PandoraPartyProject

イラスト詳細

くゆる

作者 奏多
人物 ウルズ・ウィムフォクシー
イラスト種別 シングルピンナップクリスマス2022(サイズアップ)
納品日 2022年12月24日

4  

イラストSS

 真っ暗闇の部屋だった。下着姿のつめたい膚で、やわらかなカーテンの質感を直に感じる。
 窓の向こうに見える雪景色は、街並みのイルミネーションが輝いてやけにきらめいて見えた。
 あの雪天の下では、愛する誰かと笑いあう人々が歩いているのだろう。あるいはその雪から逃れて、あたたかな屋内で想いを伝えあっているのかもしれない。
 けれどウルズのふたいろの瞳には、なんの感情も浮かんではいなかった。

 ぜんぶ忘れたふりの夏祭り。憶えていないふりの恋心。
 そんなものもすべて何処かに投げ棄てられたら、もっと生きやすかったかもしれない。
 それでも、こんな顔をして火をつけた煙草のにおいは、誰にも見せられやしなくて。

 苦い煙草の味は、まだ慣れない。それでも貴方とお揃いだから、きっと一生棄てられずにいる。
 くゆる紫煙ばかりが、ひとりの夜をやり過ごす彼女を慰める、かすかなぬくもりだった。

 永遠に潰えた恋と縁の残り香は、確かにすこしずつ消えていく。
 それが本当に、なんにも遺らなかったかなんて――彼女にしかわからないことだから。

 泡沫に咲くスターチスが、紫煙にまぎれて揺れている。
 こころのどこかで、ただはらはらと散っていく。
 
 ――窓の向こうで降りつむ雪は、いつまでも止まない。

 ※SS担当者:遅咲

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