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叶わぬ願いが、生まれては死んだ。
叶わぬ願いが、生まれては死んだ。
イラストSS
寒い、寒い夜だった。
雪は先ほど止んだようで、雲もまあまあ晴れている。
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は廃墟の前、ちょうど積み重なった瓦礫の上に腰を下ろした。
雪は音を吸収し、無音の世界を作り上げる。その中に閉じ込められた廃墟は、ただただ物悲しい。
風が強く吹き、レイチェルの被っていたフードを後ろに追いやった。
幸いにも夜。日の光を気にする必要はない。銀髪の吸血鬼はフードをそのままに夜空を見上げた。
1つ。また1つ。
風で雲が押し流されていくほど、見える流星は多くなる。それらはレイチェルの上を、廃墟の上を通り越していった。
「輝かんばかりの夜を……なんて、な」
俺の柄じゃない。そう呟いてレイチェルは目を眇めた。
お伽噺の中で、旅人は雪の様だと称した。そして願い祈りし者に祝福を与える煌めきだ、と。
(……ならば、何故。願い、祈った者達へ届くことなく、途中で消えてしまうンだろうなァ)
それではまるで、願いが叶わないと言われているようだ。
光っては消え。生まれては死ぬ。その煌めきは、願いは、祈りは――なんて儚いのだろう。
(叶わぬ願い……か)
そう思いながらも、彼女は星から目を離さない。
願うことだけは自由だから。
レイチェルの手はいつしか銀色の懐中時計を開いていた。その中に封じ込められた瑠璃唐草を、不意に色の異なる瞳が見下ろす。
「叶うならば――もう一度」
心の中で、願いを紡ぐ。
また1つ、煌めきが空で孤を描いた。