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シナリオ詳細

歯車都市と影人間ポッチ

完了

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●歯車の街
 どこからともなく蒸気が噴き出し、ただでさえ暗い空を煙が覆った。
 ここは歯車が支配する都市『ギアシティ』――――
 流れる空気や風の強さ、そして時間までもがすべて『サイショノハカセ』の作った歯車によって支配されていた。

「ああ、やってしまった……やってしまった……ギアシティはもうおしまいだ……」

 サイショノハカセは自分で作ったある機械を抱えながら、工具や謎の鉄材がゴロゴロ転がった部屋の中をうろうろしていた。

「私はただ『ポッチ』が見てみたかっただけなのに、たった一匹の犬を『ポッチ』にする予定だったのに、まさかギアシティに住むすべての人間が————」

 窓から外を覗くと、あちこちから歯車が飛び出した廃退的な機械都市の中に潜む無数の『影』が見える。

「……ひとり、たったひとりでも元に戻せれば、遺伝子情報を採取してデータを読み取り直し、また人間の姿に戻せるのに……私は……」

 サイショノハカセは、窓に映った自分を見つめながらつぶやいた。

「ひとりぼっちだった私は、人を喜ばせる方法がわからないんだ」

●満たされない心
 黒いスーツを身にまとった境界案内人は、図書館に来たイレギュラーズ達を眼鏡越しに真剣なまなざしで見つめ、依頼を告げた。
「お待ちしておりました。今回皆様には、ある世界の”救済”をご依頼したいのでございます」
 エメラルドナイトによれば、今回向かうべき世界『ギアシティ』は、創始者たる『サイショノハカセ』による失態で住人がいなくなってしまったのだと言う。

「正確にはギアシティに住んでいる者たちは消滅したのではなく、『ポッチ』という影人間に強制的に変身させられてしまい、言葉を発したり、今まで通りの生活を送ることができなくなってしまったのです。事の発端はサイショノハカセが発明したポッチ変換装置の暴走――――ハカセは飼い犬を元に影人間ポッチを作って"遊ぶ"つもりでいたのですが、不具合によって装置が暴走し、変身させる予定のなかったギアシティの全ての住人がポッチになってしまい、元に戻せなくなってしまったそうです」

 現在ギアシティで被害に遭っていないのはサイショノハカセのみ。
 変身させられた影そのものはギアシティを漂っているが、姿形は黒い”影”となり、言葉を発することもないため、廃退的な歯車の世界がさらに不気味な空気に包まれているらしい。

「ポッチになった住人全てを元に戻すには、ポッチ変換装置に住人の遺伝子情報を入力する必要があります。しかし、ポッチの遺伝子情報は変身させられる前と異なっているため使用不可。さらに創造者であるハカセの遺伝子情報では、機械がマスターとして読み込んでしまうため、齟齬が出て使い物にならないとか……」

 ここでイレギュラーズからある疑問点が指摘された。
 そう、ポッチになる前のギアシティの住人の遺伝子情報が必要ならば、ハカセ以外の人間が全てポッチになってしまった時点でどうしようもないのでは? という話だ。

「おっしゃる通りでございます。しかし、ひとつだけポッチを元に戻す方法があるのです。それが、おもてなしです。ポッチは”満たされない心”から虚無を増大させて影となる、というポッチ変換装置の仕組みで生み出すことが可能になるそうです。つまり、ポッチの心を少しでも満たすことができれば元に戻るのです。……一見簡単なことなので、ハカセにも解決できるのではと思うのですが――――」
 研究のために全てを捨てずっと孤独な生活をしていたサイショノハカセには、人のもてなし方がわからないのだとか。

 つまり、イレギュラーズ達に任されたのは”ひとりのポッチをもてなして人間の姿に戻すこと”である。
 もてなすポッチについては、ハカセの庭をずっとうろうろしてハカセの飼い犬と遊んでいる少年にしてはどうか、という話になっているらしい。

「まったく、そもそもサイショノハカセが飼い犬の心を虚無で満たすなんてイタズラをしなければ、こんな事にはならなかったのですが……まあ、過ぎてしまった事は仕方ありませんね。」

 境界案内人は、イレギュラーズ達に歯車都市の地図を渡す。

「ギアシティはあちこちから歯車が飛び出しており、足場が大変不安定です。どうかお気を付けていってらっしゃいませ」

NMコメント

 こんにちは、来栖彰です。
 今回皆さまにご依頼したいのは影人間『ポッチ』のおもてなしです。
 ポッチは虚無に満たされた存在なので、その虚無の心を皆さまのあたたかさと優しさで満たして人間の姿に戻してあげてください。
 よろしくお願いします。

●舞台『ギアシティ』説明
・あちこちに歯車がある、時間も天気も流れる空気もすべて歯車で管理された世界
・工場地帯のような景色が広がっており、空は暗く蒸気がよく噴き出している
・サイショノハカセ以外の住人は全員影人間『ポッチ』になってうろうろしている

●目的
・サイショノハカセの庭で遊んでいる元少年のポッチをおもてなししてあげてください
・心が満たされ元の姿に戻ったポッチをサイショノハカセのとろこへ連れて行って、遺伝子情報をポッチ変換装置に読み込ませ全てのポッチを人間に戻しましょう

●サイショノハカセについて
・ギアシティの創始者にして研究者兼発明家である偉い人です
・コンピューターやロボット製造にとても詳しいです
・長所は好奇心旺盛なところ、短所は人付き合いが苦手なところになります

●特殊ルール
・ギアシティはあちこちから歯車が飛び出していたりと、足場が不安定で移動に若干の危険が伴う、という点を留意した上でおもてなしをお願いします
・ポッチもイレギュラーズ同様に、足場の影響を受けます
・現在はハカセ以外の人間はポッチとなって時間や天気と無関係な生活を送っているので、歯車を動かして時間や天気を強制的に変化させるのもOKです
・ポッチは影なので喋れず、表情を確認することもできません

●プレイングについて
 ポッチは犬に興味を示しているので、動物好きであると予想して牧場に連れて行くとか、カフェテラスに近い場所で美味しいご飯を振る舞ってあげるとか(ポッチも飲食可能です)、サッカーをして思いっきり汗を流し合うとか、あるいはギフトを活用するとか……元少年のポッチをみんなでもてなしてあげてください。
 すり合わせをしてみんなでおもてなし方法を決めても、それぞれが考えたおもてなしをすべて行っておもてなし祭りにしてもOKです。

  • 歯車都市と影人間ポッチ完了
  • NM名来栖彰
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月10日 22時10分
  • 参加人数3/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

リプレイ

●サイショノハカセ
 ギアシティに到着した3人のイレギュラーズ達は、ひとまずサイショノハカセが住む研究室へ向かう。
 道中は無数の影が漂っており、陰気な空気を漂わせていた。
「あちこちを歩き回っている影が、ポッチだな。虚無によって心が支配されているなんて、なんだか可哀想だ」
『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)がそう言うと、『ヘビー級ハニートラップ』金枝 繁茂(p3p008917)が口を開く。
「ポッチもなんとかしなきゃだけど、それよりもハカセよ! 人の喜ばせ方を知らないとか人見知りとか言ってるけど、そのまんまじゃまた同じことが起こりかねないわ。ハンモちゃんが一皮剥けた男にしてあげなくっちゃ☆」
「確かにサイショノハカセが同じことを繰り返してしまう可能性は考えられますね。何か策があるのなら、繁茂さんにお任せしましょう。策について深くは聞きませんので」
『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)がそう言ってすぐ、大量の鉄材に囲まれた古びた家の前で手を振る老人を発見する。
「待ってました……どうぞ、上がってください……」
 3人は庭で犬と戯れるポッチを確認し、サイショノハカセの家に上がった。

「その……庭にいる少年のポッチは比較的人懐っこいので、多分心を満たすことはできるのではないかと……」
 キョドキョドしながら説明するハカセに、樹里が尋ねる。
「基本的にポッチは警戒心が強い、ということでしょうか?」
「はい……虚無に支配されていますから、人間的な感情の中でもマイナスな部分に支配されやすい傾向があります……なんというか、超絶デリケートな人を扱う感じに近いと言いますか……」
「な~るほど、正にハカセちゃんみたいな感じの子達ってわけね?」
「……」
 繁茂の言葉に、ハカセは黙ってしまった。
 すると、繁茂はハカセの後ろからガバっと抱き着く。
「!!?」
「ハカセちゃ~ん! あなたもポッチみたいに満たされないと、またおんなじことの繰り返しになっちゃうわよ? さ、ここはハンモちゃんに身をゆだねて、庭のポッチちゃんは2人に任せるわよ!」
「え!? ちょ、ちょっと!?」
「じゃあ、俺たちはポッチを連れておもてなしをして来る。ハカセはポッチ変換装置の修理の方、頼んだぞ」
「いや頼んだぞって、この状況で、あっあっ、ちょっ、まっ……」
「……」(目をつぶって背を向け部屋を出る樹里)

「アッー!!」
ハカセの悲鳴を背に、樹里とエーレンは庭に向かった。

●虚無を満たす祈り
「彼ですね。犬と遊んでいるところを見ると、動物が好きなのでしょうか?」
「そうみたいだな。とりあえず声を掛けてみるか」
 と、エーレンがポッチの肩をポンポンと叩くと、犬と遊んでいたポッチはびくっと肩を上げてから距離を置き始めた。
「これで他のポッチよりも人懐っこいとは……予想以上に警戒心が強いようだな」
 エーレンが「ううむ」と手をあごに沿え考えていると、樹里が「私に任せてください」と、ポッチに少しずつ近付いていった。

「怖がらないでください。あなたは虚無に支配されているために、いらない恐怖までもが増幅しているのでしょう。私が教える祈り花で心を満たせば、恐怖も小さくなるはずです。さあ、私に身体をあずけて————」
 樹里はそっとポッチの背後に回ってから抱擁し、祈り花を教示した。
「まずは両膝をついていただいて……そう、できてますよ」
 優しく微笑む樹里にポッチは安心したのか、彼女に言われた通りに動く。
「私の祈り花は安寧を与えるのです。――――さあ、手を組んで……そうそう、そんな感じです。目を閉じて、呼吸を整えて……感謝を捧げて……」
 樹里はそっとポッチの両手を包み込んで、ぬくもりを伝えながら祈る。
すると……
「!」
 樹里の祈りの効果か、表情は汲み取れないがポッチから警戒の気配が消えた。
「大したものだな。ポッチの心から恐怖の感情が消えたようだ」
 エーレンは樹里のギフトに感心し、ポッチの頭を撫でる。
「よかった、これでこの子とこみゅにけーしょんがとれますね。エーレンさん、何か”おもてなし”に関する案はおありですか?」
「ここへ来る途中に高台があっただろう? その少年は犬が好きなようだから、犬と一緒に高台へピクニックへ連れて行ってやったらどうだろうか。犬と戯れていると聞いて、玩具なんかも持って来たんだ。ついでに弁当も作って来た」
「いいですね、子供が喜びそうで。早速連れて行って差し上げましょう。」
 2人はポッチと犬を連れて高台へ向かった。不思議そうに見つめる他のポッチ達の視線を感じながら————

●ハンモちゃんの×××作戦
 ハカセの自宅では、ビクビクしながら逃げ回るハカセをゆっくりと繁茂が壁に追いやっていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、私はその……そういう経験が無いんだ! こ、こわ……」
「怖がる必要なんてないから……手を絡めて。ハンモの手、あったかいでしょ?」
 繁茂はサイショノハカセの手をぎゅっと握る。
「ひっ……! わ、私の手は汚いからやめてくれ! ポッチ変換装置を修理していて、油まみれなんだ」
「ふふふ、かわいいんだから……」
 繁茂はハカセの左手を自分の腕に寄せ、つーっと触らせながら胸まで滑らせる。
「……!」
「ハンモの胸、柔らかいでしょ? 鼓動が手のひらから伝わるでしょう?」
 ハカセは目をまん丸くしながらも、しかし繁茂の誘惑に対する警戒心を緩めている様子だった。
 と、ハカセが気を許し始めたのを察知した繁茂が、ハカセの頭をぎゅっと自分の胸に抱きよせる。
「ハンモのしんぞう、どくどくしてるでしょ?」
 繁茂の艶っぽい声を間近で聞き、ハカセの胸がドクンと大きく鳴る。
 ハカセは繁茂によってベッドに押し倒され、いよいよ身動きがとれなくなる。
「ねぇ、もっとハンモのことしって。いろんなこと、ハンモでしって」
 帯を外し着物を着崩して肌を晒していく繁茂にハカセは釘付けになり、目が離せないでいる。上ずった呼吸を繰り返すだけで、あとは何もできない。
「ハカセ、ハカセのやりたいこと、ハンモにして。ハンモをあなたのものにして……」
 繁茂は頭の後ろで腕を組み、体を伸ばす。
「ゴクリ……」
 生唾を飲んだ老年の童貞は、上体を起こして繁茂の身体に手を伸ばす——――

●ポッチと犬とピクニック
 ハカセが繁茂とアッーとなっている中、エーレンと樹里は少年ポッチ達を連れて高台へ来ていた。
 エーレンは自慢のお手製弁当を広げて、ポッチに振舞った。
「一応子供が好みそうな物を作って来たつもりだ。好きに食べてくれ」
 エーレンが広げた弁当箱には、から揚げにサンドウィッチ、そして星形に切ったイチゴが詰められていた。
 と、ポッチは想像もしていなかった勢いでエーレンの弁当をほおばり始める。
「わ、すごくお腹すいてたみたい……! お弁当持ってきて正解でしたね」
「子供一人で行動しているというのが気になっていたんだ。恐らくロクに食事もしていないんじゃないかってな。こうも腹が減っていては、心を満たすことも難しいだろう」
 ポッチはあっという間に弁当を平らげ、エーレンに向かってお辞儀をした。
「口に合ったようでよかった。さて、こんな物を持って来たのだが、遊んでみないか?」
 エーレンからフリスビーを受け取ったポッチは、首をかしげながらフリスビーを見つめている。
「こう使うんだ。そら、取ってこーい」
 エーレンが投げたフリスビーを夢中で追いかける犬を見て、ポッチは飛び跳ねながら喜びを表す。
 ポッチはフリスビーをくわえて戻って来た犬の頭を撫で、今度は自分でフリスビーを投げて犬と遊び始めた。
「そうそう、ゆったり投げるのがコツなんだ」
 3人と1匹は、ポッチがくたくたになるまで高台で遊び続けた。

●影から人へ
 夜になった頃、エーレンと樹里はポッチと犬を連れてサイショノハカセの自宅へ戻って来た。

「待っていました! おや、ポッチの心臓が光っていますね。もうすぐ元に戻りそうじゃないですか。さすが、混沌世界のイレギュラーズ達は素晴らしい仕事をなさる!」
 ハイテンションで話を続けるハカセに、あっけにとられるエーレンと樹里。
「遅かったね! ポッチのこと、任されてくれてありがと~!」
「何があったかは聞くまい」
「それより! お夕飯どうしましょうか? ポッチさんお腹すいてると思うんですが」
「俺が夕飯を作ろう。みんなで食卓を囲めば、ポッチの心も晴れやかになるかもしれないからな。ハカセ、台所を借りてもいいか?」
「もちろんです! お好きにお使い下さい!」

 鉄材の転がる食卓で、エーレンが作った料理が振る舞われた。テーブルにはエビフライやカレーライスなど子供が好む料理がたくさん並んだ。
ポッチは心臓の光から少しずつその容姿が確認できるようになっており、目をキラキラさせながら食事を頬張っていた。
食事をするごとにポッチの体は明るさを取り戻していく。
「ポッチちゃん、まだ虚無が完全には晴れてないみたいね。よ~し、そら~!」
 繁茂は食事を終えたポッチの体を犬のようにわしゃわしゃと撫でまわしてじゃれる。

すると、ボウっとポッチの目に光が差し、影だった体が完全に人の姿に戻った。
「これは……! みなさん、ポッチが元に戻りました! 成功です!」
 ハカセははしゃぎながら、修復したポッチ変換装置に取り込むための遺伝子情報を少年から採取した。

「よし、再度ポッチ変換装置を起動すれば……」

 夜の闇に紛れていた街を漂う影は、パッと明かりを取り戻し、人の姿へと変わっていった。
 無数の影が漂う不気味な世界は、住人が戻ったことによって活気あふれる蒸気の街に戻った。

「よかった……どうかギアシティに住む人々が、二度と虚無に支配されたりしませんように」
 樹里の祈り花を置き土産に、3人は自分達の場所へと帰って行った。

成否

成功

状態異常

なし

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