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シナリオ詳細

痛みを伴う戦闘シミュレーション『No.01』

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●苦痛を伴うシミュレーション
「コイツで、十三匹目だ……!」
 そこは、とある世界のシミュレーション室だった。
大規模で複雑な機器とプログラムにより実現された『エンボディメントシステム』により、あらゆるものを具現化することができる設備。
「随分慣れてきたみたいですね、ラナード。
 貴方も努力すれば、イレギュラーズに頼らずとも出来るじゃないですか」
 具現化の対象は物質だけに留まらず、正確な情報さえあるのなら生物や地形まで再現可能。それらは所謂、“情報の塊”であることに過ぎないが、実体化を含め精密な動きまですることから、軍事目的でのシミュレーターとして期待されていた。
「舐めんな。これでも一応、色んな世界で鍛錬はやってきてんだよ」
 先程、具現化されたドラゴンの首を叩き斬った『境界案内人』ラナードは、それらを開発した国家より実力を買われ、シミュレーターのテスト運用を任されていた。
 仕事内容は簡単。シミュレーターにより具現化された怪物、敵を倒すだけ。
「頼もしい限りです。先程、研究員の方から新しいデータのディスクを頂いたので、貴方さえ問題無ければこちらのテストにも移りたいのですが……」
 付き添いの『境界案内人』イヴ・マリアンヌは、首を傾げながらラナードに尋ねた。
 テストの対象となる具現化データは時間と共に生成され、片っ端から潰していかねばキリが無い。そう思ったラナードは、迷わず首を縦に振った。
「うっし、どんとこい!」

●トラウマの具現化
「申し訳ないのですが、今回もシミュレーションテストの手伝いをお願いしたいのです」
 ソファーの上に伸びたラナードを差し置いて、イヴは依頼内容を簡潔に説明する。
 前回はラナードの実力不足が生じた為に、イレギュラーズへ委託されたシミュレーションテスト。今回も実力不足が祟ったらしいが、顔色を悪くした彼は依頼を受けに来た貴方に対し、警告するようにこう告げた。
「気を付けろ。ソイツは、本人が一番嫌がるものを具現化する。
 俺は、まだ克服することができなかった……すまねぇが、頼んだぞ」

NMコメント

 トラウマを目前とした時、人は立ち向かうことができるのでしょうか?
 イレギュラーズは肉体的だけでなく、精神的にも強い存在でしょうか?
 そして、貴方は――

●状況
 今回も、ラナードは具現化する戦闘シミュレーションのテスト依頼を受けていたそうです。
 彼もそこそこ戦える筈ですが、具現化された敵が厄介で戦意を喪失してしまいました。
 そういった理由があり、同シミュレーション上のテスト運用はイレギュラーズに一任されました。

●目標『シミュレーションで敵と戦う』
 イレギュラーズの皆さんがシミュレーション室へ入った所から始まります。
 最初は真っ白な部屋ですが、数秒後に戦場である荒地に切り替わり敵が現れます。
 あくまでシミュレーションなので敵を倒すことは目的に含まれません。

●エネミー
・トラウマ ×4
 明確な名前はありませんが、利便性の関係上トラウマと称します。
 シミュレーションを受ける対象(今回の場合、参加者)が一番嫌う存在を具現化し、攻撃してきます。
 トラウマは具現化しているにも拘らず本人にしか視認できず、実質タイマン勝負となるでしょう。
 また、これ倒すことは目標に含まれません。

●プレイングについて
 参加PCのトラウマと、そのトラウマにどう立ち向かうかご記載頂けますと幸いです。
 トラウマを克服できたか否かについては、”できない場合”に限りニュアンスとして記載いただけますと、お客様の意思に添ったリプレイをお返しすることができるかと存じます。

●ラノベシナリオについて
 ライブノベルは判定と失敗のないシナリオコンテンツになります。
 そのため敵との戦闘に直接の判定は無く、戦闘もフレーバー重視で行われます。
 上記をご了承の上、参加いただけますと幸いです。

 それでは、性格の悪いシミュレーションをお楽しみください。

  • 痛みを伴う戦闘シミュレーション『No.01』完了
  • NM名牡丹雪
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年05月21日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
九十九里 孝臥(p3p010342)
弦月の恋人
杏 憂炎(p3p010385)
酒場の主人
朱雀院・美南(p3p010615)
不死身の朱雀レッド

リプレイ


 最初に彼が見たものは、過去に自分を殺そうとした少女だった。
 窮地をイレギュラーズに救われた彼は境界図書館へ身を置いたものの、その時の傷は今も癒えてはいなかった。

「相変わらずラナード君は情けないなぁ……」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)がぼんやりと呟いた。
 何かと縁がある世界はラナードがイレギュラーズには及ばずとも匹敵する程度の実力を備えていることを知ってはいたが、此処に来る前に見た彼の様子から察するに『如何に肉体が強くとも精神は簡単に強くならない』ことを再認識する。
 混沌世界において例えるなら、純種が反転する様がまさにそうだと言えよう。
 人は誰しも潜在的に闇を持っている。その闇に直面した時、受け入れることができるかどうかというのは切に難しい問題なのだ。

 例えばそう――。
 あの時、或いは自分さえ存在しなければ……なんて。


「あ、あなたは――」
 絶望が目の前を踊り、嘗て身を鮮血に染めた亡骸が動く。
 自分を忌み子と絶叫するその声がまるで痼いのように頭から離れない。
「俺の、俺の一番嫌がるものは……あなたなのですか……!?」
 『特異運命座標』九十九里 孝臥(p3p010342)は嗚咽を漏らさずにいられなかった。
 己が嫌悪する相手、違う。其れは己を嫌い、憎み、唾棄する存在であった筈だ。
 尠くも孝臥は妾の子で在ったことに間違いなく、其れが本当に愛した人との実子では非ず、そして子を授かる前に最愛の人は逝ってしまった。
 程なく孝臥と対面を果たした其れは、目の色を変えて気が狂ったように叫換した。
 ただでさえ自分が子を授かることが叶わなかったのに、何処とも知らない女が最愛の人の子を授かり、剰え跡取りとして九十九里家へ引き取られるというのだ。
 今思えば其れが如何に耐え難い苦痛を受けていたか、想像するに容易い。
「……違う、違う違う違う! だって――」
 其の人、菫様は死んだ。
 九十九里家も、妾の子を跡取りに引き取るのは苦渋の決断だっただろう。だからこそ真の跡取りを生むことができなかった菫様は九十九家に非難すらされていたのだ。
 あらゆる不幸が積もりに積もり、体内に癌という癌を溜め込んでいった菫様はある日、鮮血に染まった藁床の上で倒れていた。
「俺が……俺が居たから、だから……」
 自死した菫様は、最後の最後まで己と実母の恨み言を吐いていた。
 或いは無惨な姿を見せつけ、トラウマを植え付けることに真の意図があったかもしれないが、それでも菫様は自ら首を斬って死んだ。
「お前の……せいだ」
 ――。
 ――――。
 ――――――。
 でも、死んだんだ。
 確かにあの時、菫様は死んだ。
 どんなに己が恐れても、どんなに其れが己を恨んでいようと、それだけは変わらない。
(だから斬らねば……俺は敵を斬るのが仕事なんだから)
 俺の所為だから。
 俺がケジメを付けてやらなきゃならない。
「さようなら、菫様」
 首を斬られたトラウマは、辺りを鮮血に染めながら崩れ落ち――。
 ――。


 ――誰かが自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。
 ――誰かが誰かに助けを求める声が聞こえる。
 ――誰かが……。
「ねえ、どうしてあの時助けてくれなかったの?」
 『不死身の朱雀レッド』朱雀院・美南(p3p010615)はその言葉に息を詰まらせた。
 あの日、自分に助けを求めながらも引き摺られ無惨に食い散らかされる姿をただただ見ていることしかできなかった。
 決して美南に落ち度があった訳でもなく、ましてや奇跡の力すら所持していなかった彼女が如何に無力であったか言うまでもない。
「痛い、凄く痛い……」
 塞ぎ込む美南はトラウマに囚われていた。
 気付けば辺りは戦火が広がる戦場で、逃げ惑う亜竜種とそれを追い回すアダマンアント。逃げ遅れ捕まった亜竜種は泣き叫びながらも巣の中へ運ばれていき、その声が途絶える。
 助けることができなかった罪悪感を胸に、憎きアダマンアントへ背を向けた。
「痛い、助けて」
「やだ、ねえ、私の足が……」
「いやだ、やだ、お願いだから、許して……お願い」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「……戻ってきて」

「――ねえ」
 ――我武者羅に走り出した美南の足を掴んだそれは、甚く恨めしい顔をしていた。
「本当は、お前が犠牲になるべきだったのに」


「嫌なモン見せルねェ、全ク。反吐が出ルゼ……」
 『酒場の主人』杏 憂炎(p3p010385)は額に汗を浮かべながら正面の其れを見る。
 赤目の白髪で、紅蓮の翼を持つ――。それが憂炎といえばそうだし、憂炎じゃないといってもそう。ほぼ全ての特徴が一致する中、一つだけ違うことがあった。
「ッタク、オレの記憶かラ勝手に捏造してんじゃネェ!」
 両手に着けた篭手の刃を突き立ててくる其れに、憂炎は間一髪受け止めた。
 互角の力と力が競り合う中、彼と彼の違いが色濃く浮き彫りになってゆく。

「ナァ、オレ……何でチッコイまま何ダ?」
「心配性なのね。きっと大きくなる、大丈夫よ」
「デモ、同い年なのニ、スゲェ差があるゼ……?」
「どんな姿をしていても憂炎は憂炎よ」
「…………」

 いつか望んだ、大人になった自分の姿。
 謎の病に侵された憂炎の身体は小さいままで、一緒に過ごした幼馴染だけが大人に育っていった。それが嫌で嫌で仕方なくて、もしかしたら嫌われるかもしれなくて。
 憂炎は重い一撃に膝をつき、今にも潰れてしまいそうになる。
「全くヨォ……」
 目から零れ落ちるのは何だ。
 目の前で自分に刃を向けるのは何だ。
 ――。
 自分を大切にしてくれるのは、誰だ。
「オレはオレだ、テメェはオレじゃネェ。テメェがオレの理想だっタ事は認めてヤル。だが……テメェはオレにならネェ!」
 めらめらと燃ゆる炎のオーラが爆炎の如く膨れ上がる。
 果ての彼の理想。病が存在せず、幼馴染と共に成長した彼の姿を強く押し退ける。
 そうなれた可能性があったとして、それがどんなに理想的だったとしても今が変わることは在り得ない。
「大人のオレってのはソノ程度カ? 欠伸が出ルゼ!」
 叶わぬ夢に終止符を。伸ばした拳は嘗て彼が一番望んだ其れを自ら打ち砕くだろう。宛ら子供の様な姿だったとしても、胸に秘めたものが子供のままでいるわけが無い。
 姿かたちは変わらぬともきちんと成長しているよ。


「ええと、いつまで待てばいいんだ? これ」
 白い部屋で待たされ続けた世界は、待ちくたびれたように溜め息を漏らす。
 シミュレーション部隊は見慣れた町の光景。吹き抜ける風や人が通る足音、ガヤまでもが忠実に再現されており、知らなければそこがシミュレーション室だなんて誰も思わない。
 つまるところ、トラウマと呼ぶには少々ほのぼのしすぎている。
「いや、確かに特異運命座標として召喚されながら激流とは無縁の人生を謳歌してきた俺にトラウマなんて存在しないが」
 強いて言えば、目の前にあるいつも贔屓にしている菓子屋の扉に貼られた『SOLD OUT』の文字が気になるくらい。
 そういえば必死に買おうとした数量限定スイーツを逃した時の絶望感は計り知れなかった。
「なんか、方向性違くね? いや、見られたらそれこそトラウマになりそうだが」
 そう呟くも刹那。冷たい風が頬に当たり、世界はハッとなって辺りを見渡した。
 菓子屋に対する変な激情(?)を垂れ流しにしていた故気付かなかったが、なんと路地裏や物陰、或いは塀の上に過去食べそびれたスイーツが跳ね……は? 跳ね?
「そういや、ここに来てから何も食って――」
 それが冗談かどうか、額の筋肉を痙攣させながらスイーツに手を伸ばした世界は、更に表情が歪めながらピタリと身体を止めた。

『いつまでも食われる存在だと思ったか?」

 確かにそう聞こえた気がする。
 まあ間違いなく聞こえたのだが、其れよりスイーツから筋骨隆々な筋肉が生えてきたらスイーツ好きからすればそれだけでトラウマになりかねない。
 あまりの不気味さに、世界はひらりと白衣を翻し、いい感じにその場から去ろうとするも。

『逃がすかよ』

 何処にそんなものがあったのか、或いは身を削って作ったのか知らないが、腕が生えて不格好な姿になったスイーツたちは一斉にパイ生地を取り出し世界に投げつけ始めた。
「いや、なにこの……なに?」
 ここまでくると、何が何だかわからない。
 大切な白衣を汚されては堪らないと世界は腕の生えた跳ねるスイーツを片っ端から潰していくが、数が多すぎて白衣に被弾。しまいには顔面にヒット。
「すげぇスッキリしない……」
 結局パイまみれになりながらもスイーツは全部潰したらしいが、潰したから何なの? と、消化不良にも見舞われていて、もう最悪。
「ぶっ……」
 だが、世界にとって一番最悪だったのは、心配になって様子を見に来たラナードに、ガラス張りの部屋から全てを見られていたことだった。

『見られたらそれこそトラウマになりそうだが……だが…………だが――――(エコー)』

成否

成功

状態異常

なし

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