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シナリオ詳細

<イデア崩壊>DREAM in the HERO

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●DREAM in the HERO
「なああんた。特撮ヒーローのスーツん中には何が入ってると思う?」
 ライダーグローブと赤いジャケット。サングラスを外した瞳には少年のような光がある。
 『彼』は仮面の男H(p3x009524)に畳んだサングラスを手渡すと、歯を見せて笑った。
 答えられないHに、彼は……加羅沢 昭利は魂で叫んだ。
「夢と希望に決まってるだろ! ――変身!」

●HOPE in the HERO
 突然だが、先輩の話をしたい。
 耀 英司という、平成の世でスレにスレた元スーツアクターの先輩。加羅沢先輩の話だ。
 先輩の口癖は三つある。
 『通勤時は現場がどこでもちゃんとした格好をしろ』
 『すべてのスタッフを敬え』
 そして……。
 『アクションスターを夢見たやつはみんなスーツの中に隠れてしまう』
 問題を起こしてドロップアウトし暴力の世界に身をやつした彼の心に、いつまでも突き刺さって抜けないトゲ。
 業界から長く離れた彼の耳に、撮影中の事故でアクター生命をおとしたという噂だけが入って、それきりの人だった。だからだろう。
 口癖に含まれた意味を、英司はまだ理解できずにいる。
 一つ目はわかる。二つ目も分かる。
 けど三つ目は? そんな世界にいてなお、続ける意味とは?

「――って、今も考えてるワケさ。アンタもないかい? そういう悩み」
「え、いやあ……」
「うーん、まあ……ん?」
 汽車の中、曖昧の極みみたいな反応をしたのは二人の女性だった。
 ライトニングクイーン(p3x002874)。
 一(p3x000034)。
 厳密にはROOのシステム内に生まれた仮想世界ネクスト。そのセイラー航海王国の田舎町ガリウム。
 ワープポータルであるサクラメントから遠く離れたこの場所を舞台にしたあるクエストを、彼らは受ける手はずになっていた。
 特にそうと言われなければ触れるつもりはないらしいが、一(ニノマエ)の正体は異世界で悪の組織と戦ったヒーローレッドジャスティスの愛機アルプスローダー。
 一方でライトニングクイーンの正体は世界征服を目論む悪の秘密結社『XXX』の総帥ダークネスクイーンだ。
 英司からすれば虚構、アルプス&ダークネスからすればメタフィクションの存在が、ここ混沌世界(厳密にはネクスト世界)で相まみえていた。
 彼らが受けるはずのクエストは、田舎町ガリウムを襲う秘密結社『XXX(トリプルクロス)』を撃退するというものだ。
 敵の数こそ多いものの、幸いにも強敵となる存在は少なく、ROO用にカスタムしたアバターにかかればそう難しくないらしい。
 より元を辿れば、ROOの隠しクエスト■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA通称『イデア崩壊』の第二段階に達した時点で発生した複数のクエストのひとつであり、そのクエストはここガリウムを舞台に集まっているようだ。
 怪人Hたちからすれば、『イデアって何?』なのだが、ROOのクエストを攻略し歪んだ世界を解明することは練達国三塔主からローレットへ課された依頼の大目的でもある。ローレットの一員として無視する理由は皆無だ。
「お、ついたぜ」
 汽車がとまる。
 開いた扉から駅のホームへ出ると、一人の男が小さく手を上げた。
「よっ、あんたらがこの戦いに加わるっていうイレギュラーズ? 三人ともハジメマシテか。よろしくな」
 上げた手をそのまま、握手を求めるように突き出してくる。
「俺は――」
「「先輩!?」」
 ニノマエと怪人Hは同時に叫び、そして同時に互いの顔を見た。

●PANDORA the HERO
「この街はsinエネルギーっていう革新的な技術によって急速に発展したんだ。
 ただの田舎町がいまじゃ都会みたいでな。コンビニもジャコスもあるしハンバーガーチェーンは五社乱立してる。
 けどこのエネルギー技術はどこでも使うワケじゃない。重要な『コア』がないと使えないってハナシだ。
 そのコアを奪おうと現れたのが秘密結社『XXX(トリプルクロス)』だ」
 加羅沢先輩がテーブルに並べた写真は三つ。
 女総統ダークネスクイーン(本物ソックリ)。幹部の暗黒騎士(英司ソックリ)。そして大量の戦闘員とその先頭に並ぶ怪人たちだ。
「この街は発展こそしたがこんな襲撃は初めてなんだ。領主が用意できた兵も少ないし、重要施設を固めて大量の戦闘員たちを抑えるので精一杯だろうな。だから、俺たちが先陣切って戦う必要がある!」
 拳をぎゅっと握って力説する加羅沢先輩。
 彼は確かに、英司にスーツアクターのイロハを教えてくれた先輩だった。
 その一方で、ニノマエ(の正体であるアルプスローダー)の相棒レッドジャスティス変身前の姿にも見えた。ちなみに変身前の名前はもっと別のものだ。
 つまり……。
「――なあ」
 小声で相談しあう怪人Hとニノマエ。
「レッドジャスティス……だっけ? 俺が辞めた後にそんな企画があったような気がする」
「そちらからは虚構で、こちらからは真実の先のメタ……ってことでしょうか。役者とはいえ、同じ人物がいるみたいでふしぎな感覚ですね」
「なんだ、なんのハナシだ? 我も混ぜてくれないと寂しいぞ?」
「実は『XXX』の企画も聞いたことがある」
「なんと!?」
 詳しく! と言おうとして加羅沢先輩の咳払いに振り返った。
「相談中悪いんだけど……お前達も参加する、ってことでいいんだよな?」
 三人はそれぞれの言い方で『イエス』と答えた。
 この戦い、もしかしたらタダゴトでは終わらないかもしれない……。

●action
 街中へと突入し、色々なものを棍棒で破壊していくXXX戦闘員たち。
 その中央をずかずかと進むのは暗黒騎士。領兵たちが集まり弓を構えるが、暗黒騎士は黙って剣をかちりと回すと、円月のようにゆっくりと円を描いたあと、暗黒のエフェクトと共に一文字斬りを繰り出した。距離をとばして領地兵たちをなぎ払う。
 その後ろに現れたダークネスクイーンは、世界征服砲を天に向かって構えた。
 タワーのようにたった建造物めがけてソレを放つと、大声で呼びかける。
「我らは秘密結社『XXX(トリプルクロス)』! sinエネルギーコアを渡せ! さもなくば、この街に惨劇がふりかかることとなるだろう!」
 脅しだけではないと知らしめるべくさらなる破壊を行おうとした、その時。
「そこまでだ!」
 現れたのは、加羅沢か?
 それともライトニングクイーンか?
 はたまた怪人Hか?
 予想外にもニノマエか?
 否、まさかの――。

「ROO刑事ゼスティアン――参上!」
 ここまでの流れで誰もが予想だにしなかった。つい最近ローレットに加わりつい最近ROOに関わりつい最近やっとアバターを作ったらしい男。
 『ROO刑事ゼスティアン(自称)』ゼスト(p3x010126)が、誰よりも早く戦場の最前線に駆けつけていた。
 特徴的なブレスレットを顔の前に垂直にかざすと、二本の指でそれに触れる。
「秘密結社XXX。この町にとって大切なsinエネルギーのコアを奪うことも、町の人々を傷つけることも、なにより――彼らの笑顔を奪うことは許せない。
 この街は自分が護るであります! ――『電装』!」
 瞬間、彼はメタリックな戦闘強化服に身を包んだ。
 彼の戦闘強化服装着タイムは僅か0.5秒に過ぎない。では、もうその装着プロセスをもう一度見てみよう!
「待て待て待て」
 一瞬遡って電装する前に戻ったゼスティアンもといゼストの肩を、加羅沢が叩いた。
 振り返るとそこには加羅沢と、そしてクエストを受けたイレギュラーズたちがでいる。
 サングラスを外す加羅沢。
「『自分が』じゃない。――この街は、『俺たち』が守る」
 彼らは一列に並び、そして――!

GMコメント

 航海国の田舎町ガリウムを舞台とした連動シナリオです。同時参加禁止ルールがあるのでお気を付けください。

※このシナリオは<イデア崩壊>シリーズのひとつです。
(https://rev1.reversion.jp/page/ideaworldendles)
 同時公開されている同シナリオタグのなかから一つにだけ参加することができます。
 複数に同時予約した場合もひとつにだけ当選できます。

●オーダー
・成功条件:『XXX』の撃退
・オプションA:『四天王幹部』のうち2人以上を倒す
・オプションB:加羅沢(レッドジャスティス)の生存

●おさらい
 急速に発展した田舎町ガリウムを秘密結社『XXX』が襲撃しました。
 このままでは街は破壊され、街の重要基盤となっているエネルギー源も奪われてしまうでしょう。
 街を守るヒーローとなり、彼らを撃退するのです!

●エネミー
・総帥ダークネスクイーン
https://rev1.reversion.jp/illust/illust/4343
 説明しよう!
 ダークネスクイーンとは、世界征服を目論む悪の秘密結社『XXX』(トリプルクロス)の女総統である!
 数多くの怪人悪人を従え、無数の戦闘員を操り、世界を我が物にせんとする、とても恐ろしい人物なのだ!
 必殺の世界征服砲はビルを破壊するほどの威力だぞ!

・暗黒騎士(H)
https://rev1.reversion.jp/illust/illust/43524
 XXX四天王のひとり。
 漆黒の鎧に身を包む無口な騎士。
 すさまじい武力を持ち、必殺の円月暗黒斬は恐ろしい威力を誇る。

・四天王???
 XXX四天王の残り三人は未だ不明である!
 もしかしたらアナタの因縁の相手やアナタ自身が四天王NPCとして出現することが、あるかもしれない!!!

●味方
・加羅沢先輩(レッドジャスティス)
 ヒーローであるレッドジャスティスに変身して戦います。
 主にキックとパンチ、そして剣による格闘ができます。オーソドックスですが単独でも結構強い存在です。
 また、彼がノリノリで戦えば戦うほど彼自身の生存率が上昇します。(逆に、過剰に安全確保を行おうとすると死亡率が高まります)

●フィールド
 田舎町ガリウム
 航海国の田舎町。厳密にはやや大きめの島であり、発展しているのは港から離れたカジノ地帯であるらしい。
 急速に発展したため、まるで日本の幕張みたいな交差点やスポーツ施設みたいな広場や印象的な階段や噴水公園があちこちにある。

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●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <イデア崩壊>DREAM in the HERO完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月05日 22時01分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

一(p3x000034)
黒縁眼鏡の
セララ(p3x000273)
妖精勇者
アイ(p3x000277)
屋上の約束
ライトニングクイーン(p3x002874)
ザ・ヒーロー
Λ(p3x008609)
希望の穿光
梔子(p3x009181)
カムサリ
純恋(p3x009412)
もう一人のわたし
H(p3x009524)
ダークナイツ
澄恋(p3x009752)
もう一人の私
ゼスト(p3x010126)
ROO刑事ゼスティアン

リプレイ

●マジカルショータイム
 逃げ惑う人々と、なだれ込む戦闘員たち。並ぶXXX総統ダークネスクイーンと四天王。
 そこへ、あの声が響いた。
「待てぃ!」
 建物の屋上に現れたのは、そうみんなの『光の覇者』ライトニングクイーン(p3x002874)。
「遠からぬ者は音に聞け、近くばよって目にも見よ! 我こそは深遠の闇において輝く恒星! 無限の光において煌く黒点! 光と闇が両方備わり正に最強! 正義にあって正義に非ず! 悪にあって悪に非ず! 人、それを極道と呼ぶ! あ、ヤクザ的なアレではなくて! 悪の秘密結社『XXX』は反社の方々とは一切関係ございません!」
「貴様ァ! XXXを反社とかいうな! ちゃんと厚生年金や健康保険にも入ってるんだぞ!」
 ローブの一人がそう叫んで黒い杖のようなものを突きつけるが、ライトニングクイーンは意に介さない。
 そしてトゥと叫ぶとXXXの前へと降り立った。
「やれやれ、ヒーロー大集合ってやつだ。眩しいねぇ。……今日はいいよな、こっちでよ」
 横から歩いてきた黒いビジネススーツ姿の『耀 英司のアバター』H(p3x009524)が、懐からベルトバックルを取り出し、押しつけるように装着。
 更に『魔導戦機』Λ(p3x008609)、『ROO刑事ゼスティアン(自称)』ゼスト(p3x010126)、加羅沢昭利が並んで一斉に構えた。
「――変身!」
 Hが叫ぶとバチバチと走る黒い雷に包まれる、叫ぶような電子音と共にたちまちのうちに彼は流線型のボディアーマーに身を包んだ。
「さあ、寝かしつけてやるよ」
「来い、黒麒」
 ラムダが指を鳴らすと後ろに停車していた麒麟型騎乗メカユニットが彼女の周りを飛び回り、ゆっくりと腕で空をかくように動かしたラムダが腕をクロスさせるとユニットが分解、再装着。機動魔導甲冑『黒麒』となった。
 翼のごとく背部ユニットから炎をふき、赤いヘルメットバイザーの奥でギラリと目が光る。
「魔導戦機Λ…只今推参!」
「――『電装』!」
 遙かかなたどこか分からない宇宙らしき場所から放たれた光線がゼストを包み込み、0.5秒で超合金スーツが装着される。
「レッドジャスティスの言うとおり…『自分達が』この街を守る!
 ROO掲示ゼスティアン、任務了解であります!」
「OK――ジャスティスチェンジ!」
 突き出した手のひらサイズのデバイスにバイクのキーを差し込んで回す加羅沢。光のエンブレムが彼を通り過ぎると服装が赤い戦闘スーツに切り替わり、ヘルメットが装着されバイザーが現れる。
 ブン、と手を振り取り出したジャスティスブレードの刃部分を指ではさんでスッと研ぐかのようにはしらせる。
「五人……ですか。戦力ならばこちらが……」
 ローブの下から角が見える四天王がそう呟くと、ヒュウンと光の軌跡を描いて『妖精勇者』セララ(p3x000273)が現れた。
 魔法の衣装とお菓子の剣を装備し、突きつける。
「ボクの名は妖精勇者セララ! 世界征服の企み、勇者としてボクが阻止してみせるよ!」
 更に、屋上から宙返りをかけて飛び降りた『しろきはなよめ』純恋(p3x009412)と『花嫁キャノン』澄恋(p3x009752)が同時に着地。シンメトリーなポーズをとる。
「今日のわたしはヒーロー」
「街、救っちゃうしかないですよね!」
「その通り。公益のために身を尽くす正義の味方」
「誰が来ようと我がか弱さに敵うものなど多分いません!」
「清く正しく美しく――」
「「すみキュア・プラックユアハート!」」
 更に、『☆癒しの花☆』梔子(p3x009181)がたかたかやってきて両踵でブレーキをかけると、ふんすっと腕組みをしてポーズに加わった。
「街を襲う悪党か、これ以上の好き勝手は許しちゃおけねえな! ……じゃなくて、ほうってはおけませんね!!」
 ね! と念押しするように振り返ると、『R.O.O tester?』アイ(p3x000277)と『学生』一(p3x000034)がそれぞれ隊列に加わった。
 そして彼らは一斉に武器を構え、走り出す姿勢をとった。
「小癪な……我らXXXを止められるものなら止めてみるがいい! 行けぃ!」
 ダークネスクイーンが手をかざすと戦闘員たちが飛び出し、同時にニノマエたちが走り出す。

●勇気の旗を掲げ
 ロッドで殴りかかる戦闘員を短剣で防御し次々に払うと、アイは飛び退きながらマントを翻した。
「街は護ル!
 全四天王を倒ス!
 全員生きて帰ル!
 全部の目的を達成するのは大変だヨ……。
 だけド、僕はその覚悟をしてきタ! やるからには全力サ!」
 回転と同時に無数の短剣を投影魔術で複製し、まるでオーケストラを指揮するかのように短剣を振り回すと浮遊する投影短剣のすべてを戦闘員たちへと踊るように走らせた。
 その中を駆け抜け、黒い剣で戦闘員を次々に切り倒していくH。
 ちらりと見ると、レッドジャスティスが剣で同じように戦闘員を切り倒していた。仮面越しに視線が交差する。
(きっと厳密には俺が知っている先輩じゃない。でも、それでも……)
 言葉は沢山思い浮かぶ。けれど、今はこうするべきだと知っていた。
 Hは小さく頷き。レッドジャスティスもまた小さく頷いた。
「――」
「――」
 そして素早く反転すると、背をあわせて同時に回転斬りを繰り出した。周囲の戦闘員だけを黒と赤のレーザーラインが走り切り倒していく。
 ……その様子を、ニノマエはやや遠巻きに見ていた。眼鏡ごしの瞳がわずかに揺れる。
 あの場所に自分は……本当なら……。
「捨てたこっちで何度も会うなんてズルいんじゃないですか」
 小さく呟いてから、ニノマエは首を振る。
 『レッドジャスティス』はいくつもの夢が混ざり合ったとしても変わらなかった。理由はなんとなく分かってる。だって……。
「そこです……」
 30センチほどの剣とワンドの中間のような武器を振ると、魔法の炎が戦闘員めがけて富んでいく。
 爆発――と同時に無数のミサイルが着弾し爆発を広げていく。
 振り向くと、ラムダが両肩からロケットランチャーを展開した状態で腕組みしていた、ビッと親指を立ててくる。
 その様子にやや戸惑っていると、左右を純恋と澄恋が駆け抜けた。
「――孤紫蝶(コムラサキ)」
「――大紫蝶(オオムラサキ)」
 かざした互いの手をパチンとあわせると、まるで姿が入れ替わったかのように変化した。
 理想と正解の姿をとった二人は、バギリと手に血の塊でできた爪を生み出し戦闘員たちを次々に攻撃しながら駆け抜けていく。
 火花をあげて次々に倒れる戦闘員。
 そんな彼女たちを止めるべく、戦闘員たちがXXXロッドをライフルモードに持ち替えて一斉射撃。
 固まって放たれたそれは激しい抵抗力となるが……そんな中を梔子とゼスティアンは走り抜けた。
 駆ける背後で次々におこる爆発を振り切るように。そして両足を揃えて踏み込むと、高く跳躍。
 まるでそれに合わせたかのように、レッドジャスティスとセララも空高く飛び上がった。
「電磁シュート!」
「うさぎ宙返りキック!」
「究極! スーパーセララキック!」
「ジャスティスキック!」
 四人は流星の如く四色の光を纏うと戦闘員たちへと一斉突撃。激しいエネルギー爆発を起こした。
 吹き飛び転がっていく戦闘員達。
 クッと顔をしかめるダークネスクイーンに、ライトニングクイーンは不敵な笑みを浮かべて手をかざした。
「貴様が望むのはこれであろう?」
「それは……!」
 急に顔アップになって驚きの表情を浮かべるダークネスクイーンに、ライトニングクイーンは不敵な笑みを継続……しつつチラリと虚空を見上げた。
『説明しよう! これは油性マジックでえねるぎぃこあと書いた――』
「ちがうちがうそっちじゃない」
『説明しよう! これはsinエネルギーコアである! 持ち運びに適した手のひらサイズでキャンプにも最適!』
「くっ、既にその手中に収めていたとは……!」
 謎の説明が虚空から響いたが、ダークネスクイーンは歯がみして顔を歪めた。本気で悔しがってそうだし、実際ライトニングクイーンの手にあるのは固ゆで卵だが、四天王たちも『おのれ……』と小さく呟いていた。
 なんだろうこの人達。もしかしていい人達なんじゃないの?
「かくなる上は……XXX四天王よ、行けぃ!」

●揺らめく時空を越えて
「我が名は暗黒騎士……ダークネスクイーン様に仕える第一の騎士!」
 巨大な剣で斬りかかる暗黒騎士。それを、Hとレッドジャスティスは剣を交差させることで受けた。
 ゼスティアンは腰から筒状の武器を取ると、レーザーブレードを展開。暗黒騎士の横を駆け抜けるようにしながら斬り付ける。
「どれだけ強い武力だろうとも、ヒーローを名乗ったからには絶対に平和を守ってみせるであります……!」
「オーケーその意気だ! H、やれるな!?」
「当然。ゼスティアン、アンタもキメ時だぜ? 乗り遅れるなよ」
 Hは、加羅沢が変身前に言ってくれた言葉を思い出していた。
 『ヒーローを夢見たやつはみんな仮面の下に隠れちまう』。
 『けれどそれが――本当の希望になるんだ』
 暗黒騎士が剣で円月を描くように構える。
 対抗するように、Hも円月の機動を描いてからガチリと剣を構えた。
「――円月暗黒斬!」
「ゼタシウムゥゥゥゥゥ――」
 暗黒騎士を挟んだ向こう側で、ゼスティアンが胸に両手をあてた姿勢から空をかくように大きく腕を動かし、光の軌跡を作り両腕の交差点へと集中させた。
「光線ッッ!!」
「ジャスティススラッシュ!」
 Hとレッドジャスティスの横一文字斬り、そしてゼスティアンの光線が三方向から暗黒騎士へと集中。一方暗黒騎士の斬撃はレッドジャスティスだけへと放たれる。
「レッドジャスティス!」
「――!」
 咄嗟に飛び出したHは、レッドジャスティスの前に両腕を開いて立ちはだかった。斬撃が、彼の仮面をうつ。

 澄恋と純恋は理想と正解の姿を維持したまま、ローブを被った四天王へと突撃する。
「――朱揺籃『濁濁』」
「――偽式・黒顎魔王」
 片腕に赤き力と黒き力を集中させ、巨大な鬼の腕に変えると四天王へと殴りかかる。
 同時に撃ち込まれた二発のパンチは……しかし、鬼の手によって受け止められた。
 風圧でちぎれふきとんだローブの下から現れたのは、喪服を着た女である。
 黒い涙を流したような仮面を被り、額からは二本のツノ。仮面の更に上から黒いベールを被ったそれは……。
「「――ッ!!」」
 純恋と澄恋は、その姿の意味を悟りズキリと心臓を痛めた。
 それはおそらく、二人に共通する『失敗の姿』。もしくは、『至る先の姿』であった。
「寂しい」
 そうとだけ呟くと、XXX四天王第二席次『処恋(Mourning widow)』は鬼の巨腕を握りつぶした。
 だが。
「か弱き乙女が、老後の心配をするとでも?」
「添い遂げるとは、後に死ぬこと。孤独を覚悟せずして花嫁になれましょうか」
 純恋と澄恋はそれぞれの手をがしりと握り指と指を絡め合うように堅くむすぶと、赤黒混ざり合った鬼の巨腕を処恋(Mourning widow)へと叩きつけた。
 交差し防御するも、そのまま派手に吹き飛ばされる処恋(Mourning widow)。

「悪いけど、ソッコーで決めさせて貰うよ! これでもダークヒーローデザインだからね!」
 ラムダは『Ariel Move』を発動させ宙に浮かぶと、ローブの四天王めがけて飛びかかった。
 超高速で相手の脇を駆け抜けてはターンを繰り返し、二刀流による連続斬撃と拡散ビーム。更にはロケットランチャーによる乱れ打ちを次々にぶつけていく。
 相手はそのすべてを……黒い杖で振り払った。
 否、振り払い切れたとは言えない。彼のローブは焼け焦げて落ち、姿が露わとなったのだから。
 ペストマスクに黒い紳士服。謎めいたいでたちだが、彼の服には傷一つついていない。
「あれは……スーパーカーボン」
 アイは一応の知識だけしっていた。フランスパンを限界まで焼き尽くし凝縮を繰り返したことで出来る素材と繊維。すさまじく強度の高い布や板が作れる筈。だが、当然ながらそんな素材は作れないので知識だけのモノだったが……。
 ラムダの剣が命中したのか、マスクがパカンと左右に割れて落ちる。
 そこから露わになったのは……。
「上谷……?」
「否。我が名はZERO。多次元侯爵ZERO。XXX四天王第三席次にして、ダークネスクイーン様に忠誠を誓う者」
 杖に手をかけ、抜刀。仕込み杖だ。
 黒い刀身がスーパーカーボン製の刃であることは間違いない。
 斬りかかる彼の剣を、アイは内なる動揺を隠しながらも剣を必死で打ち払う。
「クククッ、踊れ踊れ! 我がシンフォニーを奏でるが良い!」
「心に来る! まともに相手してられなヨ!」
 飛び退き、投影した大量に短剣を一斉にZEROへと発射。
 と同時に、ラムダは収束魔導砲を発射した。
 グオッとうめいたZEROは吹き飛び、大きく退いた位置で立ち上がった。
「我が本領は頭脳労働。肉体労働はこのくらいにしておこう」
 再びペストマスクを作り出すと、それを顔に被って身を翻した。

 梔子の猛攻が冴え渡る。
「わたしの”蹴り”は見た目ほど甘くありませんよ! 四天王何某、覚悟!」
 宙返りキックを繰り出した梔子は再び流星となってローブの四天王へと炸裂。そのまま後ろ向きに宙返りをかけてスチャッと着地すると、四天王を中心に大爆発がおきた。
「これにて成敗です!!」
「も、もう……!?」
 ニノマエがまだ何もしていないにも関わらず四天王が倒されたことに若干のショックを受けた……が、そのショックは別のものに塗り替えられることになる。
 ローブが剥がれ落ち、赤白二色カラーの人型ロボットがそこには立っていた。
 タイヤにも似た盾をもち、各所の造形がバイクのそれに似ている。
「アルプス……ローダー……」
「『然様』」
 が、ウィウンドスクリーン状のバイザー越しに光ったモノアイから聞こえた声は、ニノマエの想像していたそれとは違った。
 しわがれた老人のような……ニノマエの(そしてその中に眠るAIの)知らない声。
「『ワシはジーニアス・ゲニー・ジェニ博士。この機体は……そうじゃな』」
 手をかざし、首をかしげる。
「『GGG(ジースリー)ローダーとでも名付けようか?』」
「――!」
 ニノマエの中に浮かび上がる何かが、反射的に攻撃魔砲を発動させた。
 炎が走るが、GGGローダーはそれを高速で回避しニノマエの首を掴み上げた。地面から離れる両足。ばたつきうニノマエを助けるべく梔子が蹴りかかるが、GGGローダーは超高速で離れ既に攻撃不能な距離まで遠ざかっていた。
「『また会おう。この分では、sinコアを手に入れることはできそうにないのでな』」
「待っ……」
 喉を押さえうずくまるニノマエ。声が、うまく出ない。
 その間にGGGローダーは姿を消していた。

「世界両断剣・瞬殺閃光無限斬空波!」
『説明しよう! 世界両断剣・瞬殺閃光無限斬空波(ライトニングセイヴァー・アルティメットドライヴ)とは、縦一直線に振り下ろされた剣から放たれる全てを断ち切らん波動である。 なおセイヴァーはSaverと綴るのだ!』
 ライトニングクイーンの放った斬撃と、セララの放った斬撃が交差する。
「全力全壊! ギガセララブレイク!」
『説明しよう! ギガセララブレイクとは呼び寄せた天雷を聖剣で受け雷光を纏った斬撃を放つ聖剣技である!』
「ぐああ……!?」
 早くも二人の必殺技をうけたダークネスクイーンは膝を突き、そしてよろめきながらも立ち上がった。
「どうやら……ここは退くしかないようだな」
「逃がすと思うか! 私はちょっと思うけど……!」
 光の剣を突きつけるライトニングクイーンの横で、セララが『えっ』と言って二度見した。
「フッ、どうやら貴様とはまた会うことになりそうだな……我らXXXは必ず野望を果たす。約束の日までせいぜい力を蓄えておくがいい!」
 高笑いをあげながら飛び上がると、ダークネスクイーンはジェット噴射をかけて空の彼方へと消えていった。
 ふと見れば、戦闘員や四天王たちも撤退したようで姿を消していた。
 フウ、と息をつくセララ。
「とにかくボクたちの勝利! やったね!」
 いえーいと手をかざしたセララはライトニングクイーンと背格好の違いすぎるハイタッチをした。

成否

成功

MVP

ゼスト(p3x010126)
ROO刑事ゼスティアン

状態異常

H(p3x009524)[死亡]
ダークナイツ

あとがき

 ――クエストクリア!
 ――四天王幹部、暗黒騎士に勝利しました
 ――四天王幹部、処恋(Mourning widow)に勝利しました
 ――四天王幹部、多次元侯爵ZEROを撃破せずに撤退させました
 ――四天王幹部、GGGローダーを撃破せずに撤退させました
 ――加羅沢(レッドジャスティス)を生存させました

 ――特殊条件が満たされました。ボーナスパートが解放されます!

●ボーナスパート
 仮面にヒビが入り、がくりと崩れ落ちるH。
 変身を解いた加羅沢は彼を受け止めるように膝を突いた。
「H! えっと、名前なんていうんだ? とにかく大丈夫か、H!」
「せん……ぱい……」
 荒い呼吸。ゆっくりと身体が粒子にかわり消えていく。
 欠けた仮面からは、いつまでも少年を忘れられない男の目が僅かに見えていた。
「なんか……懐かしいですね……ワイヤー失敗したとき、こんな風に……」
「何の話を――」
 その時、加羅沢の胸ポケットから光が漏れた。
 慌てて取り出すと、それは変身に使っていたキーだ。
 そして光は、その様子を遠巻きに見つめていたニノマエの眼鏡へと伸びた。
「わっ」
 慌てて眼鏡を外すニノマエ。ニノマエの眼鏡は途端に光に包まれ、そしてレッドジャスティスからいつか受け取ったキーへと姿を変えた。
 二つのキーの光が交わり、加羅沢をも包んでいく。
 そして……。
「ぐっ!?」
 頭を抑えた加羅沢は、Hとニノマエをそれぞれ見て……。
「英司……それに、ニノマエちゃん……? 俺は、なぜこんな所で……」
 なんだか分からないという顔で首を振り、そして立ち上がった。頭を抑え顔をしかめる。
「いててっ。変な感じだ。三人分の記憶が混ざったみたいな……」
 ニノマエの眼鏡が戻り、やや困惑しつつもそれを装着する。
「あなたは……レッドジャスティス(せんぱい)、なんですか?」
「オマエこそ……」
 何か言おうとして、加羅沢は口を結んだ。ニノマエが正体を隠していることを察したのだろう。
「いや、今はそれどころじゃない。あのXXXという組織、一見それほど悪い野望を持って居なさそうだが、あのGGGGローダーは――」
「――そうだ。GGGローダーはXXX(トリプルクロス)を裏から支配している」
 そう言葉を重ねた者がいた。
 反射的に振り向くと、ペストマスクを脱いだZEROがそこに立っていた。
 杖をつき、胸を張る。
「既に戦闘員や暗黒騎士、処恋たちを洗脳した上ダークネスクイーン様もほぼ洗脳されかけている。
 我は、本来のXXXを取り戻したい。利害は途中まで一致している筈だ。協力してもらうぞ……?」
 互いの気持ちを探るようにアイやニノマエ、そしてライトニングクイーンたちが互いの顔を見合った。

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