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シナリオ詳細

Forget-Me-Not

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●忘れていた
 嗚呼、今日も変わらない。柔らかな光が落ちて、風に葉がさわさわと揺れる。
 実際に見て、聞いて、感じているわけではない。日の温かさも風の撫でる感触も、実体の取れないソレには感じられるはずもなかった。
 それでも何故知っているのかといえば、ソレにもよくわからない。けれどソレにとっては眼下に広がる花が、植物が変わりなく在れば良かった。
 ──不意に感じた異物。身の内に侵入されたような不快感。
 ソレは異物の気配を探った。それは理由があったわけでない。敢えて言うなら本能的に、と言ったところだろう。
 探せ、探せ。探さなければ、探さなければいけない。それはまるで、プログラム通りに動くシステムのように異物を探し当て──記憶は、ここまで。

●忘れないで
 視界に揺れた青。風に靡くその姿。何が引き金だったのか、それとも何もかもがキッカケだったのか。『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は小さく息を詰めた。
(……見たことがある。知っている。
 …………覚えて、いる)
 それは混沌に召喚された際、消えてしまった──消えたと思っていた──記憶のひと欠片。かつてならば何を感じるわけでもなかっただろうに、今のシャルルは胸の奥に何らかのさざめきを感じ取った。
 この思いは何と形容したらいいのだろう。
 少しずつ理解し始めた、けれどまだまだ理解しきれないそれにシャルルは視線を落とした。そして気づく。
 嗚呼、無意識にすぐそこまで歩いてきていたのか。

 果てがないような、一面に広がる勿忘草の花畑へ──。

GMコメント

●すること
 忘れていた出来事を思い出す

●詳細
 御機嫌よう、イレギュラーズ。
 あなた達は今、ふと何かを思い出しました。それは花の香りに誘われたのかもしれませんし、鳥の声に導かれたのかもしれません。五感を刺激し、記憶を刺激する何かがあったことは確かです。
 それは近頃は全く思い出すことのなかった、或いは失われていたはずのものでした。
 突拍子のない、夢のような記憶もあるかもしれません。しかしあなた達はみな共通して、身に覚えがある──自らの記憶であると認識するでしょう。
 その記憶がいつ、どこで起こったものなのか。それは必ずしも思い出すものではありません。もしかしたら中途半端で、不可解に終わってしまうかもしれませんね。
 その記憶は楽しいものなのか。悲しいものなのか。遣る瀬無いものなのか。

 さあ、あなた達は何を見て、何を思い出しますか?

●ご挨拶
 愁です。
 依頼の要点をまとめると、『春の自然(花、鳥、空 etc.)を切っ掛けに忘れていた出来事を思い出す』と言うものです。
 リプレイは個々で描写しますが、複数人纏めてでも構いません。同行者がいれば記載をお願い致します。
 それでは、ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • Forget-Me-Not完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年03月28日 23時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
焔宮 鳴(p3p000246)
救世の炎
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼

リプレイ

●真の名
 なぜ視線が向いたのか。それは『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)自身にもよくわからなかった。
 けれどそれを見た瞬間。

 ──ドクリ、と。

 心が──いや、魂が震えた。視界に映したものを切っ掛けに、何かが魂の奥底から顔を覗かせようとしていた。
 知らない、朧気な声。聞こえてくるそれは忘れてしまったのではなく、失われてしまったはずの過去から響くもの。

 ──ドクリ。
『桜は春に花をつけると聞いたが──成程、時期が過ぎてしまったか』
 誰かの低く、力強い声。

 ──ドクリ。
『次の桜の時期、互いに生き残っていればまた会おう』
 これは己の声、だろうか。破滅に灼かれていない声は、ルイン・ルイナ自身にとってどこか違和感を感じるもので。

 ──ドクリ。
『楽しいな、花見ってのは。1年間も楽しみに待ったのなら、やはり楽しいものか』
『だけど、俺達は結局敵同士。共に生きていくことは出来ない。だから、次に会う時は──』
 嗚呼、と小さく息を吐く。目の前がチラチラと歪んでいる気さえするのに、咲きかけのそれだけが視界の中で只々鮮やかだった。
 断片的な声が、抽象的な声が。自らのルイン・ルイナでない頃を知らしめる。楽しくも悲しい記憶を。破滅を憎んでいない頃の記憶を。
『──これで戦いは決着、私の負けだ。最期にお前と死合えたのは、中々愉しかったぞ』
『──俺は、アンタを嫌い切れなかったよ。敵だってのに……おかしい話だろ?』
 魂が何かを訴えようとするように、痛みが全身を灼いた。一方的に与えられる魂からの記憶と激痛に引きずり込まれる。
(痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
 ──不意に魂の奥底で、何かが煌めいた。
「……ぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」
 崩れ落ちるルイン・ルイナ。蹲った彼の体が暴走した時のように赤熱する。見開かれた目はゆっくりと、咲きかけの桜へ向けられて。
「思い出した……俺は、そう、俺の名は──」


●あねうえと■
 そう、あの時もこんな花畑だったと『緋焔纏う幼狐』焔宮 鳴(p3p000246)は思った。覚えていない、されど"知っている"という一種の直感というべきか。
 共にいた誰かと遊んで、話をして。あの人を何と呼んでいただろう。花冠を作って──こう言った気がする。そしてこう言われたのではなかっただろうか。
『あねうえー! ■、あねうえのためにつくったのー!』
『あら、素敵ね? ありがとう、■』


 花畑に囲まれた2人だけの、優しくて幸せそうな記憶。ただ、自らの名を示しているであろうそこだけが不明瞭で。
(鳴が姉上って呼んでた人は、鳴をなんて呼んでいたの……? 鳴は、鳴自身のことを、なんて呼んで……?)
 考えても、考えても。それだけが霧に包まれたように掴めない。──いいや、掴みたくないだけなのかもしれない。
 これはとても大事な、思い出さなくてはいけない記憶な気がする。けれど思い出すことを怖がる自分が居る事も事実だった。
 ふるり、と鳴は頭を振った。再び目の前に広がる勿忘草の花畑を見ても脳裏に閃くものはなく、ふわふわの耳と尻尾がへなりと垂れさがる。
 姉上、と小さく呟いた鳴は視線を足元へ落とした。
 よく似た人を最近知った気がする。どこだったか──そう、とある火影の記録だ。残滓であるはずのそれはもっと多くの何かを含んでいるようで、何故か手放しがたかった。
(あの人は……姉上は、今もしかして……)
 ざぁ、と風が吹く。揺らめく花々に、鳴の瞳もまた揺れているようだった。


●アカイロ
「んー、今日もいい天気」
 うーん、と伸びをした『命の重さを知る小さき勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)。ぽかぽかとした春の陽気は気持ちよく、散歩が捗る。
「わ、花畑だ! 赤やピンクのじゅうたんが綺麗、……?」
 不意にルアナの頭の中を、映像が流れた。

 あか。あかいろ。花の色? ううん、血の色。まっかな。いちめんの、あか。
 誰かが一緒にいた。春の日で、花畑の中。周りには黒くて、蠢く者たち。"私"が動けないのは誰かが抱きしめているから。崩れ落ちてしまったのは、誰かがそのまま倒れてしまったから。
 頬に触れる生暖かい──血の赤色。
『……いたい!』
 肌に何かが触れた。赤が吹き出した。私と誰かを赤が染める。けれどその人は私を抱きしめたまま、身じろぎ1つしない。
(たす、けて。たすけて、たすけて、たす……)
 恐怖が膨れ上がる。次の瞬間、私は思いきり叫んだ。
『こないでー!!』
 同時に眩い光がどこからか溢れんばかりに漏れ出す。その中心には私がいた。
 光はどんどん強くなり、やがて視界が城に埋め尽くされて──天を貫いた光は周囲を焼き、やがて消えていった。

『どうしてお前なんだろうな』
 その呟きにルアナは「なんのこと?」と目を瞬かせた。
『お前には普通の娘として生涯を終えて欲しかった』
 その言葉は過去形で、けれど普通かそうでないかなんてわからなくて。
『……ルアナ、普通の子じゃないの?』
 彼女の問いに応えはなく、頭に置かれていた手がするりと滑り落ちた。

 ひゅっ、と不自然に息を吸い込んだ。
「なに? 今の」
 全力疾走した時のように心臓が跳ねていた。何かがこみ上げて来そうで、我慢していると涙が頬を伝う。ぱたぱたと地面へ吸い込まれていくそれを見ながら、ルアナは先ほどの映像で頭がいっぱいだった。
(……もしかして、今のはルアナの過去なの? あの人、誰??)
 まるで何かの芝居を見ているようだった。少女と、少女を庇う大人。魔物のような黒い物体。そして強烈な──
「破邪の光……」
 無意識に呟いたルアナは次の瞬間、目を瞬かせて口元へ手を当てた。
「何でルアナ、『破邪』とか難しい言葉知ってるの?」
 不意に思い至る。今見たそれと、この言葉。
「もしかしてルアナ、元の世界じゃ本当に勇者だったりし──」
 しかし、その先は言葉にならない。続きは言うなとでも言うように、ルアナの体が拒否をしたのかもしれなかった。


●友の少女
 赤色のヒナゲシに、『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は小さく目を細めた。この花を見ると思いだす──初めてマルベートが交流を持った、人間の少女を。
 彼女はマルベートが悪魔として生まれたばかりの頃に出会い、息を引き取る直前にマルベートへ幾つもの願い事をした。みすぼらしく、対価も払うことのできない少女の願いを悪魔が聞く保証もなかった。けれど少女はそれを知らなかったのか、わからなかったのか──それでも構わないと思ったのか。いずれにせよ哀れで、可愛らしい子だった。
(彼女は何を願ったのだったか)
 順に少しずつ思い出す。世界を滅ぼしたいだとか、愛されたいだとか、お腹いっぱい食べたいだとか。そんな願いは──マルベートなりのやり方で、だが──叶えてあげた。
 『家族が欲しい』なんて願いもあった。人の子なら親が居るだろうに、可笑しな願い。それに彼女は悲しいことに、好きなものに巡り合えなかったのか『誰かを好きって言いたい』とも願っていた。『幸せになりたい』という願いは随分と漠然としていると思ったものだ。幸せの形は無数にある。彼女は何が自分の幸せか、果たして理解していたのか。
(あとは……あぁ、『もっと生きたい』だったか)
 叶えてあげられなかった願いだ。その代わりに、私が生きてあげよう。自分勝手に誰かを愛して、腹黒い願いだって存分に叶えよう。
(そう願っているはずだろう?)
 何せ彼女は──私に喰われて血肉になったのだから。一心同体だ。
 それにしても、とヒナゲシの花から視線を逸らして思う。
 花を見て思い出した、ということはそれまで忘れていたということだ。忘れるまいと思っていたって完全に阻めるものではなく、マルベートほど長命であれば尚更。忘れたことすら忘れてしまっている曖昧な記憶など無数にあるのだろう。
(それを憂う事はないけれど──)
 寂しくないと言い切れないのも、事実だった。


●時の流れ
「ほぁー、今日もいい天気!」
 上機嫌で歩きながら『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)はくるりと回って見せた。花が咲き乱れ、風が戯れるように洸汰を擽る。上を向けばキラッキラに輝く太陽。すっかり季節は春だ。
「こんなに天気のいい日は、友達と一緒に遊んだりするのがサイッコーに決まって──」
 ──友達?
 一瞬言葉を切った洸汰は思い出すと同時に「あーっ!」と叫んだ。
 この世界で知り合ったチビたちや、ローレットの仲間とは違う。洸汰が混沌へ召喚される前の世界、家のすぐ近所に住んでいた幼馴染がいたのだ。洸汰のそばからは皆、大人になって離れていってしまった。そんな中でずっと洸汰と遊んでくれた人物でもある。
(初めて会った時はちっちゃくてかわいいやつだったのにな)
 最早洸汰よりずっと背も高く、声も低くなってしまった。そんな幼馴染は「コーちゃんは変わらないな」と笑ってくれる人物で、ゲームもしたし自転車で遠出もした。一緒に美味しい物も食べた。
 けれどそんな日常は、洸汰が大規模召喚に巻き込まれて終わりを告げる。だから、幼馴染とは「また今度」と別れてそれっきりだったのだ。
「……ニホンのトーキョーは、今何月何日だ?」
 混沌と同じ時が流れているのか、それともあの瞬間から何1つとして変わっていないのか。
 今ならすぐに思い浮かぶ。2人で最後に会った、暖かい春風が吹いていたあの日。もし帰ることができたのなら、あの日に戻っているのだろうか。
(それとも──)
 『大規模召喚』と言うからには多くの人間、種族が混沌へと召喚された。もし幼馴染もこちらへ召喚されていたとしたら、洸汰を捜していたりするのだろうか。
(……もし会えたら、それとも、あっちに戻れることがあったら)
 約束をやぶってしまったことを、謝らなくてはならない。謝るためにも、どこかで巡り合えるようにと──洸汰は真っすぐな瞳で前を向いた。


●脆くて、愛おしい
 あれ、と『埋れ翼』チック・シュテル(p3p000932)はゆっくり瞳を瞬かせた。胸の内に訪れたのは既視感。
(久しぶりに来た様な感じ……するのに、昔……何回も来た事ある、ような?)
 心地よくて落ち着く、好きな景色ではある。だけど、どうしてか胸のざわつきが収まらない。
 花の匂いを嗅ぎ、陽だまりで体を温めて。小鳥たちの楽しそうな声を聞いている内に、チックはその原因に気付いた。
「……そっか」
 既視感があって当然だ。ここを知っている。ただ、忘れてしまっていた。
(でも……どのくらい前にあった事、だっけ)
 思い出しきれずにいながら、けれどチックは思い出し始めた記憶に意識を浸らせる。

 それは堪らなく大切で、愛おしくて。
 ──そしていつかは壊れてしまう、泡沫の夢を思わせる記憶。

『にいさん』
 その言葉に目を開くと、チックと同様の白い翼を持つ少年が覗き込んでいた。見て、と言われるままに視線を向ければ花冠を被った1人の少女。チックと視線が合って笑みを浮かべた少女はくるりと回って見せ、長い金髪が軌跡を描いた。
 2人ともおそらく、チックにとってとても大事な存在だっただろう。──いいや。大事で、大切で仕方が無かった。
 少年と少女とチックと。3人で彼の持っていた金色の籠に思いでの花々を敷き詰めた。"あの子たち"の好きな物も。欲しい物も。
 家族である"あの子"が嘘によって燃やされ、灰にならない様に。"あの子"が『彼女』を真似て、嘘で幸福になってしまわぬ様に。

 けれど、とチックは琥珀色の瞳を手元へ落とした。
 静かなる金色の籠に、それらはない。記憶と同様に空っぽのまま。思い出した記憶では確かに入れたはずなのに、何故だろうか。
(探さないと)
 木の根元に腰かけていたチックはゆっくりと立ち上がった。
 いつの間にか落としてしまったのなら、どこかに残っているはずだ。そうだ、探さないといけない。
 ──あれが、旅を始めるきっかけだったのだから。


●記憶とのズレ
『このはなは、なぁに?』
『その花はね、百合って名前なんだ』
『ん、かわいいねっ』
 それにちなんで名前を付けたのだ、と言われて『小さな騎兵』リトル・リリー(p3p000955)はふわりと微笑む。

 真白な百合を見て、リリーは何度も目を瞬かせた。
「そうだ。だれかに、リリーってつけられたんだ」
 思い出した記憶。されどそれによってリリーの頭の中は混乱した。
 彼女は自然豊かな場所から混沌へ召喚され、今に至る──そのはずだ。けれど今の記憶では研究室の様な場所で、白衣を着た人物と会話していた。リリー自身に深く関わっているであろう大切な記憶だが、これだけでは何も判断できない。
(なにか、もっともっとだいじなことをわすれているような……)
 もやもやとした違和感。思わずきゅっと眉根を寄せてしまったリリーに、異変を感じたのか地上を泳ぐシャチのレブンが気づかわし気な様子を見せる。
「だいじょうぶ、ありがとね」
 あっちのほうにいってみようか、と告げるとレブンはゆったりとした動きで自然を移動し始める。刻々と変化する景色を楽しみながらも、心のどこかでは先ほどの違和感が拭えない。
(……なにかのおもいこみかな?)
 記憶が食い違うなんて可笑しな話だ。百合の花を見てどうして思い浮かんだのかは分からないが、夢で見た内容を思い出し、思い込んでしまったと考えればまあ納得もいく──かもしれない。
「たぶん、きにすることじゃないよね。きにしてもわからないし」
 ね、レブン──リリーはそう呟き、シャチの背をそっと撫でた。


●変わりがなくとも
 思い起こしたきっかけは鳥の声であった。それは今も昔も変わらず、最も馴染み深い音であったから。
 何年前だったっけ。よく覚えてないや──『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は懐かしい昔を思い出して目を細めた。少なくともルーキスがまだ人間で、魔術師として普通の生活を送っていた頃のこと。
 あの時は両親も健在だった。大人しくて従順な黒い狼の悪魔と、騒がしくて軽口の喧しい大鴉が普通に傍にいて。
 簡単な魔術を失敗する事もあって、悪魔に揶揄われた。時には徹夜して、根を詰め過ぎた結果両親に心配された。他人との折り合いが着かずに嫌がらせに遭ったこともあった。陰湿だったことまで思い出して、思わずルーキスの表情に苦笑いが浮かぶ。
 そして今の使い魔とはサイズも能力も桁違いの大鴉を腕に留め、ルーキスは「お節介だなぁキミも」と呟いた。
「東方じゃ、未練を残した魂は化けて出るって言うけど?」
 くすりと笑って告げれば、その嘴が容赦なくルーキスの髪を引っ張る。痛い痛い、なんて言いながら彼女はひとしきり笑って。
「大丈夫、お陰様でしっかり思い出しました。……ちゃんとやっていくから大丈夫だよ」
 大鴉の目を見つめると、確りと見つめ返される。
 勿論、思い出しただけ。それによって何かが変わることはない。それでも薄れていた過去を垣間見る事ができただけで、ルーキスにとっては十分だ。
「ありがとう──」
 その名を小さく告げる。いつしか大鴉はルーキスの腕から消えていた。
 その後、ルーキスは連れにどうしたのかと問われても、何も語ることはなく。背伸びをすると、空を舞っていた鴉を腕へ留まらせた。そして青の花畑を振り返る。
 花言葉は確か、私を忘れないで。そして真実の友愛だっただろか。
「花言葉とか、らしくないなぁ……」
 ぽつりと呟いたルーキスは花畑に背を向ける。自らを仕切り直すように「さて」と言うと、記憶よりひと回り小さな鴉を見て。
「……我が家に帰ろうか、ソラス」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 思い出せましたか? イレギュラーズ。
 小さな記憶の欠片。それがあなたたちにどのような変化を与えるのか、楽しみにしていましょう。
 再びお目にかかれましたら幸いです。お疲れさまでした。

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