イラストSS

　空中神殿でシャイネンナハトの祭りを催すために、有志を募る誘いがあった。空中神殿から出ることのないざんげのために、クリスマスらしい雰囲気を楽しんでもらいたい。それが祭りを企画した発案者の願いであった。
　ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペンは、人伝に空中神殿でシャイネンナハトの催しが行われることを聞きつける。是非祭りを賑やかしに行こうと、ヨゾラは祝音・猫乃見・来探、曉・銘恵の2人にも声をかけた。
　夕闇と夜の境界が空の上で交わり始める頃──電飾で飾り付けられた神殿一帯は、クリスマスらしい装いに様変わりしていた。クリスマスの雰囲気を楽しめているかどうか、３人はざんげの反応を窺いながら挨拶を交わしにいく。
　ざんげの様子も見れて満足したところで、３人は早速祭りの屋台巡りに向かう。特に亜竜種の銘恵は、ヨゾラや祝音と過ごす初めての祝祭に心踊らせていた。
　亜竜種の里では見たこともない品々が並ぶ屋台に、銘恵は目を輝かせる。屋台に並ぶ愛らしいぬいぐるみを手に入れた祝音は、それを大事そうに抱えながら銘恵の隣りについて回った。ヨゾラは連れ添う兄のように、にこやかに2人を見守っていた。
　ヨゾラは銘恵に尋ねる。
「しゃおみー、どう？　初めてのシャイネンナハトのお祭りは──」
　銘恵は食い気味に、「すごく楽しい！」と満面の笑みで答えた。
「平和をお祝いするためのお祭りって、ステキだね」
　そう言って無邪気にはしゃぐ銘恵と過ごす内に、祝音は自然と暖かな気持ちに包まれていた。
「きっと……世界で１番平和に過ごせる日だね──」
　祝音は柔らかな笑みを浮かべ、ぽそぽそとつぶやく。
「また、来年も……楽しい日になるといいね」
　銘恵はふと遠くの夜空を見上げる。その瞳に煌めき流れ続ける流星群を映しながら、銘恵はヨゾラから聞かされたシャイネン・ナハトの伝説を思い返す。
　すっかり夜闇が空を覆い始め、星の輝きが一層増していく。夜が更けると共に、シャイネンナハトの終わりを感じる銘恵は、どこか切ない気持ちにもなった。またこうして、３人で楽しい夜を過ごせるようにと、銘恵は人知れず流星に祈りを捧げた。

　※SS担当者：夏雨