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イラスト詳細

秋嶋 渓の岬による5人ピンナップクリスマス2017(横)

作者
人物 秋嶋 渓
恋歌 鼎
ウィリアム・M・アステリズム
九重 竜胆
Solum Fee Memoria
イラスト種別 5人ピンナップクリスマス2017(サイズアップ)
納品日 2018年02月13日

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イラストSS

【ある旅館の一部屋 B】
 僅かに開いた襖の奥から、きゃあきゃあと賑やかな声が漏れている。
 中では枕投げの真っ最中。
 聖なる夜のお祭り騒ぎに、誰も彼も一喜一憂している。
 
「行きますよー! それ!!」
 威勢の良い声が響き渡る。渓が投げた枕は、一直線に飛んでいく。
 勢いのつきにくいだろう柔らかな枕も、しっかり真っすぐ飛ぶのは、格闘技全般に精通する彼女ゆえだろう。
 しかし、いいコースに投げられた枕は防がれてしまったらしい。
「ありゃ、惜しい!」
 次は当てるともう一つ、枕を掴んで投球体制。
「渓君は元気だね。私も一度ぐらいは当てられるといいんだけど」
 前線に立つ渓から一歩引いた位置で、鼎はどうなることやらと笑みを浮かべる。
 結った灰色の髪を揺らして、よっと言う掛け声は小さく幽かに。
 投げた枕はふんわりと優しく、大きく弧を描いて飛んでいった。
 投げるばかりではない。投げられるのも枕投げだ。
 とはいえ、その銃口が向けられるのは、参加者ばかりとは限らない。
 部屋の中にいる者は、本人の希望如何に関わらず、皆ターゲット足りうる。
 布団に入ってはいるものの、飛び交う枕弾の雨霰に苛まれ、寝るに寝れないウィリアムが疎ましげに他の面々を見る。
 少年がじとりと睨んでもゲームの熱は冷めやらず、彼にできるのはせめて直撃しないよう自分の頭を枕で守ることぐらいである。
 ウィリアムは視線を移す。自分はこうして眠れずにいるのに、隣には安らかな寝息を立てて眠っている少女の姿。
 もちろん、寝ているSolumにも枕は飛んでくるのだが、その度にころんころんと寝返って回避しているのは、本能なのか偶然なのか。
「……すぅ……」
 普段から余り表情は出さない少女だが、寝顔はほんのり笑みを浮かべて。
 きっと何か、心地好い夢を見ているのだろう。幸せそうである。
 ……そんな少女に忍び寄る、魔の手が一つ。
「寝てる子は、こうしちゃうんだから」
 Solumがすっかり眠っていると見るや、枕投げは一時休止。竜胆は悪戯っぽく笑って、彼女の帯をしゅるりと解く。
 元々寝返りではだけかけていた浴衣の帯を解いたら、一体どうなってしまうやら。
 そんな悪ノリが許されるのは、こんな夜ぐらいだろう。
 起きたらムッとされちゃうかしら。
 声を出さずに笑えば、震える竜胆の華奢な肩。

 またいつ次があるとも知れない機会だ。騒がなければもったいない。
 性別も年齢も、種族だって関係なく。
 聖なる夜に乗っかった大騒ぎは、まだまだ終わらない。

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