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シナリオ詳細

デルパ強盗団を退治せよ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●四つ手の魔物
 鬱蒼とした深い森の中を、走る八つの影。
 その身体は皆一様に深く鋭い剛毛に覆われ、毛むくじゃらだ。
 真円の大きな目は黒目が大きく、その口は酸素を得るために小刻みに開いたり閉じたりしていた。
 それはまるで魚の顔だ。びっしりと体毛の生えた魚。
 しかし、特に目を見張るのはそこではない。
 特徴的なのはその身体から生える、四本の腕。三本指の腕が四本生え、武器を手にしている。
 逆関節の太い足は、バネのような反発性を持って大地を蹴り。深い森を駆け抜けていた。
 ――魔物。そう、それは魔物だ。
 一際大きい魔物が手を上げた。魔物達は森を抜ける直前に停止する。
 感情を示さない、丸い大きな目が森の先、街道へと向けられた。
 カラカラと車輪の音が響く。商人達が荷物を運ぶ荷馬車が駆ける音だ。
 魔物達はまるで獲物を見つけたかのように、その深淵な目を輝かせる。
 もう一度、首領格の魔物が手を上げる。
 その合図と同時、魔物達が一斉に街道へと飛び出した。

 狩りの時間が始まった――。

●魔物退治
 ギルド、ローレットに出入りする特異運命座標(イレギュラーズ)に、ついに初めての依頼が舞い込んだ。
「今回の案件は荷馬車を襲う魔物退治なのです」
 ユリーカ・ユリカ(p3n00002)が資料を手にそういうと入手した情報の説明を始める。
 なんでも、このところ首都メフ・メフィートに出入りする商人達の荷馬車が魔物に襲われているらしい。
 魔物の名はデルパ。魚の顔を持ち毛むくじゃらの四本腕の魔物だ。
「本来デルパ達は大人しい気弱な魔物なのですが、どうにも一部のデルパが知恵をつけ強盗団を組んでるようなのです」
 商人達の荷馬車ばかりを狙って襲い、積まれた商品を強奪する様はまさに強盗団と言って差し支えないだろう。
 要所であり決してルートの変更ができない地点を狙い襲撃してくることから、かなり狡猾である。
 商人達も自前で護衛を付けたりしてみたものの、一人二人の護衛では数が足らず守り切る事ができなかったようだ。
 このことに頭を悩ませた商会長が今回の依頼主となる。
「依頼の内容は荷馬車の護衛、及び襲撃にくるデルパ八体の殲滅。追い払うことは簡単ですが、取り逃がすと再度の襲撃が起こるかも知れません。確実に倒してしまったほうが後腐れがないのです」
 無理は禁物だが、取り逃し再度襲撃が起こった場合はさらに数が増えるかもしれない。
 判断はイレギュラーズ達に任されるが、深追いだけはしないように、ユリーカが釘をさした。
 ギルドメンバーとしての初めての依頼の完遂に、イレギュラーズとしての可能性の蒐集。共にできるうる事を最大限達成したいだろう。
「襲撃の間隔、襲撃場所は決まっており、確実に現れると思って頂いて大丈夫です。荷馬車の中に隠れていてもいいし、少し護衛として荷馬車の外を歩くのもよいのです」
 元々知恵の無い魔物達だ。襲撃にくる間隔は一定で、予想も容易い。ユリーカも情報の精度は確実なものと太鼓判を押した。
「御者の方は荷馬車に隠れてもらいますが、万が一でも荷馬車が攻撃されないように気をつけて下さい」
 戦闘能力は高くないが、突破されれば荷馬車が襲われる可能性もあるだろう。しっかりと包囲して殲滅する必要があるだろう。
「初めての依頼で緊張とかもあるかもしれませんが、皆さんなら大丈夫だと信じています! どうか無事に帰ってきてください!」
 ユリーカはそういって、イレギュラーズ達を送り出すのだった。

GMコメント

 こんにちは。はじめまして。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 皆様と同じく初依頼となりますがご参加頂きありがとうございます!
 依頼の補足情報を下記に纏めておきますので、ご覧下さい。

●依頼達成条件
 ・荷馬車及び御者の護衛(壊されないこと)
 ・魔物デルパの殲滅。数は問いません(追い払っても大丈夫です)

●情報確度
 Aです。想定外の事態は絶対に起きません。

●魔物デルパ
 八体居ます。戦闘能力は低いですが、敏捷性は高く素早いです。
 四本腕ですが、七体は両腕に二本の短剣、手斧で武装しており、一体は長剣を四本装備しています。

●襲撃地点
 森に面した街道です。人通りは少なく、一般人が巻き込まれる心配はありません。
 また障害物もなく戦闘に支障はでないでしょう。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • デルパ強盗団を退治せよ!完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月17日 23時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘルマン(p3p000272)
陽気な骨
燕黒 姫喬(p3p000406)
猫鮫姫
伊吹 樹理(p3p000715)
飴色
ルネ・リエーヴル(p3p000726)
らびっとびーあんびしゃす
パティ・クロムウェル(p3p001340)
斬首機構
雷霆(p3p001638)
戦獄獣
メルナ(p3p002292)
太陽は墜ちた
エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)
ShadowRecon

リプレイ

●森より出る者
 カラカラと荷馬車の車輪が音を鳴らす。
 王都メフ・メフィートから南、フィッツバルディ領内へと街道を進む。
 荷馬車に付き添う特異運命座標(イレギュラーズ)達。イレギュラーズとしてギルドローレットでの初の依頼ということではあったが、緊張も少なく自分達に与えられた役割を果たそうと、周囲の警戒に余念がなかった。
 【ShadowRecon】エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)は馬車の外を歩きながら鋭い視線を周囲へ巡らせる。
 情報によれば強盗団となったデルパは一体を頭目とし、統率された団だと言う。エイヴは事前に知らされた情報を反芻しながらいつ戦闘になっても良いように集中力を高めていった。
 そんなエイヴの横で【陽気な骨】ヘルマン(p3p000272)がカタカタと骨を鳴らし声をあげた。
「うーっし、初仕事は盗賊退治だな! 金に困ったら盗賊を狩れば良いって誰かが言ってたしな!」
 この世界に来て、ローレットより多少の心付けは貰っていたが、それは無駄遣いできるものでもない。故に、ヘルマンは今回の依頼に遊ぶ金欲しさに参加したことは否めない。
 陽気に語るヘルマンは、デルパの特徴を思い出しながら、言葉を続ける。
「しっかし人以外の盗賊ってのには慣れそうにねぇな、何つぅか……形容し難い的な?」
 デルパはどう聞いてもただの魔物(モンスター)だ。盗賊とは思えない。
 けれど、この世界に言わせれば『盗賊』なのだと言う。
 世界の違いを感じながら、アジトが見つかれば盗った物を溜め込んでないものかと思案した。
「敵がいないと平和ですね~」
 【らびっとびーあんびしゃす】ルネ・リエーヴル(p3p000726)が荷馬車の外を歩きながらのんびりと口を開く。
 周囲は鳥の囀りが聞こえるだけで、実に平和な様子だ。暖かい陽射しも合わさって眠気が襲ってくる。
「なんなら襲撃まで寝てても……はいっ真面目に警戒しまーす!」
 ルネがサボろうとしたところで、共に歩く全身漆黒の【戦獄獣】雷霆(p3p001638)がたまたまルネを見た。その視線を勘違いしたルネは飛び跳ねるように敬礼すると、周囲の警戒へと移るのだった。
「最近どーなん? え流行りモンとかやってる? 海側来っときゃウチに寄ってね!」
 荷馬車に上がりながら御者と和やかにお喋りするのは【猫鮫姫】燕黒 姫喬(p3p000406)だ。
 からからと笑う姫喬を見守るように、遠巻きにはサメヤクザ達が居る気もするが、気のせいかもしれない。
「デルパはどの方角から来るとか、ご存じだったりします?」
 姫喬と共に荷馬車に上がっていた【飴色】伊吹 樹理(p3p000715)が御者に話を聞く。
「そうだなぁ、もう少し行くと右手側に大きな森が見えてくるんだ。そこが一番被害が多いところだねぇ」
 御者の話を皆に伝えながら「絶対守るから安心してほしい」と御者に伝える樹理。
 御者は「頼みますよ」とどこか安心したようにイレギュラーズ達に伝えるのだった。
 初依頼でどこか不安げな様子を見せるのは、【兄の影を纏う者】メルナ(p3p002292)だ。
 初めての依頼、初めての戦い。自分は兄の代わりなのだと、故に、兄の様に戦わなくてはならないのだと、メルナは自分に言い聞かせる。
「いまからそんなに力を入れていては疲れてしまいますよ」
 メルナの肩を叩き緊張をとる【斬首機構】パティ・クロムウェル(p3p001340)。パティに言われメルナは一つ深呼吸をすると、和やかにお礼を返した。
「森が見えてきたな」
 雷霆が静かに告げる。イレギュラーズ達は頷きあうと、警戒を高めていく。
 街道を進む荷馬車の右手に大きな木々が立ち並ぶ。その先は深い森のようだ。
 緊張が高まる中、葉擦れの音が耳に響く。
 エイヴは念入りに森の奥深くへと視線を移し覗いて行く。その超視力に黒い影が映った。
 すぐさま仲間へとハンドサインを送る。ルネもまた影を感知し、仲間達に伝え合う。
「御者さん、ちょーっと下がっててね」
 姫喬の言葉で、荷馬車が動きを止める。
 草木をざわめかせる音が徐々に大きくなり、そして――その魔物達が飛び出した。
 魚の頭に体毛の生えた毛むくじゃらの身体。四腕に逆関節の太い足。情報通りの様相――デルパだ。
 短剣と手斧で武装するデルパの数は七。その奥より長剣を四本持った一目でわかる頭目が姿を現した。
 現れた奇異なる魔物を前に、メルナはもう一度自分に言い聞かせる。
「私はお兄ちゃんの代わり……お兄ちゃんは優しくて、勇敢で、強くて……どんな魔物との戦いも恐れなかった。だから……初めての戦いだなんて関係ない。私も、怖がったりなんてしちゃいけない……!」
 メルナの瞳に輝きが宿る。其れは、太陽の様に在らん事を望んだ、そう在るべきと悟った、月の呪い。
 頭目のデルパが長剣を翳す。それと同時に七体のデルパが一斉にイレギュラーズに襲いかかった。
「……さぁ行こう。必ず、守り通すッ!」
 勇ましい口調に変わったメルナの声を合図に、イレギュラーズ達も一斉に動き出す。
 デルパ強盗団との戦いが始まった――。

●イレギュラーズの戦い
 誰よりも素早く動いたのは雷霆だ。一直線に大地を駆け、頭目とおぼしき長剣デルパへと肉薄する。
 雷霆は長剣デルパの先手を取りマークすると、荷馬車へと踏み込ませないように位置取った。そしてそのまま格闘戦へと移行する。
「オォォォ――!」
 気合い一閃。手にした獲物を振るい、長剣デルパに傷を負わせる。
 この一瞬で、雷霆は長剣デルパの強さを、自身の強さとそう変わらないと判断した。
 敵うのであれば挑む――全力での攻撃を選択し、長剣デルパとの一対一へと挑むのであった。
 雷霆が動くの確認した後、イレギュラーズの動きは素早かった。
 雷霆が頭目を抑えてくれている間に、手下共を排除する。作戦通りの動きだ。
「こいつはどうだい!」
 荷馬車を守りながらヘルマンは自分の優位が保てる距離へと移動し、神秘への親和性を高め魔力を増幅すると、魔力によって生み出した弾を放ち手下デルパへと攻撃する。
 放たれた魔弾は吸い込まれるように手下デルパへと直撃し、土の味を舐めさせる。
「逃しません――」
 起き上がろうとする手下デルパをパティがマークし、一気に相手の深い間合いにまで踏み込むと一刀のもと斬り伏せる。僅かな悲鳴もあげることなく手下デルパの一体は絶命した。
 襲ったはずの人間達に反撃されて、デルパ達はどよめき立つ。混乱の収拾を求め頭目へと視線を泳がせるが、当の頭目自身もまた雷霆に抑えられそれどころでは無かった。
 デルパ達は混乱のまま、イレギュラーズへと反撃を行う。短剣や手斧を振り回し、攻撃を仕掛けるが、命中率は低い。僅かな切り傷をもらう程度で致命打とはならなかった。
「たぁぁ――ッ!」
 メルナが鋭い踏み込みを見せ手下デルパへと肉薄すると、手にした剣を振るい斬りかかる。
 メルトとデルパはそれぞれの獲物で斬り結ぶ。互いに譲らない剣閃は、しかしメルナに分があった。短剣では捌ききれない一撃が、確かな手応えをもってデルパを斬り伏せた。
 一体を倒し、大きく深呼吸し身体を整えると、次の相手へと視線を向けた。
「……世界は変わっても何も変わらない。ただ引き金を引く、それだけ。」
 エイヴは淡々と射程内に入ったデルパへと引き金を引いていく。
 研ぎ澄まされた集中は狙撃手の目のように敵の動きを捕らえる。前衛の攻撃で弱った敵を狙い、必中させていった。
 敵が射程外にでればすぐさま移動し、射程へと収める。エイヴは戦い慣れた動きで、仲間を援護していった。
「オラァ! 悪いデルパはサシミにしてやりますよ!」
 エイヴと共に射撃で援護するのはルネだ。弱っているデルパを逃さず射撃していく。
 守るべき荷馬車から離れすぎないよう、位置取りには気をつけて攻撃を重ねていった。
 ルネは仲間達の状況をよく見ていた。そして優先順位を的確につけ、攻撃をヒットさせていく。
 荷馬車はやらせないし、仲間もやらせない。
「デルパごとき楽勝ですよ!」とでも言いたげなドヤ顔を披露しながら攻撃を繰り返していた。
 樹理は馬車に近づこうとするデルパをマークし、近づけさせないようにしながら仲間達を回復していった。
 デルパを前に、樹理は正直、心もとなくて、不安だった。少しだけ、ここに立ち敵と相対するのは怖い。それでも――任せられた自身の仕事を全力で全うすると決めていた。
 仲間を癒やすとき、常に樹理は笑顔だ。笑って「大丈夫だよ」と声を掛ける。
 ――大丈夫。私がいるから。
 その想いは仲間達の背を支える力となる。
 絶対とは言えない。けれど全力で、倒れさせてなんてあげないのだ。
「怪我なんて、私が全部治しちゃうんだから!」
 樹理の癒やしの力が仲間達の士気を高めていった。
「流通は商いの要よ。邪魔する悪い奴ァは、あたし燕黒姫喬がたたっ斬る! さぁかかってきな!」
 堂々とした名乗り口上をあげ黒髪を靡かせる姫喬は、手にした剣を鞘走らせ抜くとデルパ達を挑発する。
 釣られたデルパ達を引き連れ馬車とは別方向へ離れる姫喬は、デルパ達を釘付けにするように防御姿勢をとった。
「どーでもいいけど、荷馬車よかあたしの着物んほーが値打ちモンだと思うんだけどねぇ」
 短剣と手斧の攻撃を剣で受け流しながら華麗に舞う姫喬。着物であるというのにその足捌きは見事という他ない。
 ただそうであったとしてもやはり数の暴力の前には分が悪い。徐々に傷が増えていく姫喬は樹理へと回復を要請する。
「傷は治せるけど、着物はどうにもできないね」
「ま、箪笥のこやしが減って楽しみが増えるってね!」
 いっひひと歯を見せながら笑う姫喬。引きつけている姫喬の横手からエイヴとルネが援護する。
 視界外からの攻撃を前に、為す術無く倒れていくデルパ達。
 戦いはイレギュラーズ優勢のまま推移する。
 気づけば、デルパ達は半数以下へと数を減らし、すでに壊滅しかけている。
 状況を見た頭目デルパが忌々しげに呻り声を上げる。その様子をみた雷霆がニヤリと笑った。
 戦いは続く――。

●決着
 残るデルパは頭目と手下二体。イレギュラーズ達の攻撃も手下から頭目へと集中し始めた。
 雷霆は己の闘志を具現化し、その体中についた傷や古傷から赤黒い焔を吹き上げる。
 威圧するほどの光熱をもたらす焔を前に、頭目デルパの口がパクパクと動く。だが怯みはするものの、撤退する気はないらしい。四本の剣を構え雷霆へと挑みかかる。
 器用に振るわれる四本の剣。なるほど確かにコイツは他のデルパと一味違う。強さという物が感じられる腕前だと、雷霆は感じた。
「その腕、邪な心に染まらなければ使い道もあっただろうに――!」
 手にした獲物で四剣を弾きながら雷霆が全力の攻撃を叩き込む。たたら踏むデルパにさらに踏み込み肉薄すると追撃の一撃を見舞った。
 悶絶するデルパ頭目にさらにイレギュラーズの連携が決まる。
「まずは厄介なその足からだ――!」
 ヘルマンが魔弾を放ち、その強靱な足を砕き動きを封じる。続けざまに後方から射撃が放たれる。エイヴとルネだ。二人の放つ射撃が次々とヒットした。
 満身創痍の頭目は、しかし今だ剣を捨てず、イレギュラーズに相対する。
 気がつけば、仲間達が位置取りを変えながらデルパ達を包囲し、その退路を封じていた。
「さぁて観念するんだねェ」
 抵抗は無意味だと諭すが、デルパの持つ深淵な目からは何も感じとる事ができない。ただ武器を捨てないことが、デルパ達の意思を現していた。
「ならば――」
 ギフト『雷霆の鬣』で威嚇しながら詰め寄る雷霆。
 手下をかばうように一歩前にでる頭目のデルパが四本の剣を構える。
 砕かれた足に力を込めて、瞬間的に駆け雷霆へと肉薄するとその剣を振るい回す。
 鋭い一撃に傷つけられながらも雷霆は怯まず間合いを詰めると手にした獲物を振り下ろし、一刀の元デルパ頭目を両断した。
 それと同時、残った二体の手下達が一斉に逃走しようと包囲の突破を試みる。
 しかし、警戒していたイレギュラーズの包囲を破る事は叶わない。
「逃がしませんよ」
「逃がさない――実力が足りないなら……無理やりにでもッ!」
 パティとメルナがマークし逃走経路を塞ぐと、二人に向かって凶刃を振り下ろす。切り裂かれた痛みに目の前がチカチカと点滅するが逃がすわけには行かない。
 歯を食いしばり、反撃の一打を放つ。直撃するその一打はデルパ達を戦闘不能にするには十分だった。
 樹理がすぐに薬を用いて仲間達の傷を癒やす。
 そうして、一息つくと、ようやく勝利の実感が沸いてきた。
 デルパ強盗団。その八体のデルパを討伐する初めての依頼が今、達成されたのだった――。

●初勝利
 まだ息があるデルパの元にパティが寄り添う。
「介錯は必要ですか?」
 致命傷を貰いあとは死を待つだけのデルパは、「殺してくれ」と懇願した。
 その言葉に、パティは目を伏せ頷くとギフト『仁刑』を発動させる。
 振り下ろされた刃は苦痛を与える事無くデルパを斬首する。
 罪は裁かれなくてはならない。けれど、無駄に苦しむことはないとパティは考えていた。
 そうして、最後のデルパが息絶えると、完全にデルパ強盗団は壊滅するのだった。
「へっへっへ、護衛の報酬として荷物を全部いただく……じ、冗談ですよ~!」
 ルネが口を開くと同時にたまたまルネを見た雷霆。その視線を感じてルネは愛想笑いを浮かべた。
「っ……傷が、痛い。……怖がっちゃいけないのに、私……震えて……」
 メルナはギフトが解けると同時に抑えていた恐怖心が戻ってきて身体が震えてしまう。
 切り裂かれた傷の痛みに涙が浮かぶ。
「……こんなんじゃ、ダメ。お兄ちゃんは……お兄ちゃんなら……しっかり、しないと」
 自分に言い聞かせるように何度も言うと、涙を拭い顔をあげる。
「大丈夫だよ。傷はすぐ治すからね」
 そんなメルナを見た樹理が、薬を用いて傷を癒やしていく。引いていく痛みにようやく落ち着きを取り戻した。
「ありがとう……」
「どう致しまして」
 お礼に笑みを返す樹理はもう一度仲間達の傷が残っていないか見て廻りにいった。
「はーおわった。なんとかなった」
 ヘルマンは一仕事終えたことを大げさに声にだして笑った。
 記憶も肉体もなく、骨だけの自分がこうして戦い生き残れたことを心の底から喜ぶのだった。
「御者さーん。もう出てきていいよ」
 姫喬の呼びかけで、荷馬車に隠れていた御者が出てくる。
 目の前の倒されたデルパ達を見て御者はホッとした様子だった。
「それじゃ残りの道程も油断なくいこうか」
「護衛も依頼内容の一貫、最後まで遂行する。油断は禁物」
 姫喬とエイヴの言葉に仲間達が頷く。荷馬車を最後まで護衛して仕事は終わるのだ。もうなにもないとは思うが最後まで気を抜かずにいこう。
 そうしてイレギュラーズと荷馬車は街道を進み始める。フィッツバルディ領内にある都市カイセまで送り届ければ無事依頼は完了だ。
 エイヴは念には念をいれ荷馬車の外を歩き警戒を行いながら進んだ。
 カラカラと荷馬車の車輪が音を立てる。
 平和な街道を、イレギュラーズと荷馬車が進んでいった――。

「お仕事おつかれさん!」
 カイセにつき無事に依頼を終えたイレギュラーズは互いに労うと勝利を喜んだ。
「なんだったら街で鍋でも食べない? あーーーっつあつの奴! いっひひ」
 姫喬は歯を見せながら笑い、仲間達を誘う。
「いいねぇ、鍋」
「鍋もいいね。同じ鍋をつついたら、仲間だよ」
「鍋いいな」
「ひゃっほー鍋だー!」
「鍋……! 良いねっ、私も食べたい!」
「鍋か。いいね」
「ご一緒しましょう」
 全員一致の返事をもらうと更に歯をむき出しにして笑う姫喬。
「それじゃ決定-! 何鍋にしようかなぁ」
 ワイワイと皆で食べる鍋を決めながら、初依頼を達成したイレギュラーズ達は街へと消えていく。
 こうして商会長を悩ませていた、デルパによる強盗団は姿を消し、街道の平和は守られたのであった――。

成否

成功

MVP

燕黒 姫喬(p3p000406)
猫鮫姫

状態異常

なし

あとがき

シナリオお疲れ様でした。
奇怪な魔物デルパとの戦い。知能が低く四本腕を活用してこない敵ではありましたが、これが知能もあって戦い方も知っていたらと思うとゾッとしませんね。
戦いの後はみんなでお鍋。この季節にはとても良いですね。ご一緒したい。

何はともあれ、無事に初依頼達成おめでとうございます!

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