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シナリオ詳細

<グレート・カタストロフ>戯れもまた終焉の餌食……?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『神託』の観測した『決定付けられた未来』。
 絶対的破滅……通称『Case-D』の決定的な接近により、混沌各地に『バグホール』が出現を始めた。
 もはや、目に見える形で破滅が形をとり、混沌の滅亡が身近に迫っていることを実感させる。
「抗いましょう。最後まで」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は力強くイレギュラーズへと告げる。
 彼女の未来視では、この先どうなるかまでは見通せないというが、逆に言えば滅びが見えたというわけでもない。
 だからこそ、彼女も終焉に抗おうと皆に促すのだ。

 さて、今回の事件は深緑にて起こる。
 迷宮森林を巡回していた森林警備隊が妖精少女一隊を確認したという。
 それだけならローレットへと報告は上がらなかっただろうが、彼女達が向かった先は西部のメーデイアと呼ばれる場所なのだとか。
「迷宮森林の中でも、大樹ファルカウから遠い区画です」
 ここは昨今、幻想種ですら行方不明事件が発生しており、森林警備隊も迂闊に入ることができないという。
 そこで、イレギュラーズにメーデイアの巡回を願いたいという依頼が森林警備隊から入ったのである。
「少し嫌な予感がします」
 できるだけ早く向かってほしいと、アクアベルは依頼を受けてくれたメンバーへと願うのである。


 迷宮森林西部メーデイア。
 ファルカウから離れ、迷宮森林でも奥まった場所。
 ただでさえ迷宮森林は他者を拒み、迷わせるというが、ここはさらに厄介な事情が絡む。
 今や立ち入れば幻想種ですらもこの地では行方不明者が多発する状況となっており、森林警備隊も迂闊に手を出すのが難しくなっているという。
 戯れに混沌へと遊びに出ていた小さな妖精少女達は、そんな場所へと迷い込んでしまった。
「わっ、わっ!!」
「何、あの変な生き物は!?」
 彷徨う妖精少女達は必死になって何かを発見してしまい、それらから追われることとなる。
 ただでさえ、迷いやすい迷宮森林内部。
 彼女達は方向が分からぬまま全力で逃げ回っていたが、相手は執拗に追ってきており逃す気はないようだ。
 追ってきていたのは、大きな黒い手と口、それに人型をした樹らしきもの。
 前者は終焉獣。後者は大樹の怒りや憤りを体現した精霊とも思われるが……。
「捕まったら最後よ!」
 妖精の一人、エーヴィが仲間達へと告げると、皆、羽根が引きちぎれるかと思うほどに羽ばたかせて逃げる。
 妖精達はかなりのスピードで飛んでいる。
 ただ、敵集団も体格差に加え、思った以上に速く追いかけてきており、少しでも速度を緩めると追いつかれてしまいそうだ。
 しばらくの間続く、追走劇。
 だが、思わぬ形でそれは終わることとなる。
 妖精達の前方へと塞がるように展開された巨大な穴。
 それは、バグホールと呼ばれる謎の穴であり、触れた物を消滅させる危険なモノである。
「「ああっ!!」」
 急停止する妖精達。
 後ろからは、終焉獣らが猛追しており、捕まるのは時間の問題。
 覚悟を決めて構えるエーヴィら妖精少女。
 そこに、颯爽と駆けつけるは、ローレットイレギュラーズの一隊。
「ああっ……!」
 久しぶりの出会いに、エーヴィらは思わず仲間達と歓喜の声を上げるのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <グレート・カタストロフ>のシナリオをお届けします。
 混沌全土に出現するバグホール……どこにいようと、もはや終焉からは逃れられないのでしょうか……?

●概要
 場所は、迷宮森林西部メーデイア。
 昼間ですが、森は鬱蒼と茂っていて、日中でも暗く、非常に見通しの悪い場所です。
 戯れに妖精郷から出て外へと遊びに来ていた妖精達が終焉獣の群れに追われているようです。
 彼女達を救出しつつ、終焉獣らの撃退を願います。
 戦場の近場に直径5mほどあるバグホールがありますので、皆様もそうですが、妖精達も触れないよう配慮願います。

●敵
〇アポロトス×4体
 混沌世界に存在する滅びのアークが人間の感情エネルギーを帯びて顕現した個体です。
 深緑では大樹の怒りや憤りを体現した精霊の一種ともされていましたが、変容する獣などと結びついたそれらは意思を持つ軍勢として動き回っています。

 今回現れるのは、樹をベースとした人型の個体です。
 全長は1.7~2.5mほど。
 足を根の如く変えて広範囲を絡めて締め付けたり、腕を太い枝へと変えて薙ぎ払ったり、槍の如く突き出したり、多数の枯れ枝を撃ち出してきたりと多彩な攻撃を行います。
 また、「終わりは遁れざる者である」と告げ、滅びのアークを周囲にばら撒く特徴が有ります。狂気状態や『寄生型終焉獣』を産み出す力を有しています。

〇終焉獣×3(+α)体
 滅びのアークそのもので作られた獣達。
 漆黒の体躯をした人体部位のものがが多い印象です。

・飽食の口×1体
 全長3mほど。直接噛みついてくるだけでなく、歯ぎしりや怨嗟の声を発します。
 直接食らいついたモノの存在を消し去ろうとするようです。

・混迷の手×2体
 全長2m弱。左右一対の手です。
 掌を叩きつけて上から押し潰したり、指で弾いたり、ビンタを叩きつけてきます。
 両手が揃っていると、力技で相手を引き裂こうとするので要注意です。
 指で空間を裂き、浸食を行うことも。

〇寄生型終焉獣×?体
 全長1m弱。戦闘開始地点ではその姿は一切ありませんが、アトロポスが生み出す可能性があります。
 スライムのような姿をしており、取り付いた相手を狂気状態へと陥らせます。妖精達も例外ではありません。
 寄生状態の特効薬は『死せる星のエイドス』であることが分かっており、混沌でも利用することで寄生された人を無事に助け出せます。
 また、寄生終焉獣同志で引っ付き合い、強化個体になることも。
 スライム状の姿で戦う際は、身体の一部を弾丸のように飛ばしたり、近づいて相手の動きを止め、精神に作用してその体を乗っ取ろうとしてきます。

●【寄生】の解除
 寄生型終焉獣の寄生を解除するには対象者を不殺で倒した上で、『死せる星のエイドス』を使用することで『確実・安全』に解き放つことが出来ます。
 また、該当アイテムがない場合であっても『願う星のアレーティア』を所持していれば確率に応じて寄生をキャンセル可能です。(確実ではない為、より強く願うことが必要となります)
 解き放つことが出来なかった場合は『滅びのアークが体内に残った状態』で対象者は深い眠りにつきます。

〇クルエラ:チアウェイ
 指揮官型終焉獣。全長2mほどの黒い人型。
 今回は姿だけ見せ、終焉獣の群れを置いて去ってしまいます。

●NPC
○妖精……エーヴィ
 身長30センチぐらいの精霊種、15歳くらいで青い服を纏った金髪少女。魔法による簡単な回復支援ができます。
 今回は助けてくれるイレギュラーズの為、支援してくれます。

〇妖精達……5人
 エーヴィの友達であり、仲間。
 戦闘にはあまり向きませんが、回復支援や強化などに動いてくれます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <グレート・カタストロフ>戯れもまた終焉の餌食……?完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
志屍 志(p3p000416)
天下無双のくノ一
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
佐藤 美咲(p3p009818)
無職

リプレイ


 迷宮森林西部メーデイア。
 日の光すら満足に入らぬこの地で、イレギュラーズの一隊が周囲に気を払いながら進む。
 『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は先行させたファミリアーの視界と合わせ、自身の鷹の目を駆使して対象の捜索を急ぐ。
「迷宮森林にもバグホールが……それにチアウェイや敵も……!」
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)もまた洗練された感覚を持って広域を見渡し、敵の遭遇に警戒する。
 同じく、広域から、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が捜索していて。
「このようなところにも現れるのですね、バグホールは」
 葵は以前の依頼で閉鎖空間に現れたのを確認しており、どこに出ても不思議ではないと考えていた。
「まーた変なのが出てきましたねー」
 『無職』佐藤 美咲(p3p009818)はこの間、バグホールの影響で行きつけの飯屋が潰れたのだという。
 果たして、こうした事態がいつまで続くのか……。
「まだ接触しないことで抗えますが、この調子で世界がバグホールに覆われてしまうとどうしようもありません」
 そこで、葵がさらに話す。
「そうなるまでは抗い続けたいものです」
 『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は傍に付き従う凍狼の子犬オディールと一緒になり、森を移動する精霊を感知して呼びかけてみる。
「あちらみたいね」
 バグホールが現れた場所は精霊も把握していたらしく、その方向を示してくれた。
「森林で迷子になっている妖精のお嬢さんたち、か」
 状況を再確認するよう『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が口にする。
「現在の不穏な情勢では、厄介な事に巻き込まれているかもしれない。速やかに保護しに行かねばな」
 そう主張し、モカも暗がりの中、目を凝らして遠くまで見渡す。
「アーカーシュに。プーレルジールに。縁深い場所は増えましたが」
 秘宝種である『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)が混沌で目覚めてから最初に関わった大きな動乱が妖精郷での一件だと、本人は言う。
「深緑に領地を頂き、勝手ながら、出会った方たちを弔っています」
 なお、今回の事件に関して、そのことが大きく影響している者達も。
「しまったわね」
 オデットはこの状態を、妖精郷の女王様達へとしっかり伝達しておきべきだったと若干後悔する素振りを見せる。
(R.O.Oにもプーレルジールにも妖精郷が無かった……。つまり妖精郷は最も混沌から遠い故に滅びの影響を受けるのが遅い?)
 そして、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)はおそらく、バグホールが確認できてないであろう妖精郷へと、妖精達にいるよう告げたのだそうだ。
 だが、深緑へと戯れに出てきた妖精がいた。
 ならば、彼女達を守護することこそ自身……妖精の魔鎌の宿命と、サイズは本能的に捉え、この依頼に飛び込んでいる。
(後悔したって始まらないし、サイズが無茶しないように気を付けておかなきゃ)
 そんなサイズを見やりながら、オデットは翼から淡い光を発して森の中を進む。


 発見が早かったのは、そのオデット。
 続いて、駆けつけてくるメンバーがその状況を視認して。
「バグホールと終焉獣の挟み撃ちとか、随分しんどい状況じゃないっスか」
 葵が言うように、森の中を逃げていた妖精達が身動きのとれぬ状況となっている。
「ごきげんよう、迷子のお嬢さんたち」
「ああっ……!」
 嬉しそうな声を上げるエーヴィら妖精達。
 一行は真横から割り込む形で妖精達へと近づく。
「でもよく耐え切ったな、後はオレ達に任せるっス」
 葵も優しく呼びかけると、妖精らは刻々頷く。
 同じタイミング、オデットはオディールを妖精らの傍へと控えさせ、不測の事態へと備えさせるのと同時に、バグホールへと近づかないよう監視させる。
「ホント、所構わず出てくるもんだから困るなアイツら……」
 そして、葵は終焉獣一隊を振り返る。
 蠢く巨大な口と両手と合わせ、人型のアポロトス。
 後者は寄生型終焉獣を生み出すというが、今のところその姿はない。
「またチアウェイは逃げたけど、残る敵を倒して妖精さん達を守り切るよ!」
 それらを引き連れてきたはずのクルエラ、チアウェイがいないことを認めたヨゾラは戦場となるてあろうこの近辺を保護結界を展開する。
「愚痴ってもしゃーねぇ、まずはこの状況を越すのが先だ」
「この混沌で、ワタシが私として歩きだした、その切片となった地ですから。尽力させていただきます」
 切り替える葵。グリーフも故あってか事態解決の為、自分の周囲に障壁と結界を展開し始める。
「あとはおねーさんたちに任せなさい!」
「「うん!」」
(ああ、くそ……奇跡が歪み裏切られて、武器として誇りと価値を全て失った最悪の夜が頭をよぎる)
 モカの呼びかけに応じ、一行の指示に従う妖精達。
 その傍らで、敵を見据えたサイズが頭を抱える。
「……護らねば守らねば、妖精■■として!」
 並々ならぬ強い気概を抱き、サイズは妖精達の守護へと当たるのだった。


 敵に挟まれる形で始まる森での戦い。
 真っ先に動き出したのは、火力役となる美咲だ。
「これならいけそうでスね」
 敵のみを捉え、美咲は閉所戦闘を試みる。
 群がる敵を蹴散らさんと、美咲は範囲内の敵全てへ、銃、拳、投擲等、使えるものは全て武器として叩き込んでいく。
「焦って前に出過ぎないようにするっス」
 妖精達へと呼びかけた葵は支援するなら効果の届く最長レンジからやってほしいと願う。
 頷く妖精達がサイドへと下がる手前に立ち、葵はバグホールの位置を視認しながら知覚を鋭くし、自己強化して戦闘態勢を整える。
 瑠璃もやはりバグホールを意識し、近づかぬよう立ち回る。
 一旦、彼女は仲間が引き寄せるのを待つ形だ。
(バグホールは……)
 同じく、バグホールの位置を把握し、モカは逆側にいる敵と対する。
 まずは、デスティーノ・コイントスで運命をつかみ取ったモカは、現状寄生型がいないこともあり、敵陣目掛けて気功を発射する。
 黒豹を象ったその気功は森の素早く駆け抜け、急所と思しき所を噛み砕かんとする。
 アポロトスはともかく、終焉獣は異形揃い。
 口の端や手の手首付近を喰らい、気功は消えていく。
 入れ替わるように、ヨゾラの巻き起こす星空の泥が敵陣へと押し寄せる。
 すでに、星空の魔術紋……ヨゾラ自身を輝かせていた彼は、アポロトスを優先的に捉え、動きに体力を削ぐ。
 自由にさせれば、寄生型終焉獣を生み出す可能性があるというその敵は最優先で倒すべき相手だ。
 オデットもまた蠢く人型のアポロトスを、激しく瞬く神聖の光で強く照らす。
 そのオデットの攻撃直後、メンバーの攻撃が一旦止んだところでサイズが終焉獣らの中へと突っ込んでいく。
 鬼気迫る豊穣で、サイズは敵へと名乗りを上げた。
(妖精達にヘイトを一切向けさせてたまるか)
 それだけでは終わらず、サイズはアポロトス1体に狙いを定め、赤い闘気を叩き込んでいく。
 同じタイミングで、グリーフも動く。
 こちらは秘宝種としての希少性価値を前線に出すことで、アポロトスの引き付けに当たる。
 とりわけ、そいつらが寄生型を産み出さないか、グリーフは逐一チェックしていた。
 やや出遅れる形となった敵もヘイトを買う2人へと攻撃する。
 アポロトスが樹の体を活かし、槍の如く腕を伸ばして突き出し、根のように足を延ばして絡めてくる。
 そこへ近づこうとする漆黒の口と両手。
 不快な歯ぎしりはこちらの攻勢を削ぎ、両手はそれぞれが頭上からの叩きつけに横からのビンタと強打撃を与えてくる。
 しばし、敵の動きを注視していた瑠璃は、グリーフが引き寄せていたアポロトスを中心に混沌の根源たる力を泥に変えて浴びせかける。
 その図は、混沌の根源たる力も、終焉に抗っているかのよう。
 ……………………。
 瑠璃のケイオスタイドを浴びてなお、敵はまるで動じることなく、前のめりにイレギュラーズを攻め立ててくる。
 そして、アポロトス数体が徐にこう口にする。
「……終わりは遁れざる者である」
 はっとしたグリーフが押さえつけようとしたが、2体は間に合わず。
 どろりとアポロトス達の体より出現したそれらは、スライム型の寄生型終焉獣だった。


 寄生型終焉獣が産み出されたことで、メンバーの優先撃破対象がそちらへと移る。
 グリーフなどはアポロトスと合わせて、それらを引き付けて。
(プーレルジールと同様であれば、秘宝種は、いい器に見えるかもしれません)
 思った通り、寄生型は彼女に憑りつこうと考えたのか、わらわらと近寄ってくる。
 グリーフは紅の炉心を一層強く燃え上がらせ、機動力を高めて障壁と結界を展開し、敵の攻撃を防ぐ。
(いくらでも抱え、耐えましょう)
 敵の攻撃は激しいが、天上存在たるグリーフのこと。
 加えて、持ち前の体力に抵抗力、忍耐力で、彼女は精神的な苦痛にもしばらく耐えてみせる。
 傍には、終焉獣を抑えつつ、アポロトスを相手するサイズの姿が。
 冬白夜の呪いで体を凍らせ、強引に体をブーストさせたサイズは短剣を投げ、さらにその短剣をまりょくで遠隔操作してアポロトスを切り裂く。
 万一の備えに、星の少女ステラより齎された救いの欠片……死せる星のエイドスを用意していたが、それを使う羽目になったら、負けだとサイズは強く自認して。
「妖精を守り切れ! 妖精の敵は殺せ!」
 サイズの殺意ほど高くはないものの、アポロトス、寄生型に対する敵意は他メンバーも高い。
「楽園追放……貴様等全員消え失せろ!」
 ヨゾラが組み上げたのは、神聖秘奥の術式。
 邪、悪と認めたアポロトスや寄生型を彼は纏めて灼き払った。
 森の中、駆け巡る光。直後、周囲に焦げた臭いが漂う。
 兎に角、相手を自由になどさせぬとばかりに、モカがなおも黒豹の如き気功を発した。
 寄生型の片割れは弱りながらも耐えていたが、もう片方は早くも潰れて跡形もなく消え去ってしまう。
 邪魔になることはないと判断したモカは次なる敵へと向き直る。
 その間、なんとか何かに憑りつこうと飛び掛かってくるもう1体の寄生型だが、己に全覚の奏者を付与したオデットがやや距離を保ったままで術を発動させた。
 次の瞬間、寄生型は魔空間へと呑み込まれ、全身を圧搾される。
 そいつはもう逃れることもできず、空間内で果てたようだ。
 手応えを感じたオデットは、なおもアポロトスの掃討を急ぐ。
「…………!!」
 アポロトスもさらなる寄生型を産み出そうと言葉を紡ぐが、メンバーが阻止するほうが早く。
 敵が纏まっているのを見計らい、葵が放つ鉛の如きシュート。
 それはカーブを描いて戦場となる森を飛び、アポロトスの体を強く打ち付けた。
 葵の掃射によって見事に粉砕された敵が体を崩す傍で、瑠璃も精神力を弾丸に変えて発する。
 1体を消し飛ばし、瑠璃が次なる敵をと捕捉する視線の先で、サイズはブーストしたまま、別のアポロトスへと切りかかって。
「喰らえ!」
 連撃の後、執拗に追撃を浴びせかけ、サイズはそいつをズタズタに切り裂く。
「…………!!」
 枯れ枝を撃ち出す長身のアポロトスへ、美咲が狙いを定める。
 術式によって顕現した四象がアポロトスを囲み、一斉に襲い掛かせば、そいつは枝根を伸ばしたまま果て、瞬く間に枯れ落ちて消えてしまった。
 これで全てのアポロトスを撃破し、妖精らが宿主とされる危険がなくなったことで、オデットも、瑠璃も、ヨゾラも安堵する。
 徐々に減っていく敵に、妖精達からも笑顔が見え始めていた。
 だが、人の部位型の終焉獣はこちらを浸食しようと口を開け、手を広げてくる。
 それらが妖精達へと危害を加えぬよう、サイズがなおも前のめりに切り込む。
 猛然と飛び掛かってくる混迷の手らはモカへと掴みかかる。
 終焉獣が両手一緒になって体を引き裂こうとしてくるのを彼女も一時耐え、力を封じようとしたのだが間に合わない。
 モカは自身の体力が尽きるのを感じつつも、パンドラを少しだけ掴んで必死に堪える。
 仲間の危機を察したグリーフが飛び込み、ケイオスタイドを浴びせかけた。
 両手を抑えにかかろうとするグリーフへと、飽食の口が大きく口を開くが、サイズが身を盾にしてその侵攻を食い止める。
 仲間の危険を察知した美咲が即座に、機械仕掛けの神による『解決的救済』を起こし、猛攻に晒される仲間の心身を癒す。
「あの人達を支えるのよ!」
 激しい攻防を見守っていたエーヴィら妖精達が癒しの術を飛ばし、モ前線メンバーを支える。
(回復もありがたい……!)
 ヨゾラも彼女達に感謝しつつ、仲間達へと無穢のアガペーを振りまく。
「誰も倒れさせないよ……!」
 終焉獣を抑える仲間が立ち続けられるよう、ヨゾラも力を尽くす。

 暗がりの森の中、しばらく森の中での攻防が続く。
 気が抜けぬ相手ではあるが、イレギュラーズとしては幾度か交戦している相手である。
 部位型終焉獣が不気味に蠢く。
 混迷の手の片割れが指先を怪しく光らせ、空間を引き裂こうとしたのを見て、オデットが己の魔力と周囲の光を集めて。
「更なる浸食とか見過ごすわけないでしょ?」
 生み出した小さな太陽を叩きつけ、オデットはそいつを滅してしまう。
 …………!!
 もう片方の手もこちらを纏めて押し潰そうとしてくるが、葵が後方からしっかりと見定め……砲弾の如きサッカーボールを蹴り出す。
 強かに叩きつけたボールを手元へと戻した葵は、さらに生成した絶対零度の氷の杭を掃射し、残る手を撃ち貫く。
 体に大きな穴を開けたそいつは空中を掻きむしるように指を動かしてから、霧散していった。
 ギリギリギリギリ……!
 悔しそうに、歯ぎしりする飽食の口。
 その不快な音がメンバーを苦しめるが、手厚い仲間の支援を受けて一気に攻勢を強めて。
 大きく開かれた終焉獣の口に瑠璃が精神力の弾丸を撃ち込む。
 確かに、瑠璃の一撃は敵を怯ませたが、なおも終焉獣はこれでもかと口を開く。
 直後、攻撃に転じた美咲が左義手を振りかぶって。
「うざい物を戦場においてくれましたからね」
 美咲が気に掛けるのはバグホール。
 そちらに敵を弾こうとするが、敵はその場に留まったまま、周囲の木々ごとイレギュラーズを喰らおうとしてくる。
 そこへ、サイズが突撃し、敵の唇を幾度も切り裂く。
 流れるように止まらぬその連撃に、口の動きが止まる……が、終焉獣はなおも怨嗟の声を上げ始める。
「しぶといね……!」
 再度、強く魔術紋を輝かせたヨゾラがその口の懐へと潜り込む。
 腕に纏わせた神秘の力を、彼はそのまま漆黒の口へと打ち込んだ。
 …………、……、……。
 もはや、声を上げることもできず、そいつは森の中へと消えていったのだった。


「うへー……、こんなの出回ってたら、おちおち出かけるのもやりづらいスねー」
 全ての敵を倒し、美咲は開口一番、悪態づく。
「エーヴィさん達も大丈夫?」
「「本当にありがとう……」」
 仲間の手当てをしつつヨゾラが問うと、妖精らは揃って一行へと礼を告げた。
「下手したら寄生されて同人誌みたいなことになりまスから、アンタたちも気をつけなさいねー」
 美咲が忠告する傍でモカは周囲を見回し、死せる星のエイドスを使う必要がないかと再確認する。
「ここは、私たちの居場所だから」
 グリーフは森で寄生された形跡を発見したのか、清浄化する。
 これで、メンバーの知らぬところで暗躍することもなくなるだろう。
 それでも、メンバーは警戒を怠らず。
「今倒したのが最後の終焉獣という事はないでしょうから」
 どれだけの終焉獣が潜んでいるかわからないと、ファミリアーを使った警戒を続ける。瑠璃は保護した妖精と共に早々に撤退することを提案する。
「いかがでしょうか」
 間髪入れず、瑠璃に同意したのはサイズだ。
(あの最悪の妖精郷の夜から学んだ、敵の増援よりも最悪な増援を想定しろ)
 エーヴィらを安心させて妖精郷に。
 それが叶うまで、サイズは鬼気迫る表情を解くことはないのだろう。
「倒し損ねて襲われても、大問題なワケだしな」
 まだ見ぬ寄生型が存在するかもしれないという葵の意見もあり、一行はそのままエーヴィらを妖精郷へと送り届けることにしたのだった。

成否

成功

MVP

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは戦場にて存在感を示した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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