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シルキィのみやのによるおまけイラスト
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イラストSS
重ねられた指先はあたたかくて目を細める。
自分が煌浄殿へ行ってしまってから数える程しか会えて居ない。
それなのに、彼女への想いは変わらず胸の中にあった。
世間の恋愛というものとは程遠い、拙い関係性だということは理解している。
そもそも、自分には恋愛というものが実感として分からなかった。
身を焦がす程の情熱を謳うドラマや小説に感動することはあっても、自分の中に落とし込むことが難しかったのだ。
大切に想う気持ちは溢れる程にあるというのに。これが恋愛であるかが分からない。一緒に居て心地よく、好きだと想える相手には必ず『恋』という記号を付けなければならないのだろうか。
これが『愛情』を抱いていると聞かれれば、胸を張ってイエスといえるのに。
恋愛が分からない。それはきっと自分に過去の記憶が無いからなのだろう。
召喚前の記憶。燈堂家に拾われる前に自分は何処に居たのだろうと思うこともある。
けれど、それを知ってしまった時に、訪れる真実に耐えられないような気がするのだ。
何故なら過去を思い出そうと考える度に、強い拒絶と不安が身体を覆うのだ。
覚えていないのに、思い出すことを拒み、実際に吐いたことだってある。
その恐れと引き換えに『恋愛』の何たるかを思い出すのは難しいだろう。
今の心地よい『愛情』の揺り籠の中に居ることが悪いことだとは思えない。
きっと彼女はそんな自分さえも包み込んでくれる人だから。
いつまでも、やわらかな愛情の中で手を繋いでいけますように。
そう星降る夜に願いをかけた。
※担当:もみじ