PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夢見る列車は目覚めない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●次は■■■■――次は■■■■――、お生き急ぎの方はご注意ください――。
 目覚めたそこは座席の上。
 がたんごとんという揺れが地の底から上がる不思議な部屋であった。
 まるで大きな箱馬車のごとく窓の外では景色が流れているがどれも暗いどこかの夜景。
 遠い景色はどことも知れず、木製の座席は横に広い。全ての座席はそれこそ馬車と同じく景色の向かう側へと向いている。
 細長い部屋の中央には通路が一本。
 ここはどこだ。どこへ向かっている。
 立ち上がろうにも足に力は入らず、背は椅子の背もたれに張り付いたかのように動かない。
『この列車は――■■行き――次は■■■■――』
 部屋のなかいっぱいに聞こえるように、陰気な男の声がする。
 暫くしてから悲鳴が聞こえた。
 前の座席からだ。
 黒い毛皮のゴブリンめいた生き物が、同じく座席に座った誰かの首を大ノコギリで切断しているのが、ほんの僅かに見えた。
『次は■■■■――次は■■■■――』
 座席はひとつ移り、別の人間の首を縄で締め付けはじめた。
 通路に転がる生首。
 天井の荷物置きらしきパイプからぶら下がる人間。
 順番は分かっていた。
『次は■■■■――次は■■■■――』
 ゴブリンが自分の真横に立つ。
 身体は殆どうごかない。頭と顎を押さえられ、大きなやすりが翳された。

 そこで、目が覚めた。

●夢見る列車
「夢が実際に人を殺すというのは珍しいことじゃない。
 白昼夢を見せる間に発狂死させるアポストル幻術。ある一家全員が共通の夢の中で怪物に殺され一人だけ生還したジェイス一家惨殺事件。その他夢にまつわる死は山のようにある。
 けれど今回依頼人が持ち込んだのはその中でも指折りのものさ」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は黒いペーパーを机に広げて、昏く笑った。
「この夢に決まった名前はない。いくつもの世界で噂される死を呼ぶ夢。正体不明真偽不明。けれど見たという人は確かにいる。
 あえてこの場で名をつけるなら――『夢見る列車』」

 依頼の経緯はすこしばかり複雑だ。
 奇妙な夢を見たという男ネイワール氏は日々のストレスに原因があると考えてセラピストへと相談した。しかしセラピストは全く同様の夢を見た人間を三人知っており、その三人とも相談した数日後に変死したという。
 どれも共通して睡眠時のショック死。
 原因不明として調査もされなかったが、そこでようやく話がつながり魔術師や退魔師にまで話が及び、あちこちの技術を継ぎ合わせて最終的に実行部隊として依頼されたのが、このローレットというわけである。
「全員には今から、対象の夢の中に入って貰うよ。
 細かいメカニズムは抜きにして――」
 と言って、黒い棺の列と大量のケーブルでつながった白い棺を叩いた。
「この中で眠れば、接続した対象の夢に入ることができる。
 恐らく夢主が話したであろう状況の『続き』が起こるはずだ。
 そこへ介入して、見たという『黒いゴブリン』を退治する。
 依頼内容はそこまでだ。
 準備はいいね?
 それじゃあ――」
 おやすみ。
 そう言って、あなたの入った棺を閉じた。

GMコメント

【オーダー】
 ネイワール氏の夢の中へ入り、『黒いゴブリン』を全て退治すること。

 夢の直前までの内容から推察するに、『黒いゴブリン』は6体ほどおり、戦闘力もとても高いと思われる。
 のこぎり、ロープ、鉄串などの道具を武器にしていると思われ、これらとの戦闘には少なからず痛みや大きな怪我を伴うだろう。
 また、ひと座席中央の通路は一人が通れる程度の横幅しかないため移動が若干難しい。一応座席の上を乗り越えるようにして移動もできるが、それもあまり高さはないので過信は禁物。
 また、地面が箱馬車のように揺れているとも言われ、多少の注意は必要。

 依頼人のネイワール氏は座席のひとつに座っており、自力で移動ができない模様。
 別の犠牲者(?)がゴブリンにつり下げられたりしていることから第三者が担いで移動することは可能そうだが、その後も身体の自由がきく保証はない。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 夢見る列車は目覚めない完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月29日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
アト・サイン(p3p001394)
観光客
七鳥・天十里(p3p001668)
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
最上・C・狐耶(p3p004837)
狐狸霧中
ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)
鉱龍神

リプレイ

●列車とはなんですか? 鉄道とは? それはあなたの知識ですか?
 リボルバー弾倉に弾を込める。一個一個、弾倉を回しながら親指で丁寧に押し込んでいく。
 七鳥・天十里(p3p001668)は機械のような正確さで作業をこなしながら、どこか別の場所を見るような目をした。
「都市伝説とか怪談みたいな話だね。そういうのは詳しくないけど……」
 銃とスピードローダー数個にそれぞれ弾込めを終えてから、天十里はホルスターよ予備バッグにそれらを詰めていく。
「自然現象……ってことはないだろうし、今後のためにも原因見つけないとね」
 同じく機械のようにマガジンの弾倉に弾を素早く詰め込んでいく『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)。
 そのひとつを銃に装填して、ルチアーノはサイトを覗いた。
「地球に居た頃散々脅かされた怪談と酷似していて怖いね。けど動けない夢が怖いのであって、動けるなら撃破すればいい」
 弾があたるなら、血が出るなら殺せる筈だ。
 ルチアーノは空薬莢のような冷たい目をした。
 ゆっくりと壺の側面をなぞる『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)。
「賢い妾は知っているのじゃ。揺れる箱馬車というのは、ウォーカーどもの話しに聞く列車という奴じゃの。確か駅弁なるものが食べ放題と聞いたのじゃが、何処にあるかの?」
 どうやら興味津々の様子だ。
「他の世界にもそんな話があったけど案外メジャーなの? これ。永遠にマイナーなまま消えろよって感じだけどね」
 『幻晶煌龍』ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)のほうは興味がなさそうで、冷たく辛辣なリアクションをとっていた。
「………………」
 『観光客』アト・サイン(p3p001394)がぶつぶつと何かをいいながら地面を見ている。
「思い出せ、今までの冒険を。誰かが話していなかったか、夢に託して人を殺す呪いがあると。列車でなくてもいい、似たような形だ。閉鎖空間の中で呪いの具現を行使するのに必要な要素は何だ。そしてその要素を破壊するに必要なのは何だ……」

 一方で『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)は虚空を見上げて一人雑感を想っていた。
(夢で会えたら素敵なことらしいです。それは夢に見るほど相手のことを思っているということだそうで。ですが出てきたのは化け物でした、残念。ネイワールさんの趣味の悪さは相当なものですね。違いますか、そうですか。ともかく、頼まれたものはなんとかしないといけませんね。人の恋路を邪魔すると馬に蹴られて死にますが、眠りを妨げるものはファラオに蹴られて死ぬのです。ですが私はきつね。つまりセーフ、いえアウト。このきつね、容赦しません)
 関係あるようであまり関係の無い雑感を水道の蛇口から流し落とすようにしている狐耶。
「他人の夢に入るだなんて、今回みたいな状況じゃなければロマンチックな話なのにね」
 『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)がふと似たようなことを言った。
「けど夢の中だけで完結せずに現実まで影響を及ぼす悪夢だなんて、私まで夢見が悪くなりそうよ」
「うう、本当だよ……」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が二の腕をさするようにして肩をすくめた。
「こんなお話を聞いちゃったら解決しないと、怖くて眠れなくなっちゃうよ。ネイワールくんを守るためにも、そしてボクやこのお話を聞いちゃった人の安眠の為にも頑張るよっ!」
 立てかけておいた槍を手に取ると、焔はいそいそと棺の中へと入っていく。

 重く、沈むような感覚。
 熱を帯びたような眠りの感覚。
 気がつけば身体が浮かぶような錯覚を経て、彼らの耳にはがたんごとんと箱馬車の揺れる音が、身体には定期的な振動が伝わっていた。
『次は■■■■――次は■■■■――』
 どこからか聞こえる声に目を開けると、自分たちはシートに腰掛けていた。
 惨殺死体が無数に並ぶ、それは巨大な箱馬車である。
 知っているものは、これが列車だと知っていた。
 四列シートの車両。ひろくはない中央の通路を、どこか左右によたつくように『黒い毛皮のゴブリン』らしきものが歩いてくる。
 彼らの手にはノコギリのようなものが握られていた。
 悲鳴があがる。
 振り返って確認する。ネイワール氏のものだ。
 彼は座席から立ち上がることができないようで、手首からさきだけを無意味にばたつかせている。
 ゴブリンは駆け足になり、ネイワール氏へと飛びかかった。
 振りかざすのこぎり。狙いはネイワール氏の首筋だ。
「おっと――」
 ルチアーノは座席からたちあがって通路へ飛び出すと、折りたたみ式のナイフを展開してゴブリンののこぎりを受け止めた。
 直後、ルチアーノの首に縄がかかる。
 縄は荷物置きの上にかがむゴブリンから伸びていた。荷物置きから飛び降りるゴブリン。パイプを伝ってつるべの原理で釣り上げられるルチアーノ。
 浮いた彼の足の下をスライディング出抜けるようにして、焔がゴブリンへと接近。
 ロープを掴んで体重をかけようとするゴブリンを掴むと、自らの槍で貫いた。
 腹を深々と貫かれたゴブリンは苦しむさまを見せるかと思いきや、焔を見て不思議そうに首を傾げている。
 焔がここにいる事実を訝かしんでいるようだ。その隙にロープを切断してやると、ルチアーノがむせながら床に転がった。
「妾達が助けに来てやったのじゃ。動けるかのネイワール氏」
 暴れるネイワール氏のもとまで駆け寄るデイジー。
 ネイワール氏を山賊方式で無理矢理担ぎ上げると、車両の前方……がどちらかは分からないが、仮にゴブリンがやってくる方向を前方とするなら、その逆にあたる後方へ向けてぺたぺた走り始めた。
「おっとと……歩きづらいのぅ。誰じゃこんなに馬車を揺らすのは」
 座席から顔だけを上げた狐耶が榊神楽を発動。神の依代を手に舞う事で味方を強化する技を狭い車両のスペースでいかに行なったかは不明だが、ゴブリンたちと取っ組み合いになるルチアーノや焔と、ネイワール氏を避難させるべく後方へ逃げ去るデイジーの両方を範囲に収めることができた。
 より正確にいうなら、車両の奥行き目測で15~20メートルといったところだ。横幅に至っては手を広げて反復横跳びができないくらいに狭い。そもそも座席が立ち上がるのにやっとの間隔で並んでいる上頭上は荷物置きのパイプが邪魔になるので反復横跳び自体できそうにないが。
 そんなスペースを、ゴブリンは座席を無理矢理よじ登って乗り越えるという形で侵攻してくる。
「得物を振り回せない狭さ、か。鈍器じゃないけど。しかし飛び回れないって窮屈」
 ェクセレリァスは座席の上。天井すれすれの位置に浮遊すると、バスターキャノンを用いて進行してくるゴブリンを射撃しはじめた。
 このまま引き打ちをすることを考えたが、車両の後部でデイジーがなにやらがたがたやっていた。
「なんじゃこの扉、びくともせんぞ。鍵でもかかっとるのか?」
 しまいにはがしがし壺で殴りつけるが、それでも扉は開かない。
 ェクセレリァスは『夢だから壊れないのでは』と考えたが、考えてから若干の違和感に気づいた。
 車両が壊せなくて人体が壊せるのはどうして?
 ゴブリンも壊せなくも無い様子なのはなぜ。
 一瞬だけの気づきは車両の揺れとゴブリンたちの喧噪にかきけされる。
 ェクセレリァスは射撃を継続した。
「理論上は城だって更地だけど『不在証明』により普通の火砲程度の威力と現実は非情。まぁそんな威力があってもこう言うとき困るけど……さて、撃ち砕いてあげる。覚悟はいい?」

「なんだろうこれ? 意味分かんないな」
 天十里は扉の取っ手やその周辺を銃撃してから、まるで傷が付かないことに首を傾げた。
 だがそうとばかりしてはいられない。すぐに振り返り、天十里は侵攻してくるゴブリンたちに銃撃を加えた。
 銃声は決して広くない車両のなかを反響する。
 音はそれだけではない。車両の揺れるがたんごとんという音。
 振動。むせかえるような血とその他人間内容物の臭い。
 まるで地獄みたいな環境で、天十里は窓の外を見た。
 見て。
 首を傾げた。
「……トンネル? にしては……」
 真っ暗すぎない?

「こうも狭いと範囲攻撃がやりずらいったら……」
 エスラはマギ・インスティンクトの術を行使して自らの魔術を限界まで引き上げると、ライトニングの魔術を解き放った。
 6体ほどのゴブリンはルチアーノや焔を集中的に攻撃し、そんな彼らのうち2~3体をギリギリラインに納めつつ攻撃しているが、いかんせん列車の揺れに身体がもっていかれそうになる。
 今解き放った魔術も、ゴブリンたちの毛皮から数センチ外れた場所をはしっただけで、車両前方の壁にぶつかって消えた。
 僅かに命中効率がいい遠術もあるが、そちらに切り替えることはしない。ゴブリンとの距離は3~5メートルといったところだ。レンジ3の遠術では射程におさめられない。最後列の座席まで下がればギリギリ10メートルくらいは確保できるが、今度はライトニングのラインが必ず誰かの味方に被ってしまう。
 必然、エスラはやや前に出てライトニングを打ち続けるほかなかった。
「あなた達がどういう目的で現れているのか、何でこんなことが起こるのかは分からないけれど、とにかくすることは1つ。悪い夢ごと焼き払ってあげるわ」

 座席を乗り越えてくるゴブリンを、アトはインパクトソードを叩き付けることで撃退する。
 列車中央からやや前方よりの位置。焔はルチアーノと背中合わせになってゴブリン4体に取り囲まれ身動きがとれず、残る2体がこちらに進行しようとするのをアトがマークする形で格闘している状態だ。
 途中から狐耶が神薙を使って迎撃に加わってくれているが、どうも微妙に調子がよくないように見える。
「状況は不利だ……」
 舞踏のセンスがあって揺れに強そうな狐耶はともかく、アトたちは車両の揺れに足をとられていたし、飛行によって揺れをほぼ無効化していたェクセレリァスも攻撃レンジが3~4に限定されており、車両最後列まで下がってなんとかレンジ10の範囲に収めて攻撃してはいるが、命中減衰と威力半減のデメリットを受けていた。なんとかゴブリンを列車最前列まで押し込むことができれば、ェクセレリァスの射撃をデメリットなしで行なえるはずなのだが……その方策は特に無かった。
 アトは自分の頭を殴るようにして歯噛みした。
「僕ってやつは、なんで考えなかった。『知っていた』はずだ。これが『列車』だって分かっていたはずだ。どういうものかも理解していたし、その奥行きも幅も想像できた筈だ。なのになんで適切な距離と範囲を考えなかった……」
 低い情報精度を埋める手段を有していながら……。
 いや、ルチアーノは早期にそれを理解して武器や戦法を切り替えていたし、誰も対応しなかったわけではない。天十里もそういった事態にそなえてか、レンジ1の血蛭を攻撃プランに予め組み込んでいた。
 振り返ると、デイジーがフロストチェインや血蛭といったレンジ2の攻撃を無理矢理ねじ込んでいた。命中減衰はやや働いているが、元々高性能な彼女たちにとってはそう難しい射的ではない。足下の揺れもあってかなり苦戦しているようではあるが……。

 ルチアーノの顔色が徐々に悪くなっていった。
「これ以上はまずいね……なんとか、やってみる」
「えっ」
 焔が振り返ろうとした瞬間、ルチアーノは叫び声をあげてゴブリンたちの気を引いた。
 これだけでは効果が薄いかに思われたが、やや奇跡的に(そしてルチアーノ自身の技量も手伝って)ゴブリンたちはルチアーノに集中した。
「こっちへ来い! 黒い猿!」
 手を叩いて列車前方。それも最前列へと張り付くように移動する。
 駆け足で追いかけたゴブリンたちがルチアーノにそれぞれの武器を叩き付けた。
 ノコギリやペンチ、ロープやヤスリ、その他人間に対しておよそ用いるべきではない道具を使って痛めつけ始める。
 焔が追いかけるよりも早く、狐耶がゴブリンたちへと襲いかかった。ルチアーノが力尽きたタイミングでここぞとばかりに神薙を連射していく。次なる獲物だとばかりに群がるゴブリンたち。

 戦況が動いた。
 ェクセレリァスたちは減衰のない射程にゴブリンたちを収めて攻撃を再開。
 狐耶が倒された段階でエスラはロベリアの花を叩き込み、ゴブリンのうち何匹かを消し飛ばした。
 残る個体が迫ってくる。
 焔とアトが通路と座席のそれぞれでマークしにかかるが、それをすり抜けた分のゴブリンたちが後方の仲間たちに襲いかかる。
 ェクセレリァスが抵抗の射撃を連発しながら、情報の欠片を血のように噴出させていく。
 戦法をオーラキャノンから血蛭に切り替えた天十里が斬りかかる。
 エスラもライトニングを近接仕様にして打ち続けた。
 割と万能型な天十里はともかく、エスラたちは防御や耐久が苦手だ。
 このままでは戦線が崩壊してしまう。
 が、組み直している時間や策は無い。
 あえて最後尾列で攻撃を受け続け、残るメンバーが(ネイワール氏を抱えたまま)一斉に最前列にダッシュで移り、再び得意なレンジで攻撃しはじめる……これを誰かが襲われるたびに繰り返すほかない。
「なんとも薄気味悪くて厄介な夢じゃの。駅弁も出ないし……!」
 デイジーがフロストチェインを叩き込む。
 攻撃によって腕を千切られたゴブリンがそのままデイジーへ駆け寄っていく。
「ええい、こやつら本当にゴブリンか!?」
「ゴブリン……?」
 アトがぴくりと顔を上げた。
 混沌の世は広く、ゴブリンと呼ばれるものや自称するものは気が遠くなるほど多種にわたる。定義そのものも曖昧で、なんかゴブリンぽかったらゴブリンという雑とも言えるカテゴリーにあった。
 逆に言えば、ゴブリンというカテゴリーは『よくわからない亜人モンスター』の総称みたいなもの、とも言えた。
 襲いかかるゴブリンを迎撃する焔。
「これってネイワールくんの夢の中なんだよね? だったらネイワールくんの認識次第で色々変わったりしないかな」
 焔の考えは、ゴブリンが弱っているとネイワール氏に信じさせることで敵が弱体化しないだろうか、というものである。
 この状況になってくると『奴らは弱ってるよ!』という呼びかけもやや説得力がなくなってくるが……。
 ゴブリンの動きが、心なしか鈍ったように見えた。
 焔には全く変わったように見えなかったが……アトにだけは、ほんの僅かに分かった。
「その通りだよ、焔。素を晴らすと書いて、素晴らしい考えだ。けどその上……素晴らしくてかなわないほどのアイデアがあるんだ。ちょっと彼らの相手を頼めるかな」
 アトは焔に残るわずかなゴブリンを任せ、ダッシュで車両前方へ向かった。
「夢の中で殺されれば死ぬ……けれどそれが干渉できる上、僕らを傷付け得るものである以上、これはネイワール氏の思い込みだけじゃない。第三者の介入を意味しているんだ。つまり、『呪い』だよ」
 アトはスピーカーボックスを見上げた。そして過去の犠牲者のように語られていた、つり下げられた死体や八つ裂きにされた死体を見た。
「夢の中で次々に殺されたという人たち。けどそれが本当なら、各地でゴブリンたちは殺したい放題だ。犠牲者が山ほど出てないとおかしい。これはネイワール氏個人のみを対象とした外部からの干渉だ!」
 アトはそう叫んで、スピーカーを剣で破壊した。
 目を剥いたゴブリンたちが、一斉に破裂しはじめる。

●目覚めよ、その現実は本当に現実か?
 みな、うめき声をあげながら目を覚ました。
 棺の中は血だらけで、夢のなかでおった怪我の一部を引き継いでいるように思えた。
「どうなったの……?」
 焔が棺から出てあたりを見回す。
 アトがいちはやく棺から出て、身体各部の損傷具合をチェックしていた。
「悪夢は終わったよ。けれど……」
 眠るネイワール氏を見やる。
 安らかに、安らかに、眠っていた。

 ……その後数日経った今も、彼は目覚めていないという。

成否

成功

MVP

アト・サイン(p3p001394)
観光客

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete
 true end 1――『夢見る列車は目覚めない』

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