PandoraPartyProject

シナリオ詳細

火蜥蜴神殿まで魔剣運送の依頼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●火蜥蜴(ひとかげ)の精と魔剣の供え物
『傭兵』国内のとあるオアシスの町に火蜥蜴タウンという場所がある。
 その名の通り、「火蜥蜴の精」という精霊を祀る洞窟が町の近くにあるのだ。
 この洞窟は、地元では「火蜥蜴神殿」と呼ばれている霊験あらたかな名所でもある。

 実はこの神殿と町の間で昔からとある風習がある。
 どういう訳かこの火蜥蜴の精が刀剣のコレクターでもあり、毎年、新作の魔剣を神殿へ納める風習があるのだ。
 町から新作の魔剣という対価を受け取る代わりに精霊は町に加護を授ける。

 刀鍛冶屋を代々続けるフレイザー家の名匠が毎年、この魔剣を作るのだ。
 最近では、ヒースという人物が毎年、魔剣を打っているが……。

***

 ヒースじいさんは今年もお供え用の魔剣を必死でかん、かんと打っていた。
 今年の魔剣は、深紅色の刃と鞘が美しい火炎の魔剣「ミリオンヘルフレア」。
 抜刀すると、煉獄で燃えるかのような炎を流動的にまとう剣が麗しい。
 だが、問題もあった……。

「お、じいちゃん? それ、今年の魔剣か?」
「ああ、そうじゃ、孫よ。今年の新作は火炎の魔剣が良いとのお達しを受けたのでな」
「ってことは、今年もファイトさん達に運送を頼むの?」
「うむ……。それなんじゃがな……。ファイトの奴ら、熟練の冒険家達でありながら、魔物討伐中に集団ぎっくり腰をやらかしてのう。今年のお供え物の運送の時期までに復帰が間に合わんらしい……」
「あ、だったら、俺が運ぼうか?」
「これ! 子どもが大層な事を言うな! あの火蜥蜴神殿は魔窟じゃぞ! はぁ……どうしよう……今年は運送の手筈がいかんのう……どこかのギルドにでも頼もうかのう……?」

***

 火蜥蜴の精は、大変そわそわしていた。
 魔剣の運送を今か、今か、と心待ちにしているのだ。
「ふおおお! はよ、魔剣、来んかいな! 去年は夏に涼しい氷の魔剣、一昨年は疲れが取れる光の魔剣だったねん? 今年は、火炎の魔剣が壊れてしもうたから、新しい奴をオーダーしたんだが……。なかなか来ないねん……!」
 刀鍛冶達の事情を一切知らず、火蜥蜴の精は待ちくたびれていた。
 もっとも、彼は温厚な性格なので、町を襲ったりはしないようだ。

●レッドな魔剣を鮮やかに運送しないかしら?
 火蜥蜴タウンという場所は、『傭兵』国内でも観光の名所の一つである。
 あなた達は刀剣美術展や火蜥蜴博物館等を見学する為にここへ来ていたのかもしれない。
 火蜥蜴神殿にいる精霊に刀剣を供える祭りの準備が今年も進められているようだ。

 あなた達は、偶然、『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)と出会った。
 彼女は刀鍛冶屋らしき老年の男と一緒に何かを話し込んでいた。

「あら? あなた達、ゴールドなイレギュラーズじゃない? もしかして、サンシャイン・オレンジな火蜥蜴祭り目当てで観光にでも来たのかしら?」
 まあ、そんな所だね、とあなた達は頷く。だが、プルーの方こそ何かあるのだろうか?
「ええ。実はそのお祭りの事でダーク・ブルーな問題が起きたのよね……。聞いてくれるかしら?」
 まあ、いつもそんな形で依頼に巻き込まれるが……。困っているなら話は聞こう。
 プルーは鍛冶屋のヒースじいさんを紹介した上、今年の魔剣の運送者がいない事を教えてくれた。つまり、お祭りが開催できないどころか、今年のご加護(お守り)まで貰えないらしい。町人達にとってこれは由々しき事態であるそうだ。

「……と、いう訳なのよね。もし、よかったら、あなた達で今年のバーニング・レッドな魔剣を運送する役目を引き受けて貰えないかしら?」
 プルーのみならずヒースじいさんからも頼まれる。
「うむ。見込みがありそうな者達じゃのう? できれば運送役をお願いしたいのじゃが、無理には頼めん。なにせ、精様がいる火蜥蜴神殿は火山の中にあり魔物もわんさかの魔窟じゃからのう……」

 いやいや、魔窟に潜ってまで魔剣を届けに運送するなんて、まさに冒険浪漫ではないか?
 ハクスラ好きな方達には、ぜひともお願いしたい依頼である。

GMコメント

●目標
 火蜥蜴神殿の主である火蜥蜴の精に「今年の魔剣」を届ける。
 魔剣の対価として受け取る「お守り」を持ち帰る。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 今回、潜る事になるダンジョンの火蜥蜴神殿は下へ降りて行くタイプのダンジョンです。
 洞窟の出入り口から入りますと、やや長めのスパイラル状の下り坂になっています。
 道幅は8PCが通行できる程度ですがそんなに広くはありません。
 基本的に洞窟内の場所ですが、魔法の火炎ランプがあるので暗くはありません。
 目指すは、最下層です。最下層に着くと火蜥蜴神殿の主である火蜥蜴の精が待っています。

●トラップ
・BS火炎とマイナス補正
 火蜥蜴神殿のダンジョンは火山の中にあります。要は火山の中の洞窟を進む訳ですので、すごく暑くて火炎が所々にあります。火炎に触れるとBS火炎になりますので注意しましょう。また、ダンジョン内では暑さと地形的な理由から命中・回避・反応・機動力に若干のマイナス補正が掛かります。

・BS業炎のマグマ
 ダンジョン内にはマグマがあります。マグマに落ちるとダメージ+BS業炎を受けてしまいますので気を付けましょう。

・落石のダメージ
 スパイラル状の下り坂を進んでいると上から落石がごろごろと転がって来る時もあります。落石は近くの窪みへ逃げて回避しましょう。あるいは叩き割りましょう。落石に当たるとダメージを受けてしまいます。

●敵
 ダンジョン内では複数の種類の敵が出て来ます。火蜥蜴の精の手下っぽくも見えますが、実は違います。魔物達が勝手にここのダンジョンに住み着いているだけです。
 以下の魔物達にボスもザコもありません。また、彼らは共生関係にあります。
 なお、魔物の数は定義しませんが、沢山います。
 今回は魔物討伐ではありませんので、特別に倒さないといけない敵はいません。

 火炎蠍
 火蜥蜴神殿に住む火炎の蠍(スコーピオン)です。
 蠍にしては大きめのサイズで大男が両手で抱えて持てるぐらいです。
 色は毒々しい赤です。好戦的な魔物ですので注意しましょう。
 戦闘方法は以下。
・火炎鋏の一撃(A):燃える両手の鋏で斬ってきます。物至単ダメージ。BS火炎。
・毒針の一撃(A):尾の毒針で刺します。物至単ダメージ。BS毒。
・火炎と毒無効(P):BS火炎系とBS毒系が効きません。
・マグマ歩行(P):マグマの上を歩けてダメージを受けません。
・火蜥蜴の加護(P):火蜥蜴神殿内でマイナス補正を受けません。

 火炎花
 火蜥蜴神殿で生えている野草の魔物です。
 赤く燃え上がるヒマワリのような姿をしています。顔があります。口が大きいです。
 位置固定ですので、近づくと不意に攻撃してくるタイプの魔物です。
 戦闘方法は以下。
・火炎玉(A):大口から火炎玉を吐きます。物近単ダメージ。BS火炎。
・麻痺花粉(A):花粉攻撃を飛ばします。物近範ダメージ。BS麻痺。識別。
・火炎と麻痺無効(P):BS火炎系とBS麻痺系が効きません。
・火蜥蜴の加護(P):火蜥蜴神殿内でマイナス補正を受けません。

 火の粉の精
 火蜥蜴神殿に住む小さな火の精霊です。
 大きい蝶々ぐらいの大きさで赤いピクシーみたいな外見をしています。
 いたずら好きですので注意しましょう。
 戦闘方法は以下。
・火の粉の舞(A):熱い火の粉を踊ってばらまきます。神自域ダメージ。BS火炎。識別。
・謎の粉ダンス(A):謎の粉をばらまく踊りをします。神自域ダメージ。BS混乱。識別。
・念力(A):周辺の物を浮かして奪う等します。神自域。ダメージなし。
・飛行(P):常時飛んでいます。
・火炎と混乱無効(P):BS火炎系とBS混乱系が効きません。
・火蜥蜴の加護(P):火蜥蜴神殿内でマイナス補正を受けません。

 備考:火蜥蜴の精は敵のNPCではありません。攻撃しないようにしましょう。

●魔剣の運送役について
 8PCの参加を予定していますが、どなたか1PCが魔剣運送の専門係になって頂くようにお願いします。
 魔剣運送役は両手で魔剣を運びますので戦闘行為ができません。
(両手が塞がっているのと、運送に注意力を必要以上に使用する為です)
 つまり、供え物の魔剣を運ぶ1PCを守りながらダンジョンを進む形になります。
 なお、供え物の魔剣を壊す、失くす、奪われるといった事態になると「失敗」ですのでご注意下さい。

●お守りの受け取りと帰還について
 火蜥蜴神殿の精に「今年の魔剣」を渡すと対価としてある「お守り」をくれます。
「お守り」は大きな麻袋いっぱい(無料で貸し出し)に詰めて持ち帰ります。
 なお帰り道は火蜥蜴の精の魔法によってダンジョン出入り口まで送って貰えます。
 行き道だけが自力で進む道となります。

●GMより
 今回は、僕の大好きなシナリオタイプの一つであるハクスラものです。
 ダンジョンを潜り、敵を蹴散らし、貴重な物を運送してお届けするなんて、実にRPGっぽいですね。
 と、いう訳で、通常の魔物討伐よりもスリル満点でお送りします!

  • 火蜥蜴神殿まで魔剣運送の依頼完了
  • GM名ヤガ・ガラス
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月11日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
辻岡 真(p3p004665)
旅慣れた
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
天狼 カナタ(p3p007224)
夜砂の彼方に

リプレイ

●突入
 火炎が噴き出て、マグマが煮え滾る火山洞窟へ突入する。
 運送依頼の魔剣をギフトの鞄に抱えた『旅人』辻岡 真(p3p004665)は、出入り口から見下ろせる絶景に息を飲んだ。今日は、この険しい洞窟をスパイラル状の道に沿って下って行くのである。
(防暑対策の服も着たはずなのに暑いなぁ。これだけ火が噴き荒れているんじゃねぇ? 火蜥蜴祭りメインに観光予定を立ててこの町へ来たのに。お祭りが開催されないなんて事だけは絶対に避けなきゃ。今日は運び屋の意地を見せるさ!)

 早速、火の粉の精が集団で現れた。
 精は熱い火の粉を撒く踊りで近寄って来る。
「……こら! あっち行け、しっし!」
 浮遊する妖精型が大鎌を振りかざして追っ払うのは『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)だ。ちなみに本体は大鎌の方。本日は魔剣の運送仕事なので喜んで先陣を切っているのである。(魔剣の運搬なら……鍛冶屋の俺に任せろ! 最高の状態で届けてあげようじゃないか!)

(むっ! 岩陰に何やら楽しそうな雰囲気……。そこでござるか!)
 ずばっと、隠れていた火の粉の精を小太刀の一撃で撃退したのは『必殺仕事忍』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)だ。もう少しで、念力で真の鞄を奪われるかもしれなかった。
(小用でこの町に来たつもりが妙な事になってしまったでござる。火蜥蜴の精とやらにも興味があるでござるし、運送ついでに神殿の観光も悪くないでござるな)

 さて敵は増援を呼び、増える一方だ。
『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)はこのまま戦い続ける事が得策か否か、ふと考える。
(神殿祠まで楽しい冒険になりそうなのですが……。火蜥蜴の精さんとお逢いするためにも体力をセーブしながら進むことが大事だと思うのです。火の粉の精達が手出しして来ないようにお願いできないものでしょうか?)
 クーアは休戦のポーズを手で取って、精霊への疎通を試みる。
 前衛にいた精達が集まり、何やら、ごにょごにょと……。
「あのですね、皆さん? 火の粉の精は、美味い物をくれたらこの場は退いてやる……と言っているようなのですが?」

 後衛では、涼しい服装だが毛皮モフモフで戦っていた『彼方の銀狼』天狼 カナタ(p3p007224)が、暑さで垂れた耳をぴくりとさせた。
「美味い物だと? それなら俺が冷凍みかん缶を多めに用意してきたぞ。おい、真? 鞄から出して貰ってもいいか?」
「うん……。はい、これ」
 カナタは真から缶を受け取り、それを精に渡した。
「ほら、これやる! 頼むから邪魔すんなよ?」
 それを見ていた他の精達もやって来た。
「カナタさん、ごめんなのです! この子達も欲しいそうなのです」
「がるる……。まあ、仕方ねえ、か……」
 カナタの缶は全て持って行かれたが、お陰様で火の粉の精とは休戦協定が結べた。
 人狼はため息をつく。
「精とは戦わなくていいなら戦わないぞ、逃げるが勝ちってもんだ……。だが、俺のおやつが犠牲になってしまった……。くぅ、べ、別に食いたくなんてないんだからな!」
 ツンデレになったカナタを真が励ます。
「まあ、元気だしなよ? 他のおやつもあるからさ」

 休戦協定の交渉中、後衛にいる他のメンバーは自然災害の方を対策してくれていた。
「む? マグマが溢れ出るな……。そらっ」
 練成された斧で大きな岩を叩き壊し、噴き出るマグマの流れを封じたのは『イルミナティ』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)だ。観察力と分析力に長けた彼のお陰で仲間達は余計なダメージを免れた。しかも薬学にも精通しているラルフは熱中症予防薬も皆に分けてくれていたので暑さ対策もばっちりである。
(魔剣のコレクターとは物好きな精霊だ。後で語り合いたいものだな)

 仲間達が精と交渉している最中に上から岩がコロコロと転がって来た!
 押し潰される程の大きさではないが、このままでは仲間達が怪我をしてしまう……。
「ふむ。そこか……」
 アンティークなライフルのスコープを覗き込み、トリガーを引き、弾丸が放たれる。
 強力な狙撃によって大きな岩は砕け散り、マグマへ消えて行った。
 狙撃者は『静謐なる射手』ラダ・ジグリ(p3p000271)だ。
(商売観光半々で来たはずがこうなるとは。だが魔剣奉納とは良い土産話になりそうだ)
 町でレンタルしたクールな服装をしているラダは、塩飴を舐めながら最後尾を守る。洞窟内に設置された魔法の火炎ランプが照らす光景はどこか壮観だと、狙撃後にふと思った。

「ラルフさん、ラダさん、お疲れ様なのです」
 マグマや落石は一瞬の出来事であったが、対策には瞬間的に発揮する力も使うものだ。
 もう一人の後衛である『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)は魔神の如く詩を詠う。
 ラクリマは少し腰が痛くなったが、周辺にいる仲間達には元気な魔力が湧いてきた。
「いてて……。反動が来たのです。でも、ファイトさん達、ギックリ腰とは大変ですね……。あれは本当につらいのです。動くと痛いし笑っても痛い地獄でした。さて、先も長いですし、気を付けて向かいましょうか」

●蠍と落石
 火炎柱を抜け、溢れるマグマや火炎花を避けて、下って行く。
 下の階に着いたら火炎蠍の大群が待ち受けていた。

「速度を制する者は戦場を制するのです!」
 前衛の中でも反応速度が群を抜いているクーアから動き出す。
 凄まじい速度で流れ星やら猫爆弾やらになりながら攻撃しては離脱を繰り返す。
 蠍達を圧倒し反撃の隙すらなかなか与えない。

 それでも数は敵の方が圧倒的に上だ。
 咲耶は一歩前に出て小太刀を構えて名乗り上げる。
「やぁやぁ! 我こそは紅牙忍の紅牙斬九郎! いざ尋常に、勝負でござる!」
 挑発された蠍の一群が咲耶の首を狙いに来た。
 咲耶は足場の悪さに気を付けつつ、至近の暗殺術で次々と敵を屠る。
 たまに鋏や針の一撃は受けるものの状態異常を弾く。

「……ガンガン行こうか?」
 前衛というなら、サイズだって負けてはいない。
 氷の結界を張り、大鎌に強力な魔力を纏わせ、死神の斬撃で蠍達を葬っていく。
 毒も火炎も効かないが、斬撃や刺撃を浴びるので鎌の部分が欠ける。
 後で、本人で修理するから大丈夫だ。

 前衛を抜けた蠍達が真へ突進して来る。
 火炎の燃える鋏で斬られそうになったり、毒針の一撃で刺されそうになったり……。
「おっと! そら、それっ!! ひゅー、危ない、危ない……」
 真は大事な魔剣が入っている鞄を抱えながらも上手く逃げていた。
 運搬役故に直接戦闘はできないが、体力や行動力の自動回復は切らしていない。
 真が火炎柱やらマグマやらに気を取られていた時、複数の蠍が押し寄せて……!
「真さん! 危ないのです!」
 真を庇う為に飛び出したのはラクリマだった。
 針の一撃を彼が庇って受け、毒がぐるぐると回る。
「ラクリマさん、ごめん! 大丈夫かい?」
「ええ、なんの……。それより、魔剣は?」
「もちろん無事さ」

 蠍に襲われている最中だが、自然災害は待ってくれない。
 ごろごろ、と大きな岩が転がって来るが……。
 ラルフは蠍をすぐに倒した直後、強大な魔導砲撃を構えてメギドイレイザーを放射する。
 大岩は空中で木端微塵に粉砕されて、ぱらぱらと崩れ落ちた。
 危ない所だったので真達から感謝された。
「私が守るのだから安心すると良い」
 ラルフは微笑を浮かべ言い放つ。
 別の落石もごろごろと次々落ちて来て、ラルフの後ろからも……。
「ワオーン! とりゃあ!」
 銀の弾丸のように突っ込んで来たカナタは、高速度の一撃で大岩を粉砕する。
「カナタ君、すまない」
「いいさ」

 ラダは蠍と落石を半々の割合で狙撃していた。
 どちらも数が多いので、鋼の驟雨はまるで嵐のように降り注いでいた。
 落石の様子がおかしい。かなりの数が転がって来ている。
 ラダは双眼鏡を覗き、ずっと上の方を見上げると……。
「む!? まずい! 皆、窪みに逃げて! かなり大きな落石が!!」
 ラダが珍しくも大声で叫んで周知する。
 今までにない規模の落石だ。これに押し潰されたらひとたまりもないだろう。
 戦闘は中止になり、敵味方関係なく乱れ逃げた。

●休憩
 落石はかなり大きかったが、仲間全員が大きな窪みに逃げ込んだ事で被害は避けられた。
 暑い中、随分と頑張ったものだ。
 ここで休憩でもしよう、という流れになった。

「はい、はーい! 皆、1本ずつ取ってってね? 足りない人はまだあるからさ?」
 真は鞄を開いて軟水のペットボトルを分ける。
 すると、仲間ではない者達も列を作って並んでいた。
「あ、アンタら!?」
 カナタが驚くのも無理はない。休憩場に火の粉の精がやって来たのだ。
 クーアが再び交渉をするが……。
「その水をくれたら今後も戦わないでいてやろう……という話らしいのです」
 水は99本もあるのだ。多数の消費となるが、これで戦闘が回避できるなら……。
「んじゃ、1人1本だよ?」
 クーアと真が上手く整列させ、配布すると、精達は嬉しそうに去って行った。
 カナタは、ある事を思い出して、はっとする!
「おい、真? おやつは!?」
 真は糖度の高い林檎を取り出してカナタに投げた。クーアにもあげた。
「はい、それね。よく頑張りましたってことで」
「アオーン! 俺は子犬かー!? ま、ありがとよ」
「にしし、猫もおやつタイムなのです! 林檎ありがとうなのです!」
 カナタとクーアは嬉しそうに甘い林檎を齧り出す。
 真も大好物の林檎を美味しそうに丸齧りする。

 ラダは真に頼み、預けていたかち割り氷を出して貰った。
 そして氷を口に含み、その上でペットボトルの水を飲む。
 ちょっとした氷水の出来上がりである。
「お? いいな、ラダさん? ……俺も貰っていいか?」
 サイズが欲しそうだったのでラダは妖精型に氷を分けてあげた。
「はい。冷たくて美味しいよ?」
「まあ、味覚は鎌の方にあるがな……」

 ラルフもある物を真に取り出して貰い、氷を噛んだ後にぐびりと飲む。
 不思議に思った咲耶が質問する。
「それは何でござるか?」
「これはファイターズVだ。元気が出る栄養剤でな……」
 2人でぐびりとファイトを出した。

 ぐびりと飲んでファイトが溢れたラクリマは皆の円の中心に入り……。
「いよいよ佳境なのです。ここで癒しの曲を歌わせて欲しいのです」
 先程の激しい戦闘で傷を負った者達もいた事だろう。
 ラクリマの透き通るような声で歌う幻雪の歌曲によって癒された。
 これで後半戦も戦える。

●花道
 後半戦では魔剣を持つ人を交代した。
 妖精型サイズが魔剣を両手で持ち背中に大鎌サイズを背負う。
 その代わりに真が前衛の位置に入った。

 さて休憩を終え、一同はさらに階層を下る。
 そろそろ最下層に着く頃だが……。
 進む道の至る所で火炎花が雑草のように咲き乱れていたのだ!

「こりゃあすごいね? 強行突破はまずいかな?」
 焦る真の問い掛けにサイズが冷静に答える。
「強行突破をして俺が倒されたり……魔剣を紛失してしまったりしたら、洒落にならないな……」
 咲耶に良い案があるようだ。
「二手に分けるでござる。挑発が得意な者達、内1人が拙者でござるが、ここに残って火炎花を引き付けます候。その隙にサイズ殿と護衛の者達で突破するでござるよ!」
「挑発の間、敵の頭数を減らす者も必要だな?」
 ラルフも助言した。
 陽動班と本部隊に分かれた。

***

 開戦同時に咲耶が挑発する。
「火炎花の群れなどなんのその! 心頭滅却すれば火炎玉もまた涼し! 紅牙の忍術とくと味わうが良い!」
 飛んで来る攻撃にはカウンター主体で対応だ。
 ラルフも続いて猛攻を仕掛ける。
「通りたい、通さない。どっちのエゴが正義だろうか? ふ、勝負だ」
 ラルフの練成された血液状の鎖が火炎花を狙って蛇のように襲い出す。
 この一撃を受けたら、火炎花であっても、頭の血が沸騰する事だろう。

 最前衛の咲耶やラルフの挑発を受け火炎花が攻撃を仕掛けてくる。
 火炎玉や麻痺花粉が勢いよく乱れ飛ぶ!
 さらに分が悪い事に火炎蠍の援軍までやって来た!
 強い総攻撃を受け咲耶とラルフのパンドラが弾け飛ぶがここは踏ん張り所だ。

 2人が挑発を仕掛けたと同時期に待機していたクーアが走り出す。
 猛速度の華麗なヒット&アウェーを繰り返して、火炎花を刈り取り、燃やしていく。
 時に乱れ飛ぶ攻撃に被弾しながらも、落石にだって対応する。
 麻痺花粉で体が動かなくなった所で強い集中攻撃を受けパンドラが弾けた。
「本部隊が行ったのなら退くのです」

「ワオーン! 吹き荒れろ、俺の雄叫び!」
 カナタは魔狼の雄叫びを上げて暴風を巻き起こす。
 仲間を逃す為、あえて離れた位置からの攻撃だが、花や蠍を巻き込むには丁度良い位置だ。
 吹き荒れる魔風の刃を受け、火炎の魔物達は次々と死骸へと変わる。
 死角の角度からの火炎玉を被弾してもカナタは退く寸前まで叫び続けた。

***

 陽動が開始された頃……。
「……一気に駆け抜けようか?」
 陣形の中心にいるサイズが動き出す。
 前衛は真で、後衛はラクリマとラダだ。
 3人で三角形のような位置で守っていると言えよう。
 走り抜ける4人に向かって火炎玉やら麻痺花粉やらが飛んで来る。
「ふふ、火炎花って顔が結構キモいな?」
「うん、キモいね?」
 ラダは火炎玉への応酬攻撃をしつつも、そんな事を笑って漏らす。
 反撃しながら真も笑って頷く。
 ラクリマは薔薇の攻撃で対戦している時、とんでもない物が目に入る。
「あ、あれは? 援軍なのです!」
 蠍達がぞろぞろと攻めて来た。陽動は効いているはずだが奴らは数がいる。
「複数の敵に囲まれたのです……。俺がここに残って呪い歌で蹴散らしましょう」

 悪いがラクリマを残して、さらに行軍する。
 良い事にゴールは見えて来た。大きな赤い襟巻蜥蜴が手を振っていた。
 火蜥蜴の精では!? あと、ちょっとだ。
 そう、あとちょっとの所で……。
 火炎玉が、麻痺花粉が、火炎鋏が、毒針が、サイズへ向かって襲い掛かる!
「負けるな真! ここが正念場さ!」
 真が己に喝を入れ、サイズを庇い、攻撃を一斉に次々と受け、パンドラが飛び散った。
「サイズ、そのまま行ってくれ!」
 そう叫ぶラダも至近距離では余裕がなく防御体勢で凌ぐ。
「皆、すまん!」
 魔氷を張ったサイズは、背中の大鎌で敵の弾を浴びつつも、最後の鉄火場を走り抜けた。

 火蜥蜴の精は魔剣をしかと受け取った。
「おおきに。よお来たな。ま、中に入れや?」
 洞窟内の戦闘が激しいが……。
「静まれや、ドアホ魔物共!」
 火蜥蜴の精が魔物達を叩き潰して鎮静化した。

●奉納
 真は火蜥蜴の精から対価である「お守り」を受け取る。
「この石ころが入った袋って?」
「ん? お守りやろ? わいの火山の石はお守りになるねん」
 そういうオチか。
「沢山あるね? 1個貰ってもいいかな?」
「すまんが、足りないぐらいでな……。せや、祭りでお守り配布係やらんかいな?」
 真はこの年、お祭りでお守りを配る大役を務めたのであった。

 クーアは火蜥蜴の精の襟巻をぺちぺちと叩いていた。
「な、なんやねん、さっきから?」
 理由を説明する。
「火蜥蜴の精さんと邂逅しているのです。火への造詣をより深めるのです」
「なら、あんさんの耳もモフるで?」
 2人は邂逅を遂げた。
 精はカナタもモフモフする。
「なぁ、モフろうとするなよ? 暑いのは苦手なんだ……氷の魔剣で涼ませてくれよ?」
「すまんのう。モフはええな。ほな、氷の魔剣な?」

 モフられているカナタの代わりにラルフが受け取る。
「ほう、これはこれは……。よくもまあこんな面白い物を集めるな。折角なので君の自慢のコレクションも見せて貰えるだろうか?」
 精が奥の部屋を指して答える。
「あの部屋がコレクション部屋や。来るか?」
 部屋には四大元素に光や闇やらの豪華な魔剣が綺麗に飾られていた。
 サイズはある事に気付き氷の魔剣を借りる。
「……少し壊れてるな? ……あのさ、俺、鍛冶屋なんだ。よければ、直してやろうか……?」
「ホンマか? 頼むで! せや、他にも壊れとる魔剣あってな……」
 この後、サイズは魔剣の修理に取り掛かる。
 愛用の仕事道具を駆使して、高火力の即席作業場で活き活きと魔剣を叩き直した。

 ラクリマには一つ、心残りな事があった。
「魔剣って男のロマンですよね。俺も物理攻撃型で剣とか得意だったらなぁ……」
 精が今回運送された魔剣をラクリマに差し出した。
「これ好きかい? 一振りならしてもええで」
「え? 本当ですか?」
 ラクリマはお言葉に甘えて、紅の鞘から魔炎を宿す刀をそっと引き抜く。
 深紅色の一撃は、煉獄の火炎で燃やし焦がすかのようにどかんと暴れた。
「うわわ、ですー!?」
「すげえやろ?」

 最後にラダと咲耶が丁寧に礼を述べた後、精の転送魔法で外まで送り届けられた。
「ああ、外を涼しいと思える時がくるとは!」
 ラダが背筋を伸ばして深呼吸する。
 外で待っていた町人が集まって来た。
 ラダがにこりとしてお守りの袋を掲げて見せると、歓声が上がった。
 咲耶が言葉を繋ぐ。
「任務は遂げたでござる。今年もお祭りを開けるでござるよ!」
 今年の火蜥蜴祭りはイレギュラーズの参加もあり、例年以上の盛り上がりで祝われたのであった。

 了

成否

成功

MVP

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド

状態異常

なし

あとがき

この度はシナリオへのご参加ありがとうございました。

暑い中、神殿でのハクスラお疲れ様でした。
ダンジョンっていいですよね。
僕も欲しいです。

さあ、みんなで・遺跡で・ハック・アンド・スラッシュ♪
と、本日は歌って踊ってのお別れとなります。

PAGETOPPAGEBOTTOM