PandoraPartyProject

イラスト詳細

オウェード=ランドマスターの萬吉によるおまけイラスト

イラストSS

 場所はランドマスター領の本拠地に存在する役所の領主部屋。
 六名のゲストを招いて、テーブルの上にご馳走をこれでもかと並べた豪華なパーティが開かれていた。
 そして、そのパーティの主催者たるオウェードがうぉっほんと大きな咳払いをし、自慢の立派な髭を一撫でした後で若干緊張した面持ちで開幕の挨拶を切り出した。
 自然と参加者の視線がオウェードへ注がれる。
「えー、本日はお集まりいただき誠にありがたく――」
「おいおい、かたっ苦しいのはさっさと終わらせて早く呑もうぜ」
「わたしもお腹すいちゃった。早く食べましょうよ」
「そうだな、オウェード。そうかしこまらなくてもいいだろう、折角の紅茶が冷めてしまう」
「フリック。喉渇イタ。早ク コレ 飲ミタイ」
「同感だな。俺も早く飲みたいし食べたい。こんなに美味そうな料理なんだから」
「オウェード、真面目なのは良いんだけどサ、みんな待ちくたびれたって言ってるよ?」

 オウェードの格式ばった挨拶を参加者が各々勝手に遮り始め、早く早くとオウェードを急かし始めた。リュートを爪弾いて様子を見守っていたミルヴィに視線で揶揄い交じりにトドメを刺され、オウェードは気恥しそうに頬を掻いた。
「む、むぅ……もう少しワシに格好つけさせてくれても良いんじゃないかの? ……いや、そうじゃの」
 よく考えてみれば全員普段着で参加している時点でドレスコードなんて、あってないようなものだ。格好つけたところで今更だろうと思い直して、オウェードは溜息を一つ吐きだす。そして今宵は無礼講なのだからと取り直し、よし、と背筋を正した。
 
「それでは改めて……かの方の救出成功を祝して……カンパーイ!!」
「「かんぱーい!!」」
 オウェードがメロンソーダが注がれたペリドットに輝き、光を反射して煌めくグラスを高々と掲げ号令をかける。それを合図としてあちこちから乾杯という声が上がり、グラス同士がぶつかってチリンと涼やかで澄んだ音が響いた。
 
 皆を見守るミルヴィの奏でるリュートの旋律と、参加者たちの賑やかな笑い声が合わさり心地よい音楽となってパーティ会場を包み込んでいる。
 胡胡とジェイクはそれぞれオレンジジュースとエールで乾杯して、笑顔で雑談に花を咲かせ、ベルナルドは紅茶に合うお菓子はないだろうかと探してみてチョコレートケーキとタルトを見つけた。フリークライはもはやピッチャーと呼んだ方が正しいのではないかというサイズのジョッキを持っていたし、凝り性の錬は、皿の上に盛られた料理の出来に「照りが良い」「香りが良い」と何度も満足げに頷いていた。
 楽し気に過ごす参加者たちを主催者としてもてなしつつ、オウェードはあの一連の騒動を振り返る。

 その報せを聞いた時、心臓に氷の杭を打ち込まれたようだった。
 全身から血の気が失せ、真っ青な顔で己の力不足を嘆き、後悔した。
 そして、そんな自分をみっともないと思いつつ地べたを這いつくばっててでもあの方を助けるのだと己を叱咤した。

(――激しい戦いじゃったのう……)

 数多の者が傷ついて、大量の血が流れた。見たくない景色も何度も目にした。
 それでも、自分がむしゃらになれたのは、ただあの敬愛し、思いを寄せる女性(ひと)を取り戻す為だったから。愛用の手斧を振るい続け、此処にいる皆は彼に協力を惜しまなかった。結果として、かの令嬢は取り戻されこうして救出成功パーティを開くことが出来たのだ。いまこうして笑顔で宴を楽しんでいる仲間たちの一人でも欠けていたら、叶わなかったかもしれない未来だった。
 そのことを噛みしめ、何度も心の中で感謝の念を唱えながら、オウェードはメロンソーダを煽った。

 ※SS担当者:白

PAGETOPPAGEBOTTOM