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シナリオ詳細

【死者の国】死者の日の祭り

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ろうそく1本ちょうだいな!」
「はい、どうぞ。幸福な死者の日を!」

秋の深まる夜。
ろうそくを求めて街を練り歩く子どもたちに、ろうそくとお菓子を渡す大人たち。
ここは日の昇らない、常夜の国モルタナ。
今月は『死者の日』のお祭り期間。
ろうそくを集めた子どもたちは、灯籠を作って川に流す。
きれいな星空とも相まって、幻想的な光景を見ることが出来るだろう。

大人たちは教会で静かに祈りを捧げる。
この国の宗教的な理由で、モルタナの住人たちは皆、喪服のような黒い服を常に着ている。
女性の場合は黒いベールを顔にかけている者もいる。
そんな陰気な国に嫌気が差して、モルタナを出ていく住人もいるが、『死者の日』の祭りには必ず帰ってくる。
かつて喪った愛しい人の霊魂が、この期間には帰ってくると信じられているからだ。

モルタナでは、祭りの期間に、よそからのお客様を招待している。
その招待状が、境界案内人を通してイレギュラーズにも届いた。


「『死者の国モルタナ』で今ちょうど、『死者の日』の祭りをやっているそうだ。よかったら行ってみないか?」

境界案内人――水鏡透は『死者の国』と書かれた一冊の本を携えていた。

「モルタナは陰気な国だと揶揄されがちだが、イレギュラーズなんかのよそ者には意外と優しいんだ。よそ者は『陽の気』をまとってるからな」

ああ、まずその説明からか、と水鏡は思い直す。

「モルタナの住人は『気』を吸って生きている民族だ。なにせ日が昇らないから、普通の作物は作れない。月光を浴びて育つ作物や薬草もあるが、そのほとんどはよそ者を歓迎するご馳走や輸出に使われてしまう。基本的には『気』が主食だな。それで、モルタナにはほとんど『陰の気』しかないから、それを吸って生きている。『陰気な国』なんて言われてる原因はそれだ」

水鏡は本の表紙を撫でながら、「不可抗力なのにどうしようもないよな」とこぼす。

「それで、よそ者はモルタナにはない『陽の気』をまとっていることが多いから、歓迎されるんだ。滅多に食べられないご馳走なんだよ、彼らにとっては」

「とは言っても、『気』を吸われたくらいで死んだりはしないから安心してくれ」と水鏡はイレギュラーズを安心させるように言葉を続ける。

「『陰の気』を吸われるとちょっと元気になる、『陽の気』を吸われるとちょっと冷静になる、という程度だ。ちなみに吸った側には逆の効果が働く。お前の『陽の気』を分けてやって、モルタナの住人を少し元気づけてやってもいいかもな」

――で、祭りに参加するか、しないか?
水鏡はイレギュラーズに選択を迫った。

NMコメント


10月なのでハロウィンっぽいライブノベルを。
死者の国モルタナは『陰の気』を吸って生きている不思議な民族が住んでいる国です。
あなたはこの国にやってきたよそからのお客様です。
モルタナではよそ者は意外と歓迎されます。
モルタナにはない『陽の気』があるからです。
モルタナの住人にとっては滅多に食べられないご馳走なのです。
とはいえ、気を吸われたくらいで死んだりはしないのでご安心を。
『陰の気』を吸われるとちょっと元気になる、『陽の気』を吸われるとちょっと冷静になる、くらいの感覚です。ちなみに吸った側には逆の効果が働きます。
あなたには来賓客として、お祭りの夜を楽しんでいただければと思います。
一晩、モルタナで自由に過ごしていただければ元の世界に帰れます。

●シナリオ例(できること)
・住人に『陽の気』を分けてあげる
・住人と一緒に、月光で育った作物で作られたご馳走を食べ、お酒を飲んでワイワイする
・『死者の日』の灯籠流しやお祭りのお菓子・ろうそく集めに参加してみる
・死者の国を散策したり、住人に話を聞いてみる、など

●サンプルプレイング1
まず、死者の国っていうのがどういう国なのか気になるな。
適当に散策して、出会った人にモルタナのことについて訊いてみるか。
歴史とか文化とか、貴重な話が聞けるといいんだけど。

●サンプルプレイング2
お菓子とかろうそくって、大人でも貰いに行っていいのかな?
子どもたちの中に混ぜてもらって、私もお菓子集めに行きたいな。
それから子どもたちに教えてもらって、灯籠を作って川に流そう。
空気が澄んでて星空がきれいな場所だね……。

●サンプルプレイング3
お祈りが終わったらしい大人たちに誘われて、居酒屋にやってきたよ。
月光で育つ野菜で作った料理って、どんな味がするんだろう?
お酒も美味しいし、大人たちも楽しそう。
全然陰気な国なんかじゃないって、元の世界に帰ったらみんなに教えなきゃ!

●サンプルプレイング4
ふむ、この国では戦闘は……ない?
悪霊を斬ったりとかも……ない?
……で、あるか。
ならば、俺はこの国の住人たちに、『陽の気』とやらを分けるとしようか。
どうやって分けるのかは知らんが、俺の『気』が役立つのなら、それは嬉しい。

  • 【死者の国】死者の日の祭り完了
  • NM名永久保セツナ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年10月18日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談10日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
シャーラッシュ=ホー(p3p009832)
納骨堂の神
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい

リプレイ

●死者の国と陽の気

「そもそもだ、『陽の気』ってのは一体なんなんだ?」

『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は、お祭りに参加している住民に尋ねる。
 彼の腕の中には祭りで片っ端から買い集めた甘味が収まっていた。

「境界案内人の方から『モルタナには「陽の気」がほとんどない』とはお聞きになっているかと思いますが」

 住民はこの国と『気』の性質について解説を始める。

「『気』というのは土地から湧いてくるものなのです。太陽が土を照らし、土が『陽の気』を生成してその土地にいる者に『気』を分け与える。なので、基本的には太陽の降り注ぐ土地にいる者ならば大抵は『陽の気』を纏っているものなのですよ。有機物も無機物も関係なくね」

「あー……なるほど?」

 回言は甘味を食べながらそんな話を聞いていた。それにしても、この月光を浴びた作物から出来た菓子は美味い。手土産にいくつか持って帰ろう。

「『死者の国』なんていうから、本当に死人が住んでるのかと思ってたが、もしや」

「はい、夜が明けないこととこの喪服のせいでしょうね」

 住民は苦笑いをしながら自分の服を見せる。祭りでも基本的に喪服は脱がないらしい。

「それにしても、お客さんの『陽の気』、美味しいなあ。ごちそうさまです」

「もう吸われてるのか、今」

「我々にとっては空気を吸うようなものなので」

「なるほどな。つまりおたくらは呼吸をするように主食を常に摂取してる状態だから、普段はご馳走も要らないのか」

「はい。ご馳走は正直、雰囲気を盛り上げるために祭りのときだけ食べているというか」

「ふーん……」

 『陽の気』を吸われすぎて無口で冷静な男になったりしたら困るな、と思いながら、回言はもぐもぐとお菓子を食べ続けるのであった。

●温かな光

「俺の故郷は、半ば冥府に沈んでいるようなものだが、そんな俺でも『陽の気』は纏っているものなのだろうか」

『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は、そんな疑問を抱いていた。

「まあ、うちの国よりはマシでしょう。実際、今吸ってる『気』、美味しいですし」

 住民は既にアーマデルの『気』を勝手に吸っているらしい。
 とは言っても、住民にとっては空気を吸うのと同じ、漂っている『陽の気』を避けて吸うなどという芸当は出来ないようだ。

「そうか。俺からも『陽の気』が摂取できるのなら、それは良かった」

 アーマデルはうなずいた。この国の民に、近しいもの、親しみを抱いていたのだ。

「この国で、なにかお勧めのものはあるだろうか」

「食べ物の話なら、月光ハーブで作ったお料理とか、お酒……は未成年だからダメか。観光の話なら、うちには名所らしい名所もないからねえ……まあ、今の時期の河原くらいかな」

「なるほど」

「へえ、この国にはどんな酒があるのかしら! 楽しみ!」

「うわぁ!? この姉ちゃんどこから湧いた!?」

 酒と聞いて我慢できず現れた酒蔵の聖女に、アーマデルはため息をつく。

「飲むのは構わんが、加減はしろよ?」

「酒に陽も陰もないっすわぁ~」

 酒蔵の聖女は既に話を聞いていない。モルタナの名産品という蜂蜜酒をがぶ飲みしていた。相変わらず、陰なのか陽なのかよくわからないテンションをしている。
 アーマデルは再びため息をついて、月光ハーブで焼き上げられた肉料理を口にした。
 祭り会場から見える河原には灯籠が流されて、温かな光が水面を照らしている。
 ……灯籠には、死者の霊魂が惹かれて集まっているようだった。悪い霊ではない。灯籠の灯りと同じく、温かな光を放つ霊魂だ。これらは、海まで流れて、それから海の向こう、死者の世界へ旅立つのだという。

 住民の笑い声を聞きながら、アーマデルは料理を堪能した。彼の口元は、かすかに緩んでいるような気がした。

●素敵な国の蜂蜜酒

「個人的には、ここは居心地が良くて素敵な国だと思いますね」

『納骨堂の神』シャーラッシュ=ホー(p3p009832)は、蜂蜜酒を傾けながら、モルタナの住民たちと歓談していた。

「本当に? そう言ってくれるのは嬉しいねえ」

 教会で祈りを捧げ、戻ってきた住民たちと暖炉にあたりながら蜂蜜酒を酌み交わす。
 居酒屋は、陰気な国などという噂とは真逆で、ワイワイとした喧騒すらある。

「この蜂蜜酒もとても美味しいです。友人たちとも是非一緒に飲みたいので、お土産用に、何本かいただいても?」

「もちろん構いませんよ。うちの国の名産品を気に入ってくれるなんて、感無量ですわ」

 聞けば、月光で育った花から、蜂が採取した蜜なのだという。珍しい酒なので、モルタナの輸出品の中でもかなりの売れ筋らしい。

 蜂蜜酒を土産用に包んでもらいながら、シャーラッシュは密かにギフト『死者探知』を使ってみた。……やはり、こういった人の集まるところには、霊も集まるもので。
 ただ、悪霊の類は見受けられない。どの霊も、優しい眼差しで客たちを見つめている。おそらくは、客たちの親しかった者たちなのだろう。

「おや、どうかしました?」

「いえ、やはりここは素敵な国だな、と思いましてね」

 シャーラッシュは静かに微笑み、住民たちに『陽の気』を分け与えながら、蜂蜜酒を楽しんだのだった。

●陽気な幽霊、ここに参上

「死者が陰気なんてのは、人間共の思い込みさ。俺も幽霊だが、こんなに陽気だしな」

『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)は、ニヤリと笑う。

「へえ、お兄さん幽霊なの? 私、幽霊を実際に見るのは初めてだわ」

 住民の少女は半信半疑といった様子でクウハを見る。

「ウッソだ~。だって兄ちゃん、触れるじゃんか」

 同じく住民の少年がクウハの手を握る。

「見えて触れる幽霊も外の世界には存在するんだぜ、坊っちゃん」

 ベロベロバー、とクウハはからかうように舌を出す。

「私、外の世界のお話聞きたい!」

「僕も!」

 子供達にせがまれて、クウハは自分の世界の話を語って聞かせる。

「ねえ、お兄ちゃん。『死者の日』には死んだ人が帰ってくるって言うけど、私のお父さんもここにいる?」

 不意に少女がそう尋ねてきた。

「ああ、嬢ちゃんの後ろで見守ってるぜ」

「じゃあ、私のことは心配しないでねって、伝えてね」

「ああ、わかった」

 クウハが霊魂疎通を使うまでもなく、娘の気持ちが伝わったらしい父親の霊は泣きそうな顔で笑っていた。

「ありがとう。お礼に、これあげる」

「ん? 何の種だ、こりゃ?」

 少女から渡された、植物の種が入っている透明な袋をつまんで、首を傾げる。

「月光で育つハーブだよ。これをお肉とかにかけて焼くと美味しいの! 私たちは普段は『気』を吸って生きてるから、普段はあんまりお肉食べないけど、お祭りの日はご馳走食べられるんだ!」

「そうかい、ありがとな。俺の住んでるところでも育つか、試してみるわ」

 クウハは少女の頭をワシャワシャと撫でて、そこで子供達と別れた。

「さあさあ、『陽の気』が欲しいやつは寄っといで! 祭りの日だってのに彼女にフラれてしょぼくれてる、そこの兄ちゃんから順に元気にしてやらァ!」

 その後、クウハは月光の花から採れた蜂蜜酒と、月光ハーブで焼き上げた串肉を食べながら、居酒屋で陽気に飲み、食べ、歌う人々を見守る。

「ああ、今夜はいい夜だ――」

 祭りの日なんか関係なく、毎日こうして賑やかに楽しく過ごせばいい、とクウハは思う。
 ご馳走なんかなくたって、人と人の営みがそこにあれば、それで充分だ。
 ――なあ、そういうもんだろう?

●祭りのあと

 こうして、各々の時間を楽しんだイレギュラーズたちとモルタナの住民たちの、賑やかな祭りの夜が明けた。
 ――いや、『夜が明けた』とは言っても、モルタナに太陽が昇るわけではない。
 人々が『夜が明けた』と判断する基準は、彼らの所有する時計で判断するしかない。
 時計が時刻を告げ、教会の鐘が鳴れば、そこで祭りはおしまいだ。人々はまた国の土地から湧き出る『陰の気』を吸いながら、墓に囲まれた教会に祈りを捧げる生活に戻る。それが不幸なのか陰気なのかは住民ひとりひとりが判断することだ。嫌なら国を出ていく、それだけの話だろう。――それでも、『死者の日』の祭りにはみんな帰ってきてしまう。それが答えのような気がした。

「今回も、ご苦労だったな。祭りを楽しめたようで何よりだ」

 迎えに来た境界案内人・水鏡透は、満足そうなイレギュラーズたちの顔を見ながらうなずいた。

「モルタナの住民たちも、久々のご馳走に大喜びだ。お前たち、だいぶ『陽の気』を吸われてるぞ。もともと『陰の気』が多そうなメンツだったから果たして大丈夫なのかと思ったが、うん。きちんと役目を果たしてくれてよかった」

 そう言って、イレギュラーズを元の世界へ帰すための道を開いていく。

「さて、帰ろうか。やり残したことはないな? お土産は持ったか? それでは、『死者の国』のお話は、これにて。めでたし、めでたし」

 あとはお客様のお見送りだ。感謝の表情を浮かべたモルタナの住民たちに見送られながら、イレギュラーズたちは帰還するのであった。

成否

成功

状態異常

なし

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