イラスト詳細
輝かんばかりのこの夜に
輝かんばかりのこの夜に
イラストSS
百合子とセレマは、聖夜を迎えた鉄帝を訪れていた。
必要な買い物も済ませ、そろそろ帰ろうかというときに空を見上げた百合子が突然言った。
「こんなに晴れている夜空も珍しい。よし、星を見に行くぞ」
●
セレマは乗り気ではなかったものの、郊外へ車を回し路肩へ停めた。
さっきまでは我慢できる寒さだったが、夜も更けこの辺りはより一層冷えるのだ。
百合子は温かい紅茶。セレマは水煙草を手に二人は車内から星空を見上げることにした。
星空なんて今まで散々見てきた。それこそ元の世界でだって、当たり前に存在していた。なのに、フロントガラス越しに見上げた星の輝きが、百合子の心を掴んで離さないのは屹度『誰かと見上げる初めての星空』だったからだろう。
隣に誰かがいる、というのはこんなにも世界の見え方を変えるというのか。視線は星空から外さないまま、百合子は呟いた。
「……すごい」
「星なんてどこでだって見れんだろ」
セレマは白い煙と一緒に夢の欠片もない言葉を吐き出した。率直な感想だった。
今日は偶々晴れていて、偶々よく見えただけ。
だが隣に座るコレの紺青の双眸が宝石のように輝き、そこに映る星を盗み見ることは存外悪くなかった。
※SS担当者:白