PandoraPartyProject

シナリオ詳細

南部戦線異常ありき

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「忙しい時に呼び立ててすまない、イレギュラーズの諸君」
 エッダ・フロールリジ(p3p006270)は黒壇の机越しに一同を見据えると、低い声でそう切り出した。見れば、彼女の服装はイレギュラーズとして活動するときの騎士(メイド)服ではなく軍服。そしてここは鉄帝南部戦線(幻想でいうところの北部戦線)に於ける要地のひとつである。……となれば、彼女が依頼人兼依頼参加者としてこの場にいることの意味を理解できぬ者はいまい。少なくとも、幻想王国に対し忠義あるものはこの時点でこの場にいないものと考えて差し支えあるまい。
「私と貴様らの仲だ、単刀直入に話そう。今回の依頼は輸送経路の襲撃にある。少なくとも幻想の軍部にとっては打撃となろうが、貴様らの心情的にそう痛む腹もかいだろうよ。なにせ対象は、情報が正しければ『特殊補給用官品』だ。意味は分かるな?」
 輸送路を襲撃され、飢えに苦しむ幻想兵士を思えば心は痛むが、そうではないとエッダは嘯く。そしてその持って回った言い回しに、元の世界、もしくは元の生活で軍部に明るい者は即座に理解できただろう。
「……女か。その扱いだと、奴隷……?」
「軍貴族御用達のな。大方、先ごろの幻想のゴタゴタの副産物だろうよ。戦線の管理は穴だらけの割に、妙なところで目端の利くことだ」
 エッダが吐き捨てると、一同は苦い顔をする。『大奴隷市』に端を発する一連の出来事が、こんな形で軍部にまで拡大しているとは思うまい。そして、奴隷の末路など知れたこと。……或いは、奴隷にあらざる者が混じっている可能性も十分考えられようか。
「敵情は追って通達する。探られて痛い腹だ、貴様らの名を大々的に悪名として喧伝することは奴らもすまいが、それなり以上の抵抗は覚悟しておけ」


 夏も近いというのに、北方戦線に吹く風というのはどうにも冷たく、乾いている。風のざわめきに乗って聞こえる悲嘆の声を、御者として任についた新兵のデュフォーは聞かないようにしていた。その声に混じって、男とも女ともつかないうめき声が漏れるのも。彼はそれなりに善人であるから、この状況に嫌悪感を覚えこそすれ興奮などとてもできない。
「どうしたデュフォー、周辺視がおろそかになっているぞ」
「あっ……すいません上官殿、意識が漫ろでした」
「気をつけろよ。貴様は輸送任務の後に王都にとって返すのだろうが、このルートはもう通れんのだからな。間違えて通らぬように覚えておけ」
 並走する馬に乗った上官が、ぼんやりと前を見るデュフォーを叱責する。彼は「まともな方」だが、さりとてこんな汚れ仕事に回されるのだから「まともで損をしている」軍人なのだろう。苦労が耐えぬことである。
「し、しかし上官殿、この警備はいささか厳重では? 定例の食料補給でもないのに、これを鉄の連中が襲う可能性は……」
「だからこそだよ。この『輸送品』が表沙汰になれば、北部戦線も些か以上にまずいことになる。内容の重要性は言わずもがな、な」
「…………」
 上官の言葉に、デュフォーは押し黙った。
 上級騎兵に貴重な機関銃手まで加え、堅牢な馬車ときた。全くもって……そう、全くもって『ご苦労』な対応策もあったものである。

GMコメント

 リクエスト有難うございます。軍的ななにか……名声と悪名とは……と大分考えて時間をとりました。

●重要な備考
 このシナリオは「鉄帝・善属性、幻想・悪属性」に分類される依頼です。
 名声変動は『鉄帝の名声、幻想の悪名』がそれぞれ微増します。
 失敗した場合は増減ありません。

●成功条件
・『特殊補給用官品』の強奪。幻想兵の損害は成否判定そのものに影響しない
・(オプション・重要度高)馬車の中の幻想兵の殲滅
・(オプション・重要度低)護衛幻想兵士への損害増

●『特殊補給用官品』
 お察しください。ナマモノですので取り扱いは慎重に。
 最短としては馬車ごとの強奪のうえ中の幻想兵殲滅がよろしいかと。
 健全な精神「しか」持たない人にはおすすめいたしません。

●護衛×総勢20~
 当該馬車の周囲を包囲するように配置されています。 
 全身鎧と武装騎馬による上級騎兵、馬により牽引された機関銃とその銃手、軽装で駿馬にまたがった軽装騎兵などがおります。
 練度はそれなりであり、油断できる戦力ではありません。が、『特殊補給用官品』の御者は新兵です。

●戦場
 南部戦線(幻想でいう北部戦線)の荒野。
 敵の戦列は基本、機動5程度で移動中。横合いから突っかける形になるので、機動4以下でも超射程なら2ターンは追いすがれます。もしくは頭を押さえれば問題ないです。
 軌道戦を仕掛ける場合、エッダさんの指示で騎馬か馬車が用意されますが、前者を用いる場合「騎乗戦闘」ができないとちょっと厳しいです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 南部戦線異常ありき完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
天下無双のくノ一
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
※参加確定済み※
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
佐藤 美咲(p3p009818)
無職

リプレイ


「『特殊補給用官品』とか、同じ女性としてはあんまいい気分じゃないっスねー……」
「衛生面から管理したいという点は、領地運営の経験から理解はできます。ただ、問題が多いことも理解しているはずですが……」
 『ダメ人間に見える』佐藤 美咲(p3p009818)は今回の依頼に、こと幻想側の所業に少なからず不快感を覚えていた。……というか、女性なら大なり小なり不愉快な話ではあるはずだ。『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)とて、合理性の上で理解は示しつつも、それを良しとする気はない。
「このような輸送品は使ってないし輸送部隊も存在しない。よって何人死のうが被害は無く、訴えられる事もなし――建前上は。全く、相も変わらず素敵な世の中ですね」
「ダレが考え始めたのかシラナイけれど、これだけ下衆なことをしてるってことはカクゴは出来てるハズさ」
 瑠璃の諦め混じりの溜息に、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)はは獰猛な笑みで応じる。幻想側が隠したがっている部隊なら、消えてしまっても問題はない。生き残っても、表沙汰にはならない。……全く素晴らしい依頼だ。
「国の喧嘩にゃ興味はねーが、金が貰えるなら文句はねーや」
「今日はどんなことして遊ぼっかな~❤」
 だからこそ、善悪よりも己の利益ないしは快不快で行動する『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)や『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)にとってはこの上ない娯楽なのだろうが。
「ま、護衛の仕事より先に強襲の仕事が入ったので良しとしましょう。グッジョブ、エッダ氏」
 美咲の言う通り、場合によっては幻想側から護衛依頼が入っていておかしくはなかった。この情報を持ってきた『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)の嗅覚はたしかなものだったと言わざるを得ない。

「残念ながら、今日は騎士(メイド)は封印だ。私が何者なのか、奴らによく見ておいてもらわなければならないからな」
「僕も1人の軍人ですので、士気高揚のための『補給品』の存在は支持しましょう。ですがこれは気に入りません」
「まぁ、私は私のすべきことをするだけさ」
 エッダは陽動班の5人から離れた場所で小さく咳払いをひとつすると、冷徹な軍人の表情で告げる。『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)と『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)はそれぞれ、過去ないし現在に於いて軍籍を持つ者だけあり、敵方に多少の理解はある。あるが、それと納得できるかは別問題だ。
「……と、いうわけだ。作戦の手筈は伝えたが、問題ないな?」
「委細、抜かりなく。この地点を襲撃位置に定めたことに僭越ながら賛辞を送らせていただきます」
「止せ、小官は戦略的に当然の選択をしたまでだ」
 エッダが確認がてら水を向けると、御者の兵士は硬い声音ながらに冗談を投げてみせた。上官に称賛とは、不遜ながらも将来の明るさが見込めるというものだ。

「あー……奴さんの護衛、いかにも『真面目だけど巻き込まれた』って顔してまスねー」
「じゃあ、オレ達も悲しい悲しい雇われ兵として戦いたくないって叫び周りながら襲いかかるかい?」
 美咲が先頭の護衛、次いで補給品を積んだ荷馬車の御者を見て顔を顰めた。ことほぎは冗談ぽく告げ、小さく息を吸う。
「「まっぴら御免だ(っス)」」
 美咲とことほぎは異口同音に告げると、かたや呪歌を歌い上げ、かたや裁縫道具セットから引き出したワイヤーを、補給品の馬車後方へとそれぞれ叩きつける。
 次いで、戦列が乱れたところで1人の騎兵が瑠璃の生み出した棺に飲み込まれ、直後、絶望の表情とともに吐き出される。
「大層なおもりじゃねェか、オレにもちょっくらわけてくれよ!」
「その身なりからして雑兵でもあるまいし、自分たちが運んでいるモノが何なのか分かっているのか! ハジを知れ!」
「貴様等、我々を何だと心得ている!」
「……下衆な欲を満たす為に上官の使い走りにされ、これから散らされる『記録に残せぬ輸送隊』の方々でしょう? ご愁傷様です」
 イグナートの高らかな宣戦布告に寸暇をおかず声を荒げた兵士は、しかし続く瑠璃の、いっそ無関心とすら思える冷徹な言葉に息を呑んだ。
「お兄ちゃんたちってもしかして気持ちよくなりたいの? だったら……マリカちゃんがシてあげよっか❤」
 その一瞬の静寂を、砂糖菓子のような声とともに地獄のような苦痛を添えてマリカが詠う。最悪の少女の吐息が生んだ混乱は、ギリギリ難を逃れた馬車にすら波及した。


「あいつら、どこの馬の骨に掴まって……何だありゃあ!?」
 デュフォーの傍ら、馬車の様子に気を張っていた兵隊の1人は背後を急襲した連中の無謀さに鼻を鳴らし、しかし、直後に驚愕で顎が外れそうなまでに口を開けた。そこにいるのは、5人の……否、その何倍にも比する襲撃者の大群だった。
 各々が範囲術式をメインで使ったこともあり、少人数の無謀な襲撃ではなく、部隊同士のぶつかり合いにすら思える規模へと変じている。――というのは、ある意味正解、ある意味ミスリードだ。
 襲撃者の群れ、その大多数はマリアが襲撃犯に合わせて突っ込ませた己の幻影なのだ。
「この状況、誰に当たるかもわかりまセンね‥‥なら、こっちでス」
 美咲は多数のワイヤーを騎馬兵、こと重装の騎兵を狙って射出し、そのバランスを崩しにかかる。次いで、マリカの生み出した死霊が高速騎兵にまとわりつき、その足取りを大きく鈍らせる。その所作で傷口が開いた兵の呻きを、彼女は聞き逃さない。
「キャハハハッ!お兄ちゃんのここ、とっても気持ちよさそう❤」
 相手の傷を指先でなぞりあげるように示し、マリカは心からの笑みを零す。
 そのあまりに奔放かつ危うさの残る言動に、美咲とイグナートは少々渋い顔を見せた。戦闘に躊躇はないが、戦いの高ぶりと愉悦の笑みは質が違う。そういう意味では、双方は異なる生き物なのである。
「洒落臭い! この程度の『まどわし』で我らを打ち倒せると思ったか!」
 とはいえ、彼等とて物の数でもない雑兵、増して弱卒ではない。それなりの実力者を、それなりの数抱え込んで戦場にいるのだ。初動の不意打ちだけでは即座に持ち直し反撃に移る、その程度の理性も技術もあるということにほかならぬ。
「ち、数が多すぎる……!」
 ローザミスティカ仕込みの監獄魔術を駆使しつつ、しかしことほぎは頬に冷や汗を伝わせながらじりと後退の構えを見せた。飛び交う銃弾、多少の傷を無視して剣を握る重装兵、多少の鈍化程度で陽動班の誰もを超える速度で迫る高速騎兵。なるほど、強靭な部隊だ。
「敵は弱卒、数はまやかし! 即座に潰して輸送路を確保しろ!」
「「「オオオオオオオオオッ!!」」」
 ことほぎの焦りの声や、彼女についで後退を始めた面々、さらには勇ましく声を上げつつも胴を染め上げた血に舌打ちするイグナートらの姿を見れば、いっときの勢いなにするものぞ、と兵士達が突っかかるのは当たり前だ。そして、背中に追いすがられて前を往くリスクよりかは、背後を掃除してすっきりと進むことを選んだ兵士の判断は在る種正確ではあった。
 ……正確ではあったが、適切ではなかったというだけだ。

「おぉぉぉ! 雷装深紅!!」
「夢想、第三套路――」
 唸りを上げて突っ込んでくる馬車から、紅雷が爆ぜ、鋭い拳が舞う。咄嗟に馬車を塞ごうとした高速騎兵は、しかし唐突な一発を受け軌道を変えて幌へと槍を突きこみにいった。その判断ミスが命取りであるというのに。
「ハァァッ!!」
「シッ……!」
 迅の拳が槍を伝って騎兵の胸甲を打ち砕き、マリアの雷撃がその騎馬の拍動を止め、失速に対応できなかった騎馬は無様に荒野を転がっていく。
「今の私の雷撃は君達の魔力を瞬間的に全て焼き尽くせる程に強化されている! 覚悟したまえ!」
「僕の拳も、いつになく猛っています。このまま全速前進、あの馬車へ!」
 マリアの咆哮に、迅も言葉を合わせる。それから思い出したように口元のソースを拭うと、御者に向けて声を張った。

「なんだ、あれは! 何事――」
「いちいち騒がないと戦えないなんて、難儀な性格ですね」
「まったくでス。単楽すぎるんですよ、装備がいいだけに残念な人たちでス」
 その一連の出来事に驚愕を禁じえない兵士たちだったが、瑠璃や美咲に言わせれば、その可能性を排除して自分たちの勝利を夢見た彼等のミスにほかならない。
「あーあ、逝っちゃった❤ お兄ちゃんよっわ~い♪ ざぁ~こ❤」
「ここでニゲてもいいんだけど……エンゴは大事だからね!」
 その勢いに乗って弱った兵を叩き潰したマリカとイグナートは、これ幸いと己の得物を構え直す。
 イグナートの服に付いた血はその7割ほどが返り血であり、その負傷は微々たるもの。そして、マリカは多少の傷による窮地より、己の快楽を優先する。故に、彼等が危機で退くほど正直とは言い難いのである。


「な……なんだお前たちは! 自分が何をしているのか分かっているのか!」
 馬車の中にいた男は、見るもお粗末な格好ながらも最低限、軍人としての訓練は受けていたらしい。放り投げられた軍服から拾い上げた拳銃を迅に向ける。荒ぶった呼吸で、しかし銃身がぶれないのは大したものだ。
「鉄帝の人間として幻想の補給線を断ちに来ました。それ以外の理由が必要でしたか?」
「で、こんな粗末なもので私を悦ばせようとでも思ったのか?」
 さしたる感慨もなく迅が応じ、後から乗り込んだエッダが鼻で笑う。視線の先は語るまでもあるまい。視線を巡らせれば、他の男たちも手に手に武装し、中には、
「がっ……」
「人質かい、この期に及んで? 見下げ果てた根性だね」
 マリアにその下衆な魂胆を見透かされ、腕を捻り上げられた者さえいる。マリアの実力は今更語るべくもないが、それにしたって軍人にあるまじき鈍さと下劣さだ。
「ヒィィィ……!! い、命だけは勘べ」
 1人、両手を上げて降伏の構えを取る男がいる。例に漏れず裸身だ。そして無様にも土下座を敢行しようとしたが、その頭は振り下ろされる前に上体ごと真後ろに跳ね飛ばされ、喉から白い骨が覗く。
「貴様はこの娘たちが、あるいはその家族が助けてと言った時に助けたのか? ……2人とも、処理を」
 エッダは振り抜いた拳を戻すと御者台へと乱雑に前進する。銃声が響きはしたが、迅が先手を打って腕をへし折り、マリアが持ち主の頭部を遠当ての雷撃で炭に変えたことでことなきを得る。
「じ、自分は何もしていない! 任務に則って対応しただけで、何も!」
「義に則れば出来ることを『しなかった』のだろう。同罪だ」
 デュフォーの抗弁は、しかしエッダの心を微塵も揺らすことはなかった。そうやって命乞いとして出てくる言葉の何割かを、女どものために向けられなかったのか、と。その結果は、転がり落ちた肉塊を以って為された。
「マリア・レイシス、日車・陣。貴様らも軍人なら、わかるな?」
「友軍優勢、殲滅戦へ移行……ですか」
「分かったよ、このまま終わらせるのも気分が悪かったからね」
 軍人らしく抑揚のない声で2人に語りかけたエッダに、迅もマリアも多くは問わず、こちらも冷徹に返した。それから彼等は、怯える女性たちの脇を抜けて無残な肉塊を幌から放り出し、馬車の加速を借りて後方の敵に突っ込んでいく。
「かくなる上は……!」
「やめておけ、クランクを回す前に此方の拳が届くのが早い」
 怒声とともに、前方を陣取っていた機関銃手がエッダもろともに馬車を照準する。だが既に、エッダは手綱を振るって馬車を加速させ、左手を空けて攻撃準備を整えていた。

「これでお兄ちゃんもマリカちゃんの『お友達』だネ♪」
 マリカは周囲に漂っているであろう霊に向かって楽しげに笑いかけた。その無邪気さは、しかし溢れんばかりの悪意に裏打ちされたもの。不気味この上ない。
「こんな日はとっとと帰ってビールでも飲んで寝……あ、クソっ。私酒呑めないんだった」
「飲めないのは色々タイヘンだね! じゃあ駐屯地に戻って軍の食堂でも荒らしにいくかい? エッダのオゴりで」
「えぇー、軍部のメシとかオレにゃ肩身が狭ェなぁ。恨み買ってんだよあの国には」
「あの国に『も』じゃないんですね」
「いうなよ、恥ずかしいだろ?」
 美咲は気分転換に酒のことを思い浮かべたが、『飲めない』ことを思い出し舌打ちする。ついでに浪費したワイヤーの金額も。
 イグナートはそんな彼女に即座に代替案を提示するが、ことほぎがすげなくそれを却下。言葉尻を掴んだ瑠璃に冗談めかして笑うまでがワンセットである。両者示し合わせた上、というワケだ。
「それにしても……不快な仕事だったね」
「ですが、想定以上の大戦果です。エッダ殿はあの様子ならすぐに戻られるでしょうし……少し待ちましょうか」
「うん、そうだね! 助かった女の子達の今後も考えなくちゃ!」
 マリアは汚れ仕事を是とする人間ではない。が、同じ不幸を見る立場ならよりマシな方へ導くのが役割でもある。そういう意味では、今回の依頼を持ち込んだエッダには感謝すべきなのかもしれない。
 荒野の陽がゆっくりと傾いていく。
 エッダの駆る馬車を彩る紅は、夕日に限ったものではあるまいが……ただ、今はそれよりも、多くの人を救えた喜びを尊ぶべきなのだろう。そのための犠牲を、見なかったことにして。

成否

成功

MVP

極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女

状態異常

なし

あとがき

 軍の全滅はなりませんでしたが、補給品の奪取に成功しました。なお、彼女らは元の家に戻る公算は低く(戻っても歓迎される可能性がほぼなく)、鉄帝南部軍により保護されそれなり上等な待遇を受けることでしょう。
 お疲れ様でした。

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