イラストSS

　昼は喫茶店、夕方からはバーへと姿を変える『カフェ・トエイト』に、控えめなものから豪快なものまで様々なグラスの音が一斉に響く。がやがやと普段に増して騒がしい今夜は、シャイネンナハトを祝いながらの慰労会が開催されていた。
　音頭を取ったのは聖奠騎士団（サクラメント・エクェス）と呼ばれる騎士団の長たるサクラだ。集まっているのも騎士団の面々であり、バーのマスターまで協力者。誰もが志を同じくした、或いは同じ戦場を駆けた者同士だが、世界から争いが消える祝祭くらいは肩肘張らずに楽しみたいもの。故に、各々好きなように飲んで食べる立食形式で、乾杯が済めばサクラもお役御免とシャンパングラスを手に友人の元へと駆け寄った。
｢お疲れ様！　かんぱーい！｣
｢１年間お疲れ様！　かんぱーい！｣
｢今年も一年お疲れ様ぁ！｣
　聖職者という立ち位置から協力するスティア。このカフェ経由で要請に応じたアーリア。それぞれ事情が違えど天義出身の３人娘が集まれば場は一気に華やぎ、話題も笑い声もころころと。
　グラスを打ち鳴らすのも何度目か。それでも、楽しいことは何度あったっていい。美味しいものを満たされるまでおかわりするように。
｢無敵の私達聖奠騎士団で、天義の平和を守っていこー！｣
　貴族家の娘らしい淡い桜色のパーティドレスに着替えても、祝いの席にはしゃいでも、普段の騎士然とした鎧姿のサクラから芯はブレない。
｢そうねぇ、スティアちゃんにサクラちゃん、私もいればもう無敵だもの！｣
　カクテルを嗜むアーリアはお姉さんのような余裕を感じさせながら同意した。その毛先はラベンダーから鮮やかなベリーカラーにゆっくりと染まり、暗い色のノースリーブワンピースに映える。
｢うんうん。攻め手のサクラちゃん！　守り手の私！　搦め手を使うアリーアさんが揃ったら無敵だよね！｣
　両手で包むグラスの中身はノンアルコールではあるけれど、スティアのドレスはワインのように深い赤。ご令嬢らしく落ち着きのある佇まいにふたりと変わらない明るい笑顔がぱっと花開く。
　この１年、苦楽をを共にした記憶が彼女達を強く結び付ける。未だ見ぬ困難が道を塞ごうと、手を取り合うならば恐れるものなどない。そう信じられるだけの絆がきっと彼女達の次の１年に光を齎すのだろう。そんな未来を語っては、今はただ揃いの笑顔で宴を彩って——輝かんばかりのこの夜に！

　※SS担当者：氷雀