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シナリオ詳細

<果ての迷宮>疾走、トロッコに揺られて

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想国の王都《メフ・メフィート》。
 その中央に存在している『果ての迷宮』の攻略も15階層まで進んでいた。
 この不思議な迷宮に数々の冒険者が挑み、幾度も失敗してきた迷宮。
 現状、その攻略にはローレットのイレギュラーズ達が主として当たっているのだが……。
「やはり、この迷宮の攻略はかなり困難を極めるようですね」
 海種の情報屋の少女。『穏やかな心』アクアベル・カルローネ (p3n000045)は、報告書を確認してそんな言葉を呟くと、頷く少女が1人。
「まぁ、そう簡単に突破できる迷宮ではないことは分かっていたわさ」
 少しばかり、総隊長ペリカ・ロジィーアンのテンションは下降気味だが、前回の攻略に直接立ち会っていた彼女はやむを得ないことも重々承知している。
 ただ、この果ての迷宮攻略にはかなりの額の資金が幻想貴族から投入されている。
 ――自分達の代で、長らくの悲願を叶えられるかもしれない。
 貴族達はそんな淡い期待を抱いて投資しているようだが……、やはり結果で示したいところではある。

「先程、ペリカさんが視察に出かけたようですが、前回の攻略時と15階層の内装は全くの別物となっているそうです」
 前回は色彩を奪う空間であったことを、ペリカ自身も語ってはいる。
 そのペリカがセーブポイントを使って視察をしてきた15階層は、非常に大きな空間の中に線路が立体交差していき混じっているフロアへと様変わりしていた。
 線路は複雑に絡み合っており、一見するだけでは先に進むルートの判別ができない。
 分岐ポイントの切り替えなどもある為、実際に走ってみないと正解ルートの判別は難しいものと思われる。
「今回はその線路の上を進んでいかねばならぬようだねい」
 入口傍の発着場には機関車とトロッコ2台が用意されている。
 機関室には2人、1台のトロッコは5人がそれぞれ乗ることができるようだ。
「機関室に操縦者と燃料を入れる人は必須ですね」
 そうしないと、上り坂でアクセルを、下り坂でブレーキ、カーブで機体制御できなくなってしまう。
 特に、カーブでしっかり制御できなければ、機体ごと落下してしまう可能性すらあるので、しっかりと制御したいところだ。
「ポイントを切り替えながら、先に進むルートを確認したいところだねい。ただ、フロアには魔物がいるだわさ」
 ペリカが確認したのは、動き出した石像ガーゴイル。そして赤い帽子を被った小鬼レッドキャップの2種だ。
 また、後半フロアにはボスがいると思われる。情報が少なく不明だが、奥に巨大な影が宙を飛んでいるのをペリカは確認している。
「あれは、パズズを模した像だと思うわいね」
 パズズとは、異世界のとある地方における風と熱風の魔神の名である。
 この場にあるのは、ガーゴイル同様に石像のようだが、その力がガーゴイルとは比べ物にならないはずだ。
「幸い、中間地点で持ち場を交替できそうです」
 前半、戦力を温存する者が機関室を担当し、後半にパズズへと全力で戦うとか、その逆など、ポジションは戦略によっても大きく変わるだろう。
 おそらく、パズズ(の像)を倒さねば、次のセーブポイントがある扉が開かないものと思われる。
 前後半いずれもトロッコに乗りながら戦うこととなる。機関室にいる2人の守りを含め、襲い来る敵を撃退、もしくは討伐してしまいたい。

「それでは、よろしくお願いいたします」
 アクアベルに見送られつつ、攻略に臨むイレギュラーズ達は15階層手前のセーブポイントまで転移していくのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。
 GMのなちゅいです。

 前回の依頼失敗を受け、改めての15階層チャレンジですが、内容がまるっきり変わっている状況ですので、前回参加の方もご確認を願います。

●目的
 次の階層に進み、次なるセーブポイントを開拓することです。
 また、誰の名代として参加するかが重要になります。

※セーブについて
 幻想王家(現在はフォルデルマン)は『探索者の鍵』という果ての迷宮の攻略情報を『セーブ』し、現在階層までの転移を可能にするアイテムを持っています。これは初代の勇者王が『スターテクノクラート』と呼ばれる天才アーティファクトクリエイターに依頼して作成して貰った王家の秘宝であり、その技術は遺失級です。(但し前述の魔術師は今も存命なのですが)
 セーブという要素は、果ての迷宮に挑戦出来る人間は王侯貴族が認めたきちんとした人間でなければならない一つの理由にもなっています。

※名代について
 フォルデルマン、レイガルテ、リーゼロッテ、ガブリエル、他果ての迷宮探索が可能な有力貴族等、そういったスポンサーの誰に助力するかをプレイング内一行目に【名前】という形式で記載して下さい。
 誰の名代として参加したイレギュラーズが多かったかを果ての迷宮特設ページでカウントし続け、迷宮攻略に対しての各勢力の貢献度という形で反映予定です。展開等が変わる可能性があります。

●トロッコフロア
 機関室と5人乗りトロッコ2両編成に乗り、線路上を進んでいきます。
(どこかにペリカも乗せる必要があります。機関室でも構いませんが、後述の彼女の要望に応えるならトロッコの方が良評価となります)
 機関室と後トロッコまで10m以内ですので、近距離はOKですが、至近距離は届きません(真ん中にある前トロッコは両方に届きます)。

・前半
 まず、入り口付近で石炭燃料を積み込んでから出発します。
 機関室は操縦者と燃料の入れる役のみです。操縦はスピードアップ、ブレーキが可能です。
 線路は上り下りが存在し、加速減速が必要となる為、操縦者が1人必要です。
 操縦者、燃料役も攻撃を受けることがありますので、彼らを守る必要があります。操縦者不在の場合、カーブで全員が投げ出されて攻略失敗となる可能性がありますのでご注意を。

 前後のトロッコで基本はポイント切り替え、ルート選択を確認する形です。
 ポイント切り替えは飛行、狙撃スキルがあると楽にできます。
 なお、トロッコから落下すると、中間地点まで復帰できませんのでご注意ください。
 また、不測の事態が起きる可能性も十分ございます。特に後方からの敵襲にはくれぐれもご注意くださいませ。

・後半
 中間地点で一度停止でき、落ちたメンバーの回収が可能です。(中間地点に誰かがいることで底との通路が解放されます)また、ここでメンバーの配置を変えることが可能です。
 後半は直線メインのコースを、周回して走り続けることとなります。
 奥に続く扉が閉まっており、襲い来る後述のパズズ(の像)を撃破することで扉が開きます。
 奥への扉はポイントを切り替えることで開きます。

●敵
○ガーゴイル
 全長1.5~2m。石像に命を吹き込まれた魔物達です。
 前半は若干数、後半は少数群れてきます。
 基本飛行していますので、常にペナルティを受けていますが、トロッコに取りつかれるとその限りではないので注意が必要です。
・石の槍……(A)物近列・追撃25
・眼光……(A)神遠扇・弱点
・グライダースパイク(A)物中単・移

○レッドキャップ
 全長1m程度。赤い帽子を被ったゴブリンの上位種です。
 前半のみ、何かかしらの手段を使って襲ってきます。

・毒のナイフ……(A)物遠単・毒
・鈍重なる斧……(A)物至単・出血
・悪意の弾丸……(A)神中単・不吉

○パズズ(の像)×1体
 全長4mほどもある風と熱風の魔神を模した像です。
 背中に4枚の鳥の翼、ライオンの頭に腕、ワシの脚、とサソリの尾を持っております。
 後半のみ出現。能力については不明です。

●同行NPC……ペリカ・ロジィーアン
 タフな物理系トータルファイター。
 皆さんを守るために独自の判断で行動しますが、頼めば割と聞き入れてくれます。
 出来れば戦いに参加せず、機関室orトロッコから作戦全体を見たいと希望しています。
 戦いへの参加を要請する場合は戦力があがりますが、それ以外の危険は大きくなる恐れがあります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <果ての迷宮>疾走、トロッコに揺られて完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年04月19日 22時20分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
主人=公(p3p000578)
ハム子
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)
夢為天鳴

リプレイ


 幻想某所。
 かの勇者王が生涯をかけて踏破を目指したと言われ、その踏破が王家の悲願である『果ての迷宮』。
 イレギュラーズ達はこの迷宮の次なる階層を目指すべく、再び探索に臨む。
「レーさんはこの迷宮をよく知らないけど、踏破できると喜ぶ人や新しい出会いがあったから、頑張るっきゅ!」
 アザラシを抱いた犬獣人、『乗りかかった異邦人』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)は初めての参加。
 彼と呼ばせていただくが、犬獣人グリュックに抱かれたアザラシこそがレーゲンである。
 彼は獣人グリュックの体を操作し、自らの体を運んでいる状態なのだ。
「前の聖夜のGOLDの件や依頼で会った事のあるフィッツバルディ公に借りを返すためにも、頑張らなきゃな」
 その連れである全身白銀の毛並みをした筋肉粒々な狼獣人を思わせる姿をした旅人、『守護の獣』ウェール=ナイトボート(p3p000561)も同じく初攻略。
 個々にメンバーのスポンサーは異なるが、ウェールはレイガルテ・フォン・フィッツバルディの為にと依頼に臨む。
 さて、前回は残念ながら15階層の探索に失敗してしまったイレギュラーズ達。
 メンバーを変えての再チャレンジだが、引き続き迷宮攻略に参加するイレギュラーズの姿もある。
「前回は不覚を取ってしまったけど、リベンジに来たよ、迷宮」
 入口にて、メイド服を着用した黒髪オッドアイの少女『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)が声をかけた。
 今回はしっかりと攻略し、陛下にいい報告ができるようにしなくてはと、メートヒェンは意気込んで迷宮内へと足を踏み出す。
「汚名返上に来たとも。事あるごとに失敗に言及されるのも飽きてきたからな」
 白髪のケンタウロス型の獣種、『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)も前回の失敗にはかなり悔しさを感じていた様子。
「そうね。お嬢様へ良い報告ができるようにしなくてはね」
 白髪をツインテールとしたオッドアイの女性、『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)はお嬢様……リーゼロッテ・アーベントロートに朗報を持ち帰りたいと口にしていた。
 そういえばと、ラダは折角だから気にかけていたことをペリカに問う。
「ところでペリカ、いつもこんな風に悔しかったのか?」
「そりゃ、悔しいだわさ。けど、突破が先祖代々の悲願なんて迷宮、そう簡単には越えられないってのも重々理解しているわいね」
 そんなくじけぬペリカの姿に、ラダは大した忍耐強さだと感心してしまうのである。

 セーブポイントから、15階層へと移動するイレギュラーズ一行。
 そのフロアは前回、確かに真っ白な空間が広がっていた世界だったはずだ。
 それが今回来てみれば、複雑に線路が絡み合うフロアへと様変わりしてしまっていた。
「白紙の世界からトロッコの世界だなんて」
「トロッコでライドアドベンチャー! 迷宮フロア、ころころ変わりすぎでしょう……」
 レジーナの言葉に続き、どこかの学校のブレザー制服を着用した『ハム子』主人=公(p3p000578)もフロアの変貌ぶりに唖然としていたようだ。
「もしかして迷宮って、異世界同士を繋いだものなのかしら?」
 レジーナの推論が正しければ、迷宮に上下の概念どころか、底なんてないのかもしれない。
 ただ、幻想には踏破の記録は残っている。
 行き着く先が迷宮の底かどうかはさておき、なんらかのゴール地点はあるはずだ。
「階層の入れ替わり。要所以外はランダムか、ルート分岐か」
 まずはこのフロアを、そして果ての迷宮を走り抜くと、司書を自称する小柄な紫髪の『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は意気込む。
「神がそれを望まれる」


 15階層フロア内で絡み合う線路を進む為には、2台のトロッコを連結させた機関車で進む必要がある。
「へぇ、機関車か……まさかこんなところでお目にかかるとは思わなかったよ」
 それに目を輝かせていたのは、魔力で作り出した中性的な妖精の姿に自らの本体である大鎌を持たせている『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)だ。
「機関車と言うのも、中々目にする事の無い機械ですね」
 やや生真面目な幻想種の少女、『夢為天鳴』ユースティア・ノート・フィアス(p3p007794)は始めて目にした機関というわけではなかったようだが、それでも興味深く機関車部分を見回していた。
「燃料係りなら任せてくれ」
 サイズもまた彼と記述させていただきたいが、その彼は鍛冶屋で培った火の取り扱いがここで役立ちそうだと気合十分である。
「トロッコか」
 乗り場で実物を目にしたウェールは、故郷である日本にあったゲームを思い出す。
 乗っている間は無敵で、爆炎も敵も問題ないのなら楽なのだが……。
「そうならないよな……」
 ウェールが線路の方を見ると、翼を持つ石像……ガーゴイルが時折動き出し、宙を舞っている姿が見える。
 また、視線の先に、トロッコに乗って疾走している赤い帽子の小鬼……レッドキャップの姿も見受けられる。穏便に先へと進むのは難しそうだ。
「それに、うちのアザラシがやる気満々だし」
 ウェールが振り返った視線の先では、レーゲンが機関室に無機疎通していて。
「トロッコは初めての運転で色々と分からないことがありますが、よろしくお願いしますっきゅ」
 そうして、彼は終わったら外すからとお辞儀して一言断り、機関車の後車輪に所持してきたチェンジギアを装着していく。
「我慢してほしいっきゅ」
 果たして、機関車はその呼びかけにどう応えてくれるだろうか。

 出発準備が整いつつある中、フクロウの翼を持つ郵便屋さんの『辻ポストガール』ニーニア・リーカー(p3p002058)は後々の為にと、機関室やトロッコ外側の側面部へと油を塗る。
 自分達が乗るときに支障が出ないようにと、ニーニアは配慮も忘れない。
「今回は、護衛の依頼みたいな感じだね」
 ふと、ニーニアはそんな例えを口にする。
 守り、届ける荷物は自分達自身だが、ゴールまで運ぶ物があると捉えれば、ニーニアにとっていつもの仕事だ。
「きっちりと届けないとね! 郵便屋さんのプライドにかけて!」
「とは言え、不慣れな戦場である事は必至。気を引き締めて臨みましょう」
 ただ、いつもと勝手が違う部分も多分にあると、ユースティアは仲間達に釘を刺しつつトロッコへと乗り込んでいくのである。


 イレギュラーズ達はそれぞれ2台のトロッコと機関室に分乗する。
「うきゅ……」
 仲間達が燃料を積み込む間、操縦方法を覚えていたレーゲン。
 グリュックの身体を通じ、間接的に機関車を動かすことになる彼は謝ってトロッコが線路から落下してしまうのではと考え、少なからず恐怖してしまう。
 それでも、恐怖を飲み込んだレーゲンは、燃料役のサイズが頷くのを確認して。
「頑張るっきゅ。全力全開っきゅ!」
 レーゲンはトロッコに乗るメンバーにも聞こえるよう声を出して気合を入れ、操縦桿を操作し始める。
 小さいアザラシの姿をした彼だが、輪動制御を使って機体を制御する。
 出だしは好調とレーゲンも頷き、サイズも積み込んだ石炭燃料を鎌に入れ、機関車のエネルギー供給を維持する。
「この作業は熱いし、重労働だろうが……。職業柄こういうのには慣れっこだ」
 詰め込んだ燃料には限りがある上、燃料の補充は最初か中間地点でないとできない。サイズは熱さに耐えるだけではなく、ペースを考えて詰め込んでいた。
 その後ろのトロッコ2台は1台当たりに乗ることのできる人数に制限があった為、残るメンバーが分かれて乗っている。
 前のトロッコ、丁度機関車と後ろトロッコに挟まれる位置にはラダ、ウェール、ユースティア、ニーニア、メートヒェンの5人が乗っていた。
「……うん、そのまま。しばらく行ったらポイント切り替えかな」
 メートヒェンはファミリアーで使役した鳥で先の様子を偵察する。
 迷宮内で鳥を見つけることは難しいと考えていたメートヒェンは予め外で使役した鳥を使役していた。
 ただ、周囲にガーゴイルが飛び回っている状況。
 いつ落とされてもおかしくないと考えながら、メートヒェンはできるだけ長くファミリアーを使ってルートを探索する。
 前トロッコは操縦するレーゲンをアシストすべく、ルート探索に当たるメンバーが多い。
 ウェールもガーゴイルなどの奇襲を警戒しながらも、周囲の線路の配置を瞬間記憶して正解ルートを導き出せないかと考えていた。
 特に、ポイント切り替えの場所は見逃さないようチェックし、繋がる場所をたどる。
 ラダもハイセンスで先の経路を調べており、合間に索敵も行う。
「前方、足場が不安定だ。減速を頼む。あと、揺れに備えてくれ」
 全体へと警告も出すラダは転落防止にも備え、金具付きロープでトロッコと体を繋ぐ。
 状況によっては翼を持つニーニアが助けてくれるが、中間地点での合流は可能とのことで、彼女は無理には追いかけてこない。
 ただ、ラダはポイント切り替えの任も請け負っている為、極力落下しないよう備えていたのだ。
 ユースティアは防衛にやや重きを置いての警戒。事前情報にない敵勢の待ち伏せ、障害物など予期せぬ危険などに備えていた。
「修理が必要な状況になるのは避けたいですね」
 遠くに赤い帽子の小鬼達が何やら動いているのが見える。警戒はしすぎて損することはないはずだ。

 後方のトロッコに乗るのは4人。
 風を切って疾走する感覚に、公は思わず子供のような笑顔を浮かべて。
「でも、久々の戦闘フロアだね。トロッコライドでアドベンチャー! って感じだよ」
 出口で記念写真なんて話を口にし、うわーと絶叫する顔が写るアトラクションについて語る彼女は、実に楽しそうだ。
 簡易飛行で最悪の事態に備えようと考えるイーリンは折角だからとペリカへと茶目っ気交じりに問いかける。
「ねぇ、今回で私10回目なんだけど。そろそろ穴掘り屋としての名前も付きそうじゃない?」
 今回の参加者では最多参加のイーリン。
 なお、この後トロッコに乗るのは奇しくも、公、レジーナ、ペリカと果ての迷宮常連参加のメンバーである。
「そーだわいねえ。名乗っていいと思うわさ」
 なお、この場では自由行動でとイーリンに言われ、ペリカも危機的状況なら援護を約束してくれていた。
 レジーナは戦闘に備え、武器の手入れに余念がない。
 序盤はトロッコを楽しんでいた公だったが、しっかりと自分の役割も果たそうと超聴覚で索敵を行う。
 ルート選択、ポイント切り替えといった主的なポジションを仲間に託し、公は簡易飛行による落下メンバーの復帰、ポイント切り替えの補助など、サポートやカバーに回るべく備えていたようだった。


 線路は基本ループするような構造になっており、ポイントを変えることで別のループ、もしくは始発か中間点に行きつく形だ。
 一行を乗せた機関車は幾度かルート変更しつつ、進むイレギュラーズ達が目に付いたのか、ガーゴイル達が近寄ってくる。
 眼光に射抜かれたファミリアーが落とされてしまったのに気づくメートフェン。
「ガーゴイル、来るよ」
 落下してくる鳥を受け止め、メートヒェンは仲間達へと警戒を促す。
 ほぼ同じタイミング、敵の接近を感知していたメンバー達は敵襲に備えて。
 ラダはまだ距離がある段階での撃墜をと、身の丈サイズの欠陥ライフル「Schadenfreude」で鋼の驟雨を打ち付けていく。
 ユースティアも大型拳銃「セイクリッドファング」で射撃を行うが、牽制程度の威力に留まり、強襲してくる迷宮の守護者達はそれだけでは墜ちてはくれない。
 まだ距離はあるが、ウェールも回復の前にと熱砂の精を呼び出して。
「あの石像どもの動きを奪ってほしい」
 ウェールの指示に応じた熱砂の精は重圧を伴う砂嵐をガーゴイル達へと浴びせかける。
 取りつかれれば、操縦者や機関車、トロッコへのダメージは避けられない。
 出来るだけ早く撃ち落としてしまいたいところだ。
 ニーニアもトロッコへと近づく敵から優先的に契約を交わした妖精を牙として差し向けていた。
 簡易充填を活かし、中間地点での回復も想定していたニーニアは序盤からでも飛ばして敵の迎撃に当たっていく。
 対して、鋭い眼光を向けてくるガーゴイル達は侵入者を排除しようと、一気に槍を突き付けて強襲してくる。
 その迎撃の為、ニーニアは魔光を発して相手の動きを止めようと試みていた。
 ガーゴイルの数は決して多くはないが、イレギュラーズ達の攻撃をかいくぐった2体がトロッコにまで近づいてくる。
 ユースティアは近距離戦に切り替え、青白い光を放つ剣で赤と黒の連撃を繰り出し、ガーゴイルに傷をつけていく。
 元が石像ということもあって思った以上に体は固く、空中でもなかなかに態勢を崩さない。
 傷つく仲間の状況は運転するレーゲンも気にかけていたが、トロッコばかりを気にかけてもいられない。
 こちらにも前方からガーゴイルが近寄ってきていたのだ。
「俺に任せて」
 直線や下りのタイミング、サイズも燃料供給の手を止め、魔力を飛ばして迎撃を行う。
 サイズは妖精の血を活性化させて眼光を煌めかせる敵からのダメージを軽減しつつ、炉に石炭投入を再開していた。

 後トロッコでもガーゴイルとの交戦は行っていたが、前トロッコのメンバーが引き付けてくれている為、こちらは援護に回っていた。
「機関室に取り付かせやしないのだわ」
 レジーナは戦車と軍馬を召喚し、機関室を狙っていた敵へとけしかける。
 イーリンもスキルによってメンタルを高めてから、魔眼を差し向けたガーゴイルへと踏み込み、影の一撃を見舞う。
 一撃を受けたその敵は呆けてしまう。後は前トロッコメンバーが始末してくれることだろう。
「ふむ、さすがだわさ」
 ペリカは静観し、迷宮の構造やトラップをメモに記すことに注力する。
 後方頭上から強襲してくる敵には、公が高圧水流を発して押し流す。
 吹っ飛ばされたガーゴイルはまだ動けてはいたものの、翼をもがれて落下していったようだった。


 ガーゴイルの強襲は若干数だが断続的で、人数に勝るイレギュラーズ達が後れを取ることはほぼない。
「こっちだよ、飛び回るしか能のない石頭さん」
 メートヒェンは機関室や後のトロッコに近づくガーゴイルを全力で煽り、自分の方へと引き付ける。
 ガーゴイルにその言葉の意味を理解できたのかは怪しいが、その言葉に気を取られて前トロッコへと近づいてきたところを、ウェール、ユースティアが刃を続けざまに浴びせかけて物言わぬ石の塊へと化していく。
「皆さん、頼もしいっきゅ」
 トロッコメンバーが苦戦するようであれば、レーゲンも回復を考えていたが、現状は運転に集中できる状況が続く。機関車も彼の気遣いを感じてか、穏やかな運転に応じてくれていたようだ。
 また、至近にまで近づいてくるガーゴイルが1体。
 トロッコにつかみかかろうと来たが、ニーニアが予め塗っていた油で滑り、態勢を崩してしまう。
 そいつへ、ラダが大嵐のような銃声を発すると、ニーニアが具現化させていた多数の小妖精をけしかける。
 連撃を浴びたガーゴイルは谷底へと落下していった。
「あのポイントを切り替えで、この場は踏破できるはずだ」
 ガーゴイルとの交戦の間も、ウェールは走行する線路の構造把握に努めており、仲間達へと呼び掛ける。
「護衛を頼む」
 ラダがポイント切り替えの為に仲間達へと呼び掛けると、ユースティアやメートヒェンが応じて護衛に当たる。
 ライフルを構えるラダだが、その瞬間、前回の失敗が頭をちらついて。
「…………」
 彼女はそこで、大きく深呼吸する。
 ――落ち着いて。ひとつずつ片づけていけばいい。
 しかし、その周回では別ルート分岐には間に合わず、ループをもう1周することに。
「……、皆さん、後ろです」
 ユースティアが気づいたのは、別ルートから現状の周回ルートへと割り込んできたトロッコ。
「「ゲヘヘヘヘヘェッ!」」
 それに乗った赤い帽子を被った小鬼……レッドキャップの群れが赤く染まった刃を手に、獲物と捉えたイレギュラーズ達を狙ってもう接近してくる。
「任せて」
 そこで、レジーナが再び戦車と軍馬を召喚し、今度はレッドキャップ達の乗るトロッコを吹き飛ばしてしまう。
「スピードアップっきゅ!」
 上り坂なら、敵との距離を離すことができる。
 レーゲンがスピードを上げると同時に、サイズが機関室の炉に焔式を使用して。
「火力は速度だぜ!」
 機体をブーストさせることで加速し、一行を乗せた機関車は一気に上り坂を登りきる。
 下り坂になれば、さすがにレーゲンもトロッコが跳ねることを懸念して減速していく。
「……っ、カーブっきゅ!」
 減速が間に合わぬ状況の中、レーゲンはしっかりと機体を制御し、曲がり切ってみせる。
 程なく、先程のポイントまで戻ってくる中、後ろからレッドキャップらが乗るトロッコがスキルの力を使ったのか猛追してきた。
「ラダ殿、頼んだよ!」
 メートヒェンが敵の接近に備えて身構えるが、ここはしっかりと彼がやってくれると信じて防御態勢を取る。
 すでにかなりの車間距離が開いており、ラダも余裕をもって再びポイントを狙って。
「これで、おさらばといこう!」
 自分達の乗るトロッコがルート分岐した直後、ラダが引き金を引く。
 乾いた音の直後、同時に小さな金属音が立つ。 
 レッドキャップ達が乗ったトロッコはこちらに来ることなく、同じルートをたどって通り過ぎていった。
 後は邪魔なガーゴイルがなおも2体追いかけてきており、そいつ目がけてイーリンが刃を振り向く。
 光の尾を引くその一撃は明けの明星にも似て。
 胸部と腹部を穿たれたガーゴイル達は浮力を失い、落下していくのだった。


 トロッコからの落下者を出すことなく、中間地点まで到着したイレギュラーズ一行。
 そこで、メンバー達は態勢を立て直すべく体力気力の回復に努めて。
「皆、大丈夫?」
「大丈夫。とりあえず、全力で休憩を取ろう」
 序盤は比較的余力を残していた公は治癒魔術を使って仲間達を癒すと、ニーニアが事前に考えていた通り、気力を補填してこれからの戦いに臨む。
「こんな時でも、お茶くらい嗜む余裕は持たないとね」
 お茶を淹れようとするレジーナにメイドのメートヒェンも黙っておれず、仲間の為にと美味しい一杯を振舞う。
 少しずつ回復をと休むラダがそれを口にするが、その茶葉が商売に使えそうかと考えるのはある意味で職業病みたいなものだろうか。
 また、自らのコレクションから嗜好品を仲間達へと配っていたイーリンだが、後半はレーゲンから操縦を引き継ぐ為、彼からトロッコの強度、加減速のコツなどを知識の砦にメモを取っていた。
 また、機関車やトロッコに痛みがないか、サイズがチェックに当たる。
「この後、乗り物が壊れたら大変だからな……」
 最悪、追加装甲での補強も考えたが、そこまで傷みがなかったのは、仲間達がうまくガーゴイルを倒し、レッドキャップ達を撃退し、手早く絡み合う線路の未知を突破したことが大きい。
 各部位の修復にはユースティアも手伝ってくれて。
「まあ、こんなもんでいいだろう」
 ここから、フロア後半。
 やや情報が少なめのルートだが、ペリカが線路の先を見るようイレギュラーズ達へと促す。
「ここからでも見えるわさ」
 前方の奥で、ライオンの頭に腕、ワシの脚、とサソリの尾を持つ魔神パズズを模した像が背中に生えた4枚の鳥の翼を羽ばたかせ、空中を動いているのが見える。
 間違いなく、ガーゴイルなどとは比べ物にならない力を持つ敵との戦いを前に、メンバー達はできる限り万全の態勢を整えるのである。


 前半からの配置転換は操縦をイーリン。代わりにレーゲンが後トロッコへと移る。
 他のメンバー達は前半から引き続き、それぞれの位置でこれからのルートに臨む。
 トロッコは直進から横に折れ、そこからは直線と非常に緩やかなカーブで構成されたルートを進む。
 角の取れたような八角形を描くようなループを描く中、メンバー達はその中央にいる動き出した魔神パズズの像を注視した。
「皆、襲撃に備えて」
 パズズが腕を上げると、少数ではあるが、頭上からガーゴイルの群れが降り立つ。
 グルルルル……。
 唸るような声を上げ、魔神を模した像は数でもって奇襲を仕掛けてくる。
 木を隠すなら森と言わんばかりに、パズズは多数のガーゴイルによって自らの身を隠す。
「奇襲されると分かっているなら、逆に奇襲し返すのが青薔薇の流儀……なんてね?」
 剣魔双擊の構えを取るレジーナ。
 真横からの襲撃であれば、トロッコが前後のどちらでも関係はない。
 相手が数を頼みに襲ってくるなら、こちらは手数を増やして対応しようとレジーナは告げる。
「なぁに。遠慮はいらないわよ。武器の貯蔵は十分だから」
 ――さぁ、勝ちましょうか。
 ここからは、トロッコで疾走しながらの石像達との力比べだ。

 最初はパズズを捉えたかったウェールだが、どうにもその親玉らしき姿を捉えることが難しい。
 それもあって、できる限り多くの敵を捉え、再度熱砂の精に砂嵐を浴びせかけていく。
 ガーゴイル達の動き自体は前半とさほど変わらない。
 数人がかりで相手をすれば、危険なく倒せる程度の相手であることもイレギュラーズ達にはもう分かっている。
「ただ、数が多すぎますね……」
 いかんせん、今度は数で襲い掛かってきている相手の処理が追い付いていないとニーニアも判断し、小妖精達の力を借りて群がるガーゴイルを纏めて迎撃していく。
 パズズが戦場のどこにいるかが分かりづらい状況の中、ラダは落ち着いた様子でライフルのスコープを覗いて。
(焦るな。翼を砕き、撃ち落とす!)
 再度、彼女は鋼の驟雨をガーゴイル達へと撃ち受けていく。
 仲間達が攻撃を繰り返す中、メートヒェンはようやく複数のガーゴイルの影にパズズの姿を確認して。
「そうそう何度も陛下に失敗の報告をするわけにはいかないからね。ここは通してもらうよっ!」
 挑発交じりに叫び、メートヒェンは敵の引き付けに当たるのである。

 疾走する機関車の操縦を行うイーリンは祈りの手を使い、機関室内の熱気に耐えつつ前方に視線を向ける。
 進行方向の左右の岩、柱などの障害物などを魔眼で注視するイーリンはガーゴイルが隠れていないか、どさくさに紛れてパズズがいないかとも考えていたのだ。
 しかし、パズズはガーゴイルに紛れての奇襲を試みようとしていた上、仲間が上手く対処していたようである。
 それならとイーリンは空を飛んで追いすがる敵を輪動制御と逃走のスキルを駆使して、仲間達が交戦しやすい状況を作る。
 サイズは変わらず、燃料を投入の任を請け負う。
 直線が多いことに加えて大分コツをつかんできたこともあり、サイズは僅かな隙に魔力撃を放つ頻度が高くなっていたようだ。
「じりじりと削られるのだけは勘弁ね」
 敵はいつだってこっちより上回るものだとは、レジーナの談。
 数で攻めてくる相手を相手に、彼女は桜吹雪を彷彿とさせる火の粉を周囲に回せ、紅蓮の炎と熱砂の幻影を襲い掛からせていく。
 それによってレジーナは相手の動きを止める遅滞戦闘に臨み、一度に取り付こうとしてくるガーゴイルの数をコントロールしていく。
「これ見よがしに隠れようとしていたようだけれど」
 これだけガーゴイルを散らせば十分とレジーナは考える。
 接敵して来ようとする敵には、ユースティアが拳銃を発砲させて牽制するそばで、操縦の任から解かれたレーゲンがガーゴイル共々パズズを狙い撃つ。
 公も高圧水流を発してガーゴイルを吹っ飛ばしていたのだが。
「あれが倒すべき相手だね」
 公はここまで温存していた力を徐々に高めながらも、パズズへと接敵しての交戦していくのだった。


 簡易飛行で飛ぶ公が直接パズズの抑えへと向かおうとすると、ライオンの瞳で睨みつけるパズズの像が大声で吠えてくる。
 グアアオオオオオォォォォ……!!
 大きな鳴き声で威嚇してくる魔神に臆することなく、公は携帯ゲーム機を取り出して。
「引継ぎコード入力完了、データリンク!」
 一時的にゲームデータの力を引き出した主人は、指輪から現した魔力の刃に気力を注ぎ込み、敵へと切りかかっていく。
 依然としてガーゴイルが機関車やトロッコに群がる状況も続いていて。
 このフロアに来てからループするルートを一周。
 すでにガーゴイルが幾体か倒れているが、依然として邪魔な敵が多いと判断したニーニアは組み上げた術式によって魔光を発して敵の首を撃ち抜いて倒してしまう。
 ニーニアは公が交戦するパズズの下半身に生えるサソリの尾に注目していて。
(攻撃できそうな尾って、厄介な気しかしないんだよね……)
 せめてその尾を破壊したいと考え、ニーニアは時折パズズの方に気を払う。
 そのパズズはにやりと笑い、素早く尻尾を伸ばす。
 思いもしない一撃によって叩き飛ばされた公は、パンドラを使って態勢を立て直す。
 だが、それ以上に危険な状態となっていたのは、側面にサソリの針が突き刺さった機関車だ。
「うわっ……!」
 サイズの補修もあり、車体が破壊することはなかったが、大きく車体を煽られて車輪が浮き上がってしまう。
 イーリンとサイズは戦慄しながらも車体の維持に努めて。
「皆、重心を左側に!」
 イーリンの呼びかけを受け、僅かに浮かび上がるトロッコに危機を感じたメンバー達は重心移動することで、なんとかこの場は持ちこたえる。
 しかし、メンバー達がバランスを取る中で、機関車へと近づいてくる1体のガーゴイルが。
「ハンドル任っ、せ、たっ!」
「了解したよ」
 イーリンの呼びかけを受け、サイズが一度焔式で火力という燃料を供給しつつ操縦桿を一時握る。
 その間、イーリンはメンタルを高め、渾身の一撃を戦旗で浴びせかけ、体を貫いたガーゴイルを奈落の底へと落としていった。
「助かったよ」
「なに、これくらい」
 かなり際どい状況だった機関室内。
 トロッコに乗っていたメンバー達が知ったなら、さぞ肝を冷やしたに違いない。

 その後、イレギュラーズ達は順調にガーゴイルの数を減らして。
 氷雪の加護を受けた「氷纏舞奏・結祈飾」を操るユースティアは星の輝きと共に六花の煌きを刻み込む。
 そいつは苦しみながらも、同じ前トロッコに乗るメンバーを纏めて石の槍を叩きつけようとする。
 追撃してくることもあるガーゴイルだが、この場はユースティアの反撃が速い。
「ラ・ピュセル!」
 戦乙女の加護を得た彼女の刃がガーゴイルの胴を断ち切ってしまい、単なる石像に戻してしまう。
 翼を羽ばたかせることを止めた石像は重力に轢かれて落下し、砕け散る音がトロッコにまで聞こえてきた。
 ウェールは仲間達の回復メインに動き、調和の力を癒しに転じて仲間達が継戦できるように努めていた。
 ただ、一度倒れかけた公を含め、回復の手が足りないと判断したウェールは後方のレーゲンを見て。
「助力を頼む」
「任せるきゅ!」
 その彼はパズズを狙って召喚した空飛ぶアザラシをけしかけていたのだが、ウェールの頼みとあって天使の音色を響かせ始める。
 レーゲンは回復に回ったが、直接、パズズを狙うメンバーは増えてきていた。
 その間、パズズを抑えていたのは、前線に戻った公とトロッコから敵の気を引くメートヒェンだ。
 パズズの攻撃方法は非常に多彩で、素早いサソリの尾による一撃の他にも、ワシの脚を使った掴みかかりにライオンの頭での噛みつき、怪力の殴打を繰り出す。
 また、熱風を巻き起こし、機関車やトロッコごとイレギュラーズ達を攻め立てようとしてくるから厄介な相手である。
 防御態勢をとりつつ、メートヒェンはパズズへと蹴撃を浴びせかけて空中から叩き落とそうとするが、両腕やサソリの尾で防がれることも多かったようだ。
「早く、あの尾を……」
 仲間達に気を取られるパズズの隙をつき、術式を展開したニーニアが魔光でサソリの尾を撃ち落とす。
「よし、これで!」
 グオオォォォ……!
 雄々しく叫ぶパズズへとイレギュラーズ達は攻撃を畳みかける。
 態勢を低くしたラダが大嵐の如き銃撃を浴びせて敵を僅かに呆けさせ、刹那飛躍的に力を高めたレジーナが召喚した戦車と軍馬で轢き潰さんとしていく。
 そこで、加速して自らの能力をブーストさせた公は底力を見せつけ、パズズへと魔力と気力を込めた強烈な一撃で切りかかり続けて。
「先程の礼をさせてもらうよ」
 その腹に刃を突き刺した公は大きく切り上げ、敵の肩口まで切り裂いてしまう。
 グアオオォォォォ……。
 目から光を失った魔神の像は、暗い迷宮の底へと落ちていってしまったのだった。

 パズズの討伐を受け、ラダが再びポイントへと銃口を突き付けて。
 祝砲代わりの一発が空洞へと響く中、トロッコを引く機関車はセーブポイントに続く扉へと直進していくのだった。

成否

成功

MVP

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPはタイミングよくポイントを切り替え、
レッドキャップとの交戦を避けることに成功したあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!

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