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サクラのkzgr_による2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
●おでいと
「あ、屋台出てるよ。寒いからねぇ!」
「……」
「毎年必ず雪が降るってロマンチックだよ」
「……………」
「楽しいね、センセー!」
相手は達人。相手は斬魔無双の死牡丹梅泉である。戦いでは滅多な事では踏み込めぬ『超近接距離』のサクラはあくまで華やいでいた。
「シャイネン・ナハトって本当に素敵だよ。
センセーもそう思わない? や、やっぱりいい。
答えなくていいから『思わない』って言わないでね!」
片目を閉じたまま、強引に腕を取る自身の顔を時折伺う梅泉に構わず、彼女は楽しそうに時間を過ごしている。
会っている時間の大半が押しかけ弟子。剣を振り、打ちのめされた回数は軽く百回を超えている。だが、今夜ばかりはサクラは譲らず、負けず。こうして梅泉を引っ張り出す事に成功したのだ。
(……だから、少しでも同じ気持ちで居て欲しいんだけど)
サクラがこっそり伺った梅泉の顔は何時もの通りだ。
切れ味鋭い妖刀のような美貌である。
(か、カッコいい……じゃなくて……
ううん。『センセー』だ、これは)
乙女心は複雑だ。何時もの通り過ぎて、サクラは安心したような、ガッカリしたような気持ちを否めない。
だが、彼女は結局次の瞬間に『一本』を許す事になる。
「誰が、言った」
「……え?」
「誰が退屈と言った? 不満と言うたか」
「……あ、えと」
「稀ならな。付き合うも吝かではない。
わしの趣味ではないが、それで主が満足ならば。
まぁ、わしも気に喰わぬと言う程、無粋ではないわ」
「――――」
顔を真っ赤にしたサクラが口をパクパクさせ、腕にぎゅっと抱き着いた。
「そ、そういう……」
「そういう?」
「そういう所なんだよ!」
抗議めいた口調は、当然ながら迫力と言うものを持ち合わせてはいなかった。