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八重 慧の鳴蚊嶋五連による3人ピンナップクリスマス2022
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二人が聖なる夜を迎えられたのだとしたら、それは間違いなく、あなたたち――ローレット・イレギュラーズたちの力あってのことだ。
とはいえ、慧はそれを、得意に思ったりしないだろう。
あの時の彼女たちの涙は、悲しみは、苦しみは本物で――。
ただ、それを助けたいと思った。それだけなのだから。
あの時、涙を流していた彼女たちは、今は慧の目の前で笑っている。
聖なる夜、ささやかなパーティの一幕。
皆でつまむのは、特別ではない、ささやかなお菓子。
竜宮では高級なお菓子が出回っていて、お土産に渡されることも多いのだが、それを選ばなかったのは――二人に、等身大の女の子でいて欲しかったから、なのかもしれない。
「こういうクッキーって、可愛くて食べるのもったいなくなっちゃうんだよね~」
マールがそういって、ぷに、と人形型のジンジャークッキーのほっぺたをつついた。メーアがくすくすと笑う。
「わかる! こういうのどれもかわいくて……作れる人、すごいなぁって思う」
「メーアが作ってくれたの、なんかこう、ヒトデみたいだったものね!」
「それは! お、乙姫になる前の、すごく小さい時だったから……!
い、今は違うよ! 練習は……乙姫の仕事が忙しかったからしてなかったけど、多分大丈夫だもん!」
テーブルのお菓子の前できゃいきゃいとやっている二人を見やりながら、慧は口元をほころばせた。チャレンジしてみたラテアートは、シャイネンナハトのツリーを模していて、結構きれいにできている。
「ラテをいれたっすよ」
慧がそういって、いれたてのラテをテーブルの上に置いた。二人が目を輝かせる。
「わ、すごい! あたしも前に試してみたけど、なんかヒトデみたいになっちゃってさ~」
「慧さん、こういうのお上手ですね……。あ、あの、よかったら、あとで作り方とか教えてもらいたくて……!」
そう言って恥ずかしげに笑うメーアに、慧は穏やかにうなづいた。
「俺もそんなに得意ってわけじゃないっすけど……いいっすよ。
でも、今はパーティを楽しんでほしいっす」
その言葉に、二人は満面の笑顔を浮かべてうなづいた。
それは、宿命と運命に縛らていた少女たちが、ようやく浮かべることのできた等身大の笑顔であり。
慧が、これからも見守ってあげたいと思う。優しい少女たちの笑顔なのだ。