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アウトロー
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イラストSS
"輝かんばかりの、この夜に"。その言葉を『文字通り』に体現せんとばかりに、部屋の中には金貨や財宝が山となって積み上がっている。
「……」
しかしながら、それらの上で寛いでいる男──アルヴァ=ラドスラフはさして面白くもなさそうに傍の冠を拾い上げて眺めていた。これらの財宝があれば、一般的な人間であれば一生食うに困らないにも関わらず、彼はさほど嬉しそうには見えない。最も、彼は義賊だ。これらの財宝は自分のものにあらず、醜く私腹を肥やした者から奪い取って貧者へ配られる。喜ばしいことだ。驕り高ぶった強者を挫き、弱き者を助ける行為だ。これほどスカッとすることはない。
だが。
「なんなんだよ。この気持ちは……」
彼の心にあるのは酷く乾いた渇望だった。足りない。目の前の金貨の山が欲しいわけじゃない。助けた人々の称賛の声が欲しいわけじゃない。余人の理解が欲しいわけじゃない。だが、この部屋を貧しき人々に分け与える財宝で埋めた時、彼の心に去来したのは渇望と達成感とは程遠い虚無的な気持ちと、微かな苛立ちだった。
「……くそ、何が"輝かんばかりの、この夜に"、だ」
己が本当に欲しいもの。『幼い』ままの少年は、まだそれに答えを出すことができない。
※SS担当者:和了