエンが手に入れたにすぎない。しかし、だからこそ、力の使い方は選ぶことができるのだ。
「グリーザハートと焔王フェニックスに誓って、夜に操られた人々を救ってみせよう! 行くぞ、暁光はすぐそこだ!!」
 一方で、エリスとサルヴェナーズは最終ラインを守っていた。
 ムエンたちを突破したハンドトラッカーたちを迎え撃つ役目だ。
「一曲、いかがですか?」
「ええ。喜んで」
 エリスは『ネージュ・リュヌ・エ・フルール』を構えると、美しい音色を奏で始めた。
 それに合わせサルヴェナーズが歌い始め、音色はハンドトラッカーと闇の手たちをまとめて引きつけ始める。
 彼らは特別な行動を投げ捨て、まっすぐに向かってくるのだ。
「そこです!」
 エリスは大きく振り返り、指輪(ドリーミングアイズ)をした手を突き出す。
 白く強く迸った光は、エリスが本来持つ呪力を放出する武装として機能した。
 ビュンという空気を貫く音までして、白い光が闇の手だけを貫いていく。
 その一方で、ハンドトラッカーたちがサルヴェナーズへ群がった。
「今です!」
 合図によって、美透は杖を今一度地面へと突き立てた。
 波紋のように広がる魔方陣。それを反射するように記述が変わる頭上のキューブ型魔方陣。キュルンと不思議な回転をすると、キューブは全方位に向けて光の矢を乱射した。
 ハンドトラッカーたちを撃ち抜くのに充分であり、闇の手を倒すにもまた充分だ。
 ばたばたと倒れたハーモニアたちを見回し、息をつくエリス。
「なんとか、全員無事に助けられましたね」
「ああ……」
 サイズは頷き、そして目を閉じた。
(操る力……もしも夜の王との戦いで妖精が操られたら、両面バランス型の俺だと、両面型の不殺スキルが存在しない為、足手まといになる。でも操られた妖精を放置して夜の王に斬りかかるのは妖精女王様の願いに反する。
 はあ……冬の王の脱け殻との戦いと同じように、命を賭け金にした奇跡に頼って、夜の王への攻撃と妖精の不殺…そして妖精女王様の救助を全てこなすしかない…ああ、肝心な時は奇跡に頼るしかないそんな自分が嫌いだ。
 だがもう冬の王の時みたいに止まるわけにはいかない、妖精女王様が命を懸けた以上、俺も命懸けだ!)
 これで終わりだろう。
 早く次へ行かなくては……。
 と、彼らが思ったその時。

 最初に、地面が破裂するような大きな音がした。
 戦後の静寂を破るその音に誰もが振り返り、そして見た。
 地面から伸び上がる無数の『闇の手』が互いに絡まるように合体し、巨大な怪物へと変わっていく様を。
 戦おうとした者。撤退しようとした者。いずれもほぼ同時に、あちこちに倒れるハーモニアたちを見る。彼らは一人として死んでいないが、もしこのままこの場所で激しい戦いがおこれば、かなりの数のハーモニアを死なせてしまうかもしれない。
「そうは――させないであります!」
 ムサシは腕のデバイスを操作するとA・A・Aの出力を限界突破(オーバーロード)させると、大剣なみのサイズのレーザーソードを作り出した。
 彼が飛び出すのとサイズが『道具術』を用いて攻撃するのはほぼ同時。
 闇の怪物が襲いかかる彼らを振り払うべく腕を振り回すが、ムサシは一切の防御を捨てて斬りかかった。
 なぜなら――サルヴェナーズが攻撃の寸前に割り込みムサシへのダメージを代行したためである。
「っ――」
 苦しげに呻く声。サルヴェナーズが派手に吹き飛ばされ、それまではどんなにダメージをうけても平然としていた彼女ががくりと地に片手をつく。
 直後にムサシの剣が怪物の腕を切り落とし、更にムエンのグリーザハートが夢焔を最大の力で燃え上がらせる。
「こちらの力に対応したというのか……? だが、その程度で倒される私達ではないぞ!」
 豪快に斬り付けるムエンの炎を怪物は無事な方の腕で受けようとするが、しかし徐々に切り裂かれていく。
「ここまではむしろ、本命の手を隠していたようなもの」
「追い詰めたつもりなのだとしたら、浅はかです!」
 風花とエリスは全く同時に弓を構える仕草をした。
 風花は己の弓に花弁の魔力を散らし、エリスは『ネージュ・リュヌ・エ・フルール』にそうように呪力の矢が生まれる。
 二人の矢が一斉に放たれたところで、美透とマニエラが同時に飛び出した。
 杖を振り、自らの腕の前に直結魔方陣を三枚生成。腕を突っ込むようにして突き破ると、拳に激しい魔力の光が宿った。
 一方でマニエラは畳んだ扇子に魔力を高圧縮。ナイフのように構えると怪物へとまっすぐに突進。そのボディに突き刺し、同時に美透の輝く拳が怪物の顔のない頭部へと炸裂した。
 注ぎ込まれたエネルギーを受け止めようとしたのか大きく膨らみ、そして、耐えきれずに風船のように破裂する。
 あとにはもはや、何ものこっていなかった。
「今度こそ……だな」
 顔を見合わせ、頷くマニエラたち。
「また例の怪物が出てもいけない。一旦眠っている彼らを家の中に移動させてから、私達も先へ行こう」
 美透の提案に、皆はやはり肯定の意を返した。
「これ以上、この森の民を不当に傷つけさせることはしない」

成否

成功

MVP

霞・美透(p3p010360)
霞流陣術士

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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