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【蝕】おもかげ/omuIL
【蝕】おもかげ/omuIL
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在りし日。
幼かった頃の十夜縁。
変化能力がまだ甘く、人間種の姿になることができなかった、未熟な海龍。
母親の愛情を受けてすくすくと育ち、陸での暮らしに憧れ。
居場所を求めるまま、海洋ギャング団《ワダツミ》へと流れ着き――やがて、彼は出会う。
海辺に佇む、金の髪を靡かせる美しい幻想種。
そして、その腕に抱かれた、小さな赤ん坊。
それが始まりだった。
それが終わりだった。
彼女に相応しい自分になるために。
彼女を隣で支え続けられるように。
ギャングを離れ、真面目に働き、そして、そして――
――そして彼は、彼女の細い首を締め上げることとなる。
『――貴方だけ、だったのに』
「……この恋(つみ)に希望も奇跡も、何もいらない」