PandoraPartyProject

シナリオ詳細

海に浮かぶ幽霊船

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネオ・フロンティア海洋王国の沖。
 まだまだ海洋の海には大きな可能性があると、海に繰り出す者達は多い。
 先日、巨大なイソギンチャクの被害もあり、ようやく海へと繰り出すことができていた船乗り達。
 彼らは再び漁を行ったり、航路の確認をしたりと、日々航行を続け、新天地の開拓へと向かう為のチャンスを窺っていた。
 直に秋となり、冬となる。
 気温が下がれば海は厳しい環境となる為、できるなら夏のうちにまた遠洋彼方への航行にチャレンジを。
 そんなことを考えながらも、ようやく船の修理も完了し、船乗り達も準備も整えつつあったのだが……。
 海洋の近海に、また新たな脅威が現れてしまう。

 それに気づいたのは、とある船乗りがすごく寒そうにしていたことがきっかけだ。
 航行をしていた船は異変に気付き、すぐさま状況を確認する。
 辺りへと知らぬうちに濃い霧が立ち込め、何か声が聞こえてくる。
 オオォォオオオォオォ……。
 オオオオォォオオオオオォオォオオ……。
 その声が徐々に大きくなってくる中、こちらへと近づいてくるのは一隻のキャラック船だが、様子がおかしい。
 望遠鏡を使って船長がその船の乗組員を見てみれば、全員が白骨化してしまっている。
「ひいいいいっ!!」
「ゆ、幽霊船だああああ!!」
 幽霊船はある程度距離を詰めると、こちらに向かって砲弾を放ってきた。
 砲弾はこちらの船に直撃し、甲板を爆破されて穴が開いてしまう。
 また、白骨化した乗組員達も銃を構えてこちらへと発砲してきていたようだ。
「いかん、急いで退避を!」
 危機を察した船長の指示は素早い。
 相手はこちらに船首をゆっくりと向け、そこに取り付けられた砲身にエネルギーを集中していたのだ。
「取り舵だ、急げ!!」
 操舵種が大きく船を左へと舵を向けると、直後にそこをエネルギー砲が通過していく。
 なんとか、直撃を免れたその船は、慌てて港へと戻っていったのだった。


 夏の終わり、ローレットへと入ってきた事件。
 なんでも、海洋の海上に幽霊船が出没しているというのだ。
「さすがに不気味ですね……」
 水色の海種の少女、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は、港ではちょっとした怪談のネタになっているようだと語る。
 色々な怪物を海上で目にしている船乗り達だが、今回はかなり肝を冷やしたそうだ。

 その幽霊船の大きさは全長50mほど。
 マストが3本あるキャラック船で、やや丸みを帯びた船体が特徴的だ。
 この幽霊船の周囲には常に濃い霧が立ち込めている。
 相手の船に近づけば、乗組員達がサーベルや銃などで応戦してくるようだ。
 また、船自身も意思を持つらしく、砲弾を飛ばしてきたり、主砲を発射したりする他、呪いの歌声や命を奪う波動を発して近づく者の命を奪おうとしてくるらしい。
 応戦の為、基本的には船を借りて応戦することになるが、作戦によって海を泳ぐ、飛行、小船の利用などは可能だ。
「相手の船に乗り込み、直接幽霊船に攻撃も可能です」
 マストや舵といった部分を破壊すれば、相手の移動、攻撃方法が制限されることとなるので、作戦に組み込むとよいだろう。

 一通り説明を終えたアクアベル。
「そろそろ、夏も終わりですね」
 幽霊船を倒せば、霧は晴れるはずだ。
 涼しくなる前に、のんびりと海上の旅を楽しむのもいい。
 浮き輪を用意して海にぷかぷか浮いたり、釣りを楽しんだり、船上で日光浴をしたり、自由に過ごすとよいだろう。
「以上ですね。それでは、幽霊船討伐、よろしくお願いいたします」
 そう説明を締めくくったアクアベルは丁寧に頭を下げ、イレギュラーズ達にこの1件を託すのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 海上に不気味な幽霊船が現れたとの報告がありました。
 その討伐を願います。

●敵……魔物
◎幽霊船×1体
 全長50mほど。
 海に浮かび、漂う魔物と化した船です。
 甲板には骨となった乗組員を乗せており、
 成仏させないようにと自らの船にその魂を縛り付けています。

 船に乗って攻撃も可能です。
 部位破壊の可能ですが、一定ダメージが必要となります。

・主砲発射……(A)物遠単・溜1
・大砲連射……(A)物遠列・業炎
・呪いの歌声……(A)神遠域・万能・呪縛
・命奪う波動……(A)神遠域・識別・氷結・致命
・立ち込める霧……(P)防御、回避アップ
・船は悠然と行く……(P)精神・怒り無効

◎乗組員
 20人ほどおり、遺体は白骨化しています。
 幽霊船に魂を縛られ、船の意のままにサーベルや銃で攻撃を仕掛けてきます。
 幽霊船を倒せば、彼らも魂が解放されます。

・白兵戦……(A)物近単
・銃撃……(A)神遠単
・修理……(A)神近単・HP回復(幽霊船のみ回復)

●状況
 船に乗って接近し、討伐していただきますよう願います。
 本体に乗ることもできますし、自分達の乗る船の上から遠距離攻撃も可能です。

 無事討伐できれば、遊覧船感覚で海上の旅をお楽しみください。
 遠くまでは行くことができませんが、海の上で潮風を浴びながらのんびりとした一時を過ごすことができます。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 海に浮かぶ幽霊船完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月18日 22時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
ダークネス クイーン(p3p002874)
悪の秘密結社『XXX』総統
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
橘花 芽衣(p3p007119)
鈍き鋼拳

リプレイ


 ネオ・フロンティア海洋王国の海を見つめるイレギュラーズ達。
「蒼い海の護り手、参上! 海の平和はわたしが守っちゃいますよ!」
 小柄な金髪の海種少女『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は海の方向を指さし、ばっちりと決めポーズ。
「砂漠の民が海に来ました、遊びに来た訳じゃないので、そういう気分は後回しにしよう」
 ラサからやってきた猫科の獣種、『月の旅人』ロゼット=テイ(p3p004150)は海を見つめても、『磯の匂いって生臭いなー』などと落ち着いた態度である。
 そんな一行の目的は……。
「幽霊船か! 海で冒険してたらよく見るよな」
 鷹の獣人の見た目をした飛行種、『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)が言うように、この海のどこかに港町の人々を騒がす幽霊船が浮かんでいるはずだ。
「海を荒らすものを、海の男として放っておけないんだからなっ!!」
 水兵を思わせる姿の華奢な少年、『湖賊』湖宝 卵丸(p3p006737)はしばらく故郷の湖に帰っていたらしく、半年ぶりの海らしい。
 海賊魂を刺激されつつも、彼も海賊らしく幽霊船をやっつけようと気合を入れる。
「うへぇ、幽霊は苦手なんだよね?」
 ヒーローとして人助けとやってきた銀髪ポニーテールの少女『鈍き鋼拳』橘花 芽衣(p3p007119)は殴っても当たらないことが多いとげんなりする。
「残暑が厳しいのは確かだが、怪談話にはちと時期が過ぎているねえ」
 狼の獣種にも似た『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)は様々な世界の話に明るい。今回の話も怪談の一つとして見ているのだろう。
「死して尚、幽霊船に縛られ成仏できぬとは憐れな事だ」
 そこで、音楽と共に現れるのは、世界征服を目論む『悪の秘密結社『XXX』総統』ダークネス クイーン(p3p002874)だ。
「此処は一つ、悪の総統たる我が! その船を打ち壊し解放してくれよう!」
「俺に任せておけ! これでも海洋の船乗りとして名は知れてるらしいぞ?」
 海洋での知名度が無自覚にも高いカイトはすでに、やる気を見せる船員を多数スカウトしていて。
「野郎ども、いくぞー!」
「「おおーー!」」
 なお、彼らはルチアが用意した船に乗り込み、航行や雑用に当たってくれる。
「幽霊船だろうが海賊船だろうが、沈めてしまえばこちらのもの。さ、行くわよ」
 赤髪ポニーテールのスレンダー少女、『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)が仲間達に自分の船へと乗るよう促す。
「こういう時は本体を叩くに限るね!」
 前に依頼を受けた際、悪い印象を持たれたことを気に病んでいた芽衣。
 今回こそは汚名返上をと拳を握りしめ、彼女は仲間に続いて乗船していくのである。


 出港するルチアの船『Concordia』は二本マストの小型スクーナーだ。
 持ち主であるルチア自ら、操船技術を利用して操縦する。
 なお、そんな状況に卵丸はツンと赤くなって。
「卵丸、海の男だけど今日は偶々調子が悪くて、船動かせないだけなんだから」
 実際は、航海術とか色々忘れたらしいが、表には出さなかったようだ。
 この場はカイトが航海術でサポートし、ギフト「風読みの羽根」で風と波を読む。
 フォアトップの横帆と残りの縦帆が風を受け、『Concordia』は海洋の海を行く。
「できるなら、敵キャラックの風上を取りたいわね」
 速力は十分。後は幽霊船を発見すべくカイトがセンスフラグを使い、幽霊船の捜索にも役立てる。
 ところで、小型船はどうしても波に揺られてしまう。
 雑務は乗組員達が行ってくれるので、メンバー達にやることはほぼない。
 不定期に揺れる揺れに、ロゼットは些か落ち着かないようではあるが、普段からぼんやりしている彼女は全くその素振りを見せずにいた。

 程なく、徐々に霧が濃くなり、不気味な声が聞こえ始める。
 オオォォオオオォオォ……。
 少しずつ、近づいてくるキャラック船。
 甲板にいる多数の白骨化した乗組員が声を上げていた。
「幽霊船がくるぞおお!!」
 船員達が迎撃態勢を整える中、ダークネスは幽霊船の乗組員を見て。
「しかし、骸骨か。ホネ怪人として、一人くらいスカウトして帰れぬものかなあ」
 なお、ダークネス、割とマジ思考である。
 ただ、彼らはこちらの船員達の命を奪わんと砲撃を開始してくる。
 撃ち込まれてくる大砲は、次々に『Concordia』を狙い、外れても海上を爆破することで大波が船を揺らす。
(沈められそうなのは怖いけど、仲間や船員が良い感じにしてくれると良いなあ)
 そんな中でも、慌てる素振りを見せぬマイペースなロゼットである。
「このまま突っ込む!」
 操舵するルチアが仲間達へと呼び掛けた。
 幽霊船は側面部に放列がある為、狙うは船首ないし船尾だとルチアは判断して、風上から接近していく。
 接舷を待たずして、動き出すメンバーもいる。
 卵丸はジェットパックで飛び、仲間達よりも先行して幽霊船を目指す。
 カイトもまた、自らの翼で飛び上がっていた。
「しっかし、今日の潮風は気持ち悪いな……幽霊船のせいか?」
 周囲に発生した霧もあるのだろう。
 ともあれ、2人は後続の仲間の為、ロープを所持して飛んでいく。
 また、ココロもまた策があるらしく、海水へとダイブして幽霊船まで泳いで接近していたのだった。


 小型船『Concordia』が幽霊船主砲射程の内側へと潜り込んだことで、白骨乗組員が銃での応戦に切り替えてきていた。
 だが、彼らもそちらばかりに気を取られてはいられない。
 空からは露払いとなるカイトと卵丸が降り立ってきていたのだ。
 乗組員達は彼らに大砲や銃で狙撃し、さらに幽霊船自身も、命奪う波動を浴びせかけようとしていた。
 カイトは防御集中しつつも、羽根と炎を舞わせて。
 巻き起こる火炎旋風、炎翼槍が幽霊船もろとも白骨を焼き払う。
 自分に攻撃を集めることで、船や仲間への被害の軽減を。
「これが卵丸の航空海賊戦法だ!」
 同じことを考えていた卵丸も、チェーンソーを構えて。
「さぁ、バラバラにされたい奴は、かかってこい」
 素早さを活かして卵丸は乗組員の背後へと回り込み、縦一文字に切り裂いていく。
 海を泳いでいたココロも船尾側からロープを使って乗り込み、乗組員の背後から青い衝撃波を発して、吹き飛ばしてしまう。
 一度攻撃したココロは物陰に身を隠しつつも、幽霊船が発する命奪う波動と共に何かを感じ取って。
「魂を縛り付けている……?!」
 少し考え、ココロはこちらに飛んでくる銃弾を避けつつ、改めてこの船を見回す。
「もしかして、この船は心があるのかな……気になる……」
 自らの名前、ココロ。
 それがこの船にも宿っているのだろうかと、彼女は思案してしまっていた。

 さて、接舷を待つメンバー達は、ルチアに任せて成り行きを見守る。
 そんな中、ダークネスだけが先制攻撃をと全身のオーラを両手の間に極限まで集中させ、一気に開放していた。
「世界征服砲!」
 説明しよう!
 世界征服砲とは、悪の総統ダークネスクイーンの必滅奥義である!
 ダークネスが発した暗黒の極太ビームは幽霊船のメインマストを貫き、幽霊船へと奇襲の一撃を加えていた。
 だが、反撃として敵船からは砲弾が飛び、こちらの帆や船体に穴を開けていく。
 ルチアは構わず幽霊船の船首の僅か右目がけ、『Concordia』船首の衝角で突撃する。
「衝撃に注意して。移乗、白兵戦の用意!」
 一度言ってみたかったと内心で感じるルチアの言葉に、卵丸が目を輝かせていたのはさておき。
 ドオオォォォ…………ン!
 海に衝撃音がこだまし、荒波が2つの船を大きく揺らす。
 ルチアが直接乗り付けたことで、卵丸、カイトが幽霊船に括りつけたロープをメンバー達へと投げつける。
 接舷していて、かなり乗り移りやすくはなっていたが、幽霊船が距離を取ろうとしたこともあり、後続班はそのロープを伝って乗り込む。
「かかって来なさい! ヒョロヒョロ!」
 甲板に上がった芽衣はまず名乗りを上げ、白骨乗組員達の注意を集める。
 集まってくる敵を、続いて幽霊船に飛び乗ってきたダカタールが射程に捉えて。
「どれ、百物語は私一匹で満席だ。海の藻屑に消えると良い」
 ダカタールが吹きかけた息は魔力を伴っており、瞬く間に暴風となって集まる敵を吹き飛ばしていく。
 海に落ちると思ったところで、見えない壁に遮られる白骨乗組員。
 やはり、魂が外に出ないようにと幽霊船に縛り付けられているのだろう。
 足場を確保したダカタールは避難路を確認しつつ、さらに向かい来る敵を見据えて次なる攻撃準備を行っていた。
 続くロゼットも幽霊船へと乗り込むのだが、回復役のルチアが自船の操舵をしたままでいることもあり、ギリギリのところから熱砂の精を使役する。
 重圧を伴う砂嵐を浴びせかけることで、ロゼットは幽霊船と乗組員達の動きを止めようとしていたのだ。
 一方で、船尾側のココロは苦しい。
「味方の回復を……」
 だが、幽霊船の前後では仲間に届かない。
 この為、ココロは青い衝撃で敵を吹き飛ばしつつ、浄化の鎧をその身に纏って光輝の盾を構えるのだが、砲弾を連続して浴びせかけられる。
 オオオオォォオオオオオォオォオオ……。
 そして、呪いの歌声がメンバー達を襲ったことで、ココロは一気に体力を削られてしまう。
 敵の背後を突いたことが裏目に出て、連続して剣戟や銃弾を浴びた彼女はパンドラに頼ることとなる。
 そこで、一度幽霊船から距離を離された『Concordia』が船尾側へと回り込んできて。
 ルチアは操船しつつも、調和を賦活の力に変えて、危機的なココロを援護する。
「くくく、回復してやろう!」
 ダークネスもまたラスボスのような物言いで回復に当たり、治癒魔術を振りまいてココロの傷を塞いでいた。

 その間に、船首側のメンバー達が続々と乗組員達を倒していく。
 ロゼットは船が離れたことで困っていたようだったが、船首側のメンバーの攻撃は激しい。
 一気に乗組員を蹴散らしてくれたことでロゼットは船尾側へと移動し、回復手の多いメンバーと合流に当たっていた。
 乗組員は改めて芽衣が引きつけており、四肢に装着した「格闘戦装」を活かして戦いつつ、衝撃波を帯びた一撃を叩き込んで乗組員を殴り倒す。
「荒くれものは踊りを知らぬ、汽笛で鐘の音も聞こえないから当然か」
 時折、鐘の音を響かせて仲間の異常を取り去っていたダカタールは、前方で銃を構える白骨乗組員を見て。
「りょうし、は嫌いなのだ。銃なぞやめてこっちにおいで」
 ダカタールの周囲から聞こえるカエルの鳴き声。
 それを耳にし、殴り掛からねばならぬという強迫観念にかられた乗組員がゆらりゆらりと近づいてくるのを見て、ダカタールは次なる敵のつり出しへと移るのである。


 幽霊船の前後から、攻める形となるイレギュラーズ達。
 船はメンバー達の攻撃によって、少しずつ傷み始めてはいたが、その意志は強く、呪いの歌声と命奪う波動を発し続ける。
「奥義『クイーン・ストラッシュ』!」
 幽霊船の攻撃を止めるべく、ダークネスは暗黒×の字斬りを浴びせ、後方のマストをへし折っていく。
 その間に、ルチアは船尾から船の側面へと移動する。これは両端の仲間との合流も兼ねていた。
 白骨乗組員はもはや、大砲を撃つまで手が回っていない。
 船を接舷させたルチアが回復態勢を整えると、しっかりと彼女の支援範囲を確保したロゼットが改めて砂嵐を巻き起こし、残る乗組員の動きを止める。
 ここまでくれば、警戒すべきは船からの攻撃のみ。
 ココロは盾で身構えながらも、魔力を持つ金属の板「ユゴニオのカルト」を投げつけ、さらに聖なる光を包み込むことで、仲間を幽霊船の及ぼす異常から解き放つ。
「ガンガン削っていくぜ!」
 緋色の大きな翼をはためかせ、残る乗組員の注意を集めようとしていたカイト。
 序盤から狙っていたマスト目がけ、燃え上がる羽根を投げつけて切りかかっていく。
 斬撃と共に炎を浴びせたマストが揺らぎだしたところで、卵丸も音速でチェーンソーを横一文字に薙ぎ払う。
「疾風海波鎖鋸斬!!」
 根元をほとんど切り裂かれたマストはめきめきと大きな音を立て、真横に倒れていったのだった。

 芽衣はというと、改めて前方にある主砲と側面の大砲を殴る蹴るして破壊していく。
 火薬の爆発もあり、芽衣は破壊の度に飛び退いていた。
 かなり幽霊船もボロボロになっており、乗組員はほぼ倒れて完全に航行不能となっていた。
「まあ、物にも心は宿るというが……、あれは百年だったかな?」
 ダカタールは念入りに蛙の強迫を使い、幽霊船の回復を阻害する。
 大海を知らぬ蛙は珍しくないが、だからと言って蛙が船に乗れないということではない。
「良いクルーズを経験させてやってくれ。ハハッ、おっと沈むまでの間になるな」
 そんな中、なおもカイトが炎を纏う羽根を飛ばし、マストを撃ち抜く。
 すると、力を失った幽霊船は炎に包まれ、ゆっくりと海に沈み始めたのだった。


 少しずつ沈んでいく幽霊船に対し、なおも炎を発するカイトが翼を羽ばたかせて。
「お焚き上げじゃねーけど、船の供養は大事だからな」
 きっと、この船も色々と冒険してきたのだろう。
 カイトは火災旋風を巻き起こし、完全に船体を炎に包もうとする。
「そういえば、船には宝物を積んでたんじゃ……」
 とはいえ、船内を捜索する暇などなく、芽衣は後ろ髪を引かれながらも『Concordia』へと戻っていく。
 メンバー達が船に戻ったタイミングにはかなりの部分に火の手が上がり、燃えながら海の藻屑となって沈んでいった。
「せめてもの手向けである。迷い無く海へ還るが良い」
 その様子を見つめていたダークネスは、沈みゆく船に花束を捧げて。
「ふっ、仲間になりたそうにこちらを見つめる骨は結局居らなんだ。そう上手くはいかぬよな」
 ダークネスは多少残念がりながらも、形を崩す幽霊船を見下ろす。
 魂を繋ぎ止めていた幽霊船が滅したことで、白骨となった乗組員達全員が解放された。
 これからは、自分達が生きた海の底で眠りにつくことだろう。

 かなり砲撃を受けていたルチアの船だが、航行には支障がない程度の損傷ではある。
 せめてもの礼だと、船員として乗船してくれていた海の男達が補修に当たってくれる。
 のんびりしていていいということだったので、ルチアは彼らの言葉に甘え、ゆっくりと遊覧航海をこのまま楽しむことにしていた。
 ぷかぷかと波と風に揺られる『Concordia』。
 船のすぐ上を、カイトが翼を羽ばたかせて潮風を感じながら飛ぶ。
「晴れた空は飛びやすくていいな!」
 そのカイトに気づいたからだろうか。海からイルカ達が顔を出す。
 彼らも幽霊船がいなくなったことに喜び、楽しそうに海を泳ぎ回る。
 イルカ達にぴょんぴょんと水面を跳ね、ついていく薄紫色のカンガルー「ぱらぞん」。
 その上には、大事な相棒であるココロが笑顔で跨っていた。
 ぱらぞんと遊ぶきっかけを得られて、ココロはとても嬉しそうだ。
 ルチアは修復に当たる船員達に頼み、少しだけ舵輪を動かしてイルカ達と伴走を楽しむ。
 卵丸も波に揺られ、海上の旅を満喫する。
「海はいいな……故郷の湖とは風の香りも違う」
 湖とは違う潮の香りに、前方に広がる水平線。
 目をキラキラさせていた卵丸だったが、海にダイブして魚を捕まえていた芽衣と目が合い、ツンとそっぽを向いてしまっていた。

 少しした後、芽衣が捕った魚をツマミとして、船上のメンバー達はちょっとしたパーティーを始める。
 海から上がったココロが一押ししていた海洋の新商品、サマー・ビールをお酌していた。
「いただくよ」
 虫干しは大事だが、海風は紙を傷めるという理由もあって、直射日光を浴びぬ場所で読書に興じるダカタール。
 希望のワインがなかったのは残念だったが、新商品に興味を惹かれてダカタールは試飲する。
 爽やかな口当たりではあり、夏らしさを感じる味だ。
 船乗り達にもなかなかに好評のそのビール。カイトは頂いたライムジュースを口にしつつ、馬鹿騒ぎする。
 ロゼットはというと相も変わらずマイペース、と思いきや。
 初めての船上での戦闘とあって、相当に酔っていた彼女はちょっとばかり近場の無人島に運んでもらってしばしの間、エレエレ、まーらいおん。
 ただ、港町に戻るには距離があった為、ロゼットは船に戻されて横になり、ぼんやりと過ごしていた。
(もうちょっとしたら、秋だなあ)
 ちょっとだけ身を起こすロゼット。
 周囲を見回しながらも、彼女は空の雲の形や海上で感じる涼しさに季節の移り変わりを感じていたのだった。

成否

成功

MVP

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPは航行のサポート、露払い、船の攻撃と活躍を見せたあなたへ。
もう夏も終わりですね……。早いものです。
ご参加、ありがとうございました!

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