イラストSS

　シャイネン・ナハトは夜の海にも訪れる。
　暗く沈んだ海の底。静かに密やかに消費者金融を営むダンデライオンは一人この聖なる夜の中仕事に勤しんでいた。
　大きな岩に腰掛けて、書類を整理しながら、水底のメロディに耳を傾ける。
「此処は、下品な喧騒が届かなくて良いですね。……今日もまだまだ仕事ですが」
　書類整理はまだまだ終わりそうにない。少し休憩にしようかと考えた。
　星々の光はこの水底に届くのだろうか。薄暗い周囲の中、キラキラと光を反射する石や泡達。
　波に揺蕩いながら身体を休ませていると、一匹の小魚が近づいてくる。
「おや、あなたも休憩ですか？　ふふ、ゆっくりしていくと良いでしょう」
　旅の途中だろうか。色鮮やかな小魚は、ゆったりと波に揺られながらその場に留まる。
　不意に、悪戯心がでて小魚をつつくダンデライオン。
　二度、三度、魚の頭をつつくと小魚も返礼するようにダンデライオンの指をつついた。
　しばらくそうして遊んでいれば、休憩も終わったのか小魚は優雅に泳ぎ消えていく。
「行ってしまいましたね」
　そう小さく呟くと、ダンデライオンも書類の整理を続ける事にした。
　聖なる夜の海の底。
　地上の喧噪とはかけ離れた、実に静かな奇蹟の夜が更けていく。