PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<グランドウォークライ>暴と化した武は、銀の機体を駆る

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ギリムVSギリム
 聖堂の下に多数の脚が生えたかのようなギア・バジリカ(歯車大聖堂)が、ピンクの結晶に覆われた鋼鉄首都スチールグラードを突き進む。目指すは、『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュのいるディアナキャッスルだ。
 だがその進撃を阻むべく、一機のエクスギアEXが歯車大聖堂の前に立ち塞がった。滑らかな曲線と銀色の輝きが優美なその機体は、ギア・バジリカに向けてバズーカの砲口を向ける。
「何者か知らないが、ギア・バジリカをやらせるな!」
 ギア・バジリカを防衛するエクスギアEX隊の長ギリム・ギャラクシアムは、自らの部隊を率い銀のエクスギアEXを迎え撃たんとする。ギア・バジリカには居住区があり、その住民達を戦火にさらすわけにはいかないのだ。だが。
「忠誠を捧げるべき相手もわからず、ヴェルスなぞに尻尾を振るか!
 ならば、ディアナ様への我が忠誠、我が武を示すための贄となれ!
 死ねよやぁー!」
 銀のエクスギアEXのコクピットで、ギリムが咆えた。否、正確にはギリム本人ではなく、ディアナによって創り出されたシャドーレギオンだ。
「某のシャドーレギオンだと!?」
 敵のパイロットが自身のシャドーレギオンと識ったギリムは驚いたが、その間にギリムの隊は壊滅していた。ギリム隊の射撃を難なく回避した銀のエクスギアEXが頭部、上腕部、腕部、大腿部、脚部とバラバラになって飛び交ったかと思うと、そのそれぞれからビームをギリム隊のエクスギアEXに直撃させ、爆発に追い込んだからだ。
「ハハハハ……貴様も、ギア・バジリカの中の奴らも、すぐに後を追わせてやる!」
「ぐぬっ……武は、暴を止めるためのものであろう!」
「下らぬな! 某の武は、ディアナ様のためにある!
 そして、ディアナ様への忠誠を示すためには、某の武によって屍の山を築かねばならんのだ!」
 平行線の会話を行いつつ、二人のギリムは戦闘を続ける。だが、趨勢は明らかだった。自由自在に飛び回る九つの砲門も同然である銀のエクスギアEXからのビームによって、本物のギリムのエクスギアEXは翻弄され、嬲られるように損傷を深めていく。
「貴様から得るものは何もないが、某と源を同じくしている故の、せめてもの敬意だ。
 これで、引導を渡してやる!」
 とどめだと言わんばかりにシャドーレギオンのギリムが叫ぶと、銀のエクスギアEXの胴体から分離している各パーツは本物のギリムのエクスギアEXの同じパーツに取り付いた。
「ぐあっ、無念……!」
 暴を止めるために武を磨いてきた己が、武で以て暴を振るわんとする己のシャドーレギオンに敗れるとは――! 急速に生命力を奪われ、無力感に苛まれるのを感じながら、ギリムはエクスギアEXの爆発に包まれた。

 ……だが、ギリムは己の命と引き換えに、貴重な時間を稼ぐことに成功していたのだ。

●銀河Mark.Ⅹを墜とせ
「出撃、急いで下さい!」
 ギリム隊が壊滅する様を目の当たりにした『緑の騎士』ウィルヘルム(p3y000126)は、エクスギアEXのコクピットにいるイレギュラーズ達に通信で急かした。
 各自専用のエクスギアEXにイレギュラーズ達を搭乗させるまでの間に、ウィルヘルムは大体の状況の説明を終えていた。シャドーレギオンを生み出してきたディアナが、スチールグラードの城をディアナキャッスルへと変えたこと。鋼鉄の主要人物はディアナキャッスルに囚われていること。これ以上ディアナに鋼鉄を穢させないために、今正にこのギア・バジリカでディアナキャッスルへと進撃していること。
 ――そして、銀のエクスギアEX、機体名『銀河Mark.Ⅹ』がこのギア・バジリカを狙い迫っていること。それを迎撃に出たギリム隊が壊滅したこと。
「ギリムさんを助けられなかったのは残念ですが、彼のおかげで皆さんを出撃させる時間は得られました。
 銀河Mark.Ⅹは十度にわたる魔改造の上にパイロットの能力に機体性能も相まって、エクスギアEXとしてはチート級のスペックを持っています。
 ですが、だからと言ってギア・バジリカへの突破を許すわけにはいきません」
 元のギリムの人柄から考えれば、そのシャドーレギオンは己の武を暴力として振るい、殺戮を重ねることでディアナへの忠誠の証としようとするのは明白であった。
 その蛮行を止められるのは最早、これからエクスギアEXで出撃しようとしているイレギュラーズ達しかいないのだ。
「厳しい敵であることは承知しています。ですが、何としても銀河Mark.Ⅹを墜として、このギア・バジリカの人達を守って下さい。
 ……それが、ギリムさんにとって無念を晴らす、最高の弔いになると思います」
 重く、静かな声で告げながら、ウィルヘルムは今にも射出されんとするエクスギアEXのコクピットの中にいるイレギュラーズ達に向けて、深々と頭を下げた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は全体依頼<グランドウォークライ>のうちの1本をお送りします。
 ディアナキャッスル目指して進むギア・バジリカに迫る銀河Mark.Ⅹを撃墜し、ギア・バジリカの中の人達を守って下さい。

●成功条件
 銀河Mark.Ⅹの撃墜

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 スチールグラード内、進撃するギア・バジリカ周辺。時間は昼間、天候は晴。
 環境による戦闘へのペナルティーはありません。

●初期配置
  銀河Mark.Ⅹとギア・バジリカの間にイレギュラーズがいます。
 銀河Mark.Ⅹは地表を戦闘に影響しない高度で飛行しており、4以上の移動力を持つイレギュラーズなら1ターンの移動(副行動)で接近戦を挑める位置にいます。
 銀河Mark.Ⅹとイレギュラーズとの戦闘によって、流れ弾などがギア・バジリカに向かうことはないものとします。

●ギリムのシャドーレギオン
 ヴェルスに忠誠を誓い仕え、その下でギア・バジリカを防衛するエクスギアEX隊の一つの長を務めるギリム・ギャラクシアムのシャドーレギオンです。
 本来のギリムは武人肌で、ヴェルスの元で暴を止める武を示し忠誠の証としたいと考えていました。ですがディアナによってDARK†WISHを抽出された結果、武で屍の山を築いてディアナへの忠誠の証とせんとするシャドーレギオンが生み出されました。
 性格は極めて好戦的かつ残忍であり、イレギュラーズ達が敗れればギア・バジリカを襲撃し、戦闘員非戦闘員の区別なく屍とすることでしょう。
 戦闘能力に関しては、次項にて合わせて説明します。

●銀河Mark.Ⅹ
 ギリムのシャドーレギオンが駆る、銀色のエクスギアEXです。
 Mark.Ⅹの名は10度にわたる魔改造からついており、通常のエクスギアEXからするとチート級のスペックを持ちます。
 戦闘能力は全般にわたって高い超ハイバランスである上に、敵の持つアクティブスキル、パッシブスキル、他特殊能力を完全にではないですがコピーして使うことが出来ます。
 OPにもあったように、人型の姿で戦う以外に、パーツごとに分離しての攻撃も行います。
 各パーツで固有のHPを持っていますが、人型の時に受けたダメージは特定のパーツ狙いを行わない限り各パーツに均等に割り振られます。一方、各パーツを攻撃して撃破した場合、オーバーキル分のダメージは切り捨てられて他のパーツにダメージを与えたりはしません。
 分離/合体には副行動を消費します。
 
・人型状態
 通常の状態です。この状態で特定のパーツを狙うことも出来ますが、その場合は命中にペナルティーが入ります。

 攻撃手段など
  ビームサーベル 神至単 【弱点】【邪道】【追撃100】
   左右の腕で確実に一撃ずつ行います。
  薙ぎ払い 神至範 【弱点】【邪道】
   左右の腕で周囲を一気にビームサーベルで薙ぎます。
  バーニングハンド 物至単 【弱点】【災厄】【火炎】【業炎】【炎獄】【紅焔】
  バズーカ 物遠単(範)
  自動修復(大) 毎ターン、HPが回復します。
  インヴィンシブル・フィールド(大)
   神秘攻撃に対して、防御技術が加算されます。
  飛行

・分離状態
 頭、胴体、右上腕部、右腕、左上腕部、左腕、右大腿部、右足、左大腿部、左足の10のパーツに分かれます。この状態では人型状態に比べ回避力が上昇し、防御技術が低下します。
 各パーツは同時に行動し、まとめて1回の攻撃として扱います。
 
 攻撃手段など(共通)
  ビーム砲 神/至~超/単~域
   【万能】【移】【弱点】【多重影】【変幻】【邪道】
   胴体以外の部位で攻撃します。攻撃範囲が広がるにつれて、【多重影】【変幻】【邪道】の数値とダメージは落ちます。
  プリュンダラー 神至単 【防無】【疫病】
   胴体以外の部位が、敵のエクスギアEXの同じ部位に取り付くことで、敵の持つスキルや能力を完全ではないですがコピーします。
   一度のこの攻撃でコピー出来るのは、アクティブスキル全てか、パッシブスキル全て+装備による特殊能力全てかのいずれか一方に限られます。
  自動修復(小) 人型状態と同じですが、効果量は劣ります。
  インヴィンシブル・フィールド(小) 人型状態と同じですが、効果量は劣ります。
  飛行

●超強襲用高機動ロボット『エクスギア・EX(エクス)』
 エクスギアEXとは大型の人型ロボットです。
 『黒鉄十字柩(エクスギア)』に附随した大型オプションパーツを超複雑変形させそれぞれの戦闘ロボットへと変形します。
 搭乗者の身体特徴や能力をそのまま反映した形状や武装をもち、搭乗者にあわせた操作性を選択し誰しもが意のままに操れる専用機となります。
 能力はキャラクターステータスに依存し、スペックが向上した状態になります。
 武装等はスキル、装備、アクセスファンタズムに依存しています。
 搭乗者のHPがゼロになると破壊され、多くの場合爆発四散します。
 搭乗者が装備する剣と同様の剣で斬りかかったり魔術砲撃をしたりと、搭乗するキャラクターによってその戦闘方法は変わるでしょう。
 もしお望みであれば、普段と違うデザインをオーダーしてみるのもいいでしょう。
 ※すべてが専用にカスタムされているため、別の人物が乗り込んだり敵のエクスギアを鹵獲し即座に使用することはできません。逆もまた然りです。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
 『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <グランドウォークライ>暴と化した武は、銀の機体を駆る完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年09月27日 22時08分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

セララ(p3x000273)
妖精勇者
梨尾(p3x000561)
不転の境界
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました
マーク(p3x001309)
データの旅人
シャルロット(p3x002897)
吸血鬼令嬢
ミドリ(p3x005658)
どこまでも側に
ベルンハルト(p3x007867)
空虚なる
イデア(p3x008017)
人形遣い
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
ダブル・ノット(p3x009887)
ヒーラー

リプレイ

●迫る『銀河Mark.Ⅹ』を前に
 ピンクの結晶に覆われたスチールグラードを、多脚の生えた聖堂と言った態のギア・バジリカが突き進む。目指すは、鋼鉄を我が物にせんとする『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュが拠るディアナキャッスルだ。
 だが、そのギア・バジリカへと、曲線が優美な銀のエクスギアEXが飛来する。防衛のために出撃したオリジナルを既に撃破した、ギリム・ギャラクシアムのシャドーレギオンが駆る『銀河Mark.Ⅹ』だ。
 ギア・バジリカはこれ止めるべく、十個の十字架を空中へと射出。十字架は空中で変形し、十機のエクスギアEXへと変形した。

「なるほどこれは、なかなかの玩具ね!」
 銀の頭部と漆黒のボディを持つ『Margrave』のコクピットで、『吸血鬼令嬢』シャルロット(p3x002897)は指を曲げては開く。すると、紅の爪が生えた『Margrave』の手も、シャルロットの動作に追随した。格闘戦に特化した『Margrave』の操縦は、パイロットの動作をそのまま再現するモーショントレースに拠るのだ。
 それにしても、柩で戦うとは、鋼鉄はなかなか発想が飛んでいるとシャルロットは思う。だが、手段は如何あれ、民を思うのはシャルロットも理解するところ。ならば、全力で敵に挑むまでだ。
「ロボットに乗って戦う……ここがゲームの世界なのだと、改めて実感いたしますね」
 『人形遣い』イデア(p3x008017)は、そう独り言ちながら自機を眺め、武装を確認する。両腕の武装と、スナイパーライフル。そして、切り札たる隠し球。
「人形を扱うことに特化したこのアバターなら、ロボットを操るのも問題はないでしょう。
 少々サイズが大きくなっただけです」
 自信ありげに、イデアは微かな笑みを浮かべた。
「ハハハ、実に何でもアリだな。Nextって奴は! ロボに乗って戦うなんざ、思いもよらなかったぜ!」
 一方、豪快な笑い声を上げているのは、『ヒーラー』ダブル・ノット(p3x009887)。依頼内容も敵と戦って勝つのみとシンプルでわかりやすく、ダブルの好みに合っていた。
「行くぜ、ダーティ・ワーカー! ギリムサンの無念は、俺達が晴らす!」
 過多とも言える装飾の付いた、黒と金の二色をベースとする自機に呼びかけながら、ダブルはその意気を示すかのようにブースタを噴かす。

「銀河Mark.Ⅹ? 随分と、面白可笑しい名前ではないか」
「本当に、すごい名前だよねえ。実際の強さも、すごいんだろうけど」
 『空虚なる』ベルンハルト(p3x007867)がつぶやくと、『どこまでも側に』ミドリ(p3x005658)が応じる。
 「良く分からんブリキ」に乗って「デカブツに頼る戦い」には興が乗らないベルンハルトだが、そうも言ってはいられない。
「ギリムとやら……顔も声も知らぬが、そやつが稼いだ時間、我々を呼ぶに足りるものではあったようだな。
 なれば、それに応えるは私の務めであろう」
「そうだよね。ぼくらの機体でどう攻略するか……技師の腕前を見せなきゃね!」
 既に、オリジナルのギリムがギア・バジリカを守るべく『銀河Mark.Ⅹ』と交戦し、散っている。だが、その奮戦があればこそ、ギア・バジリカが攻撃される前に、イレギュラーズ達は出撃できたのだ。
 故に、ベルンハルトの言はミドリにとっても同感である。『銀河Mark.Ⅹ』は明らかに難敵だが、それだけに技師として、ミドリは燃えていた。
「ギリム・ギャラクシアムぅ。君はねぇ、まだ敗けてないんだよぉ。勝とう。エイラ達と共にぃ」
 『深海に揺蕩う月の花』エイラ(p3x008595)は、冥土のギリムにそう呼びかけた。確かに、ギリムは死んだ。だが、エイラの言うようにまだ敗れてはいない。イレギュラーズ達が『銀河Mark.Ⅹ』を撃破すれば、それはギリムの勝利でもあるのだ。

(いやはや、月光人形やアルベドを思い出す話だね。自身の写し身にやられてしまうというのは、ゾッとしないものだ)
 シャドーレギオンにオリジナルが斃されると言う事態に、『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)は『無辜なる混沌』で発生した事件を思い出し、ぶるっと軽く身震いした。
『強敵 倒す がばろ』
「ああ、頑張ろう!」
 それを振り払おうとするかのように仲間達にテレパシーを送ると、大盾と直剣を持つ騎士鎧のような『ブラックウルフ』に搭乗する『マルク・シリングのアバター』マーク(p3x001309)が激励を込めて返した。
 『ブラックウルフ』は、『無辜なる混沌』で「中の人」が憧れている『黒狼隊』の騎士達をモチーフとしている。そんな機体に乗っているだけに、マークは意気軒昂だった。

(屍の山を築く忠誠……ただの狂犬ですね)
 『銀河Mark.Ⅹ』を前にした『ただのしがない』梨尾(p3x000561)は、内心でそう唾棄した。
 自らを創りだした相手、言わば親と言うべき存在に褒められたいと尻尾を振るのは、元生物兵器としては理解出来なくもない。だが、人為的に創り出された存在と言う共通点があるだけに、虐殺で以て尻尾を振ろうとするギリムのシャドーレギオンを梨尾は許せなかった。
「誰かのために命をかけて戦う、その心意気は素晴らしいよね」
 一方、自身を模した姿の、超合金で構成される装甲を持つ『グレートメカセララ』に搭乗している『妖精勇者』セララ(p3x000273)は、ギリムのシャドーレギオンに対して肯定的だった。
 もちろん、セララとギリムのシャドーレギオンとの立場は違う。鋼鉄の人々のために戦うセララと、歪んではいてもディアナへの忠誠のために戦うギリムのシャドーレギオンとでは、決して相容れることはない。
「どっちの想いが強いか、勝負だ!」
「よかろう……某のディアナ様への忠誠、とくと思い知るがよい」
 『グレートメカセララ』が指先を『銀河Mark.Ⅹ』に向ければ、『銀河Mark.Ⅹ』は掌を上に向け、クイクイ、と指を曲げて招きながら応えた。

●イレギュラーズの猛攻
 重厚なフォルムのゴーレムに、いくつものクラゲが盾や装甲の如く纏わり付いた様なエイラ機が、『銀河Mark.Ⅹ』の先手を取って仕掛けた。ふよふよと風に乗って漂うようなクラゲ型の火の玉が、『銀河Mark.Ⅹ』を追尾する。
「自由に動かれると面倒だからねぇ。これでぇ、動きを止めるよぉ」
「ぬうっ、小癪なっ!」
 火の玉は『銀河Mark.Ⅹ』の機体に纏わり付くと重しのようにのしかかり、その機動力を低下させた。
「さて、行こうか。戦闘モード起動……ギアブレイド、発進! さあ、この歯車の剣で削り斬ってやる!」
 ギュンッ! とミドリの駆る軽量型の機体『ギアブレイド』が、一気に『銀河Mark.Ⅹ』へと肉薄。そして、手にした歯車の剣で、銀の装甲をギャリギャリギャリ、と削ぎ落とす。
「貴様ッ! 某の機体に、よくも醜い傷を!」
 優美な装甲を削がれて酷い傷を付けられたギリムのシャドーレギオンが、ミドリに向けて憤慨した。
「屍の山を築きたいなら、自分自身で山を作るべきです」
 畳みかけるように梨尾機が放った炎が、『銀河Mark.Ⅹ』の機体に纏わり付く。すると、炎は装甲の隙間から機体内部へと潜り込んだ。バチバチッ、と『銀河Mark.Ⅹ』の各部がわずかながらではあるがスパークを起こす。
「戯けたことを! 良かろう! 先ず貴様から、屍としてくれよう!」
「うっ……! ですが、俺は倒れませんよ……!」
 ギリムのシャドーレギオンは、ミドリに向けていた怒気を梨尾へと向ける。同時に、『銀河Mark.Ⅹ』を梨尾機に急接近させると、業火を纏った右手で梨尾機の腹部を掴み、装甲を融解させ指を中へと食い込ませた。燃え盛る炎が、梨尾機の機体全体を包み込む。
 だが、梨尾は機体から伝わる高熱に耐えながら、歯を食いしばってギリムのシャドーレギオンに言い返した。
「一手遅れましたか……ですが、その厄介な手は封じさせていただきます」
「ありがとうございます! イデアさん!」
「――ちいッ!」
 梨尾機を炎熱から救うべく、イデアは自機と梨尾機を含む周囲の機体に、炎熱を無効化する力場を展開する。高熱から救われた梨尾は、イデアに心からの感謝を述べ、ふぅ、と一息ついた。
 一方、攻撃手段の一つを事実上封じられたギリムのシャドーレギオンは、悔しげに舌打ちする。

「この反応、この機動力……成程、私達の機体が能力に応じて適応するに対し、奴はそれを遥かに上回る性能を出力できるという事か!」
 エクスギアEXでの戦闘に当初は興が乗らなかったベルンハルトだったが、自らエクスギアEXを動かし、また、仲間達と『銀河Mark.Ⅹ』との攻防を目の当たりするにつれて、心が沸き立ってくるのを感じていた。
 搭乗者専用にカスタムされている以上当然ではあるのだが、いや、それを踏まえた上でなお予想以上に、エクスギアEXはベルンハルトに馴染んでいた。
「これならば、生身同様に楽しめよう!」
 そう叫んだベルンハルトが、『銀河Mark.Ⅹ』に向けて自機を疾走させると、『Margrave』も合わせるように動いた。
「さぁ、踊ろう。エクスギアEXでどれほど踊れるか、見物よね!」
「私の牙が折れるが先か、貴様の肉が断たれるが先かァ!」
「ぬっ――!」
 同時に肉薄する二機に、ギリムのシャドーレギオンはわずかに対応に迷う。だが、シャルロットにせよベルンハルトにせよ、そのわずかな間だけで十分だった。
 『Margrave』の紅の爪が『銀河Mark.Ⅹ』の左側の装甲を深々と斬り裂く。同時にベルンハルト機の頭部、その口に当たる部分が大きく開かれると鋭い牙が展開され、『銀河Mark.Ⅹ』の装甲もろとも機体を食い千切った。
「死と破壊を積み上げることでしか忠誠を示せない輩に、僕の騎士道は破れない!
 さあ、僕を殺してみせろ!」
「どいつもこいつも、死にたいらしい――よかろう、まずは貴様からだ!」
 接近戦で機体にダメージを与えてきた二人に、ギリムのシャドーレギオンが意識を向けようとした瞬間。その意識を、戦場に高らかに響き渡る声が釘付けにした。マークが放った、味方を守るために敵の攻撃を一身に引き受けんとする、騎士の覚悟が篭もった言葉だ。
「そうそう、やらせるものかよ。頼んだぜ、マークサン」
 ダブル機が、マークの乗る『ブラックウルフ』の足下に魔法陣を描く。魔法陣から展開された力場によって、『ブラックウルフ』は攻撃の後にさらなる攻撃を重ねたり、攻撃を受けた際に隙を見出して反撃を行うことが可能となる強化を受けた。これで、『銀河Mark.Ⅹ』が『ブラックウルフ』を攻撃すれば、反撃によって『銀河Mark.Ⅹ』の方も強かに損傷を受けることになる。
「よーひ、ひふよー!(よーし、行くよー!)」
 『グレートメカセララ』のコクピットの中で、どこからともなく取り出した自分の半分近くもある大きさのドーナツにセララはかぶり付き、そして一瞬で食べきった。同時に、『グレートメカセララ』は聖剣を抜いて天に掲げつつ、『銀河Mark.Ⅹ』に肉薄。落雷を聖剣で受けると、そのまま『銀河Mark.Ⅹ』に斬りつけた。エクスギアEX版『ギガセララブレイク』だ。
「ぬおおおおっ!」
 装甲など存在しないかのように機体を斬り裂かれた上、聖剣を纏っていた雷を受けたギリムのシャドーレギオンが、たまらず叫んだ。その隙に、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧機も『銀河Mark.Ⅹ』に急接近する。
(さすがに、味方を巻き込まないというわけにはいかないかねえ。それならそれで、しっかりと削るまでさ)
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が得意とするのは高威力の広域範囲攻撃だが、範囲が広いだけに味方を巻き込まないようにするのは困難だった。ならばと、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は機体に太刀を抜かせて、『銀河Mark.Ⅹ』を斬りつけていく。
「……馬鹿な!? 自動修復が阻害されているだと!?」
 『銀河Mark.Ⅹ』には自動修復機能があり、機体を損傷させられたところで少々なら大したことはない。そう考えていたギリムのシャドーレギオンだったが、機体の修復が通常より遅く、その原因が縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧機の斬撃にあると気付くと驚愕の声をあげた。

●右腕への集中攻撃
 機能が阻害されているとは言え、『銀河Mark.Ⅹ』の自動修復は厄介だった。それでも、イレギュラーズ達の攻撃は確かに『銀河Mark.Ⅹ』の損傷を深めてはいた。だが一方で、イレギュラーズ達の、特に前衛に出ている者の機体も、損傷が拡大していた。
 戦いが進むうちに、『銀河Mark.Ⅹ』は十の部位に分離。胴体を除く九つの部位を自律飛行する砲台として飛び交わさせつつ、隙あらばイレギュラーズ機のいずれかに取り付いてその能力を奪おうというのだ。
「そう来たか。なら、徹底して右腕狙いだ」
 ダブルが指をパチンと鳴らすと、『銀河Mark.Ⅹ』の右腕の周囲に膨大な量のデータが生じた。『Rapid Origin Online』は突如発生したそのデータを処理しようとするが、局所的に発生した、あまりにも膨大な量のデータには追いつけず、いわゆる『処理落ち』が発生する。そして『処理落ち』の影響で、右腕の動きは明らかに他と比べて鈍い物になっていた。
「はやくぅ、再合体してくれたらいいんだけどねぇ」
 エイラ機の両眼が、ギラッと金色に輝きながら、右腕を見据える。その視線を受けた右腕は、ビクッ、と大きく震えて、さらにガクガクと小刻みに震える。見た目はわかりにくいが、明らかにダメージを受けている風であった。
「機械相手ってのは慣れてるんだよね、色んな意味でさ!」
 動きさえ鈍っているなら、技師であるミドリにとって機械の構造上脆い部分を攻撃することは容易い。『ギアブレイド』の持つ歯車の剣が、右腕のそういう部分を集中的に狙い、見た目からして損傷が激しいとわかるまで削り、傷つけていった。
「逃がしませんよ。この鎖で、戦う力を奪います」
 さらに梨尾機が、如何なる敵も逃さない炎の鎖を放ち、右腕を絡め取る。右腕は炎鎖によって損傷こそしなかったが、その実、梨尾の告げたとおりに、戦闘のためのエネルギーを大きく奪われていた。
「この国では、強い者が正しいのであろう? であれば、最早言葉は要らんよなァ!」
 コクピットの中で、ベルンハルトが咆える。最早、『銀河Mark.Ⅹ』と言う獲物を狩るだけだ。人型であろうと、分離していようと、それは何ら変わることはない。多少、狩りの手法が変わるだけだ。もっとも、『処理落ち』で動きを鈍らされている右腕は、狩りの獲物としては物足りなくさえあるのだが。
 ともあれ、ベルンハルト機は逃れることもままならない右腕を狙い、牙で噛みついた。右腕の装甲はバキバキ、と音を立ててヒビ割れ、牙に貫通される。
(これで、再合体後の攻撃が緩んでくれればいいんだけどねえ)
 ベルンハルト機に噛み砕かれても、自動修復を頼りに何とか生き存えようとする右腕。だが、そうは問屋が卸さなかった。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧機が太刀を大上段から振り下ろし、右腕を両断したのだ。さすがにこうなると、自動修復が働く以前の問題であり、右腕は爆発四散した。
「おのれえええっ!!」
 右腕を破壊されたことで、『銀河Mark.Ⅹ』の再合体後の攻撃性能は著しく落ちた。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が望んだとおりだ。だが、そうでなくても自機を一部分でも撃破されたことに、ギリムのシャドーレギオンは激昂した。
(――まずい!)
 その様に、直感的にそう感じるマーク。このままでは、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧に攻撃の矛先が向いてしまう。アクセスファンタズムでの「予習」によれば、一対多において『銀河Mark.Ⅹ』は防御さえも物ともしない高威力の広域範囲攻撃を好んでコピーする傾向がある。ちょうど、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧機が使うような。もし、その攻撃をコピーされたらどうなるか――!
 対応を思案したマークは、『ブラックウルフ』に大盾を手放させると、両腕をダランと下に下げて防御を放棄する姿勢を取らせた。
「まだ僕を殺せないうちに、右腕を破壊されて、どんな気持ちだ?
 ほら、今なら防御もしない。このチャンスに、僕を殺してみろ」
「貴様……某を舐めるか! よかろう! 貴様の技を奪い、天国への引導を渡してやる!」
 自殺志願にしか見えないマークの行動を、ギリムのシャドーレギオンは「舐められている」と判断した。実際には、ギリムのシャドーレギオンがそう判断するように、敢えてマークがそう振る舞ったのだが。
 『銀河Mark.Ⅹ』の、胴体と既に撃破されている右腕以外の八つの部位が、『ブラックウルフ』の同じ部位へと取り付いていった――。

●暴と化した武の終焉
 『ブラックウルフ』の技を奪った『銀河Mark.Ⅹ』は、再度人型へと合体。既に右腕を撃破したイレギュラーズ達が、今度は左腕を撃破しようとする動きを見せたことから、このまま各部位を各個撃破されては拙いとギリムのシャドーレギオンが判断したからだ。
 再び人型となった『銀河Mark.Ⅹ』の攻撃は、分離前よりも緩くはなっていた。だが、『ブラックウルフ』以外の前衛にいる機体は、既に大きく損傷を受けていたこともあり、撃墜されてしまう。
 『ブラックウルフ』も壊滅的な損傷を受けており、何時撃墜されてもおかしくない。だが『ブラックウルフ』は被弾する度に、倒れることなく動き続けて反撃を行い、着実に『銀河Mark.Ⅹ』を損傷させていった。
「何故だ! 何故倒れぬ!」
「その技に、マークのような勇気や意思が篭もってないからよ! つまり、アンタの技は、ただの物真似!」
 『銀河Mark.Ⅹ』と『ブラックウルフ』は、傷つけば傷つくほど威力を増す同じ技の応酬をしていた。ならば、とっくに『ブラックウルフ』は撃墜されていてもおかしくはないが、そうはなっていない。
 その理由が理解出来ないと言わんばかりのギリムのシャドーレギオンに、機体の至る部分に紅い放熱回路を浮かび上がらせた『Margrave』を駆りながら、シャルロットが答えた。そして、右腕を左に、左腕を右に薙いで、損傷の激しい『銀河Mark.Ⅹ』を紅の爪で大きく斬り裂いていく。如何に頑強な『銀河Mark.Ⅹ』と言えども、さすがに撃墜は目前にまで追い込まれていた。
「全力全壊! ギガセララブレイク!」
 『無辜なる混沌』の鉄帝でも、『Rapid Origin Online』の鋼鉄でも、セララはたくさんの友を得てきた。だからこそ、絶対にこの国とそこに住まう人々を守る。『グレートメカセララ』は、その想いを、意志を込めた必殺の一撃を放つべく、聖剣を天に掲げた。
 それに応えるように天から落ちた特大の雷を聖剣で受け止めると、『グレートメカセララ』は『銀河Mark.Ⅹ』を両断すべく、聖剣を全力で振り下ろす。
 『銀河Mark.Ⅹ』は、ギガセララブレイクによって両断されたかに見えた。だが、コクピットの中のギリムのシャドーレギオンまでもが致命傷に思えるほどに両断されながらも、『銀河Mark.Ⅹ』はなおも戦おうとする。
「――十一度目の改造はございません。貴方は、ここで終わりです」
 しかし、『銀河Mark.Ⅹ』の後方に回り込んだイデア機が右腕のブレードを展開して、背後からギリムのシャドーレギオンごと『銀河Mark.Ⅹ』を刺し貫いた。さすがにこれ以上持ち堪える術はなく、『銀河Mark.Ⅹ』はギリムのシャドーレギオンごと、爆発四散する。

 ――ギア・バジリカはギリムのシャドーレギオンの「暴」から、無事に護り抜かれたのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)[死亡]
不明なエラーを検出しました
ミドリ(p3x005658)[死亡]
どこまでも側に
ベルンハルト(p3x007867)[死亡]
空虚なる

あとがき

 この度はリプレイ執筆が遅れまして、大変申し訳御座いませんでした。プレイヤーの皆様には、慎んでお詫び申し上げます。

 それでは、シナリオへのご参加、ありがとうございました。お疲れ様でした。

PAGETOPPAGEBOTTOM