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シナリオ詳細

<瘴気世界>生前に交わした約束

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●生前の約束
「お花が欲しいのです」
「それで?」
「土と風の核を取ってきてほしいのです」
「で、報酬は?」
「ありません」
「話にならねぇじゃん」
 光輝の国リュミエール王国の冒険者ギルドで、一人の少女と【E級冒険者】ラナードは会話を交わしていた。
 冒険者ギルドはギルドから依頼を出すものも存在するが、個人が依頼を行うことも多い。その日訪れた少女は、祖父を弔うための花を欲していた。
「つーか、葬式に花を用意するのなんて金持ちのやることだろ。報酬も払えねぇようなビンボーなやつが、少し高望みをしすぎじゃねーの?」
 この世界の植物は、洗練された職人が土と風の核に細工を施すことにより芽吹き、コロニー天井に埋め込まれた精霊石の光を浴びて育つ。普通の観葉植物であれば疾風の国ウィンドトゥールの国を中心に各国で出回っているが、綺麗な花を咲かせる植物は希少価値が高いため、とても高値で取引されているのだ。
 ラナードが言いたいのは、例えその二種類の核を持ち帰ったとしても、花を咲かせるほどの細工を施すことができないだろうということ。あとタダ働きしたくない。
「おいラナード、小さい子にはもう少し優しくだな……」
「お前、まさかこいつの頼みを聞くとか言うんじゃないだろうな?」
 ラナードの肩を叩き慰めるように、ひとりの冒険者が言う。修練後、無事に冒険者ギルドへの登録を済ませたラナードは、E級冒険者としてとあるC級冒険者と行動を共にしていた。というのもE級の彼に選択肢は少なく、最初の依頼で如何に実績を残せるかが今後の昇級に関わるのだ。
「リーダーの言うことは絶対だ。それに、他のメンバーも特に意義がある奴はいなさそうだぞ?」
 このリーダー気取りの男はC級冒険者。あと二人いるメンバーもC級で、どこかみんな上から目線なのが気に食わないが、後の昇級に響いたら元も子もない。さっさとB級にでも上がって見下ろしてやろう。
「ったく……行くにしてもよ。土と風の核を同時に取るってなると、かなり大移動になるぜ? リーダー様はその辺どうお考えで?」
「俺たちはC級冒険者だ。それくらいどうってことないさ」
 ラナードは大きなため息をついた。
 彼が実力を行使してでもここで止めておけば良かったと思うのは、後の話である。

●約束を果たしに
「あー……うん、ええとだな」
 集まったイレギュラーズたちの前で、【元冒険者】ラナードは気まずそうに話し始めた。
「わりぃ、なんかいろいろ迷惑かけちまったみてぇだな」
 以前の依頼で半魔獣になってしまったラナードはイレギュラーズ達の手により魔獣の核を撃ち抜かれ、きれいさっぱり元に戻った。その後のことはイヴが全て請け負うと言っていたが、どうやら彼女はラナードを世界から連れ出し境界案内人に仕立て上げてしまったらしい。リュミエール王国から死刑宣告をされた時点で、恐らくイヴはこれを計画していたのだろう。
 結果的に冒険者として死んでしまった彼は、イヴに選択を迫られ<瘴気世界>を冒険するイレギュラーズたちのサポートに回ることになったのである。
「で、俺の尻拭いをするみたいで悪いけどよ、代わりに土と風の核をリュミエール王国の冒険者ギルドに持っていってほしいんだ。受けちまったもんを放っておくわけにもいかねぇし……お前らなら楽勝な仕事だろ」
 それはそうと、もう少し頼み方どうにかならんのか。

NMコメント

 瘴気世界です。牡丹雪と申します。
 この物語は<瘴気世界>の続編となりますが、物語は個々で完結する&前回のあらすじを書きますが、過去作を見て頂けると見ると更に楽しめる物語になります。
 また、世界の観の詳細は自己紹介欄にも記載されています。よろしければご覧いただければ幸いです。


●目的【土と風の核を集めてリュミエール王国のギルドにいる少女へ渡す】
 【元冒険者】ラナードのパーティーが壊滅する前に受けていた依頼、もとい約束を果たすために2種類の核を集めてほしいそうです。
 この2つの核は取れる地域が異なるため、別行動or移動をして狩りを行う必要がありそうです。

①【疾風の国】ウィンドトゥール王国周辺地上
 植物系の魔獣が多く出現し、風の核が取れる地域です。
 出現する魔獣はどれも雑魚ですが、炎に弱い弱点も存在します。

②【壌土の国】アールファス王国周辺地上
 土系、いわばゴーレムのような魔獣が多く出現し、土の核が取れる地域です。
 出現する魔獣はどれも雑魚ですが、水に弱い弱点も存在します。

③リュミエール王国のギルドにいる少女
 今回依頼をした張本人であり、核が持ち寄られることを心待ちにしているとラナードが言っている。
 ※その正体は実は【光の妖精】リュミエールであり、彼女の存在と何故依頼をしたのかは明かされていません。

●敵対相手の情報
・雑魚魔獣(風)×10
 草木の姿をした魔獣。
 基本的に特殊能力もスキルも使わない雑魚です。
 火炎に対して耐性がありません。

・雑魚魔獣(土)×10
 ゴーレム型の魔獣。
 基本的に特殊能力もスキルも使わない雑魚です。
 水をかけると防御力が低下します。

●世界観のおさらい
 かつて世界の均衡を保っていた6人の精霊たちはあまりの退屈さに人類を生み出し、それを繁栄させた。だが、人類を生み出す過程の中で邪悪な力を持つ魔獣も生み出してしまい、やがて史に残る大戦争が起きてしまう。瘴気により荒廃してしまった跡地から逃れるべく人類は地底へと生活圏を移動した。
 そう願った精霊が導いてくれた際に偉人が受け取ったとされる高純度の精霊石を用いた5つの疑似太陽により、まるで地上にいるような生活を送っている。のちにその疑似太陽に惹かれるように人々は巨大なコロニーを築き、5つの国が出来上がった。
 人類は精霊に最初に生み出された種族であるため、精霊石の魔力を浴びつつ魔獣の灰を食べながら生きている。

●前回までのあらすじ
・大型魔獣を討伐したことで、イレギュラーズはこの世界でAランクの冒険者として扱われることになりました。
・リュミエール王国の見習い冒険者へ指導を行いました。
・イグニスヴール王国の冒険者ギルドへ諜報を行った結果、近日魔獣の大群が王国へ押し寄せてくることが判明しました。
・【闇の精霊】オプスキュティオと交流を行いました。(new)
・【半魔獣】ラナードはイレギュラーズの手により元に戻り、彼はこの世界で死んだことになっていますが境界案内人になりました。(new)


●プレイングについて
 このシナリオの目的は『土と風の核を集めてリュミエール王国のギルドにいる少女へ渡す』です。
 戦闘パート→少女へ核を渡す2パートを予定していますが、少女へ核を渡す際に彼女が光の精霊であることに気付いてしまっても構いません。

●アドリブについて
 本シナリオではアドリブが多めに含まれることがあります。
 アドリブがNGの場合、通信欄かプレイングに一言ご記載いただければ幸いです。

  • <瘴気世界>生前に交わした約束完了
  • NM名牡丹雪
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月11日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
黎 冰星(p3p008546)
誰が何と言おうと赤ちゃん
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女

リプレイ

●ウィンドトゥール王国周辺地上にて
「えーと、なんでしたっけ?」
「風の核、ですよ」
「そうそう風の核とやら。花が希少というのもなかなか珍しい世界ですね」
 『(((´・ω・`)))』ヨハン=レーム(p3p001117)と『パウダー・アクアの拳』黎 冰星(p3p008546)は【疾風の国】ウィンドトゥール王国周辺の地上を探索していた。目標は少女が出した依頼の一つ、『風の核を持ち帰る』である。
「それにしても、瘴気って呼ばれてる煙で視界が悪いですね。聞いたところ僕たちの身体に害は無いって言われましたけど、払えないんでしょうか」
 瘴気世界、と呼ばれる由縁である世界を覆いつくす霧のような瘴気は、濃いところで十メートル先の風景すら見えなくなってしまう程だ。ヨハンの言葉に、「少し試してみます」と返した冰星は強烈な掌打を瘴気に向かって打ってみる。
 過去に霧払いを試したイレギュラーズがいたが、その時と同じように瘴気はまったく動く様子を見せなかった。
「駄目みたいです。私たちが通っても揺れすらしませんでしたし、根本的に取り払うのは無理みたいです」
「ふーむ、まぁこの程度の霧で戦闘に支障が出るなんて思いませんがね。……ところで」
 そんなことよりも何か聞き忘れた気がするとヨハンは首を傾げた。この依頼に関する最重要なこと……っと、思い出したようだ。
「風の核って具体的にどこで手に入るんですかね……」
 ウィンドトゥール王国周辺地上で手に入るとは聞いていたが、具体的にどうやって手に入るのか聞いていない気がすると呟けば、冰星も同様に頷いた。
「敵からポロっと出たりするんでしょうか?」
 単純に考えればその可能性が高いがもし出なければ周辺を走り周ったり、ウィンドトゥール王国に入って聞き込みをする必要がある。そんなことを考えていると、瘴気の先に多くの気配を察知した。
「っと冰星さん出番ですよ。核についてはもし魔獣が落とさなかったらその時に考えましょう。容赦なく好き放題やっちゃってください」
 距離が近づいてきたことでようやく気配の相手が見えてくる。地面に張った根をうねうね動かしながらこちらへ向かってくる、よく見たら人の顔がついていないようにも見えない乾いた樹木の魔獣である。
 動きも鈍く弱そうな相手だが、二人は容赦しない。ヨハンの力強い号令と共に素早く間合いへ飛び込んだ冰星の炎を纏った猛撃が、一匹の魔獣をこちらに反応する前に存在を消し炭にし、その姿は跡形もなくなってしまう。
「あ……」
 冰星は思わず声が漏れる。
 魔獣が消滅したと同時に、魔獣が小さく綺麗な緑色の石を落としたからだ。
「なるほど、核は魔獣が落とすんですね。思っていたより簡単な仕事でした」
 一番懸念していたことが一瞬で解決する。それはともかく、魔獣は大した攻撃をすることもなく冰星にコテンパンにされているから、「この分じゃ僕の仕事はありませんね」とか呟きながらヨハンは魔獣が落とした風の核を拾うのだった。

●アールファス王国周辺地上にて
「ったく、せっかく稽古にも付き合ってやったのにこんなに早く脱落するとはな」
「やー……。ラナードくん可愛かった……じゃなくて、助かってよかったよ。まさかぶん投げられるとは思わなかったけど、殴られた件といい今回の尻拭いの件といい……今度それなりの報酬を要求しないと……」
 一方アールファス王国周辺地上は、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)と『白い死神』白夜 希(p3p009099)が探索を進めていた。ここも瘴気による視界障害が激しく、そして岩石地帯だ。
「可愛いはよくわかんねえが……しっかし、こんな依頼を嫌な顔一つ受けてたC級冒険者の奴らって良い人過ぎるだろ。亡くなったのが少し惜しいな」
「……でも、C級冒険者はD級よりも強い筈だから、パーティーを組んでれば簡単に壊滅したりはしないと思うけど」
 世界と希は全滅してしまったC級冒険者について話を掘り下げる。
 王国から聞いていた情報によればC級は一人で大型魔獣の対処はできずとも、それなりの戦闘能力は持つという。つまり、きちんとパーティーを組めば大型魔獣にも対処できるということだが、突然全滅してしまったことが解せないのだ。
「まあ、今は置いておこう。とにかくこの割の合わなさすぎる仕事をさっさと終わらせるぞ」
「ん……うん」
 瘴気がすこし濃くなったことに世界が警戒する。最初に冒険者を助けた時もそうだった。瘴気が濃い場所に魔獣は突如として出現し、地上を冒険する冒険者を襲う。
(やっぱり、土とか岩ばっかりだな……。それに、多分全部灰で出来てるんだろうし。……って、そのあたりにフリ○○ライとか混じってないよね??)
 希がそんなよそ事を考えているうちに、魔獣は彼女たちを囲むように現れた。
「っと、おでましみたいだぜ?」
「うん、今回は……大型もいないみたい」
 姿はだいたい二メートルくらいのゴーレム。十体くらいがズシンズシンとこちらに向かってくるが、どれもバラバラで体幹が不安定そうな個体ばかり。文字通り雑魚だ。
「こいつら本当の雑魚みたいだな。お前ひとりでも問題ないんじゃないか?」
「それはお互い様、だと思う」
「あ、やっぱりダメ?」
 どさくさに紛れてサボろうとする世界に希はちょっと睨みつけながらそう返す。
 これも仕事だから仕方ないと世界は思い直すと、こちらにじりじりと迫ってくるゴーレムに簡易式召還陣を発動し、水爆弾を爆発させるように水を放水した。
「情報によればこれで……」
 これで軟らかくなるんだっけ……と言おうと希の方を向いた世界の言葉が詰まった。
「ねえ……」
「おう……」
 特に考えずに放った水はゴーレムだけでなく希も濡らしてしまったようで、彼女の髪からは水がぽたぽたと滴っていた。
 不意にずぶ濡れになってしまった希は肩を震わせながらゴーレムの方へゆっくり歩いていく。
 その後ゴーレムを撃破し無事に土の核を入手らしいのだが、世界はそのゴーレムが気の毒に見えたとかなんとか……。

●謎の少女
 ウィンドトゥール王国周辺地上へ向かったヨハンたちと、アールファス王国周辺地上に向かった世界たちがリュミエール王国の冒険者ギルドに到着したのはほぼ同時だった。
「さて、あとはこいつを渡せば依頼は完了だが……」
 世界とヨハンは少し似たことを考えていた。それはラナードが懸念していた、核を持っていき本当に花を作り出すことができるのかという疑問である。
「なーんか、コレから花を作るという想像ができませんね。渡した瞬間に裏切られて風と土の魔法でボカンとか、僕嫌ですよ?」
「ま、水と火の核で温泉を作ってる奴もいたし、上手くやれば花ができることは間違いないんだろうな。あいつ(ラナード)はアレでも元この世界の人間だ、嘘は言わんだろう」
(そうは言っても、普通に考えれば職人がいなければ核を集めたところで花を作るのは非常に難しいはずだが、そんなことに気付かない程常識知らずという訳でもないだろうし)
 世界が解せないという表情でそんなことを考えていると、冰星が手に入れた核を持ってさっさとギルドの中に入っていく。そして、例の少女は言われた通り掲示板の隅っこに佇んでいた。
 とりあえず依頼を完了するべく、イレギュラーズたちはその少女へ近づくと核を見せて話しかけた。
「依頼者はお嬢さんで間違いありませんね、言われた核をお持ちしました!」
 希と世界はどこか見たことあるような、妙な格好をした少女へ冰星は話しかけると、迷わずに核の入った小袋を手渡した。
「……違う」
「……?」
 少女が袋を受け取りそう呟いた。最初は持ってきたものが違うのかと慌てたが、そういう訳ではなかったようである。
「あなた達、私が依頼をした冒険者とは違うのです。その方たちはどうしたのですか?」
 希は「ああ、そういうことか」と呟いた。少女が依頼をしたのはラナードを含めたC級冒険者たちなのだから、自分たちが持ってくるのを不思議に思うのも仕方が無い。だが、どう答えたものかと悩む。
「死んだ、全滅した。隠しても仕方ないだろ」
 悩んでいるうちに世界が本当のことを喋った。少女に対してそれは少しキツイのではと周りは思ったが、彼女の反応は無表情で「そう……」と返すだけだった。
「ありがとう、これで花を作ることができます」
「いえいえ、我々の手にかかればお茶の子さいさい、へのかっぱです! ……え、言葉が古い? うーん、じゃあ朝飯前です!」
 人様のお役に立てて、その方の記憶に少しでも残ることができればこれ以上嬉しいことはないのです。それこそが私にとっての報酬なのですから。とか胸を張って言う冰星の後ろで、世界はまだ悩ましい表情をしていた。
「それで、どうやって花を作んだ?」
「……あまり他人に見せたくはないのですが」
 少女は何か疑われるのが嫌なのか、そう言いながら土と風の核を取り出す。
 まさかここから裏切られたり……とヨハンが少し身構えたが、その心配はなかった。
「え……」
 希は少女の手の上で起きたことに目を見張った。ノーモーションで込められた不思議な力によって二つの核が融合すると、まるで種子のような核が出来上がる。芽吹いてからの成長は速く、すくすくと植物は育つと綺麗な赤い花を咲かせた。それも沢山。
「これで満足……ですか? 亡くなったおじいさんへのお供え物です」
「まさか本当にこんなものから花を作れるとは。これは疑って申し訳ないです」
 依頼の完了と花の開花を見送ったヨハンと冰星はそんなことをいいながら冒険者ギルドを後にする。
「私たちも、帰ろう? ……そろそろオプスキュティオが退屈してるんじゃないかな」
「ああ、そう……だな。あいつも困ったもんだ」
 オプスキュティオの名前を聞いた途端、少女の表情が何かを嘲笑うものに豹変したことを世界は見逃さなかった。

成否

成功

状態異常

なし

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