シナリオ詳細
<ヴァーリの裁決>盾から託された望み
オープニング
●町の自警団
各地のイレギュラーズに、とある極秘情報がもたらされた。王家の象徴となる物品――レガリアの1つが眠る『古廟スラン・ロウ』の結界に何者かが侵入し、レガリアが奪われたという。更に立て続けに、伝説の神鳥が眠る『神翼庭園ウィツィロ』の封印が暴かれる事態となった。それと同時に、幻想近くに多くの魔物が出現し始めた。
すでに魔物の群れによって壊滅に追いやられた町も存在し、侵攻を受けている領地の貴族達は、ローレットに数々の依頼を持ち込み始める。
突如発生した由々しき事態――背後で蠢く者の正体を感じつつも、ローレットは事態の打開に向けて動き出していた。
「――見たことない魔物だな」
町の自警団を務める『ライオット・スターク』は、他の団員2人を引き連れて町の周辺を見回っていた。
町の付近の森で凶暴な魔物に遭遇し、ライオットたちはその魔物を仕留めたところであった。
襲いかかってきた魔物は、ニワトリとヤマアラシを足したような生き物だった。そのクチバシやトサカ、白い羽毛に覆われた体は、ニワトリの特徴そのものだ。だが、主に尻の辺りにびっしりと生え揃っている硬く鋭い棘は、相手を突き刺すほどの凶器であった。
ライオットが魔物の死体を観察する間にも、団員の1人はふくらはぎに刺さった棘を抜き、苦悶の表情を浮かべていた。
ライオットたちは怪我の手当をするために町に戻ろうとした。しかし、遠くから地響きのような振動や音を感じ取る。
「ゴーーーォウゥウウウゲーーーーー!!」
異様な鳴き声が響き渡り、ライオットは有無を言わさず他の2人を茂みの影へと引っ張った。
元兵士の経験から危機を察知したライオット。茂みの向こうで息を潜めていると、やがて何十体もの魔物の群れが現れた。
ニワトリもどきの群れは町の方へと進行し、その中でも特に目を引いたのが――。
「グルルゥオォオオーーーーゲエェーーー!!」
他の個体の何倍もの大きさのニワトリもどきは、血走った目をギョロつかせながら、不気味な雄叫びをあげていた。3メートルは超えているであろうニワトリもどきは、他の無数の魔物たちを先導しているようであった。
群れを見送った直後、「俺は先に戻る! 魔物のことを報告しないと」とライオットは即座に町へと引き返していく。
常に疲れが顔に出ているようなライオットは、表情を一層曇らせてつぶやいた。
「参ったな……俺たちだけで太刀打ちできるのか?」
こんなときに、頼りになる存在がいてくれれば――。
凶暴な魔物に対抗できる存在――ライオットは真っ先にローレットのこと、ローレット・イレギュラーズである友人の郷田 貴道(p3p000401)を思い浮かべた。
●魔物たちの襲撃
ライオット・スタークが組織している町の自警団から、魔物討伐の応援要請が舞い込んできた。
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、各所から寄せられた応援要請の報告をさばきながら、「どこも人手が足りないようですね」とこぼした。
「ライオットさんの町にも騎士団の方は派兵されたようですが、領地の各所が襲撃されているせいで、充分な数とは言えないようです」
そう言って渋い表情を見せるユリーカ。友人であるライオットの窮状を知らされた貴道だったが、いつもの快活な調子で応じる。
「HAHAHAHA、ライオットも苦労が耐えないようだな――」
やけくそ気味に栄誉ドリンクを一気飲みしているライオットの姿が、貴道には目に浮かぶようであった。
「ここはミーたちがヒーローになるしかないという訳だ」
貴道の言葉に深く頷いたユリーカは、町の状況について説明する。
「ライオットさんたちは、町の門と堀の前で魔物たちを食い止めようと行動しています」
ニワトリとヤマアラシの特徴を合わせ持つ魔物――ニワアラシ。ニワトリ並のサイズの魔物ならばまだライオットたちだけでも対処できたが、押し寄せたニワアラシの中には特大のニワアラシが君臨していた。
「皆さんも耳にしたことがあるとは思いますが、特大の魔物は『怪王種』の影響を受けているようです」
●怪王種(アロンゲノム)とは
進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつ。
生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていく。
いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつである。
怪王種化し、特殊な能力を得た魔物は手強い。ボスとして群れを扇動する特大ニワアラシは、相手を石化させる能力を発揮しているという。イレギュラーズの応援がなければ、町は壊滅状態となるだろう。
怪王種について注意を促したユリーカは、改めてイレギュラーズに向けて要請した。
「自警団や騎士の皆さんが、満身創痍になる前にお願いします! 群れのボスを倒すことで、他の魔物に怪王種の影響が出ることも防がないとです……くれぐれもよろしくお願いします!」
- <ヴァーリの裁決>盾から託された望み完了
- GM名夏雨
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年03月30日 22時06分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
イレギュラーズたちは森を抜け、目標の町へと急いだ。剣戟の音が徐々に近づき、すぐそこに闘争の気配を感じる。
木々を抜けた先には、ニワアラシが群れを成して町の正門に押し寄せている光景があった。騎士団や自警団、クワや斧を携えた町民らが懸命にニワアラシを散らそうとしていた。
何匹ものニワアラシが地上で白い翼をばたつかせ、鋭い棘のある尻部分を目の前の対象に向けて繰り返し突き当てていた。複数のニワアラシに群がられ、たまらず後退していく者の姿も目立つ。
「自警団のお仕事にしては、この件はちょっと荷が勝ちすぎるかもしれないね」
『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)は、ニワアラシに押し込まれがちになる友軍の様子を見てつぶやいた。
「HAHAHA、鶏どもが蟻のように。有象無象らしく群れに群れていやがるじゃねえか!」
笑い声を響かせた『ドラゴンスマッシャー』郷田 貴道(p3p000401)は、不意に向けた視線の先に友人であるライオット・スタークの姿を見つけた。
倒しても倒しても群がろうとするニワアラシに辟易している様子のライオットは、腹立ち紛れに空の栄養ドリンクの瓶を投げつけていた。
「この野郎!! 焼き鳥にしてやろうかぁ、クソ鳥共!!」
奮戦するライオットは、戦況が思わしくない苛立ちをぶつけるように、般若のような剣幕で双剣を振りさばく。
共にその場に駆けつけた『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は、「ローレット・イレギュラーズだよ!」と声を張り上げ、ライオットたちの注意を引いた。
「さぁ怪我した人は遠慮無く下がって、後は任せてよね!」
カインは状況を瞬時に見極め、ニワアラシの群れが最も固まっている場所へと乱入する。聖なる光を操るカインは、即座にニワアラシたちを焼き払うほどの激しい瞬きを放った。
犬獣人のグリュックと、グリュックにぬいぐるみのように抱えられるアザラシの子ども――『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)も続け様に攻撃を放ち、ニワアラシたちのせん滅に乗り出す。
「デカいニワトリの相手は、イレギュラーズに任せるっきゅ!」
一見愛らしいアザラシの子どもに見えるレーゲンは、グリュックの肉体を操作することで戦闘に加わっていた。
「ローレットの……! 来てくれたか――」
ライオットがイレギュラーズの面々の姿を確認する間もなく、不快な雄叫びが全員の鼓膜をビリビリと揺らした。
木々の間から現れた巨大な白い影――特大のニワアラシが宙へと飛び上がり、一挙にライオットたちの頭上へと迫ろうとしていた。しかし、そのニワアラシの側面に高速で何かが突っ込む。真横へと突き飛ばされたボス・ニワアラシは地面の上を滑り、他のニワアラシを巻き込む結果となった。
姿を捉えられないほどの速さを発揮したのは、飛行種の『夜を歩む』アムル・ウル・アラム(p3p009613)。自らの黒い翼で飛翔していたアムルは、ボスの位置取りを把握し、ニワアラシの突貫に備えていた。同様に飛行能力を駆使して状況把握に努めていた『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)も、ボスに向けてけん制の一撃を瞬時に放つ。一悟から光の奔流を打ち込まれたボスは、白煙をあげて更によろめいた。
まるで見えない翼があるかのように、自在に宙を舞っていた一悟は地上に降り立つと、
「オレがここに入る。下がっていてくれ」
戦力差が際立つ戦線を支援しようと、急場しのぎで駆り出された町民などに指示を出した。
「こいつも飛べるのか」と一悟は巨体が飛び上がった様を目の当たりにし、一層警戒を強めて対峙する。
続々と駆けつけたイレギュラーズ。ボスの注意を引きつけようと動く者らは、一挙に挑みかかる。
貴道は町の防衛を果たそうとする友軍に向けて、「おい野郎ども!」と声を張り上げた。
「今からミーがあの威張り散らした図体のデカいニワトリを片付けてくる!」
貴道は自信に満ちた不敵な笑み浮かべ、友軍を鼓舞する。
「雑魚どもは金魚の糞みてえにアイツにくっついてるが、物の数じゃねえ――」
貴道が演説を続ける間にも、標準サイズのニワアラシたちは、地面の上でもがくボスの巨体を乗り越えて続々と押し寄せる。
「ボスはミーの拳ですぐ落ちる、落としてやる! それまで気張りやがれ!」
貴道は即座にライオットたちに背を向け、翼をばたつかせるボスへと突撃していく。
ボスの相手に傾注する貴道の背に向かってライオットは、「頼んだぞ、貴道!」と声をかけた。貴道の鼓舞を受け、双剣をさばくライオットは、一層気迫をみなぎらせてニワアラシの排除を押し進めた。
ニワアラシを食い止めるため、戦いに不慣れな町民もなんとか奮戦する中で、ルアナは真摯に声をかけた。
「こいつらの相手はわたしたちが頑張るから、無理しないでね。怪我したらちゃんと下がってね」
ルアナは身の丈に近い大剣を鋭く振り向け、ニワアラシたちを吹き飛ばすほどの勢いを見せつける。
「――にしても。にわとり……?? 食べたら美味しい???」
棘を生やした特徴以外は、ニワトリに類似する点が多い魔物――魔物を食材として見る目付きに変わり始め、ルアナは脳裏に過る鶏肉料理の数々からハッとして意識をそらした。
(こいつらだけで、何人分の焼き鳥が出来上がるんだろうな……)
一悟はルアナと同じようなことを考えていた。しかし、ニワアラシの群れに向けて力を集中させた一悟は、消し炭にする勢いの爆炎でニワアラシたちを攻め立てた。
『協調の白薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247)は友軍と合流しつつ、ボス・ニワアラシの撃退に臨もうと戦場を見渡す。攻めかかるニワアラシの数の暴力に脅威を感じていたラクリマは、特に体に生えそろった鋭い棘を警戒していた。
「あの棘の餌食にはならないようにしないと……」
友軍の中には、すでにニワアラシの棘によって負傷している者たちもいた。その状況を見兼ねて、ラクリマは自らの歌の能力を発揮する。神聖な響きを感じさせる歌声と共に、きらめく淡い光が雪のように降り注ぐ。その光は、負傷した者の治癒を促進させていく。
友軍である自警団や町民の危険を顧みずにはいられないラクリマは、強烈な閃光を放つ攻撃を駆使する。ボスへの接近を図りながら、ニワアラシの一群を掃討することに努めた。
一方で、ボスを前にした『不良聖女』ヨランダ・ゴールドバーグ(p3p004918)は、指の骨を鳴らしながら、
「こいつァ随分と育っちまってるねぇ? まっ、コレぐらいの方が殴りがいがあるってーもんさね」
――確か怪王種だったかい? 全く次から次へと厄介事が増えるねぇ……。
ため息がもれそうになる現状にもめげず、ヨランダは迅速にボスの至近距離へと迫った。
ボスはその鋭いクチバシでイレギュラーズを迎え撃つ。頻りにクチバシを動かすボスは地面を突き砕き、懸命に身をそらす貴道を捉えようとする。ボスが貴道に注意を傾けている隙を狙い、ヨランダは魔力を込めた拳を振り抜いた。
「そんじゃアタシも一発っと!」
ヨランダの拳は強烈な一撃となってボスを襲い、羽毛に覆われた巨体を難なく突き飛ばした。
ヨランダの勢いに怯んだボスを更に追い詰めようと、アムルは攻勢を強める。翼を広げるアムルは、そのスピード――更なる加速をもたらす練達の利器を駆使してボスを翻弄する。
ヨランダやアムルに続き、貴道もボスへの追撃を集中させた。黒い稲妻がほとばしると共に、大気を切り裂く勢いをみせた貴道の右ストレートは、ボスの肉体にめり込んだ。
無数の羽を散らしながら突き倒されたボスだったが、3人の攻撃を受けてなおも瞬時に立ち上がる。そして、体に生えている棘を向けて貴道らの方へと突進してきた。相手を串刺しにしようと突き出された棘は地面を抉り、ボスは常に標的に向かって動き回る。
翼を広げ、トサカを振り乱して興奮状態のボスと共に、他のニワアラシの動きも勢いを増しているように思えた。
何体ものニワアラシがルアナの身の丈を超える程度の高さで飛び交い、体の棘やクチバシで引っ掻き傷を刻む。ルアナは友軍らをかばうようにその導線に進み出た。複数のニワアラシを剣で払い落としたが、ルアナの体にはあちこちに血が滲んでいた。それでもルアナは気丈に振る舞い、
「だいじょうぶ。わたし、ちょびっとだけど固いから! それに、ゆーしゃだもん」
不安げにルアナを見つめていた友軍の一部にそう言って、ルアナは突撃してきたニワアラシを流れるような動作で叩き落した。
「皆を守るのがお仕事だからね。心配しないでね――」
余裕な態度を見せることで、ルアナは友軍の不安を払拭しようとした。
ヨランダは周囲の植物と意思を交わすことで、逐一ニワアラシの全体の動きを把握していた。
特に腰が引けている友軍の一部に向かって、ヨランダは言った。
「野郎ども、戦場で神に祈るぐらいなら自分達の腕っ節を信じな」
ヨランダは脅威的な魔力を引き出し、地面ごとニワアラシたちを爆砕してみせた。
「戦場じゃ信じられんのは、自分と仲間の腕だけだ!」
ヨランダは拳を突き上げながら、勇ましく友軍を奮い立たせた。
友軍の協力もあり、多くのニワアラシの駆逐を確認した一悟はボスの排除に取りかかる。
「ゴォ……ゴケぇぇぇえーーー!!」
イレギュラーズの攻撃が集中する状況の中で、ボスは怪物じみた重低音の鳴き声を轟かせる。
「うるせえ! 近所迷惑なんだよ!」
雄叫びをあげ続けるボスに対し、一悟は真っ先に攻撃を向けた。ボスの懐へと飛び込んだ一悟は、突き出した手の内に瞬時に強大なエネルギーを凝縮させる。それは気功爆弾と化してボスを仰向けに転がし、凄まじい衝撃を発散させた。
爆発によって生じた風圧に怯むニワアラシの一群を、ルアナやカインは積極的に蹴散らしていく。しかし、2人は体の異変に気づき始める。自らの意思に反して、体が思うように動かなくなる。
友軍の一部にも石化の兆候が現れ始め、ルアナとカインはニワアラシの脅威を思い知る。
「この程度……!」とカインは気合で石化の症状をねじ伏せ、群がろうとするニワアラシをけん制した。
ボスが雄叫びをあげ続ける中、ヨランダは石化の能力が周囲の者を蝕むのを察知すると、
「任せておきな! あとは思う存分殴りな」
ヨランダは周囲に魔力を発散させることで治癒の力を引き出す。それと同時に、石化の症状をはね除ける作用が行き渡る。
ヨランダに続き、レーゲンが発動する魔法はグリュックの手に1つのラッパを出現させた。突撃を意味する音色をグリュックが吹き鳴らすと、戦闘による披露が吹き飛ぶような心地がした。
カインは号令の掛け声と共に、一挙に本来の力を取り戻す。カインの力強い号令は、魔力を伴う影響を及ぼし、友軍の進撃を後押しした。
最短でボスとの決着をつけようとする貴道は、ボスに対し激しく攻めかかる。肉薄するボスと互いにけん制し合い、こう着状態が続く。
石化の症状を引き起こされる前にボスを追い詰めようと、ラクリマも加勢する。
魔力を紡ぐ器官として、その澄んだ歌声は響き渡る。ラクリマの歌声を媒介とするように、魔力によって形成された複数の剣はボスへと切っ先を向ける。
ラクリマの攻撃に追尾され、ボスは貴道から注意をそらす。その一瞬を狙い、貴道は全力で拳を突き出した。
ボスは貴道への警戒を一層強めたのか、翼を広げて浮遊しながら退避行動を取る。その風圧で貴道らを足止めしたボスは、再度石化を引き起こす雄叫びを轟かせた。イレギュラーズの勢いをくじこうとするボスだったが――。
「だからぁ、うるっせぇんだよ!!」
一悟は瞬時にボスの目の前へと飛び出し、手にした縄をボスのクチバシに巻きつけた。当然クチバシを閉じられたボスは激しく抵抗する。一悟はロデオのような状態になりながらも、ニワアラシの頭上で縄を離さないよう耐え抜く。
見境なく暴れ回るボスを前にして、地上では右往左往する自警団らの姿が目立った。
「少し、おとなしくさせた方が……いい、かな」
そう言って、攻撃の機を窺っていたアムルは、静かに意識を集中させる。アムルは特殊な羽音を操ることによって、ボスの精神に働きかける。徐々にボスの動きは鈍さを増していき、
「どこから現れたか知らないけど、ごめんね――」
ルアナは迅速にボスへと迫る。
「町に危害は加えさせないよ!」
ルアナが軽々と振り抜いた大剣は、凄絶な勢いでボスの体を斬り払う。よろめいたボスは、町の門との境目にある堀へと滑り落ちていった。
堀へと落ちる瞬間に合わせて、一悟もボスの頭上から飛び降りる。ボスは丸々とした体を必死に揺すり、狭い堀の中でもがき続けていた。
自警団らと共に他のニワアラシのせん滅を進めていたカイルは、
「よし、皆! このまま一気に終わらせよう!」
鳴き声を上げ続けるボスだったが、カイルの指示によって集中する攻撃により、その声は弱々しいものへと変わっていく。
貴道はダメ押しの一撃を放とうと、ボスへと飛びかかる。
「HAHAHA、おとなしく食材にでもなるんだな!」
捉え切れないほどの速さの貴道の拳は、しゅん烈な勢いでボスの喉元に向けて放たれた。骨ごと突き砕いた貴道の拳によって、目を剥いたボスの首はだらりと垂れ下がる。
ニワアラシの群れを一掃し、ボスにとどめを刺したことで、ライオットら自警団を始めとする兵団は、一斉に勝どきをあげた。
魔物の群れを一掃し、被害を最小限に留めることはできたが、ある問題が残されていた。
「焼いて食べたら、うまいんじゃないか?」
大量のニワアラシの死骸の処理について、まず最初に提案したのは一悟だった。
「一応、ニワトリ……ですもんね」
ルアナもニワアラシの味に興味津々な様子でつぶやいた。
「あー……いいねぇ。こいつらを酒のさかなにするのもいいかもな」
そう言うライオットは、過労死ラインギリギリの疲れ切った表情を浮かべていた。そんなライオットの背中を貴道は遠慮なく叩きながら、
「HAHAHAHA! それはいいな、景気よく打ち上げといきたいぜ」
アムルも控えめに主張し、死骸の処理をすすんで引き受けようとする。
「転がしておくと……それにつられて、獣とか……寄ってくるかもしれないから。食べるなり、埋めるなり、するなら……手伝うよ」
一方で、ヨランダは――。
「なーに、心配しなくても金は取らないよ。良い酒でも奢ってくれりゃそれで良いさね」
レーゲンやラクリマと共に、怪我人の治療に専念していた。
ラクリマは、疲れ切っている様子のライオットを心配そうに見つめる。
(封印がとかれた今、またいつ領地に魔物が来るかわかりませんからね。皆さんには戦力を維持してもらいたいところです――)
問題解決までの間に、どれだけの領地が魔物の襲撃に対抗できるのか、ラクリマは懸念していた。
「街のことも助けるのが、イレギュラーズの仕事だからね」とカインも死骸の処理を買って出る中、
「じゃあ、どうやって処理していこうか――」
――ブチブチッブチィイイイィイ!!
自警団の内の1人が遠慮なくニワアラシの1体を解体していく。その猟師が、体の棘を取るのが面倒だとぼやきつつ、グロ注意の解体ショーを繰り広げる。一気に食欲の減退を感じ、青ざめる者もいたりいなかったりしたとか――。
ニワアラシは、少し筋張ってる肉だったが、まあまあおいしい感じでした。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
ニワアラシは、関係者一同でおいしくいただきましたとさ。
GMコメント
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●成功条件
ニワアラシたちの討伐。
●シチュエーション
町の門と堀の前では、すでに自警団や騎士たちが交戦しています。
『ライオット・スターク』を含む友軍の40人(自警団2:騎士団1:有志の町民1くらいの割合)に対し、魔物の群れはボスを含めた50体ほどです。
友軍ひとりひとりの戦力はピンキリです。壊滅状態に追い込まれる前に、襲いかかる特大ニワアラシを倒すことが急務になるでしょう。
●敵の情報まとめ
鋭いクチバシや体の棘による攻撃(物近単)を用います。ボスのニワアラシのみ、相手を石化状態にする雄叫び(神近ラ)を発します。
飛行能力はニワトリ並です。
●ブレイブメダリオンについて
このシナリオ成功時、参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。
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