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イラスト詳細

夢野 幸潮のMewによるおまけイラスト

作者 Mew
人物 夢野 幸潮
イラスト種別 おまけイラスト(→元発注イラスト
納品日 2022年12月24日

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イラストSS

●Without friends no one would choose to live, though he had all other goods.
 煉瓦を積み上げて出来た工房に、まるで吸い込まれる様に雪が降り積もる。窓の庇から柔い皓が落ちる音に、ふ、と外に視線を移すと――ヤケに粧した若い男女の姿や燥ぐ子供の聲に、さて今日は何かあっただろうか、と。今度はカレンダーに星映りのくりくりとした双眸を向ければ、『成る程』と合点が行った。
「今日はクリスマスだったか」
 此の変に健全で、やけに混沌とした此の世界では呼び方こそ違うものの、同じ日に祭り事があるらしい。手に取った油性マジックで『24』日にバツ印を付けて綺蘭は嘆息した。其れは己の『相棒』と離れ離れになっている間の記録であり、然し乍ら何れ『○』が付く日が来るのかは全く以て予想出来ず、何の保証も無いものだ。

「よいしょ、っと」
 感傷に浸りたい時に、人と云う生き物は高い所に登りたくなるものである。軽く雪を払って人ひとり分のスペースを作れば腰を降ろした。
 赫い盃に満たすのは甘ったるくて毒みたいなもの。きん、と冷えた曹達水を注げばパチパチと小さな泡が弾けて、唯其れ丈の事なのに無性に虚しい。『彼女』が居なければ記念日なんてあっさりと過ぎて行く程に私はぐうたらになってしまったのかと、脣が象るのは自嘲の笑みだった。

「逢いたいなあ」
 彼女が『此方』に来たら、見せたいガジェットが沢山有る。屹度子供みたいに喜んで、外に飛び出して行くんだろう。けれど少しファザコンな所があるから――『父さん』と離れ離れになったら寂しがるのかも識れない。

「はー……ま、乾杯って事で、一つ」

 ※SS担当者:しらね葵

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