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シナリオ詳細

<神の門>蒼の置き土産

完了

参加者 : 8 人

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オープニング


 ――仔羊よ、偽の預言者よ。我らは真なる遂行者である。
 ――主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。

 この神託を受け、天義に大きな混乱が起きている。
 遂行者は終焉獣らを率い、各地に神の国を顕現させるべく暗躍している。
 天義も黒衣を纏った騎士団に影の一団を殲滅させるが、現状は小競り合いが続いている。
 それも、イレギュラーズが直接撃退を繰り返していることが大きい。
 ただ、遂行者達も黙ってはいない。
 『冠位魔種』、『煉獄篇第一冠傲慢』ルスト・シファーも現状は余裕を見せているが、これ以上、『神』……ルスト・シファーの言葉を否定する行いを繰り返すわけにはいかない。
「白き騎士は勝利をもたらし、赤き騎士は人々を焔へと変え戦を引き起す。黒き騎士は地に芽吹いた命を神の国へ誘い、蒼き騎士は選ばれぬものを根絶やしにする」
 それら四騎士を連れた遂行者らは天義を手中に収めるべく動く。

 遂行者……預言者『ツロ』は数人のイレギュラーズを強引な手法で茶会に誘う。
 『神の国』の『聖女の薔薇庭園』に滞在するイレギュラーズの数は10名以上。
 交渉の末、2人はツロの要求を呑んで離反。残りの動向は詳しくはわからないが、現状は安全を保証されているとのこと。
「色んな考えがあるからね。それは理解すべきさ」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)はそうイレギュラーズを諭す。
 イレギュラーズと一括りで呼ばれてはいるが、生まれも育ちもバラバラな者ばかり。オリヴィアが言うように、その考えは尊重すべきだ。
 話を戻すが、一部、誘いを受けながらも帰還したメンバーがいた。
「戻ってきた奴らが手にしていた『招待状』を有することで、聖女の薔薇庭園の道を辿ることができる……そうツロは告げたって話さ」
 『招待状』は天義教皇シェアキム六世にも届いていたが、天義は聖騎士軍を動かすことができなかった。
 なぜなら、そこに至る道には『異言』が満ち溢れ、先にある大神殿には『原罪の呼び声』が響いているという。
「目的の『聖女の薔薇庭園』は大神殿の中さ。ここに至るまでに正気を保てる団員なんておそらくいやしないさ」
 ただ、元より招待されていたイレギュラーズならば、話は変わる。
 招致の力は多少なりとも働いているとみられ、加えて『パンドラ』を有するからこそ、簡単には魂を侵されることはない……はずだ。
 ローレットとしては、この道をこじ開け、薔薇庭園に滞在するイレギュラーズの帰路を確保したい。
 そして、離反したイレギュラーズの意志を確認したいところだ。
「傲慢の魔種はアタシ達を侮っているね。隙をつくなら今さ」
 この作戦がうまくいけば、『冠位魔種』ルスト・シファーを表舞台へと引きずり出せるはず。
 頷くイレギュラーズはリンバスシティより神の国を目指す。


 そこは聖痕を持つ者しか通行を許されていないという審判の門。
 イレギュラーズはそんなのお構いなしと通り抜け、レテの回廊へと至る。
 あちらこちらから聞こえてくる『異言』は、イレギュラーズでなければ瞬く間に狂気に陥ってしまうことだろう。
 実際、あちらこちらに異言を話すものの姿も確認出来たが、無駄な戦いは避けるべきと、それらに接触せぬよう進む。
 また、辺りには幻影竜と呼ばれる赤い竜が飛来している。
 時折、炎を吐き出している幻影竜は竜種ほどの脅威ではないものの、かなりの脅威。
 こちらも消耗を避けるなら、接触したくない相手だ。
「ふふ、そんなにあの竜が気になるんですの?」
 そこで、前方に集まる蒼い靄。
 その中から現れたのは、寒気がするような印象を抱かせるシスター服姿の女性。
 魔種へと堕ちた彼女の名は、ルニア・アルフォーネといった。
「それでは、私の下僕とした竜と遊んではいかがでしょう」
 彼女は後方から4体の騎士と共に2体の幻影竜を差し向けてくる。
 幻影竜は強者であるルニアの指示を受け、完全にこちらを倒すつもりで咆哮していた。
 それだけでも厄介だが、馬に跨る4体の騎士は預言の騎士といい、『冠位魔種』ルスト・シファーが遣わした存在なのだという。
「遂行者ナーワルが貸し与えてくれましたわ。白馬の王子とは行きませんが、なかなか頼もしい騎士達ですわよ」
 その内訳は、3体が黒で1体が青。
 最も力ある青騎士が他の黒騎士を従えている形だ。
 青騎士は黒騎士に指示を出すだけでなく、所持する槍で敵対するものを切り裂き、発する雷で全てを焼き払っていくという。
 また、黒騎士は病原菌をまき散らしながら、闇の力を行使し、ポールアックスを使うという。
 いずれも強敵であり、気の抜けぬ相手だ。
「まさかこんな形で騎士と対するとは思わなかったっす」
 レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)としても、青騎士や黒騎士と戦う場面はあるだろうと察してはいたが、まさかこんな場面で戦うことになるとは。
「神の御名の元に、貴公らを排除する……」
 刃を煌めかせて近づいてくる騎士達。
 そして、焔を頭上から吐きかけてくる幻影竜。
 これらを突破せねば、魔種を追いかけることはもちろん、聖女の薔薇庭園にいる者達とも合流できない。
「やるしかないっすね……!」
 レッドも仲間と共に覚悟を決め、それらに攻撃を仕掛けていくのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <神の門>のシナリオをお届けします。
 こちらは、レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)さんのアウターアクションによるシナリオです。

●概要
 神の国の入り口である『審判の門』を通り抜けた先、『レテの回廊』が戦場となります。
 思わせぶりに姿を現したナーワルですが、遂行者から託された預言の騎士と合わせ、自らが従えた幻影竜を残して回廊奥へと去っていきます。
 この場を突破すべく、立ち塞がる敵の討伐を願います。

●敵
 ルニアが回廊に残した混成隊が相手です。
 強力な力を持つルニアに従う下記の敵はそれぞれで争い合うことはないようです。

〇預言の騎士×4体
 ルスト・シファーの権能によって生み出されて居る騎士達です。
 遂行者ナーワルを経由し、ルニアに託されているようです。
 いずれも乗馬しているのが特徴。名称にちなんだ色の鎧を纏っており、その目でそれと判断できます。

・青騎士:ドミオ×1体
 騎士の中でも最も強大な相手で、名前を与えられております。
 黒騎士を統率するこの騎士は意思の疎通は可能なようですが、刻印のない相手を機械的に屠ろうとしてきます。
 大きな刃を持つ槍を軽々を振るって相手を切り裂いて来るだけでなく、激しい雷を展開して敵を殲滅してきます。

・黒騎士×3体
 病原菌をばら撒く恐るべき騎士。
 それだけでなく、闇の力を纏ったポールアックスを振るって様々な状態異常へと陥らせてきます。
 闇の力はボール状にして投擲も可能なようで、距離をとっても油断なりません。
 なお、こちらは意思の疎通ができません。

〇幻影竜×2体(+α)
 回廊周辺を飛び交う赤き竜。ルニアによって2体が使役され、騎士と共に襲ってきます。
 聖痕を有さぬ者に急降下して襲い掛かり、爪と牙を突き立て、炎で焼き払ってきます。
 また、直接交戦する2体とは別に、回廊には無数の幻影竜が飛来しており、時折戦いに茶々を入れ、炎を吐きかけてきますので注意が必要です。

〇ルニア・アルフェーネ
 リドニア・アルフェーネ(p3p010574)さんの姉。
 魔種となっており、強大な力を有しています。
 身体から発する蒼い靄を使い、攻撃してくるようです。
 残念ながら、戦闘開始前に奥へと去っていく為、この場での交戦は叶いません。

〇遂行者:ナーワル
 20歳、リドニア・アルフェーネ(p3p010574)さんの関係者です。
 「碧熾の魔導書(ブレイジング・ブルー)」と呼ばれる魔導術式が人形となった存在で、炎の使い手です。
 今回ナーワル自身は姿を見せませんが、預言の騎士は彼女の残した敵も存在しています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <神の門>蒼の置き土産完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年10月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レッド(p3p000395)
赤々靴
志屍 志(p3p000416)
遺言代行業
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
目的第一
リドニア・アルフェーネ(p3p010574)
たったひとつの純愛
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

リプレイ


 神の国へと至ったイレギュラーズ。
 ようやく、こちらから攻める機会ができたとメンバー達にも気合が入る。
「いつも攻められてばかりっていうのは割に合わないよね。今度はこっちの反撃の時間だよ!」
 遂行者らがこれまで幾度も各地へと攻め込んでいたのを見ていた『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が決起の声を上げる。
「敵地だろうと何だろうと関係ない! この先で仲間のイレギュラーズが待ってるんだ!」
 『特異運命座標』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)も、庭園に拘束されたままのメンバーを想う。
「一度は帰ったけど、招待には応じるのが礼儀だよね」
 この回廊を突破し、聖女の薔薇庭園を目指すとスティアは宣言し、このチームでレテの回廊を駆け抜けんとする。
 だが、敵もそう簡単には通してはくれない。
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が感覚を働かせ、その接近を察する。
 回廊周囲を飛ぶ幻影竜を気にかけるメンバーを笑うルニア・アルフォーネだ。
「それでは、私の下僕とした竜と遊んではいかがでしょう」
 彼女自身も2体を率い、加えて騎士を4体も差し向けてくる。
「あの騎士達、遂行者ナーワルが貸し与えただって……!?」
「まさか、再び騎士と対峙するとは思いもしなかったっす」
 敵の言葉に驚くヨゾラはその遂行者が先のどこかにいると確信し、『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は青と黒の騎士と対するこの状況に驚く。
「預言の騎士が複数だけでなく幻影竜までとは、なかなかの大盤振る舞いね?」
 アルテミアが皮肉交じりに告げると、彼女は背を向けて。
「この程度、倒してみせますわよね?」
 こちらのメンバーを一瞥して、ルニアは回廊の奥へと消えていく。
「ルニアの奴、強敵だけ置いて先に行った……!」
「あの姉様、こんなものまで従えていたなんて」
 刹那、唖然とするヨゾラの後ろで、『『蒼熾の魔導書』後継者』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)は実姉がどこまでも自分達を、天義を、全てを憎んでいるのだろうと考える。
「ボクらは先を急いでいるっすからね! 奥に消えてった怪しげな魔種も待ってろよーっす!」
 置き土産な竜と遊ぶ暇なんて、イレギュラーズにはない。
 レッド達は立ち塞がる相手は倒すしかないのだ。
「ここを突破する為にも、置かれた敵は全部倒すよ!」
 身構えるヨゾラに、『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)が同意する。
 これの先に行くにしろ、何を目的にするにしろ、倒さなければ進めない。
「なら、進むしかない。突き進むしかない。だから、此処は通り抜けるで」
 皆の腹が決まったところで、リドニアも告げた。
「お片付けを始めなくては。奴らが残した物全てに、火をつけて」
 先に進む為、メンバーは蒼の置き土産の排除を開始する。


 蒼の置き土産とイレギュラーズがぶつかる直前。
「敵の注意は私達が引くから、その隙に進んでね!」
 スティアの要請に小さく頷き、妖精は回廊奥へ飛んでいく。
 さて、ルニアの置き土産が面倒な相手なのはもちろんだが、周囲を飛ぶ野良の幻影竜が時折こちらへと降下してくるのも厄介だ。
(気を付けないとね……!)
 これから交戦という状況だが、ヨゾラはその警戒も強める。

「神の御名の元に、貴公らを排除する……」
 青騎士ドミオは跨る馬を進ませ、後続の黒騎士3体を引き連れる。
 刃を煌めかせて近づいてくる騎士達と合わせ、幻影竜が焔を頭上から吐きかけてくる。
「下僕だなんて気取って竜を消しかけて来たって、オレ達の歩みは止まらないぞ!」
 すでにその言葉がルニアに届かなくとも、マッチョは叫ばずにいられない。
 それだけマッチョはやる気が満ち溢れんばかりになっていたのだ。
(黒騎士達を引き付ける!)
 全身真っ黒な騎士らの全身から放たれるは、恐るべき病原菌。
 それは侵した者を様々な異常をもたらす。
 マッチョは纏った英雄の鎧と呼吸による集中で病原菌に抵抗し、戦いの鼓動を高めて黒騎士を自身へと引き付ける。
 黒い霧のようなものを発する黒騎士は、闇の力で満ちたポールアックスでこちらを切り裂かんと振り回すが、マッチョはしばしそれを受け止めて仲間の攻撃の機をつくる。
(以前、黒騎士は名持ちと戦った事があるが)
 それに比べれば、今回の黒騎士は同じ病原菌持ちであれ個々の能力は格下だ。
 とにかく異常攻撃を警戒しつつ、雷鳴の神を一時宿したアルテミアは黒騎士へと肉薄する。
 勢いそのままに、アルテミアは残像を展開して狙った黒騎士を手数で一気に切り伏せようとするが、敵も堪えていたようだ。
 リドニアもまた、黒騎士を狙う。
 この場は仲間と合わせ、アルテミアの攻撃した敵へと追撃をかける。
 着実に1体ずつ叩きたいが、他の敵が邪魔をする。
 低空飛行する幻影竜は炎を吐きかけ、鋭い牙や爪を突き立ててきた。
「さくさくと、ざくざくと障害を撃ち滅ぼして先を急ぎましょう。どうせ話は死体からでも聞けるのですから」
 鼓動を高める『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)はそれらを強く引き付けて仲間から距離をとる。
 ただ、数々の異常攻撃をもたらす黒騎士は最優先と瑠璃も考えており、幻影竜の攻撃を捌きつつ黒騎士を狙い撃つ。
 そしてまた、幻影竜から距離をとり、できる限り攻撃を食らわぬよう立ち回っていた。
「……排除する」
「予言によれば、刻印のない人達を殺す為の騎士なんだっけ?」
 抑揚のない口調で語る青騎士に、スティアが呼びかけるが。
「神の領域に踏み込む不届き者め……」
 一応は意思の疎通こそできるようだが、相手は機械的にこちらを攻撃してくるのは変わらない。
 今は領域を護る為に動いているようだが、やがてその神の命で外へ……混沌へ足をのばしてくるのは想像に難くない。
「そんな危険な敵を外に出す訳にはいかない!」
 必ず倒すべき相手だが、仲間達が他の敵を掃討するまで、スティアは仲間を敵の放つ広範囲の雷や槍の薙ぎ払いに巻き込まぬよう、魔力に転じた強い意志を叩き込んでいく。
「邪魔するなら倒して進んでくんや!」
 意気揚々と彩陽は弓を射て、無数の矢をばら撒く。
 すでに突撃戦術をとっていた彩陽だ。
 彼は相手の位置に注意して極力距離を維持し、さらに矢を射放つ。
「呑み込め、泥よ……黒騎士達を全て飲み干せ!」
 ヨゾラもまずは星空の泥を巻き起こし、敵陣へと浴びせかける。
 少しでも早く敵の数を減らすべく、ヨゾラは魔術紋を光り輝かせて効率よく術を使えるようにし、再び詠唱を始めていた。
「さらに真っ黒に染まってしまうがいいっす!」
 レッドもケイオスタイドで前方の敵の運命を黒く塗りつぶす。
 そんな中、早くも黒騎士の内の1体の動きが鈍り出したのを、レッドは見逃さない。
「風穴を開けてやるっす!」
 自らの精神力を弾丸に変え、レッドが重火砲魔導具より撃ち出す。
 見事に黒騎士の体へと風穴を穿ったことでそいつは落馬し、馬共々消え去ったのだった。


 周囲に響く異言は何とも不気味だが、イレギュラーズはそれらに耳を貸さず、眼前の敵の討伐に専念して。
「この先で待つ仲間達の退路を確保する為にも、押し通らせてもらうわよ!!」
 残像が見える程のスピードで、アルテミアは馬から本体まで黒騎士を切り刻む。
 アルテミアが繰り出す最後の一閃でどす黒い何かが零れ落ちたかと思うと、黒騎士は爆ぜ飛んで姿を消した。
 もう1体はリドニアが追いこむ。
 邪道の極みともされる殺人剣で、彼女は確実に眼前の敵を滅するべく始末する。
 容赦なく振り下ろされるポールアックスは仲間が止めてくれている。
 その首へと突き入れた冷たいリドニアの刃が、黒騎士にとどめを刺した。
「ふがいない……」
 青騎士は引き連れた黒騎士全てが消え去ったことに小さく頭を振り、自らを抑えるスティアへ槍を突き出す。
 ただの槍ではない。グレイブとも称されるその槍は薙刀を思わせる。
 騎乗用の槍は突くことに特化しているものも多いが、青騎士は重量あるその武器を軽々と振り回す。
(攻撃は最大の防御って言うしね)
 敵の余力を削る為にも、全力を尽くさねばならないとスティアは考える。
 相手が攻めてこられぬようコテンパンにしようと、スティアは極小の炎乱を舞わせて青騎士の体を焦がす。
「これ以上、天義の国が荒らされるのはもう嫌だから……」
 これまで、聖教国ネメシス……天義の民は幾度も戦火にさらされてきた。
 流す必要のない多くの血が流れ、孤児になった子供も多く犠牲となった。
 だからこそ、スティアは皆が笑顔になる国に出来ればと力を尽くしているのだ。
 こんなところで負けてなどいられない。
「黒幕を引っ張り出すお仕事もある訳だし!」
 次に繋げる為と奮闘するスティアに、青騎士は黙したまま乱撃を浴びせかける。
 そこに、彩陽もまた青騎士と対するべく近づく。
 すでに、スティアが幻影竜から青騎士を話していたこともあり、彩陽も単体で攻め立てる形をとる。
 距離を維持したまま、彩陽は相手の力を削ぐべく弓矢で狙撃を続ける。
 強い力を持つ青騎士だ。
 力を封じ続けることは難しいが、一時的にでも止めれば、それだけ仲間が他の敵を倒す時間を稼げるはずだ。

「続いて、幻影竜……」
 リドニアは進路を塞ぐ2体に注目し、威圧して委縮させようとする。
 絶対に倒すべきはルニアの下僕と化した2体だが、周囲に飛来する無数の幻影竜はこちらを狙っており、時折炎を吐き掛けてきている。
 その力は本物の竜種とは比べるまでもない。
 ただ、あれだけの数が天義などを襲撃するのかとヨゾラは想像してしまって。
(……冠位傲慢達をぶちのめして、阻止しないとね)
 一呼吸置き、ヨゾラは目の前の幻影竜へと星空の泥を浴びせかけ、次なる一撃に備える。
 シャアアアアアアアアア!!
 奇怪な鳴き声を上げ、頭上から強襲してくる幻影竜。
 そのタイミングを見計らい、瑠璃は圧倒的な速力をもって幻影竜を地に落とそうとする。
 相手は思ったよりもタフな敵。
 レッドはここでも魔力を放って幻影竜へと叩きつけていたが、その鱗は思った以上に堅く、貫通には至らない。
 宙を舞うのは幻影竜だけではない。
 アルテミアも飛行し、加速して対する幻影竜の背にしがみつく。
(さすがに、空は相手のテリトリーだけど……)
 こちらが不利なのは承知。
 それでも、アルテミアは頭、喉、鳩尾を一突きし、さらに双炎の蒼と紅を乗せた一閃を浴びせかける。
 だが、そいつはまだ息があり、激しく抵抗して翼をばたつかせる。
 それを、マッチョが地上から見上げて。
(幻影でも、竜がいる)
 マッチョはこの先にあるという庭園に誘われたというイレギュラーズも気にはしていた。
 敵地に残された彼らを助け出したい。
 ローレットとしてもそこにいるという魔種を放ってはおけない。
 それらもマッチョの本音に間違いはないのだが、それらは一番ではない。
(幻影でも、竜がいるなら、オレはそれを無視するわけにはいかない)
 マッチョのライバルはこの世で一番強い竜を倒したという。
 ならば、例え偽物であろうと、竜からは絶対に逃げられない。
「オレはあいつに負けたくない、勝ちたい!」
 強い意志を持ってマッチョは毒手で竜を掴みとり、蹂躙せんと激しい乱打を浴びせかける。
 ア……ァ…………。
 ついに鳴き声すら上げることができなくなり、そいつは目から光を失い、地へと墜ちてしまった。

 もう1体の幻影竜にもメンバーの攻撃が集中する。
 身をかがんで急降下を避けたリドニアはカウンター気味にアッパーカットを見舞う。
 速度も乗って手応えは十分。
 クワアアアアアアアアアッ!!
 だが、幻影竜は広範囲に炎を吐き掛け、メンバーを炎に包もうとする。
 瑠璃はすぐさま傷を塞ぎ、忍者刀に仕込んだワイヤーを操って堅い幻影竜の体を穿ってみせた。
 野良の幻影竜も炎を吐き掛けるが、アルテミアは意にも介さず攻撃を繰り返す。
 炎暖かな陽光、風光によって仲間を焦がす炎を消し去ったレッドが禍つ爪を食い込ませれば、ヨゾラが追撃して。
「幻影の竜……その名のごとくに消え失せろ!」
 魔術紋を輝かせたヨゾラの一撃が幻影竜を粉砕し、虚空へと消し去ってみせたのだった。


 これで、討伐すべき相手は青騎士ドミオのみ。
「刻印で世界が変わるとお思いでして?」
「無論だ」
 リドニアの問いに、青騎士は一時戦いの手を止め、即答する。
 神から分け与えられし存在である以上、神の意志は絶対なのだろう。
「もし仮に、あなた方が言うように今までの世界がウソ偽りだとしても、人がやる事は何も変わりませんわ」
 それでも、リドニアは訴えかけずにはいられない。
 人々は信仰する神を変えただけで、今まで通りのことをするだろう、と。
「……要するに、その変わった世界で貴方たち何がしたいんですの? 神様ごっこを気取るくらい?」
「神を……愚弄するか」
 不気味に瞳を光らせる青騎士。
 それに呼応するように、周囲の幻影竜複数体が高度を下げてくる。
「幻影竜……来るよ!」
 ヨゾラが注意喚起するが、青騎士へと意識を集中させた者も多い。
 シャアアアアアアアアア!!
 アアアアァァ、アオオオオオオオォォ!!
 根源たる力を泥と変えて浴びせかけていたレッドへと群がってきた幻影竜。
 それらが吐き掛けた炎を、マッチョが庇う。
 連携をとって槍を薙ぎ払う青騎士の一撃で、マッチョの意識が途絶えかける。
 さらに、距離をとっていたはずの瑠璃へといつの間にか青騎士が攻め入る。
 青騎士の攻撃に呼応して降り立つ幻影竜。
 強者につけば、獲物にありつけるとすら考えているのかもしれない。
 距離をとってから狙撃しようとする瑠璃だが、素早い幻影竜の炎に対処が遅れる。
 体に引火する炎の威力は軽減できたが、一気に距離を詰める青騎士の刃で、瑠璃は一時視界が真っ暗になってしまう。
 マッチョも瑠璃もパンドラの力で戦場に立ち続けていたが、再び相手を食い止めるスティアが花弁を象る魔力の残滓で傷つく仲間を癒す。
「先に進まなきゃいけないんだ、誰も倒れさせないよ……!」
 ヨゾラもまた回復支援に回り、星空の頌歌を響かせる。
 油断ならぬ力を持つ青騎士、すぐさま飛び去って上空から攻撃の機会を狙う幻影竜、いずれも厄介極まりない。
 ともあれ、青騎士を始末していち早く回廊を通り抜けたいところ。
 槍を突き上げた青騎士がこちらへと雷撃を落とそうとしたその瞬間、アルテミアが飛び込んで出鼻をくじく。
 アルテミアはそのまま残像と共に青騎士を淡い青の剣身を持つ短剣で攻め立てていく。
 彩陽も距離を維持し、魔力の矢を突き刺して青騎士の力を削ぎ続ける。
 どんなに距離があっても、機動力の高い青騎士は一気に距離を詰めてくる。
 先程、仲間が倒されかけたのを見て、彩陽は一層注意して距離をとるよう意識し、弓……剔地夕星を携える。
「どんどん削ってしまいましょう」
「いくっす!」
 彩陽の矢が突き刺さる青騎士に、レッドが精神力を弾丸に変えて叩き込むが、さすがに相手も直撃は防いでいた様子。
「神の代行たる我が、倒れるわけにはいかぬ……」
 静かに怒りを燃え上がらせる青騎士だが、その突貫をスティアが阻止する。
 その威力は決して小さくはない。
 思った以上に冷静な相手は仲間にも危害を加えてこそいたが、スティアはここまで倒れることなく敵の抑えに注力する。
 異言がちらほら聞こえてくることで、気分を害するメンバーもいたが、マッチョがカリスマを乗せた声で鼓舞して。
「心配するな! オレ達はここを通る、全員でだ!」
 ここでもたついていると、先に聖女の所で待つ『仲間』に心配されかねない。
「迎える破滅……怠惰かつ傲慢。まるで意味を成しませんわ」
 一気に始末せんと、リドニアは静かに告げる。
「蒼熾の魔導書、起動」
 ――私たちは火をつけますわ。あなたたちが残した全ての火種に。消し炭も残さず。
 詠唱を続けるリドニアの傍、ヨゾラが星空の泥を浴びせかける。
 不調のせいか、唸る青騎士へ、2人が攻撃を仕掛けて。
「蒼の後継者は私。あの女ではない」
 リドニアは青い魔力を剣にしたものと、自身の体で魔力を纏わせた殴打で連撃を繰り出す。
 加えて、ヨゾラが拳に強い力を込めて。
「厄介な置き土産も……貴様で最後だ! ぶちのめす!」
 全身を輝かせ、ヨゾラは零距離から青騎士にその力をぶつけていく。
 ついに、青騎士は落馬してしまって。
「おお、神よ、お許し、く、だ……」
 謝罪の言葉を言い切ることなく、青騎士もその姿を消し去ったのだった。


 レテの回廊に立ち塞がる置き土産は排除したものの。
 シャアアァァ……。
 オアアァァァァァ……。
 周囲には無数の幻影竜が飛び交う状況は変わらない。
「ここに長居はできないね」
 いつまたそれらが襲ってくるか分からない。
 皆の手当てを行うヨゾラは倒すべきは殲滅したから、この場を一気に突破しようと皆に促す。
 その間、スティアが事前に飛ばしていた妖精が戻っていたようだ。
「……この先、神殿があるみたいだね」
 異言が聞こえてくるここもそうだが、神殿は華美な装飾が印象的な一方で『原罪の呼び声』が響く恐ろしい場所なのだとか。
 だが、そこにはルニアも、遂行者ナーワルもいるはず。
「後で探し出して対処しないとね……!」
 ヨゾラは仲間と共に、その神殿を目指して再び駆けだすのである。

成否

成功

MVP

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは悩みましたが、強敵を抑えていた貴方へとお送りします。
 今回はご参加ありがとうございました。

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