イラストSS

「おぎゃああああああああああああああっ！？！？！！？
　待って蕃茄、待って待って待って、蕃茄ッ！？　蕃ッ茄！！！！！？」
　――勢い良くソリが駆け抜けて行く。
　雪を滑り降りていくソリには二人の姿が見えた。
　一方は叫び声を上げる成人女性。もう一方はと言えば楽しげにきゃあきゃあと声を上げる10歳ほどの少女だ。
　その顔立ちは良く似ていて、茄子子が「蕃茄」と呼び掛けた少女は『娘』と呼んでも差し支えのない親しい関係性だ。
　そう、茄子子は現在蕃茄によって盛大に振り回されているのである。
「楽しい～～～～！！！」
「蕃茄アアアアアアア」
　知っているか、蕃茄。ソリにはブレーキがないんだ。
　茄子子は死を覚悟していた。あまりに勢いが良すぎる。風の夜妖でも協力したのかと感じてしまうほどに勢いが良すぎた。
　蕃茄は「楽しいね、茄子子。もっと早くなるかな？」と問うた。
　もっと早く――？　これ以上――？
　蕃茄がそう口にした途端にソリは更に加速した。真性怪異（だったモノ）に怪異が協力したとしか思えない。
「イギャアアアアアアアアアアアアアア」
「茄子子、見て見て」
「な、なななななななッ、何？」
「雪山」
「えッ、ちょ、待って！？　あれは―――！」
　顔から突っ込むと叫び駆けた茄子子は―――


　＊SS担当：夏あかね