PandoraPartyProject

イラスト詳細

聖夜の距離

作者 綾瀬 みゆき
人物 新田 寛治
リーゼロッテ・アーベントロート
イラスト種別 2人ピンナップクリスマス2021(サイズアップ)
納品日 2021年12月24日

9  

イラストSS

●雪の庭園にて
「……あら」
『思った以上に』その距離感が近かった時、リーゼロッテ・アーベントロートは少し意外そうな顔をした。
「案外、隙を見せますのね?」
「一年に一度の好機ですからね。
 四十男は『目に見える余裕』と『その逆』と併せ持つものです」
 冗句めいた新田寛治が何処まで本気かは知れない。
(……ふぅん?)
 しかし、雪の庭園で自身を呼び止めた彼の『立ち位置』が何時もより随分遠慮が無い事だけは確かだった。
 目の前の男は何事にも如才のない、実に、実に、実に。可愛げが無く、面倒くさい男である。彼女は幼馴染(クリスチアン)に似た彼の事を理解している心算になっていたけれど――
「これは『そういうこと』と考えた方が宜しくて?」
「御身次第、ですかね」
 嗜虐的に目を細めたリーゼロッテに寛治は肩を竦めた。慎重に距離を差し合うコン・ゲイムは両者間にだけ認められた特権のようで面映ゆい。手強い対戦相手は今夜も一筋縄ではいかないだろうが、寛治は『彼女はそもそも余程の相手でなければこの間合いには入れない』と読んでいる。
 だからここは冷静に……
(……いや、半分は分析だが、もう半分は逃げ、ですかね?)
 寛治は内心だけで苦笑した。
 蒼薔薇はやはり奇跡そのものだ。
 クリスチアンの気持ちが分かる。
 私はこんな男じゃない筈なのに――

PAGETOPPAGEBOTTOM