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シナリオ詳細

<Scheinen Nacht2022>GAMING Blumengarten!!

完了

参加者 : 22 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 此処は幻想。
 あらゆる騒乱を拒むように静かな、メフ・メフィート郊外の森の入り口近く。
 小鳥たちは肩を寄せ合い、獣たちは静かに眠る冬の最中。
 雪が深々と降り積もる中に、ひっそりと揺れる、花。
 聖夜を祝うように季節外れに咲き誇った其のワスレナグサは、其れだけでも美し――かった、のだが!
 まるで聖夜が悪戯をするかのように、其の花たちは!



「光るんだよね!」
 リリィリィ・レギオン(p3n000234)はいつぞやのように身を乗り出していった。ただし、付け足した言葉がおかしい。
「1680万色に」

 は?

「すっごいよねー! 学者が総出で輝く花畑を調べたらさ、ものすっごい光ってるの! 七色に! もうなんか聖夜っていうかパーリナイ? みたいな? あ、一応品種は判ってるよ、勿忘草。もうなんかウケちゃうよね!」

 世界ってふっしぎー!
 リリィリィは余りの不思議さゆえにか、聖夜ゆえにか、何かの箍が外れたかのように笑っている。
 ちなみに勿忘草の花言葉は「私を忘れないで」である。割と有名な話だが、七色に輝く勿忘草など忘れようにも忘れられないだろう。

「ねえグレモリー、きみならどんな風にあの花を描くの?」

 一頻り笑い倒したリリィリィは、後ろで画材の整頓をしていた画家に問う。
 グレモリー・グレモリー(p3n000074)は笑い交じりの少年の声に一切動じずに、端的に返す。

「一つ一つ七色に染める」
「わー! 真面目か! そんな塗り方してたら一年書いても終わらなくない?」
「僕が忘れるまでに塗り終われば其れで問題ないよ」
「理屈としては合ってるけど……ていうか折角の聖夜なのに辛気臭すぎ! もっと明るくいこうよー!」

 頬をぷくりと膨らませるリリィリィ。
 そもそも聖夜はしっとりと楽しむものではなかったか? という疑問は兎も角として。

「まあ、其の花以外には何もないんだけどさ。街の人が妙に楽しいから、って理由で踊ったりしてるかも知れないね。君たちも踊って来ればいいよ、七色の勿忘草の中で……ぷぷっ」

 想像したのか、リリィリィは笑いをこらえるように口元を抑えた。
 失礼な。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 少しばかりの気休めに……なるかなあ。1680万色だし。

●目的
 輝く花畑でパーリナイしよう

●立地
 メフ・メフィート郊外にひっそりとある勿忘草の花畑です。
 誰かの所有物、という訳ではありません。勿忘草自体は強い草ですから、群生する事は十分あり得ます。
 何故か冬に咲いた勿忘草は、まるでこのシャイネンナハトを待っていたかのように輝き始めました……1680万色に。
 誰が数えたんだ色数。

●出来ること
1.花を楽しむ

 シーンは夜のみになります。
 躍ったり、お茶をしたり、摘んでみたり出来ます。
 ちなみにこの勿忘草を摘むと、暫くは輝いていますが、其の内まるで“充電切れ”を起こしたかのように元の水色に戻って行きます。
 悔しいですが、虹色から水色に戻る其の様は結構綺麗です。

●NPC
 グレモリーが根性で1680万色を描いています。
 昼も夜も描いています。でも、邪魔されても特に怒ったりはしません。
 リリィリィは踊っているイレギュラーズを笑った割にノリノリで踊っています。くるくると花畑を回りながら、一緒に踊ってくれる人を探しています。
 ご用命があればどうぞ。

●注意事項
 迷子・描写漏れ防止のため、冒頭に希望する場面(数字)と同行者様がいればその方のお名前(ID)を添えて下さい。


 イベントシナリオではアドリブ控えめとなります。
 皆さまが気持ちよく過ごせるよう、マナーを守ってゆっくり過ごしましょう。
 では、いってらっしゃい。

  • <Scheinen Nacht2022>GAMING Blumengarten!!完了
  • GM名奇古譚
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2023年01月09日 22時05分
  • 参加人数22/31人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 22 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(22人)

リーゼロッテ・アーベントロート(p3n000039)
暗殺令嬢
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
古木・文(p3p001262)
文具屋
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
閠(p3p006838)
真白き咎鴉
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
マリリン・ラーン(p3p007380)
氷の輝き
宇喜多 那由多(p3p008295)
自称まっどさいえんてぃすと〜
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
朔(p3p009861)
旅人と魔種の三重奏
季 桜綾(p3p010420)
❀桜華❀
朱 雪梅(p3p010421)
天又雪
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

サポートNPC一覧(2人)

グレモリー・グレモリー(p3n000074)
リリィリィ・レギオン(p3n000234)

リプレイ


「わぁ、ほんとに虹色だぁ!」
 チャロロは凄まじい勢いで七色に光る花を見て、其の瞳を輝かせる。
 勿忘草といえばちっちゃくて可憐なイメージが強いけど、こんだけ派手に光ってるとインパクトあるなぁ…
「摘んだらどうなるんだろ?」
 花には悪いと思いながらも、ぷつん、と一輪千切ってみると……元の水色へと花の色が戻って行く。
 どういうことなんだろ? まるでこの土地に電源か何かが通ってるみたい。
 でも、不思議に思うのは後! まずはこの光の中で踊ってこよう!
 ド派手な輝きのパーティーだ!


「勿忘草……」
 レインはこの花を知っている。
 小さくて綺麗な水色で、とても好きな花。
 其れが己のように七色に光るのは、とても楽しみだと。レインは花畑へ向かう。
 今日のオトモはゴリパンジーと犬、そして猫。ゴリパンジーはいつの間にか最初からずっと一緒にいたらしい。何故だろう。
 黒い傘を持って、皆でしゃがんで傘の中に入った。そうして上を見上げれば、勿忘草の光が黒い日傘に反射して、まるでカラフルなプラネタリウムみたい。
「……勿忘草も、自分の色、見える……?」
 ――此処にいれば、自分の七色も紛れてくれるかもしれない。
 寧ろ其れも悪くないって思えるから、不思議だ。


 アーリアは呆然としていた。
 聖夜に一面の勿忘草が咲いた、なんて聞いて、其れはロマンティックだわと思って来てみたら……思ったのとあまりに違って、練達の歓楽街色をしてるじゃない!
 まあ、話を聞いた時にだいぶ酔ってたのもあるんだけど!
 ――けれど、この光景は、お酒を呑んだ時のアーリアの髪色みたいで、妙に親近感が沸いてしまう。じゃあこの光景に似合うように色々飲んでみましょうか、と持ってきていた酒瓶の封を開けた。髪の色をお揃いの虹色に染めると、とっても楽しくて良い気持ち!
「リリィリィちゃーん!」
「わ!? ミス・アーリア! どうしたのその髪の毛、とっても綺麗な虹色だ!」
「ふふふー、そうでしょう? 計算して呑んだのよぉ! 折角だし、一曲どぉ?」
「あ! 其れ、僕が今言おうと思ってたのに。――勿論、喜んで! 何曲でも構わないよ、色とりどりのお姫様!」
 しんみりした聖夜も素敵だけれど、からりと笑いながら過ごす聖夜も素敵だわ!



「1680万色、ですか……?」
 イマイチ実感の沸かない感じで、閠は言った。実際実感が沸かない。
 が、布越しでもぴかぴかと明るい感じは判る。
 閠の知っている勿忘草は、光らなくて、小さなお花が集まったつつましくて愛らしい花なのだけれど。
 世界には自分の知らない草花が沢山あるんだなあ。
「こんばんは、グレモリーさん」
「やあ、閠」
「お隣、お邪魔します。休憩ですか?」
「ちょっとだけ。なんで光ってるんだろう、って思って」
「……こんなに光るくらい、忘れられたくなかったのかも、しれません、ね」
「確かに、忘れられないよね」
「はい。――そうだ。絵、完成したら、是非見せて下さい。其れを参考に刺繍をしたら、とても楽しそう、ですから」
「刺繍? ……正気?」
 グレモリーが驚いたので、思わず閠は笑ってしまった。
 正気ですよと笑う。折角だ、この華を押し花にして記念に持っておこうとおもったから。



「成る程、これが忘れようとしても忘れられない、インパクト強すぎる勿忘草……」
 忍び生きる身には眩しすぎる光景だな、なあGペリ殿。アーマデルはそう言って、隣の騎乗生物を見た。……光っている。ゲーミングに。
「グレモリー殿」
「やあ、アーマデル」
「どうも。ところでこいつを見てくれ、どう思う?」
 そう言ってそっとアーマデルはGペリ殿を紹介する。どうも、とゲーミング仕様に光るGペリ様だが……
「……花の方が風流だね」
「くっ……! 矢張り花畑の方がっょぃか……天然ものは強いな……だが、光る事に関してはGペリ殿の方がベテラン、PRO仕様だ……! 折角だから俺は勿論このGペリ殿を選ぶぜ……! グレモリー殿も軽率に光ってみたくなったらいつでも声をかけてくれ。其の道のプロ…のような気がする何かを紹介できるかもしれない」
「うん。……いつか、……いつかね」
 いやその道のプロってなんだ。どうしてお前は生物を光らせる専門家みたいになっているんだ。
 アーマデルはかの人へと想いを馳せるのだった。



「まさか君と合作する日が来るなんて思わなかった」
 グレモリーは表情こそ動かないものの、心底びっくりした声を出している。
 其の隣で色をそっと変えながら花に彩色するベルナルドは、そうか? とさして不思議でもなさそうに言った。
「たまには合作も悪くないだろ。いつもアトリエで別々に描くのとはまた違った刺激がある」
「そうだけど……まあ、そうだね。たまにはいいね」
「しかし色被りが心配だな。全部同じ色合いでやれば早いが、見栄えを重視するならどこも色んな色になるように工夫していきたいよな」
「うん。見てて飽きない絵にしたい。……見てて飽きない光景だから」
 グレモリーは絵画から視線を外すと、花畑を見渡した。1680万色。其れ等がこの花の中で躍動し、移り変わっている。
「そうだな。――……しっかし、こんだけ色んな色を混ぜてると師匠を思い出すぜ。あの人、作り出す色は本物だからな。……あの人の真似は出来ないけど、来年こそあの人より青が得意な画家になる」
「……じゃあ、この花で練習だね」
「おう」
 画家二人、言うと再びキャンバスへと向き直るのだった。



 まぁ、花なら屋敷の庭園でも見ていればいいのだけれど。
 たまには景色を変えてみるのも良いものなのでしょう。
 そんな気紛れで、リーゼロッテはオウェードと共に花畑にいる。
 眩しい、と目を細めるリーゼロッテに、お茶をどうぞと差し出すオウェード。
「長い騒動でお疲れ様じゃろう……花を見ながら茶会というのも風情があるもの、というのは……貴族の方には釈迦に説法かの。さあ、一杯をどうぞじゃよ……」
 そんな言葉を聴きながら、そっとリーゼロッテは茶を飲む。……暖かい。思えばこの一年は激動に激動を重ねるような一年だった。
 オウェードは其の激動については言及せず、静かに己も茶をすする。時折少し楽しかった話をすれば、リーゼロッテは僅かに微笑む。
「リーゼロッテ様には蒼薔薇が一番似合っているとはいえ……この花も気に入ると嬉しいが……」
「ええ、少し目も慣れてきました。こう見ると少しは愛らしく見えるものね?」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
 輝く華を指先で弾き、リーゼロッテは少しだけ笑む。……でも、他の者のように踊る気にはなれなかった。今年は少し、疲れすぎたのかもしれない。
 そんな、花々の中でいっとう輝く花のようなリーゼロッテを抱き締めたい。其の衝動にオウェードは耐えた。……そうして、耐えながら噛み締めるように呟いた。
「リズ……よう無事で帰ってきてくれた……ワシは、とても……心配した……」



 リュカシス達は今日は“相棒”と一緒に真夜中のお茶会。
「じゃーん!イーさんもルブラットさんも可愛い子とご一緒なので、ボクも可愛い相棒を連れて来たよ! 宜しくね!」
 そう言ってリュカシスが見せたのは小型ロボ、FLASH-DOSUKOI02くんだ。
 イーハトーヴとルブラット、そして文は其れをわぁ……と見て。すごいね、と口々に感想を述べる。
「賑やかで楽しいね! じゃあ、フーくんだ!」
 そんなイーハトーヴの一声で、彼の呼び名は“フーくん”に決まった。

 そうして四人の話題は自然とゲーミングな花畑へ。
 きれいだね、というイーハトーヴとリュカシス。其れに対して文とルブラットは、
「色は結構原色に近いんだね。光も強くて、まるで真昼みたいだ」
「非常に興味深い植生だ。これを大量摂取した生物も自ら光り輝くようになれるのかな?」
「其れは面白そうだね」

「……文とルブラット、難しくてカッコイイ話をしてるねえ」
「そうだね、イーさん……」
「いっぱい食べたら身体が光る……わ、わかってるよ! 試したりしないってば、オフィーリア!」
 ひそりひそり、と話す二人。するとルブラットがふと黙したので、四人は一斉に黙り込んでしまった。

「……私は今、落ち着きのない感情を抱いている。思えば私はピクニックなどに興じた経験に乏しい。この景色を美しいとは感じているが、其れ以上何をするべきなのだろうか? 皆はどうする?」

 ルブラットの問いに、うーん、と考え込む三人。
 そうだ、と一番最初に思い浮かんだのはイーハトーヴだった。折角だから、と持ってきたお茶をとぽとぽカップに注いで三人に渡しながら。

「俺は絵を描きたいかなぁ。光るお花とお友達、ぬいぐるみやお人形。ロボットの皆も勿論一緒に。完成した絵を飾ったら、きっと毎日笑顔になれるよね」
「絵か。とてもいいね、文具屋としても頷ける。……ああ、ありがとう。そうだ、小腹が減るかなと思って夜食におにぎりを持ってきたんだ。良かったら食べよう」
「お花見の食べ物! イーさん文サンどうもアリガト! 僕はお菓子を持ってきたよ! パンドーロっていうシャイネン菓子なんだって」

 言いながらリュカシスはパンドーロを切り分け始める。
 ルブラットは絵か、と呟いて、己の傍らにいる友人、ぬいぐるみのヒルデガルトを見詰めた。
「其れは素敵な考えだ。軽食も有難う。――おむすびに、パンドーロか」
 二つの不釣り合いさはまるで、信条も信念も違う己たちが一堂に会するこの集まりのようで。……ルブラットは一つ気付いて、ふふ、と笑った。
 私の楽しいと思える事は、皆をこうやって観察することなのかもしれないな、と。



「……これは流石にやりすぎでは?」
 思わずルナールは呟いた。目がちかちかするレベルでカラフルなんだが?
「うわぁ、びっかびかだ」
 隣でルーキスも呟いた。シャイネンナハトとはいえ、これは張り切りすぎだよねぇ、と苦笑しながらルナールを見ると、相手も同じ顔をしていた。
「はい先生!」
 ルーキスは挙手する。はい、どうぞ。
「此処は張り合って、私も光るべきでしょうか!」
「んー? この目が痛い光り方してる勿忘草に? 構わんが……ルーキスが勝つという結果は覆らないんだよなぁ」
 二人は座る。ルナールは花畑に。ルーキスはルナールの膝の上。
 まあ私がどっちにしろ勝つならいいか。得意げにルーキスは笑んで、光って張り合うのをやめた。
「――持って帰ろうとすると光らなくなっちゃうらしいから、これは見るだけだねぇ。花言葉は……“私を忘れないで”だっけ」
「ああ。其れから、真実の愛……だな」
「覚えて貰う為に光り出したのかな。そう考えると、ちょっとおセンチになっちゃうねぇ」
 二人は花畑を見る。
「……ルナールの世界で言う、イルミネーションだっけ? こんな感じなの?」
「あー……似たようなものだが、此処まで派手なのは見に行ったことがないなー」
 はは、と苦笑しながらルナールは言う。精々が2、3色なのだと。
「ああ、そうだ。来年は領地の森をイルミネーションで飾ってみるか?」
「其れは面白そうな光景だね。採用」



 シラスとアレクシアはうわあ、と七色に輝く花畑を見て声を上げる。
「一面が七色だ……すごい、まさしく輝かんばかりの夜……!」
「すごいねえ。なんでこんなに派手派手しいんだろう?」
 勿忘草っていうと、どうしても物悲しいイメージがあるけど……これだとなんだかちょっと笑えて来ちゃうかも。
「でも『忘れない』って意味においては此れ以上のものはないね!」
「そうだな。ちょっと摘んで遊ぼうか」
 言うとシラスは座り込み、ぷつんと花を摘んでは編んでいく。この手の遊びは得意分野だ。――花が七色を失う前に大きな花冠を作ると、同じくしゃがみこんでみていたアレクシアの頭にそっと乗せた。聖夜のプレゼントだと。
「アレクシアはお花が似合うね、やはり」
「え、そ、そうかなあ。……あ、じゃあ私は、押し花にして栞にする! シラス君の分も私が作ってあげるね!」
 ぷつん、と摘むと、みるみる色を失っていく勿忘草。其処にアレクシアは、ほんの少し自分を重ねてしまう。全力を尽くして輝いて、其の後は静かに色褪せる。
 自分もそうでないとどうして思えるだろう。
 でも、不安は今は要らない。そっと前を向いて、アレクシアは笑った。
「そうだ、持ち帰って育てられないかな?」
 勿忘草は、本来は多年草らしい。七色が続くかは判らないけれど、シラスは祈る。アレクシアの記憶が護られますように、と。



「1680万って、2の24乗……というよりは256の3乗ってよく言うよね」
 虹色の比喩だとか聞いた事があるけど。と、マリリンは首を傾げる。
「わぁすごい。マリリン物知りだね~。まあ珍しい色だよね、マリリンに似合うかな~って。あ、でも」
 虹もいつか消えてしまうものだから、摘むと色が消えるこの草と同じなのかな~? 気になる気になる、調査しよ~! 採取に、解剖。
「そうだね、ちょっと可哀想だけど後学のために勉強しよう。光が消える様子も……」
 ―― 一番は、スケッチ!
「え?」

「いいよぉ~。マリリン、綺麗だよ~!」
「な、那由多ったら…あたしにこういうの似合うかな……」
 何故か一緒にスケッチされる事になったマリリンは、花畑の中に立っている。少し恥ずかしいけれど、其れっぽく後ろ手を汲んでモデルっぽく立ってみたり。
「うんうん、綺麗だね~! マリリン、こういう花とっても似合う~!」
 那由多にとってマリリンは助手であるだけじゃない。大切で大好きな人だから、絵に残しておきたいんだと。
「よーし、夜は長いから、一緒に調査してたのしも~!」
「もう……終わったら、今度は那由多のスケッチ描くからね!」



「なぁにこれ」
 思わずコルネリアは呟いた。
「朔、アンタちょっとこれどうなってるのかわかる?」
「どうあってるかって聞かれても、光ってることしかわかんねぇかなぁ……」
「判らないわよね、アタシもわからない」
 ぷつりとコルネリアが一輪摘んでみれば、あっという間に光を失う花。あ、でもちょっとの間は光り続けるのね? なら……
「ほら朔」
「え?」
「一輪もって何かポーズ取りなさいよ。顔がイイんだから、どんな花でも形になるでしょ」
 でた! コルネリアの無茶ぶりだ!
「え!? えぇ……」
 といわれつつも、きりっとキメ顔でポーズを決めてみせる朔。
 其れを見て思わずコルネリアは顔を俯けてしまった。照れたんじゃない。笑いで。
「ぷっ、……くく……! キメ顔で花を光らせて……!」
「はーーもうやらねーし! 恥ずいわ! 笑うな!」
「ご、ごめん、ごめんって! ほら、帰りに珈琲でも買ってあげるから」
「……って、あ? これ、光が散った後はただの水色なんだな」
「ああ、そうみたい。こんなふざけた花でも、散り際は儚く見えるものなのね」
「そうだな……あー、ただの雪景色なら兎も角、こんな花畑の中じゃしんみりも一服もできねぇや」
「そうね、しんみりする暇もないし……流石にこの風景に煙草ってぇのも野暮かしら」
「じゃあ、せめて花畑の端っこまで散策と行くか。途中で珈琲奢って貰わなきゃなー」
「はいはい」



 桜綾と雪梅は二人、きらきら輝く花畑を見ていた。
 練達のイルミネーションとかいうやつにも負けず劣らずの鮮やかさ。
「なあなあ、きれーだよな!」
 桜綾が手を引きつつ隣を見れば、きらきらとした光に照らされる雪梅の姿に思わず見とれてしまう。
 一方で雪梅もまた、少しばかり緊張していた。だって今夜は“初めて二人で過ごす”シャイネンナハトだったから。
 お互いに色々な事で頭がいっぱいになっていて……先に言葉を発したのは、雪梅の方だった。
「……綺麗やねえ」
「あー、綺麗だよなあ」
 雪梅が訝しがられていないかとちらりと視線をやると、ばちん、目が合って。

(…アタシの事、『俺の花』って言うてくれてもいいんよ)
(オレの花っていうには、余りにも綺麗すぎて)

 二人の繋いだ手に、僅かに力が入る。
「その、そうだそうだ、なんかこれ、1680万色あ――……」
「及第点」
 愛らしい誤魔化し方に、雪梅はふふ、と笑う。
 総て見透かされている気がして、桜綾は一度黙り込み。
「……ぐ、グラオクローネを。楽しみにしててくれ」
 そう言う彼に。
 待つわ、と。来年でも、再来年でも、と。
「待っとるわ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
ゲーミング花畑、いかがだったでしょうか。
奇古譚は「とち狂ってんのか?」と己に問いながらオープニングを書いていましたが、
お楽しみいただけたのなら幸いです。
ご参加ありがとうございました!

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