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やめろ離せ!
やめろ離せ!
イラストSS
先約があると知らされた時はもう最悪だった。まさか意識を失った挙句、当然のように予定を掻っ攫った敵の世話になるとは。来年こそは絶対に当日を確保しようと目覚めて真っ先にスケジュールのリマインドを追加した。
そして、その足で嘉六さんから別日に宅飲みの約束を取り付けた。非常に不本意ながら怪我の功名だと思えば、二年連続飲み会でマウントを取ってくれたご友人も今回だけは特別に許そう。まぁ、こっちは『二人きり』ですし——
「——って聞いてんですかぁ、嘉六さん」
酔っている。べろべろのぐずぐずに。へにゃりと笑った次の瞬間には説教が始まる。
「聞いてる聞いてる」
酒を舐めて打つ適当な相槌に仄の目が据わった。
「だぁって全然飲んでないじゃないっすかぁ」
泥酔なんかしてみろ、何されるか分かったもんじゃないだろうが。本音を飲み込んだ矢先にむんずと尻尾を鷲掴まれて飛び上がった。
「やめろ離せ!」
「俺も嘉六さんもふもふしてお泊まりしたいっす!」
弱点を囲う腕は強まる一方。感情が先走ってまるで話の通じない酔っ払いとの激しい攻防の末。
「……あ、抜け毛」
朦朧と意識が逸れた隙に逃げ出す事にした。やっぱコイツこわい。
「かろくさぁんッ!」
※SS担当者:氷雀