PandoraPartyProject

イラスト詳細

シキ・ナイトアッシュの橘知怜によるおまけイラスト

作者 橘知怜
人物 シキ・ナイトアッシュ
リア・クォーツ
サンディ・カルタ
イラスト種別 おまけイラスト(→元発注イラスト
納品日 2022年12月24日

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イラストSS

 湖畔に建つ少し古びた修道院──クォーツ修道院。クォーツ修道院では、保護された多くの孤児たちと修道士たちが生活を共にしている。その日、聖夜の前のミサでは、子どもたちはどこか落ち着かない様子を見せていた。待ち望んだシャイネン・ナハト──クリスマス・パーティーの開催が今夜控えているからだ。
 いつもとは違う特別な夜、クリスマスのプレゼント、おいしいケーキ──夜に向けた準備が進められ、子どもたちは終始浮かれていた。
 修道院のクリスマス・パーティーには、修道院や修道士であるリア・クォーツとも懇意にしている2人の姿があった。その2人──シキ・ナイトアッシュとサンディ・カルタも、修道院の子どもらと一緒にクリスマスの食卓を囲んだ。
 1年の内で最も盛り上がる修道院のパーティーの時間は、浮かれ騒いでいる内にあっという間に過ぎていく。いつもよりは少し豪華なチキン料理、今日だけのクリスマスケーキのデザートを振る舞われ、子どもたちは聖夜の幸福を噛み締める。同時に、誰もが満ち足りた笑顔を見せていた。しかし、どこかまだ満たされない者の影が、深夜の修道院の廊下に浮かび上がる──。
 パーティーの余韻に浸りながら、誰もが眠りにつく真夜中──。シキは忍び足で廊下を進み、厨房へたどり着いた。そこである物を見つけ出したシキはほくそ笑む。
「ふふふ♪ 残すなんてもったいないじゃないか。今の内に、私がもらってあげよう……」
 夜食を欲していたシキは、余っていた料理やケーキをありがたく頂戴した。
 厨房から寝室へ戻ろうとしたシキは、真冬の冷気に包まれる廊下に身震いした。「これだけ寒いと、どうしてもカロリーを欲してしまうねぇ」と考えていた矢先、シキはふと窓の外に目を向けた。

 トイレから戻る途中だったサンディは、窓の外の景色に夢中になっている様子のシキを見つけた。サンディの存在に気づくと、シキはうれしそうにサンディを手招きする。
「見てくれ、サンディ! 雪が降ってるよ」
 その生い立ちからどこか擦れた印象も目立つサンディだが、「マジで??」と声を上げて窓辺に駆け寄る様子は、無邪気な少年そのものだった。
 はらはらと舞い始めた粉雪を眺める2人の背後には、いつの間にか部屋着姿のリアも立っていた。
 リアは体の不調──クオリアによる負荷を感じて目を覚した。クオリア──限られた距離にいる他者の感情を、無差別に旋律として感じ取るその能力は、いつからかリアを苛むようになっていた。
 降り出した雪を眺める2人の美しい旋律、感情を受け取る度に、リアは激しくなる頭痛に顔をしかめる。そんなリアの姿が窓ガラスに反射して映ったことで、サンディは驚いたようにリアの方へ振り向いた。
 サンディと目を合わせたリアは、瞬時に笑顔を繕う。サンディにはリアの表情がどこか浮かないものに見えた。だが、リアはあくびを噛み殺し、眠気に耐えている様子を装う。
「この雪、積もるかもしれないわね……」
 リアは普段通りの調子で、修道院周辺の雪かきの心配をした。
「きっと、明日は熱い闘いになるね……!」
 そう言って、シキは興奮した様子でサンディを見つめ返す。子どもたちとの雪合戦大会を想定するシキの一言に対し、「いいねぇ、受けてたってやるよ」とサンディも調子よく応じた。

 ※SS担当者:夏雨

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