イラスト詳細
来年は絶対やらない(やる)
イラストSS
「ちょ、ちょっとまって下さい入稿十七時までって詰んでます、あと四時間て」
「特急で朝八時までいけまス」
ここは死線だ。
ネームは切っている。それだけが救いだ。
デスクトップに向かう美咲の後ろで、ほむらはノートPCを開いてペンタブのペンを握る。
使わなくなって久しいそれは第三世代の旧式だが、ドローイングソフトもドライバも未練がましくインストールしてあったのだ。
「クラウドにあげたっスから、送ったURLにアクセスお願いしまス」
「はい、これレイヤー構造、1ページ目と全部同じってことでいいですよね」
「当然そのつもりでス」
「じゃあ4ページ目からペン入れしていきますので、頭と後ろからお願いします」
刻一刻、時間が過ぎていく。
「お腹空きましたね」
「そっスね」
「牛丼屋、近いですよね……」
時に誘惑に負け。
「仮眠したほうが効率あがるかもっス」
「……ですね」
更に誘惑に負け。
「ここ白いです」
「すぐネーム切りまス」
突然の白紙あり。
「あっ!!!!」
時に誤って上書きし――
ちびちび飲んでいた栄養ドリンクが遂に尽きた。
辺りを見渡せば、昨日の昼から開けっぱなしだったカーテンの向こうから、日の光が差してくる。
集中が切れ、ふいに小鳥のさえずりまで聞こえてきたではないか。
完全にまずい。
――けれど諦めなかった。
諦めることなんて出来なかった。
「あーーー!!」
――終わった。
――人生が………………ではない。原稿が。
ついに脱稿の時。
「あと七分です」
「入稿っス!」
戦いは終わり、戦士達がその場に倒れ伏す。
なのに眠れないのは、どうしたことだ。
眼も痛いのに、眠いのに、考えることすら出来ないのに、妙に目が冴えているのだ。
つまり――もう酒しか勝たん!
※SS担当者:pipi