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シナリオ詳細

<英雄譚の始まり>幽霊船ワンダーサーペント号にて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『プーレルジール』
 ここは異界プーレルジール。
 魔法使いと魔王と勇者の――いや、勇者が勇者にならなかったIFの世界である。
 あなたはそんな世界の港町カルダフェのバーにいた。
「お待たせしました。船の準備が整いましたよ。{ イレギュラーズ }様」
 そう語りかけたのは、青い髪の清らかな女性であった。
 肘や膝は球体関節人形のそれであり、胸には青いコアがついている。貝殻めいた髪飾りは、彼女をこの港町によく似合わせている。
 が、彼女は決してこの港町の住人でもなければ、厳密には人間ですらない。
 ゼロ・クール――『心なし』と呼ばれるしもべ人形である。

 ちょっとした好奇心でもいい、世界を救う手伝いをしたっていい。クレカはそのように話してこの世界を紹介した。
 しかし案内役も『クエスト』もなしとあってはやることが定まらぬ。
 そんな時に声をかけてきたのが、彼女――型式番号Qー82ア号。通称アクアであった。
 彼女のもちかけてきた『クエスト』というのが……この港町に現れるという『幽霊船退治』であった。

●幽霊船ワンダーサーペント号より
 それはある日、海岸での珍事であった。
 釣り好きの老人がこんな荒波で魚などつれないとやじを飛ばす酒飲みたちを無視してバケツと釣り竿を持って桟橋を歩く。
 木の小椅子を置いて釣り竿を垂らそうとしたその途端。桟橋にばしゃりと人の腕がつかまった。
 その枯れ木のごとき細さと白さから目を見張った釣り老人は、あとからぬっと現われた頭蓋骨に悲鳴を上げた。むろん、釣り老人をひやかそうと見物していた酒飲み老人たちもだ。
 どう見ても死体にしか見えない白骨は、まるで間接部が魔法でくっついているかのようにがしがしと桟橋へ這い上がると、震える顎をカタカタ鳴らしてこう述べた。
 ワンダーサーペント号の寄港である。
 乗員を求む。
 乗員を求む。
 報酬は永遠の命。
 対価は永遠の呪いである。
 乗員を、求む。

●幽霊船退治
「ワンダーサーペント号とは、このあたりに出没する幽霊船でございます。
 船は呪われ、乗員は全て『魔王の配下』――」
 そう、この世界は魔王とその配下によって脅かされているのだ。
 幽霊船が度々港街へやってきては人を攫い、『乗員』に変えてしまうというのもその一部。
 放置してはおけぬと騎士が派遣されたものの、出港した船は戻らなかったという。
「ワンダーサーペント号を撃退するには、おそらく皆様の戦力が必要となるでしょう」
 アクアはしずしずとそう述べ、停泊した船を指さした。
 今からこの船に乗り、アクアと共に幽霊船退治へと出かけるのだ。

 アクアは皆が船に乗り込んだことを確認すると、テーブルに羊皮紙を広げて見せた。
「ワンダーサーペント号には『スケルトンセイラー』と呼ばれるモンスターが多数乗り込んでいます。船は夜な夜な海底から浮きあがるように現れると聞きますので、おそらく意図的に沈めることは……難しいでしょう。魚を溺れさせるようなものです。
 船の運転はお任せくださいまし。これでも私、船の扱いは得意なように作られておりますので」
 アクアは胸に手を当て、微笑んだ。
「戦いは船を近づけるまでの射撃戦、船が近づき互いの船に乗り込んでの近接戦闘。その二つに分かれることでしょう。船は一度すれ違えばまた離れてしまいますから、乗り移る際にはくれぐれもお気をつけを」
 そこまで説明すると、アクアは船の舵へと手をかける。
「出港の準備は整って御座います。そちらの準備は、いかがでしょうか?」

GMコメント

●シチュエーション
 幽霊船ワンダーサーペント号と戦い、撃破するクエストが発生しました。
 この戦いは前半戦と後半戦に分かれますので、それぞれ解説していきましょう。

・前半戦
 船が戦闘可能範囲に入ったところで、敵の幽霊船ワンダーサーペント号は大砲による砲撃や銃などによる射撃をおこなってくるでしょう。
 これを防いだり、逆にこちらから攻撃を行って敵の数を減らしておくとよいでしょう。

・後半戦
 船をすれ違わせ、その瞬間に敵の船へと乗り込みます。
 このとき『乗り込むチーム』と『船に残るチーム』を分けておくとよいでしょう。
 なぜなら、敵もまたこちらの船に乗り込んでくるはずだからです。

●アクア
 今回案内役になってくれるゼロ・クールです。
 彼女は船の運転に優れた能力を持っているらしく、同時に回復魔法にも優れています。
 船を運転する役目があるため、船に残るチームに自動的に配属されます。

●エネミー
・スケルトンセイラー
 幽霊船に乗り込んでいるスケルトンたちです。
 魔王の配下であり、『滅び』の気配を纏っています。
 戦闘能力は個体によって様々ですが、特に強力な個体も混じっているでしょう。

●プーレルジール
 境界深度を駆使することで渡航可能となった異世界です。
 勇者アイオンが勇者と呼ばれることのなかったIFの世界で、魔王の配下が跋扈しています。
 この世界に空中神殿やローレットはありませんが、かわりにアトリエ・コンフィーがイレギュラーズの拠点として機能しています。

●ゼロ・クール
 魔法使いたちに作られたしもべ人形です。魔法的にプログラムされた感情や知識を有しています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <英雄譚の始まり>幽霊船ワンダーサーペント号にて完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老練老獪
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

リプレイ


 遠い彼方に船が見える。
 双眼鏡を下ろし、ゼロ・クールのアクアは頷いた。
「幽霊船が見えました。おそらくあれが魔王軍のワンダーサーペント号でしょう」
「魔王……」
 『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)はいつでも戦いに持ち込めるように、妖力の衣を自らの周囲に展開した。薄く紫色の霧のようにみえるそれは、彼が盾役として活躍してきた証のようなものだ。
「恐らく混沌では勇者の倒した魔王、ですよね。
 倒されていないとこういうことになるということなのでしょうか。
 とはいえこの世界ではこれが現実、これ以上の幽霊船の暴挙は防がなければなりませんね」
 そんな様子を横目に、潮風にあたる『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)。
(港街へやってきて人を攫い、”滅び”を纏わせるということは、纏わせる側の、主となる存在がいるのでしょうか。いずれかのスケルトンがそうなのか、あるいは、船そのものなのか。元が人であれば、そこにまだ、魂も在るのでしょうか……)
 二人の準備も充分なようで、『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)もカタナをすらりと半分ほど抜いてからあえてかちんと鞘に戻した。
 これまでずっと共に戦ってきた戦神特式装備第弐四参号『緋憑』、戦神異界式装備第零壱号『奏』だ。予備武装は実はもっとあるのだが、この二本だけをぶんまわすスタイルがなんだかんだで気に入っている秋奈である。
「天候よし! 視界よし! 足場は……うん。絶好の出航日和だぜ!
 どこまでも青い海! ありったけの夢をかき集めるんじゃーい!
 幽霊船見なかったことにできない? だめ? だめかー! ぶはははっ」
 細かいことは気にしないといった風情で笑う。
 『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)のほうも細かいことは気にしないつもりらしく、自らの『武器』をむき出しにしている。
 そう、つまり彼女の鍛え抜かれた筋肉もとい肉体である。
「あの幽霊船をどうにかすればいいんだな? 了解した」
 いつでも海に飛び込む姿勢でいる彼女の一方、同じように海に飛び込める姿勢(?)で下半身をくねくねとさせる『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)。
「わたしが、船の、天敵なのは……異世界でだって、おなじですの」
 虫も殺せないような顔をしているわりに、なんだかんだ海戦船戦は山のように経験しているノリアである。
 皆がしっかり対応している様子を見て、『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)は若干の驚きを抱えていた。
(これは、なかなか。幽霊船とはそう聞かん話だと思っていたが、やはりIFの世界ということか?
 船もこうして実際に目にするとかなり威圧的だな。やはり討伐するしかないものだと思わされる)
 だがここは戦場。吼龍の籠手をきゅっと引いて、自らの愛刀『海燕』に手をかけた。
「ワンダーサーペント号……永遠の命も永遠の呪いもお断り、だよ。
 もう人を攫わせない、もう乗員は増やさせない。
 頑張って撃破するよ!」
 『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)がやる気十分に魔力をこねこねとし始める。大体は治癒に使われる魔力だが、今回はどうやら攻撃敵な魔力をこねている様子だ。
 中間の準備はバッチリらしい。
 『あの子の生きる未来』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)はレバーアクションライフルに弾を込め終えると、自らの義手をぽんと叩いた。
「永遠なんざ端から興味もねえし、捕らわれるなんざまっぴらだ。
 既に船としても死んでんなら、とっとと海の藻屑へ還りな」
 そして、敵をにらみ付ける。
 戦闘可能範囲に、今――。


 射撃が可能になったせいだろう。幽霊船ワンダーサーペント号から無数の弾丸が飛来してくる。
 私の後ろに隠れてくださいとばかりに前に出たグリーフは両腕を交差させるような姿勢で防御。展開した魔術の障壁とあわさり、銃弾はグリーフの身体によってぱちぱちと止められていく。
 どうやら相手の船の武装はバラバラであるらしく、マスケット獣の弾が飛んできたり9ミリ弾が飛んできたり矢がとんできたりと滅茶苦茶だ。
「ぶははっ!よう来たのう、幽霊船!
 海のもずくになるとも知らずににのう!三杯酢でいただきます!
 あっ、つい芸人魂に火がついてしまった」
 対抗する形でグリーフの後ろからサッと姿を見せる秋奈。
 納めておいた刀をダブルで抜刀すると、交差した斬撃がそのまま光となって飛んでいき敵船へと命中、脆いスケルトンセイラーはこれだけで吹き飛んでいったようだ。
「舵は任せよう、アクア。こちらも、護りは任された。心持ちをしっかりとな。頼んだぞ」
 こちらも負けていられぬとばかりに前に出る十七号。
 刀を大きく構えて振り抜くその技の名は『真空』。衝撃波がそのまま敵へ直撃し、激しい【ショック】と【怒り】のBSを与えたようだ。
 ならばと次なる剣を構える十七号。彼女を撃ち落とそうとライフルで狙いを付けるスケルトンセイラー。射撃と斬撃が同時に行われ――空中で弾丸が切断。直後にスケルトンセイラーの首もまた切断される。それでも生きているのか、ライフルを持ち直し地団駄を踏んでいた。
 おそらく船が近づいてきた頃には血相を変えて(血も相もないが)こちらの船に飛びかかってくることだろう。
「敵の砲弾、来ます!」
 アクアが叫ぶと、鏡禍がその前に出た。
「任せてください!」
 ルーンシールドを即座に展開。濃くなった妖力の霧が巨大な鏡の様相を成して、砲弾を空中でがしりと受け止め海へと放り投げる。
 本来ならそのまま吹き飛ばされてもおかしくない筈だが、鏡禍はそれに耐えられるだけの頑強さを既に備えているということだろう。実際その場に踏みとどまるのではなく若干浮遊するという形で船の上に立っているので、それもクッション変わりになっているようである。
「おいおい、砲弾も受けられるのかよ。負けちゃいられねえな」
 にやりと笑ってライフルを構えるバクルド。
 狙うはスケルトン――ではなく、彼らが船に抱えている砲台だ。
「大砲を並べている砲甲板、弾も火薬もあろうが出すもん吹っ飛ばしゃただの重りだろ?」
 なら一緒にとばかりにこねこねしていた魔力を解き放つ祝音。
「魔哭にゃんにゃん轟滅波! みゃーーーー!!」
 二人の射撃は大砲を撃とうとしたスケルトンセイラーへと直撃。そのまま砲手は吹き飛び船のなかを転がっていく。
 よっしゃ次だと隣の砲台を狙う。相手の砲撃が放たれるが、それを鏡禍がキャッチアンドリリース。バクルドたちが狙撃――というコンボが続いていく。
 その一方でノリアと昴が何をしているのかと言えば、船から飛び降りて水上を走っていた。
 正確には昴が水上を、ノリアが海面すれすれの水中をである。
 船への接近に気付いたスケルトンセイラーが撃ち落とそうと船から射撃するも、ノリアは飛んできた弾を熱水噴出杖でもってカキンを打ち返してしまう。
 そのまま昴は海面を蹴って跳躍すると、『鋼覇斬城閃』を船室がありそうな部分へ叩き込んで壁を破壊してしまった。
 元々穴だらけの幽霊船である。穴があいたとて沈みはしないだろうが、逆に言うと穴を開けるのが容易なくらい脆かったのかもしれない。
「――!?」
 船室で砲撃を行おうとしていたスケルトンセイラーたちが振り返る。その一人をぶん殴ると、飛び込んだノリアがヒュッと自らの美味しそうな尾を見せびらかした。
 スケルトンに食欲があるのかどうかは知らないが、その行為自体がなにか魔力的な効果を持ったようで船室内のスケルトンセイラーたちが一斉にノリアへと遅いかかったのだった。


「船をぶつけます、備えて――!」
 アクアが舵を切る。こちらの船と幽霊船ワンダーサーペント号が真正面から衝突――するとみせかけ、その側面をごりごりと削りながら交差する。
 怒りにまかせて船に飛び込んでくるスケルトンセイラーたちを相手に、まずは鏡禍が飛び出した。
 スケルトンセイラーの繰り出す斧の一撃を手のひらでキャッチ。薄く、しかしはっきりと纏った妖力の衣が斧を受け止め、そのまま握って引き下ろす。
「皆さんに手出しはさせません!」
 えいっと思い切り相手を蹴りつけると、スケルトンセイラーは斧を手放してよろめき、そして船の手すりから転げ落ち海へと転落していった。
「よくやった! 伏せてろ!」
 バクルドが義手の手首部分をかぽんと外して砲台に変えると、必殺のマグネブラストを発射。
 群れて遅いかかろうと構えていたスケルトンセイラーたちの間で炸裂したそれは彼らのサーベルを吸い寄せ、体勢を大きく崩させる。
 更にその磁力を利用したバクルドがダッシュスライディングで彼らの間をすり抜けながら短く片腕にもったライフルを連射する。
 連射をうけたスケルトンセイラーはまるでボーリングのピンのごとく弾けて吹き飛んでいった。
「狭い甲板に飛び込んできたんだ。そりゃこうなる」
「グリーフさん、お願いします!」
 鏡禍が叫ぶと、グリーフは無言で頷いてから腕をサッと翳した。
 『タイダルウェイヴ』の魔術を行使したのだ。
 船上で使うタイダルウェイヴなど、悪夢に等しい。
 ざばんと船の手すりを越えてあがった高波がそのままスケルトンセイラーたちへと浴びせかけられる。
 敵味方はごちゃまぜ状態にこそなっているが、鏡禍がアクアたちを庇うことでダメージを軽減。直撃をうけて洗い流されたスケルトンセイラーたちだけが手すり側へと転がっていく。
 グリーフはその上で『トレジャー・チャーム』の効果を発動。自らにスケルトンセイラーたちの意識を集中させ――そこへ十七号が斬りかかった。
「破――ッ!」
 武器すら取り落とし、怒りにまかせて駆け寄るスケルトンセイラーとすれ違う十七号。
 振り抜いた剣は相手の身体を胴体部分で真っ二つに切断し、更なる斬撃で続く二体目の首をはね飛ばした。
「これでも修羅場は潜ってきたのでな――一網打尽にさせてもらう」
 グリーフがスッと祈るかのような姿勢で膝をつくその瞬間。
 十七号は剣に輝きを乗せて強烈な回転斬りを繰り出した。
 光は円を描き、スケルトンセイラーたちが火花をあげて吹き飛んでいく。
 だが、それだけでは終わらない。
 次なる斬撃を繰り出そうとした十七号の剣を、ガキンと受け止めるスケルトンがいた。
「あれは――アシュラスケルトン!」
 アクアが叫んだ。
 スケルトンセイラーの中でも特別な個体。見て分かる特別さは、腕の数が六本もあるということだ。
「ッ――!」
 ならばと連続攻撃を繰り出す十七号。その六割ほどは弾かれたものの、一部は相手の身体を切りつける。
 飛び退く十七号と入れ替わるように迫ったグリーフがアシュラスケルトンの放つ四刀同時斬撃を自らの身体で受け止めた。
 身体は傷付くが、しかしそれだけだ。グリーフは即座に治癒の魔法を自らにかけると、相手のダメージ分を回復していく。
 とはいえ相手は強力な個体。グリーフを徐々に削っていく。バクルドはその背に向けてライフルを撃ちまくった。
「鏡禍、交代だ」
「はい!」
 グリーフと入れ替わるように割り込みをかける鏡禍。
 アシュラスケルトンはその腕の多さを武器にして連続攻撃をしかけるが、鏡禍は無効化のシールドを強みにそれをはねのける。
 シールドを破壊しようとブレイク属性のついた攻撃を連続してくる相手に対し、いつでもシールドを張り直せるように構えながら味方を庇うための位置取りに集中する鏡禍。
 かくして勝負は――。
「てめぇの肩書きなんざどうでもいいが――ここで終わりだ」
 側頭部にライフルをおしつけるバクルド。
 弾をありったけぶち込んでやると、アシュラスケルトンは首から上を失ってぐらりとその場に崩れ落ちたのだった。

 一方でこちらは船室で戦っていたノリアと昴。
 昴はスケルトンセイラーの首を鷲掴みにし、もう一体をも鷲掴みにすると、そのばでぐおんと回転を開始。敵をブレード代わりにした独楽回しが船室内で暴れ回る。
 勿論そんなしっちゃかめっちゃか現場に残っていては身が持たないノリアは彼を置いて甲板へ。
 するとそこに待ち構えていたのは船長の帽子を被ったアシュラスケルトンと複数のスケルトンセイラーたちだった。
 戦いは既に始まっている。
「こんな幽霊船に、誰も倒れさせない……!」
 祝音は治癒の魔法を目一杯の出力で放射しながらメッチャクチャな機動で戦う秋奈を治癒しまくっている。
 こうなってくるとノリアの役目はタンク、それも引きつけ役であろう。
 自らを何段階にも強化し直すと、熱水噴出杖を構えてスケルトンセイラーへと浴びせかける。
 船室内でもやったあの尻尾ちょろんをもう一度してみせれば、スケルトンセイラーたちはこぞってノリアへ攻撃を仕掛け始めた。
 何本ものサーベルが突き出されノリアの身体に突き刺さ――らない。
 体力の高さには自信のあるノリアである。それらをするするとかわし、すべての攻撃をかすり傷で乗り切った。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ!混沌世界が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
 その一方でテンションアゲアゲなのが秋奈である。
 スケルトンセイラーたちが暴れる中を駆け回り、右へ左へジグザグに走ってはスケルトンセイラーを斬り付けて回る。
 一体のスケルトンセイラーが秋奈の首めがけて剣を繰り出すと、彼女は膝立ち姿勢にストンと身体を落とし上半身をのけぞらせるというなんともアクロバティックな姿勢で回避。その間に相手の足を剣で切り裂くと立ち上がり動作と同時に独楽のようにぐるんと回転。両手の刀で周囲のスケルトンセイラーを斬り付け吹き飛ばした。
 そこへ遅いかかるのが――船長の帽子を被ったアシュラスケルトンである。
「うおっとお!?」
 凄まじい連続攻撃を刀で捌く秋奈。しかしさばききれない。秋奈の防衛能力をもってしてもさばききれないほどの連続攻撃なのだ。
 が、こちらは別にタイマンをはらなければならないわけではない。
「待たせたな」
 船室から直接飛び出してきた(つまり甲板を貫いてジャンプしてきた)昴がアシュラスケルトンの背後をとると、その鍛え抜かれた筋肉から繰り出すラッシュパンチをアシュラスケルトンに浴びせまくった。
 邪魔だとばかりに反撃にのりだすアシュラスケルトン。しかしノリアが彼女を突き飛ばすことでその位置を入れ替わった。
 ノリアの身体にアシュラスケルトンの連撃が今度は浴びせかけられる――が、ここでアシュラスケルトンは失敗を察した。この個体は攻撃してはいけない個体だ。どういう理屈かわからないが、彼女を攻撃すればするほどアシュラスケルトンのボディに小さく小さく傷ができていくのだ。対するノリアは平然としている。している上に、祝音の治癒魔法をうけてみるみる回復しているのだ。
 ならばと祝音を狙おうとぐりんと身体を反転させる――が、もう襲い。アドバンテージは既にとった後だ。
 秋奈の刀がアシュラスケルトンの首をスパンと切断し、切り落としていた。
「ふぃにっしゅ」
 宣言通り、アシュラスケルトンはバラバラの骨となって崩れ……幽霊船もその役目を終えたのかずぶずぶと沈み始めたのだった。

 その後、ノリアと昴に抱えられる形で船に戻ってきた秋奈や祝音たち。
 甲板には骨だらけで、十七号や鏡禍はせっせと掃除に勤しんでいる。
「よう、無事だったか」
 バクルドが言うと、ノリアは微笑んで頷いた。
「スケルトンセイラーを、やっつけて、船も沈めてやりましたの!」
 そんな中で、グリーフは海に放り投げられていく骨たちを見つめていた。
「どうかしたのか?」
 十七号が問いかける。グリーフは首を振った。
「あのスケルトンたちにも、感情の色を感じました。モンスターといえど、生きていたのですね」
 モンスター、人間、人形、違いは一体なんだろう。そんな風に思いながら、グリーフは海風に髪をおさえた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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