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シナリオ詳細

<泡渦カタラータ>失ったモノへの鎮魂歌

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ああーー。
 ここはなんと、暗いところなのでしょう。
 ここはなんと、寒いところなのでしょう……。
 光は遠く、遠い、この世界の遥か天上にあり、それは恐らく、こちら側にはきっと届かない。
 分厚い隔絶の一線が、隠してしまっているから。
 ……いいえ、それはきっと、忘れてしまっているのでしょう。
 底に沈んだ者達の事など。
 かつて天上を仰ぎ見ていた者達の事など。
 それは忘れてしまったのでしょう……。
 この世界の上に住む者達は、盆から溢れ落ちた私達の事を、不要な記憶と捨ててしまった。
 それは。
 それはなんて憎らしい事だ。
 なんと許し難い行いか。
 ーー思い知らせてやろう。
 忘れたのならば、思い出させてやろう。
 そしてこの禍々しき怨嗟を刻み込み、ここまで落としてやる。
 この海の底に、沈めてやる。


  サーカス団『シルク・ド・マントゥール』の事件。
 大討伐に参加したイレギュラーズも多く、未だ記憶に新しい事だろう。
 しかし、一旦の終息を迎えたその事件は、全ての問題を排除出来た訳ではなかった。
「俺達の手から、逃げ延びた魔種がいるのは、皆なんとなくでも気付いていただろう」
 集まったイレギュラーズを前に、『黒猫の』ショウ(p3n000005)はそう言った。
「ソイツが今、海洋を拠点に据え、首都リッツパークの近海に大渦を発生させている」
 放置すれば、魔種の活動の後押しになるのは間違いない。
 だから今回、海洋の女王と貴族代表の両名から、渦への対処依頼が来た。
 いつもの8~10人程のチームを幾つか作り、渦の発生原因を探ると共に、渦の内部調査を行うと言う依頼だ。
「海種はいいとして、他の皆はそのままじゃあ海に入れない。そこで、練達の研究者『佐伯・操』から、渦へ乗り込むための装置の使用許可を貰ってきた」
 これも、今までのイレギュラーズの功績あってのことだ。

「さて」
 全体的な説明の後。
 別個に集められてそこに居るのは、八人のイレギュラーズだ。
「君たちへの説明を始めるよ」
 練達から得た、渦の中にあっても自由に息をする事ができる装置。海中戦闘用スーツ・ナウス、と名付けられたそれで、今集まったイレギュラーズが当たる仕事。
 それは。
「屍骸の排除だ」
 渦の中、そこに集まる無数の骸達。
 ただ地上に生きる者達への怨念と妬みを原動力に、生命を自分達と同じ所へ落とす為に活動する魔物だ。
 それを、根こそぎ倒す。
「恐らく一体一体の強さは特筆するものはない。だが、数は異常であり、脅威だ」
 なにせ渦の中での戦いだ。
 息は出来るしある程度の動きも取れるが、バランスを崩したり、更に底へと引きずり込まれれば、渦の強い流れに浚われるのは必然だ。
「そうなったら、大怪我じゃすまないかもしれない」
 それくらいの危険性はある。だが、防ぐ事も可能だ。
「だから、注意は必須だけど、恐れないでくれ」
 全員無事に、仕事を果たして地上に戻れるはずだ。それだけの力がある。
 と、そう信じて、
「存分に、力を発揮してくれ」
 ショウは、八人を送り出した。

GMコメント

 ユズキです。
 またもは物語は進みます。その一端を、少し、描かせてくださいね。

●依頼達成条件
 渦の一角に存在する、無数の屍骸の殲滅。

●現場
 渦の中です。
 比較的緩やかな流れなので、スーツの力と相まって、場に留まる等の動きは可能です。
 また、担当区画内を意識して、流れを利用して移動するのも可能でしょう。
 海の中ならではの動きを考えると、楽しいかもしれませんね。

●屍骸について
 どことなく人の形をしている様な敵です。
 特別な攻撃は特にありませんし、攻撃レンジは近か至です。
 ただし、OPにある通り、数は異常です。
 生あるものへの執着が強く、ただ皆さんに襲いかかることでしょう。

●その他
 沢山の依頼の中、こちら、基本的にバッタバッタとぶちのめす系です。
 しかし油断出来ないのはどれらも同じ。
 頑張って成功、させましょうね!
 
 海で息が出来るなんてナウいねぇナウスだけにながははは!
 とOPに盛り込まなかった私をほめながら成功させましょうね。

  • <泡渦カタラータ>失ったモノへの鎮魂歌完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月23日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクア・サンシャイン(p3p000041)
トキシック・スパイクス
ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
黒杣・牛王(p3p001351)
月下黒牛
ライネル・ゼメキス(p3p002044)
風来の博徒
スフィエル・モフ・ケルベリーゼ(p3p002316)
ケルベリーゼ
凍李 ナキ(p3p005177)
生まれながらの亡霊

リプレイ

 渦の中、暗く淀んだ底の其処に、穏やかで無く在る者達へ。
 今は亡く、想いだけが重く、ただ居る者達へ。
 ソコへ今、私たちは、落ちていく。


 透明な水中に、8人はいた。
 渦を巻く海面から少し遠くに船を停め、『ナウス』と名付けられた海中戦闘用スーツに身を包んでダイブ。そのまま、廻る流れの渦に近づこうとする所だ。
「科学って凄いわよね……、!?」
 そう呟いた『ちょーハンパない』アクア・サンシャイン(p3p000041)は、水中で問題なく聞こえた自分の声に驚く。
「……魔法で出来ないことを平然とやっちゃうのね」
 思うが、直ぐにそれを否定する。
 いや、そうじゃない。
 結果に至るまでの過程の時間。それを思えば平然ではないのだろうと、アクアは思い直す。
 そうして水中での動きを確認しつつ行く中で、動きの練度が違う者達がいる。
「……正直……泳ぎは、不得意なのだが」
 言いながら、不自由さを感じさせずに『蒼焔のVirtuose』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)が底に進む。
 リッツパークの出身でありつつ、水中を不得手に捉える彼を支えるのは、スーツと水中行動のスキルだ。
 また、同じようにスキルを活用する『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)も上手い。
 沈む為の動作は最小限に。少し動きを確かめるように、前後左右と上下にして。
「なるほどなァ」
 スーツの破損や故障に備えて得たスキルだが、スーツの性能と合わさって効果の上昇を感じる。
 そして、動きを確かめて見る先。
 光の及ばない世界が、レイチェルの視界を染める。
 超常と言える視力をもっても見えない闇が、敵の領域。そしてそこからこちら、侵入した生者に向けられるおぞましいほどの敵意を、イレギュラーズ達は感じていた。
「生者への執着、執念か。とうの昔に命を亡くした死骸が、随分と立派な感情を持ったものだ」
 ふ、と、息を吐き出しながら『戯言の灰』リュグナー(p3p000614)は呟く。
「怨念が立ち込めた海、ですか」
 それに『月下黒牛』黒杣・牛王(p3p001351)が頷き、続ける言葉は決意を込めて、
「私に出来ることと言えば、怨念が静まるまで堪え忍ぶぐらいです」
 言う。
 予測では相当数の群れだろうが、受けて見せると。
「海中の博打は初めてだが、やれやれ、サイコロも振れやしないな」
『当たり前だワン』
『というか持ってきてるワン?』
 気楽な声の『風来の博徒』ライネル・ゼメキス(p3p002044)に、『ケルベリーゼ』スフィエル・モフ・ケルベリーゼ(p3p002316)と鎖で繋がる仔犬達が呆れる様に吠えた。
 本人はもちろん、仔犬二匹もそれ用に急遽仕立てたスーツ着用だ。
「……すごい格好だ」
 はは、と声を出すライネルに、スフィエルの本体も笑う。
「ま、とにかく……いよいよ本番みたい」
 青海の底、暗闇がぐにゃりと盛り上がる。
 湧き出したソレは、塊になるほど群れた死骸達だ。
「辛いですよね」
 その動きを、『小さな亡霊』凍李 ナキ(p3p005177)は憐れむ様に見る。
「忘れられるのは、無視されるのは……我慢ならない怒りでしょう」
 ボクもだ、と。
 そう思う。
 許しがたいとも。
「けれどそれはそれ、ボクらは依頼を受けてここにいる。貴方達をもう一度眠らせる為に」
 すぅ……と息を吸い込む。
 スーツ特有のゴムに似た臭いを口から感じつつ、目の前、仮初めの体に潜む魂達に向かって、彼は命令する。
「ーー沈め!」


 きたぞ。きたぞ。贄達だ。命有る者達だ。
 赦さない。許せない。忘却を。攻撃を。
 二度も底に落とそうなどと。
 我等を殺そうなどと。
 理不尽を看過しない。
 ーー故に、殺す。


 それは一瞬だった。
 緩やかな山の様な曲線で膨れる死骸の群れが、ナキを目掛け、矢の鋭さを思わせる程の集中で海中を進んだ。
 原因は、さっきの一言だ。
 今まで沈み、苦痛を味わっていた者達への命令としての言葉。それが、本能のみで動く死骸を引き付けた。
「出ます……!」
 そのナキの前へ、牛王が割り込む。
 体を死骸の方へ向かい進ませて、短く空気を肺に込めて、叫ぶ。
「生者、黒杣牛王、お相手します!」
 音は波だ。水を伝わる振動が死骸を叩くと、その範囲内の群れは一斉に牛王へ殺到する。
 その時点で、数えるのも億劫な程数が多い。
「……どういう人達だったのかしら」
 その群れに、両手の照準を向けながら思うアクアは、一つ息を吐く。
 成れの果て、水底で腐り落ちた肉体で人を襲うその姿に、彼女は同情を覚えていた。
 だからこそ、
「今生きている人を守るため、そして、かつて生きていた人の尊厳を守るために」
 放つ。
 牛王に向かう死骸の中心から発生するガス性の霧が、水中を紫に変色させて死骸を毒で腐らせる。
 それで、範囲内の死骸はことごとくが死滅した。
「脆い……ですがっ」
 ガスの残滓を掻き分けて来る死骸の数はまだ多い。
 すがり付く様に掴み、怒りに任せる様に殴り、感情のままに噛み付く。
 それらが牛王に群がり、覆い隠されていく。
 数の暴力だ。
 連なり、底と牛王とを死骸が繋げる。
 そしてそれは、生者を引きずり込むための、死のエレベーターと化した。
『おばけいっぱい怖いワン!』
『もじゃもじゃ敵が次から次へとワン!』
「あー、もう! 多い!」
 させまいと行くスフィエルの爪が、死骸を切り裂く。
 払う様に裂き、割るように裂き、薙ぐ様に裂いて、深く連れられる牛王に向かう。
 が、
「……まるで壁……だな」
 これが歴史の大海に忘れ去られた者達の力か。
 と、そう思うヨタカは、スフィエルが行く攻撃の合間を埋める様にして死骸を撃つ。
 放つのは、真っ直ぐに行く光の魔力砲撃だ。脆い死骸はその光に焼かれ、複数体を一挙に蒸発させるが、まだ、届かない。
「不味いか……こうなれば巻き込んででも」
「ーーいや、狙うのはそこじゃない」
 牛王の周りを纏めて倒す範囲魔術。それを使おうか、と思うリュグナーの動作を、レイチェルが遮る。
 そうして呼び止めた彼女を横目で見たリュグナーは、その目が見る視線の先を追い、
「ああ」
 即座に理解した。だから、二人は同一の魔術を準備する。
「我が下だ」
「俺が上な」
 狙うのは、闇の底と繋がる死骸の群れ。その根本をリュグナーが請け、その範囲より上をレイチェルが撃つ。
「俺の眼は特別製ーー狙い目は逃さないぜ」
 黒と緋、二色の霧が花を咲かせる。
 根本の大部分を殺意の霧に包まれ、肉体の形を失う死骸達の先から、牛王が這い出て来た。
「いい博打だ」
 ニィッ、と笑うライネルは、その意味を悟った。
 底へと向かうのだから、その道を消せばいい。後を追うよりも確実で、簡単な救出方法だ。
 そうして彼は、離れる牛王へ追い縋る死骸を、超距離から撃ち殺す。
 ……随分巻き込んだと思ったんだがな。
 散り、破片となって底へ消える死骸の数はかなりの数だ。
 しかし、それでもまだ、足りない。
 足を交互にバタつかせ、腕で水を叩いて浮上して、仲間と合流する牛王を追う敵は少ない。が、散らばった分、その数のひしめきがハッキリと見てとれる。
「手強い、ですね」
 手にした霊気の弓を前にーーいや、牛王を追う敵に向けて下げたナキが言う。
「……魂の強さでしょうか」
 自分にも覚えがある、憎しみの感情。
 底から溢れてくるそれは、馴染み深い物だ。
 だからこそ。
「沈めます」
 弓に番えるのは黒い剣だった。
 死者の、渦の底から溢れる憎悪を束ねて、研ぎ澄ました物だ。
 引き絞り、それを眼下に向けて射る。
 闇に溶ける黒が、死骸を貫いて底に落ちた。


 海中に潜ってから、どれほどの時が経っただろうか。
 幾ほどの死骸を塵にしただろうか。
 底に蠢く死骸の数は、目に見えての減少を報せない。
 戦いの終わりを、それは知らせない。
 体力ではなく、精神のすり減る時間が続く。
『なんか、やな感じがするワン……!』
『危険が迫ってくるワン!』
「もう既に危険なんだけど!」
 まとわりつく死骸を爪で裂きながら、スフィエルの仔犬が鳴く。
「……くっ」
 死骸の牙が、スフィエルの脇腹を深く噛む。
 鋭い痛みを堪えて殴り飛ばし、しかし滲んで溢れる赤い色が海に溶け、
「……嘘だよね……!?」
 その生きた証に引寄せられた死骸がスフィエルを目指した。
 いや、それだけではない。
「底から死骸が溢れてくるぞ……!」
 無数の死骸が、渦の底から突出してくるのがイレギュラーズの目に映る。
 それらがそれぞれ、8人に向かってバラけていた。
「近寄られる前に、倒すしかないわね!」
 言うが速いか、アクアは前方範囲を指定した毒霧を発生させる。
 群れて寄せる死骸を、紫の色が染め、
「……!?」
 掻き分ける様に、死に逝く死骸を盾にするように、霧を抜けて死骸が行く。
 無防備なアクアの、活力に満ちる肉を喰らうべく、殺到する。
「……離、れろ……!」
 その寸前に、ヨタカが割り込む。
 水中を走り、手でアクアを押し退けて庇ったのだ。
「全員距離を取れ、群がられたらヤバイ……!」
 死骸に覆われるヨタカを横目で認識しながら、レイチェルは水を蹴った。
 確かな感触を得て海中を跳ねる体は加速し、流れる。
 渦の行く方、横手へと、だ。
 それでも追い縋る数匹には、吸血鬼の膂力をもって切り裂いて捨てる。
「距離と言われましてもっ」
『このままじゃ皆で土左衛門だワン!』
 ナキとスフィエルの移動速度を、死骸は上回って行く。
「このような畜生でも、出来ることはありましょう」
 その二人の間を、牛王は行く。
 声高に叫ぶ音は死骸を引き寄せ、一身に受ける負担は大きく、しかし。
「私が全力で、受け止めてみせましょう」
 覚悟の上で彼は、引き受けた。
「スーツの性能だけじゃあ不足ってわけだな」
 泳ぐ様に離れるライネルは、個々人達の動きの差に、どこか冷静にそう理解する。
 そうして落ち着いた視点で、群がってくる死骸を引き寄せた彼は、前面に魔力弾を形成した。
 待ち構え、迎撃の体勢をしかし、死骸は理解しない。故に、
「海に還れ、ってな」
 扇状に射撃されるそれに、容易く存在を掻き消される。
「貴様らの生者に対する最後の抵抗、そして悪足掻き。我がしかと、記憶した」
 腕に噛みつく死骸を引き剥がし、リュグナーが笑った。
 血に赤く染まる手を、迫る群れに向けて翳し、術式を開く。
「生き様を……いや、逝き様を、この瞳で記憶してやる。だから」
 炸裂する。
 群れの中心から、瞬く間に広がる殺傷の魔術が範囲を包み、抵抗の間も与えずに消し去っていく。
「冥土の土産というやつだ。もっとも、冥土から来た貴様らには、今さらかもしれんがな」
 戦場に残る死骸は、もう後、少し。

 視界が黒になる。
「げほ」
 耳に煩く聞こえる声は、自分のモノだ。
 スーツの排出パイプから海中に漏れ出る気泡は、今、自分が吐き出した空気のモノだ。
 五体から力が抜ける。
 冷たい水温が、徐々に、温かく感じるようになる。
 沈む。
 いや、落ちているのかもしれない。
 それとも、浮いているのか。
 ふわりとする思考の中、目の前を闇にする死骸の影が、こちらを見た。
 顔の無い、空っぽの顔。生を無くした死の顔。
「ーー死ねない」
 思う。
「俺は」
 煌めきに憧れた彼は。
「私は」
 愛しい者への再開を信じる彼は。
「海の底になんて、沈みたく……ない……!」
 まとわりつく死を、振り払う力で吹き飛ばした。

 パンドラの光が二つ、死骸に飲まれたヨタカと牛王から放たれた。
 死ねない思いを胸に、拘束から抜け出す。
「援護するよ! まずは、周りの鬱陶しいのからっ」
「引き離せたら、一気に叩きます」
「いい勝ちの目が見えそうだな、乗るとするか」
 それを、スフィエルが、ナキが、ライネルが支援する。
 爪が、剣が、砲撃が死骸を消し飛ばし、一塊となったその群れを、
「これで終わりよ、もう誰も、襲わせない」
「わりィな、俺達は覚えておくからさ、だから」
「貴様らの妄執の全て、海の底へと帰すがいい」
 アクア、レイチェル、リュグナーの魔術式が包み込む。
 三種の術式陣が囲む空間は、存在する死骸の全てを破壊し、その塵すら海へ溶かす様にして消し去ってしまった。


 担当区画の戦闘後。
 船に戻り、陸地に降り立ったイレギュラーズの振り返る海には、まだ渦がある。
 戦いはまだ、あの場所で続いているのだ。
「死骸達だけでこれほどなんてね。あの奥で戦う皆は大丈夫かしら……」
 アクアは、さらに奥へ向かった者達を想う。
 消耗の激しい身、直ぐ応援には行けないだろう。
『とにかくお疲れワン!』
『帰ってご飯だワン!』
「まあとにかく、ボク達の仕事はおしまいだね」
 スーツから解放された二匹の仔犬は元気よく耳を掻いている。
 その光景に、戦いは終わったのだと、改めて思う。
 そして。
「……泡沫に消えゆく夫々の魂が……どうか、鎮まります……ように……」
 ヨタカの奏でるハープの音が、潮騒に乗って浜辺に響いていた。
「……忘れません」
 そして、ナキは。
 肉体を、存在を、ただ在る事が出来なかった自身と。
 海底に沈めた、彼等と。
 きっと、少し、自分達は似ているのだと。
「祠、造りますね」
 そう思うから、彼は決めた。
 忘れられた者達を、忘れないように。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

参加ありがとうございました。
海の中だーって描写を時々忘れそうになりました、もっと海の妄想しようと思います。
それでは、また、別の依頼で。

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