PandoraPartyProject

シナリオ詳細

黄金の獣

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●嵐の鷲獅子
 傭兵と深緑のいざこざも一先ず片が付き、相変わらず幾らかの問題を孕みつつも、普段通りの盛況を取り戻したラサの街。大陸各地から珍品が集められ、大量の金銀で取引される。傭兵の街として、商人の街として、富がごまんと集まっているのだ。
 しかし、富が集まるところにはそれを狙う者達が現れる。それは人間ばかりにとどまらない。獣の類も、爪を研いでチャンスを窺っていたのである。

「グリフォンだ!」

 市場で誰かが叫ぶ。その瞬間、鋭い爪を開いた獣が舞い降りてくる。それが大きく翼を羽ばたかせた瞬間、鎌鼬が次々に巻き起こって人々を切り裂き、市場を滅茶苦茶にする。人々が慌てて逃げ出す中、グリフォンは金貨に銀貨が詰まった大きな袋を二つ抱えてあっという間に飛び去る。物陰からちょっと頭を出し、ある商人はほっと溜め息を吐く。
「行っちまった……」
 しかし隣の商人は真っ青になっていた。
「取られた! 俺の金!」
「あー、それは、災難で……」
 他人事な男に、金を盗まれた方はいきなり食って掛かる。
「ご挨拶で済むか! あんなのがまた来たら今度はお前がやられるぞ」
「うっ……分かったよ。他の奴にも掛け合って、傭兵に頼んでくるから……」

 そんなわけで、ラサで雇われたグリフォン討伐部隊は荒野にぽっかりと口を開けた洞窟へと足を踏み入れる。岩の亀裂から差し込んだ日光が、洞窟の彼方でキラキラと跳ね返る。大量の金銀財宝が既に蓄えられているらしい。
「おい、討伐終わったらちょっとくすねてやろうぜ」
「おいおい。そんなこと言ってる場合かよ。グリフォンっつったらヤバい奴だぜ」
「だけどよー、こっからもう目に見えるくらいの財宝って、間違いなくとんでもない量があるぜ――」
 傭兵たちがグダグダと管を巻いていると、いきなり彼方から暴風が吹き荒れ、甲高い叫び声と共に獣が飛び出してきた。傭兵が怯んでいる間に、グリフォンはいきなり傭兵たちの背後から突風を吹かせて洞窟の奥へと叩き込んだ。
「で、出たぁ!」
 傭兵たちは慌てて盾を構える。しかし、グリフォンが吹き散らす風は兵士達の背中から襲い掛かり、その革鎧を切り裂く。
「ぎゃっ」
 風にあおられた隙に、飛びついたグリフォンが男を掴んで金銀の積まれた固い岩肌へと叩きつける。突然の出来事に、傭兵は眼を回してしまった。
「ず、ずらかれ! 危険すぎる!」

 かくして、傭兵達にも凶暴なグリフォンは退治できなかったのである。

●討伐隊結成
「今回の依頼は、ラサに飛来したグリフォンの撃退なのです」
 新米情報屋ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はコルクボードを背にして説明を始める。そこにはグリフォンの絵が一枚ピンで留められていた。鷲の鋭い嘴や爪、獅子の強靭な後肢がよく目立つ。
「知っている方もいるかもしれないのですが、グリフォンはとにかくお宝が好きな生き物なのです。普段は山奥で大人しくしてることが多いのですが、これが街に現れると大変で、金銀宝石を根こそぎにして持っていってしまうのです」
 カバンからさらに一枚の地図を取り出すと、ユリーカはコルクボードに勢いよく貼り付ける。
「その持っていった金銀宝石をどうするかというと、大抵は近くにある洞窟へ溜め込んでしまうのです。目的はわからないのですが、言い伝えによるとこの生物は昔々にあった王国の宝物庫を守るために生み出された生き物で、本能でヒカリモノを集めてしまうらしいのです。……こういうと可愛らしいところがあるかもしれませんが、グリフォンは様々な風の魔法を使いこなす強力な獣なのです。洞窟の中だと逃げ場が無くなってしまう危険があるので、気を付けて戦ってほしいのです」
 地図にバツ印を書きつけると、ユリーカはコルクボードから地図を剥がして君達に差し出した。
「グリフォンは今のところこの辺りに潜んでいるようなのです。準備は万全に、ですよ」

GMコメント

●目標
 グリフォンの撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 荒野に存在する洞窟の中で戦闘を行います。ドーム状で、遠距離攻撃が端から端まで届く程度の広さです。
 中には金銀財宝がちりばめられています。光が反射して眩しい思いをするかもしれません。

●敵
☆グリフォン
 鷲の身体と獅子の下半身を持つ、古くから存在する怪物の一つ。どこから飛んできたのか、ラサの市場を襲って金銀財宝を持ち去ってしまった。

・特徴
→銀爪
 銀色に輝く爪です。その力は非常に強く、持ち上げられないものはありません。
→金翼
 金色に輝く翼です。巻き起こす暴風は鎌鼬をも生み出します。

・攻撃方法
→突風
 扇状の空間を薙ぎ払う強風を吹き荒らします。直撃を喰らえば簡単に吹き飛ばされるでしょう。
→鎌鼬
 風の斬撃を繰り出して攻撃します。風は彼方此方跳ね回り、あらゆる方向から敵対者を切り裂きます。
→強脚
 前脚の鋭い爪で掴みかかってきます。隊列が崩されかねないので気を付けましょう。

●TIPS
☆グリフォンを討伐する場合は洞窟に閉じ込めておく必要がある。



影絵企鵝です。再び有名な怪獣でしょうか。金銀に目移りしたらうっかりやられかねません。気を付けましょう。ではよろしくお願いします。

  • 黄金の獣完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年02月10日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)
うつろう恵み
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
フローリカ(p3p007962)
砕月の傭兵
ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで

リプレイ

●金貨の砂漠
 一匹の蝙蝠が目まぐるしく羽ばたき、荒野にぽっかりと口を開けた洞窟の奥へと突き進んでいく。しかし、十を数える間もなく突風が吹き荒れ、ユーリエ・シュトラール(p3p001160)の下へと押し戻されてしまった。ぐるぐると眼を回している蝙蝠の頭をそっと撫で、ユーリエは溜め息を吐いた。
「うーん。この先にグリフォンがいるのは間違いないみたいですけど……」
 蠍も地を這い洞窟の奥へと進む。洞窟の奥から差し込む光、魔力を秘めた宝石の光が跳ね返り、暗いはずの洞窟がぎらぎらとしている。蠍は張って金貨の陰隠れようとしたが、風によって周囲の金貨ごと吹き上げられて、そのまま襲い掛かったグリフォンに食い殺されてしまう。刃物で突かれたような鋭い頭痛が襲い掛かり、レスト・リゾート(p3p003959)は咄嗟に頭を押さえる。
「あらぁ。随分とやる気満々のようね。消えた王国の番人が今も宝物を守っているなんて、何だか少し、哀愁を感じちゃうわねぇ……」
 嘆息するレスト。その隣でヒィロ=エヒト(p3p002503)はやる気に満ち溢れていた。商人達にあれやこれやと言い募った彼女は、金の鱗を張り巡らせた煌く外套を羽織り、目の下には返照対策の高価な墨を塗りつけていた。美咲・マクスウェル(p3p005192)に寄り添い、ちらりと見上げる。
「宝物庫に近づくものは何であろうと攻撃! こんなに凶暴なら、心ゆくまで殴り合いを楽しめそう! そのうえラサの商人さん達に恩を売れるなんて、こういうの一石二鳥っていうんだっけ? グリフォンだけに!」
「え……うん、そうね」
 美咲はきょとんとする。ヒィロは笑みを浮かべると、気合を入れて己の拳を突き合わせた。
「よーし、ボクが先行するよ! みんな続いて!」
 彼女はその身に戦意を満たし、洞窟の坂道を一気に下っていく。色とりどりの光に満たされた空間の中、一際鋭く光るエメラルド色の双眸。ゆるりと揺れ動いたかと思うと、その瞬間に激しい風が襲い掛かった。ヒィロは両腕を構えて無理矢理洞窟の奥へ切り込み、周囲に保護結界を張り巡らせた。
「宝物の保護はこれでばっちり! さあ勝負だ!」
 狐火を纏わせ、至近距離でグリフォンに詰め寄るヒィロ。後を追うように宝物庫へ飛び込んできたフェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)は、丸い目を見張って辺りを見渡す。
「光り物を、こんなに……なんだか貴婦人の方みたいで、お洒落……かしら?」
 金銀に照らされた眩しい空間の中、グリフォンは巨大な翼を羽ばたかせて強烈な風の刃を放つ。魔法の障壁で咄嗟に身を庇い、彼女はタクトを抜き放った。
「皆さん、援護……します」
 宙に向けてタクトを振るうと、軽やかなマーチが洞窟の中を満たし、仲間達に活力を与える。布を巻き付け片眼を隠したユーリエが、後に続いて飛び込んできた。
「随分と光り物を溜め込んでますね。それに、どれも相当の値打ち物ばかり……!」
 ユーリエは指先から垂らした細い鎖を引っ張る。銀色の鎖が僅かに蒼い光を帯びた瞬間、彼女はグリフォンに向かって鎖を投げ放った。
「貴方を倒して、ラサの街の安全を取り戻します!」
 しかしグリフォンもさるもの、風を吹かせて鎖を跳ね返してしまう。横で見ていたフェリシアは、タクトを自らの胸元に当て、眩い光を引っ張り出す。飛び出した光は洞窟の中をふわりふわりと跳ね回り、仲間達の中へと飛び込んでいく。ヨハン=レーム(p3p001117)は身の丈ほどもある大楯を構えると、洞窟を飛び回る鷲獅子を見上げた。
「さて。昔の王国も面倒なものを作り出したようで……」
 狭い洞窟の中でも、グリフォンはまるで壁を駆け回るかのように、縦横無尽に動き回る。そのまま今度は床一面を覆う暴風を放ち、周囲を纏めて吹き飛ばしにかかった。
「あくまで宝物を守るための行動、って事なんでしょうが……勝手にお金を持ち去られた方は堪ったものじゃないですね。しっかり討伐しなければ!」
 両足を踏みしめて何とかその場に踏み止まったヨハンは、鷲獅子が迫った隙を突き、長剣に光を纏わせ切りかかった。金の羽根が僅かに舞い、それは一声激しく鳴いて素早く掴みかかろうとする。
「敵の攻撃に惑わされ、陣形を崩してしまう事の無いように。きつくなったら無理せず僕の後方へ!」
「オーケー! じゃあドンドン行くよ!」
 ハルア・フィーン(p3p007983)は拳を固め、ヨハンへ切りかかる鷲獅子の懐へと潜り込むようにずんずんと踏み込んでいった。この混沌溢れる世界に招来されてから初めての戦い。しかし彼女は物怖じしなかった。
「この世界のボクが何を出来て何は出来ないのか……試させてもらうよ!」
 器械の歯車を噛み合わせるように、身体の代謝を高めたハルアは鷲獅子の背後へ一気に肉薄した。
「えいっ!」
 鋼鉄のグローブを嵌めた拳で殴りかかる。突然の攻撃に怯んだグリフォンは、素早く上空へと舞い上がった。それは素早く翼を振り抜き、鎌鼬を引き起こした。風の刃は洞穴の中で素早く反射し、ハルアの背中へ襲い掛かる。
「うわっ」
 彼女は咄嗟に横っ飛び、直撃だけは何とか避ける。鷲獅子が再び舞い降りようとしたところへ、刺々しい茨の結界が鷲獅子を締め上げた。美咲が瞳を薔薇のように輝かせ、じっとグリフォンの姿を捉えていた。
「私の世界の伝説じゃ、プライドが高くて気性が荒いって言われるだけの存在だったけれど……こうも狭いしびゅんびゅん飛び回られるのは、中々厄介ね」
 あまり近づかれると薔薇の結界は当てにくい。彼女の見敵必殺の魔法も、当てられなければ意味が無い。彼女は帽子のベールで顔の前を覆い、背中をピタリと洞窟の壁に預けた。グリフォンの吹かせる風を何とか凌ぐ。
「はぁい、今度はこちらを御覧なさいな」
 レストは素早くリボンを振り抜き、グリフォンの前脚をつらまえ自らの下へ引き寄せた。鷲獅子は甲高く叫び、鋭い爪で掴みかかった。レストはリボンの柄を突き出して受け止める。
「おいたはダメよ、悪い子さん」
「隙ありだ、参る!」
 フローリカ(p3p007962)は、両手に短剣を手にして素早く切りかかった。彼女も混沌の世界では新参者。しかしかつての世界でも傭兵として培ってきた経験が全く無に帰したわけではない。ヨハンの刻んだ脇腹の傷口に刃を突きこみ、着実にグリフォンへ苦痛を与えていく。一度地面に降り立ったグリフォンは、素早くその場でその身を翻し、金貨を礫代わりにフローリカへぶつけた。彼女が怯んだ隙に、グリフォンは一気に空へ舞い上がる。
「不思議なものだ。元の世界だと実在しない生物と、こうして相対する事になるとはな」
 光り物好きとは、まるでカラスのようだ。そんなことをちらりと思いつつ、彼女は素早く剣を構え、吹き寄せる風を耐え忍ぶ。
「恨みは無いが、これも仕事なんでね。徹底的にやらせてもらうよ」

●プライドの鷲獅子
 ドームの壁を爪で鷲掴みにして、勢いよくグリフォンが飛び出す。翼で風を切りながら、弾丸のように突っ込んでくる。ヨハンは盾を斜めに構え、嘴を素早くやり過ごす。目の前に降り立ったそれは、爪を振り上げヨハンに掴みかかった。
「こっちだよ!」
 そこへハルアが飛び込み、彼女は次々に拳を繰り出す。一撃ごとに火花が噴き出し、火花は小さな嵐となって襲い掛かった。腰の毛皮を焦がされたグリフォンは、咄嗟にその場で羽ばたいた。大量の金銀財宝が巻き上がり、鎌鼬と共に壁に跳ね返ってハルアへと襲い掛かった。
「ひゃっ!」
 吹っ飛ばされた彼女は、何とか受け身を取って起き上がる。グリフォンは空高くへ跳びあがると、更に追撃の風を吹かせようとする。ヨハンは咄嗟に彼女の前へ身を投げ出し、何とか強風を受け止めた。
「大丈夫ですか?」
「な、何とか……一旦下がるね」
 ハルアは素早く金貨の山の陰へと隠れる。ヨハンは盾を両手で構えると、空高くへ振り上げる。
「さあ、こっちに来たらどうです?」
 グリフォンは再び空を切り裂き、鎌鼬を辺り一面に放ちながらヨハンに飛び掛かった。彼は素早く盾を振り抜き、その頭を殴りつけた。その身の魔力を流し込み、グリフォンを怯ませる。そこへヒィロが飛び込み、その身に燃える闘志を纏ってグリフォンの懐へと飛び掛かった。
「さあかかってきなよ! どんな風も正面からボクが受け止めてやる!」
 彼女は両手を突き合わせて火花を散らせる。グリフォンは振り返ると、大きく身をのけぞらせ、渾身の太刀風を吹かせる。風はヒィロに直撃したが、彼女は器用に空中で受け身を取り、ドームの壁に柔らかく降り立った。跳ね返った鎌鼬はフローリカ目掛けて飛んでいく。ヒィロは咄嗟に飛び出し、その身を射線に投げ出した。
「たとえ伝承の魔獣にだって、ボクは負けないんだ! 美咲さんがついててくれるからね!」
 多少の生傷を作ってもヒィロは怯まない。勝気な笑みを浮かべると、鷲獅子の正面へと再び立った。跳びあがって身を躍らせ、闘気で包んで再び敵の気を引いた。グリフォンが身を捩らせ、喉元へ僅かな隙が出来る。
「美咲さん、今だよ!」
 魔眼の魔女は壁際から鷲獅子の喉元へピントを合わせる。赤く染まっていた瞳が、漆黒の闇へと染まった。
「この眼も、神秘の度合いは伝説級ってね」
 手を差し伸べ、ぱちりとウィンクする。その瞬間、鷲獅子の目の前で急に空間が捩れ、その喉元を引き裂いた。金色の羽毛が舞い散り、深紅の血が溢れて金銀に降りかかる。数多の敵を葬り去ってきた、ヒィロと共に繰り出す必殺の連携だ。
 しかし、グリフォンはその場に踏み止まった。深手ではあったが、分厚い羽毛が壁となって仕留めるには至らなかったのである。それはげえげえと鳴きながら、宙へふらふらと飛び上がる。疲れ目を擦りながら、美咲は叫ぶ。
「うーん、仕留め損ねちゃったか。皆気を付けて!」
 グリフォンは一際強く風を吹かせると、洞窟に開いた出口に向かって素早く飛び込んでいく。フェリシアがそこへ回り込んだが、鋭い爪と風で吹き飛ばしてしまった。
「あっ……」
 フェリシアが息を詰まらせ倒れ込んだ隙に、一気にグリフォンは洞窟の外へと飛び出そうとする。しかし、あらゆる方向から伸びていたワイヤーに引っ掛かり、グリフォンの行く手は遮られてしまった。それは必死に暴れるが、ワイヤーはむしろ絡まるばかりである。
「今から逃げようとしても、そうはいかないのよ~」
 レストは再びリボンを振るい、グリフォンの腰元に巻き付ける。レストは持ち込んだワイヤーを美咲と共に張り巡らせ、ユーリエの持ち込んだ接着剤で固めておいたのである。レストの力で深く根を張った若木も、グリフォンの力によく耐えていた。
「さあ、こちらにいらっしゃい」
 リボンに魔力を流し込み、無理矢理巻き取ってグリフォンを引き寄せていく。フェリシアも何とか起き上がり、再びタクトを手に取った。例え浮世離れした儚げな外見の彼女でも、混沌の力が絶えない限り何度でも立ち上がるのだ。
「ちょっと、かわいそうだけど……逃がすわけには……」
 暴れるグリフォンに向かってタクトを突き出す。その瞬間に蒼く輝く衝撃波が襲い掛かり、グリフォンを洞窟の真ん中まで吹き飛ばした。地面に叩きつけられた瞬間、深紅の血が再び迸った。立ち上がったグリフォンは再び嵐を起こそうとするが、ユーリエがすかさず青く光る鎖を擲ち、グリフォンの身体へ巻き付けた。その瞬間に鎖は青白く輝き、吹き荒れる風を弱めてしまう。
「これ以上、好きにはさせませんよ!」
 風をユーリエに奪われたグリフォン。翼を広げると、四つ足で駆けて洞窟の中を走り回り、イレギュラーズを翻弄しようとする。フローリカは双剣を二本とも順手に構えると、その場でじっと腰を落とした。口の中で短い節を口ずさみながら、グリフォンに狙いを定める。
「一刀両断にする……!」
 グリフォンが突っ込んできた瞬間、フローリカは剣を振り上げ素早く飛び込む。グリフォンの鋭い爪が、彼女の脇腹を捉えた。しかし、彼女は構わず剣をグリフォンの翼の根元へと叩きつけた。羽毛が舞い散り、だらりと血が溢れる。グリフォンは甲高く鳴き、よろめきながら洞窟の壁に激突する。フローリカもその場に倒れ込んだが、彼女は何とか立ち上がる。グリフォンに負わされた深手は、既に混沌の力で塞がれていた。
「なるほど……この程度の無茶は簡単に出来るというわけだ。この世界では……」
 大量の血を流し、前後不覚のグリフォンはその場でよろめく。ユーリエは再び鎖をピンと伸ばすと、その鎖を銀色に強く輝かせる。
「これで、最後です!」
 鎖を握りしめ、ユーリエはグリフォン目掛けて叩きつける。鎖は一気に血の色へ染まり、美咲とヒィロがつけた喉元の傷へ素早く巻き付く。

 彼女が魔力を込めて鎖を引いた瞬間、鎖が喉の肉を抉り取り、首の骨を砕き、遂に宝物庫の番人を絶命させたのであった。

●宝はちゃんと返しましょう
 何匹ものラクダが、大量の金銀財宝を詰めた麻袋を両脇に載せ、ぞろぞろとラサの市場へと帰ってくる。グリフォンを討ち果たしても、残された大量の金銀を持ち帰るのは並大抵の事ではなかった。出迎えにやって来た商人たちの前で、ヨハンはぺこりと頭を下げる。
「どうぞ。金貨に銀貨、宝石。とりあえずグリフォンが溜め込んでいたものは全部持ち帰りました」
「どれが誰の持ち物か、どれほどの被害を受けたのか、私達は把握しきれていない。お前に全て預けるから、後はそっちで上手いように片付けてくれ」
 フローリカはさらりと言う。商人は小さく頷き、ラクダから麻袋を下ろして金貨の枚数を数え始める。
「さて、どれだけ帰ってきたもんかな……」
「予め見せて貰った盗品リストに基づいて、グリフォンの盗んだものはしっかり確認しておきましたよ。とりあえずどれも無事です」
 ユーリエは手帳を片手に微笑んでみせる。商人は麻袋の中身を確かめ、ほっと溜め息を洩らした。
「いや、助かった。どれもとんでもない値打ちがするものばかりだ。貴族が目をかけてる品もあるから、無くなっていたらどうなっていた事か……」
「本当ですね。どれもこれも凄い品ばかりです」
 彼女は手帳を見つめる。鑑定眼を持つ彼女には、品物の貴重さがよくわかる。ヒィロは手を頭の後ろへ回し、尻尾をゆらゆらと揺らしながら笑みを浮かべた。
「ボクがちゃんと保護結界で守っておいたからね! ちょっと血で汚れたりはしてるかもしれないけど……傷はついてないから大丈夫だよ!」
「そうか。助かった。傷がついてたとしても色々言いようはあるんだが……傷が無い方が宝石や装飾品は綺麗に違いないからな。ああ、ちゃんと外套は返してくれよ。売ったわけじゃないからな」
「わかってるわかってる。そういう契約だもん。ね?」
 ヒィロは外套をするりと脱いで軽く畳み、商人へと差し出した。ちらりと眼を向けられた美咲は小さく頷く。
「そうね。安心して。金貨にも売り物にも手は付けてないから。……ま、時に……」
 美咲はふと商人へ歩み寄り、革袋の中からするりと一本の大きな風切り羽根を抜き取る。羽毛が所々金色に輝いている。
「このグリフォンから拝借した風切り羽根……ちょっとしたお金にはならないかしら?」
「ん? ……いやあ、物好きな貴族が羽ペンか髪飾りにするくらいだからなあ。銀貨一枚か、そんなところか」
「ふむ。やっぱり大したお金にはならないのね」
 元の世界なら羽根一枚でもお宝になるのに。美咲はこっそりと溜め息を吐いた。

 一方、フェリシア達は洞窟の側に居残っていた。荒野の固い砂漠にフェリシアが蒼い衝撃波を叩きつけ、大きな穴を掘り下げていく。ハルアはグリフォンの亡骸を引きずり、その穴へと何とか放り込んだ。首はあらぬ方向に曲がっているが、その金色の毛並みは未だに生前の気高さを留めている。フェリシアは目を伏せて一頻り祈りを捧げると、今度は静かにグリフォンを埋めていく。
「もしアナタが空の下にいたなら、きっと捕まえる事は出来なかったわ。洞窟の中のアナタは、籠の中の小鳥だったのかも……ね? おやすみなさい、健気な小鳥さん」
 レストは土の下に埋まるグリフォンへと小声で語り掛ける。フェリシアも小さく嘆息した。
「……時代が違っていれば、グリフォンのような生き物と、共存できたのでしょうか……?」
「かもしれないわねえ。元々は、宝物を守るために生み出された生物だというし、ちゃんと躾けてあげる方法も昔にはあったのかも」
「その技術はもう廃れちゃって、今は只のお尋ね者……ってこと? ともだちになれないって、やっぱりちょっとだけ寂しいな……」
 ハルアは小さく肩を落とす。レストはこくりと頷いた。
「そうねえ。昔の人は一体どうしていたのかしら」
 レストは懐から植物の種を取り出すと、土に向かって一粒落とす。レストが魔法陣から取り出したじょうろで水をやると、急に植物は芽を吹き、大きな若木となって葉を茂らせた。
「これでお墓になるかしら?」
「おやすみ。いつか、あなたの仲間と友達になりたいな」
 ハルアは小さく手を合わせ、天に向かって祈りを捧げるのであった。



 グリフォン騒ぎは幕を閉じ、ラサの市場は平穏を取り戻した。グリフォンにお墨付きをもらった宝石は、一層高い値打ちでやり取りされたという。

 おわり

成否

成功

MVP

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃

状態異常

なし

あとがき

影絵企鵝です。この度はお疲れさまでした。
戦いの上では皆さん大活躍でしたが、宝石の保護については僕自身があんまり考えていませんでした。という事でそこまで気を回してくださったヒィロさんにMVPを差し上げたいと思います。

ご参加ありがとうございました。またよろしくお願いします。

PAGETOPPAGEBOTTOM