イラストSS

　それは夢か幻か――。
　シャイネン・ナハトの夜。一つの幻想が作り出される。
　静謐を湛えた夜空。満天の星が輝く空に静かに、その幻想が作られた。
　幻想の中心は、一人の少女――アルファード＝ベル＝エトワール。
　真白に染め上げられたアルファードが、祈るように両の掌を合わせた。
　――それは今はない、異世界にいた頃の彼女の力の一つ。
（素敵な聖夜に――）
「――雪を降らせましょう」
　ゆっくりと掌を開く。弱々しい輝きを放つ小さな雪の結晶が、徐々に大きく、輝きを放ち――音も無く、天へと昇っていく。
　見上げるアルファード。雲一つない満天の星々に、少しずつ違う輝きが混ざり出す。
　深々と、雪が降る。
　それは、奇蹟の夜に起きた一つの奇跡。
　生み出された雪が、街を真白に染め上げていく。
　その中心で、淡い白金色の瞳を細めて空を見つめていたアルファードは、ほぅっと白い息を吐き出した。
　幻想的な光景はいつまでも、いつまでも続く。
（嗚呼、どうか――今日と言う日が終わるまで）
　その祈りは天に届いただろうか。
　彼女――アルファードが無くした力は、一つの幻想となって大地に降り積もる。
　それは夢か幻か――。
　奇蹟の夜を染め上げる、真白の雪が、純白を体現するアルファードをも染め上げていった。